メニュー「月刊児童文学翻訳」バックナンバー>2017年10月号   オンライン書店
※11月は休刊いたします。次回は12月号です。どうぞお楽しみに!

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2017年10月号
   =====☆                    ☆=====
  =====★   月 刊  児 童 文 学 翻 訳   ★=====
   =====☆   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ☆=====
                                No.181
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児童文学翻訳学習者による、児童文学翻訳学習者のための、電子メール版情報誌
http://www.yamaneko.org                         
編集部:mgzn@yamaneko.org     2017年10月15日発行 配信数 2570 無料
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●2017年10月号もくじ●
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◎プロに訊く:第38回 原田勝さん(翻訳家)
◎プロに訊く連動レビュー:
『オオカミを森へ』
         キャサリン・ランデル作/ジェルレヴ・オンビーコ絵/原田勝訳
『ウェストール短編集 真夜中の電話』 ロバート・ウェストール作/原田勝訳
◎特別企画:2018年国際アンデルセン賞の候補者たち その1
 イザベル・アルスノー(カナダ)
 レビュー:『アンナとわたりどり』
        マクシーン・トロティエ文/イザベル・アルスノー絵/浜崎絵梨訳
◎賞情報:速報! 2017年全米図書賞児童書部門 ファイナリスト発表!
◎賞速報
◎イベント速報
◎お菓子の旅:第68回 死者の骨を食べる? 〜オッスス・デ・モットゥ〜
◎読者の広場

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●プロに訊く●第38回 原田勝さん(翻訳家)
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 今回ご登場いただくのは、2016年やまねこ賞の読み物部門1位に輝き、2017年の第
3回日本翻訳大賞最終選考候補作品にも選ばれた、『ペーパーボーイ』(ヴィンス・
ヴォーター作/岩波書店)の翻訳者、原田勝さんです。会社員時代に駐在していたイ
ラクでのご経験、翻訳家としてデビューするまでの経緯、数多く手がけていらっしゃ
るヤングアダルト(YA)文学の魅力など、貴重な話を語ってくださいました。ご多
忙の中、インタビューをお受けくださった原田さん、ありがとうございました。

【原田勝(はらだ まさる)さん】
+――――――――――――――――――――――――――――――――――――+
|1957年生まれ。東京外国語大学卒。1993年、『ミッドナイトブルー』(ポーリン|
|・フィスク作/ほるぷ出版)で翻訳家デビュー。英語圏のYA小説を精力的に紹|
|介している。訳書に、『弟の戦争』(ロバート・ウェストール作/徳間書店)、|
|『スピリットベアにふれた島』(ベン・マイケルセン作/鈴木出版)などシリア|
|スなテーマを扱った作品の他、「古王国記」シリーズや「王国の鍵」シリーズ |
|(共にガース・ニクス作/主婦の友社)など壮大なファンタジー作品もある。 |
+――――――――――――――――――――――――――――――――――――+

【原田勝さんのブログ「翻訳者の部屋から」】
http://haradamasaru.hatenablog.com/

【原田勝さん訳書リスト】
http://www.yamaneko.org/bookdb/int/ls/mharada.htm

【原田勝さんインタビュー ロングバージョン】
http://www.yamaneko.org/bookdb/int/mharada.htm

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Q★大学を卒業後、まずは産業機械のメーカーに就職されたそうですが、その後、な
ぜ翻訳家になろうと思われたのでしょう?

A☆就職してから10年ほど経ち、サラリーマンを辞めたくなったんです。ものづくり
を支える仕事は楽しかったのですが、事務職だったので異動の度に職務内容が変わり、
将来が描けなくなってしまって。それで退職し、塾の講師になり英語を教え始めたん
ですが、すると今度は人生の目標が欲しくなりました。もともと本は好きだったので、
翻訳なら辞書さえあれば自分にもできるんじゃないかと……。もちろんすぐに、甘い
考えだったと思い知らされるわけですが(笑)。

Q★デビュー作の『ミッドナイトブルー』は、どういったきっかけで訳すことになっ
たのでしょう? また現在、多数の出版社から訳書を出されていますが、ネットワー
クはどのように広げていかれたのですか?

A☆退職後、塾の講師をする傍ら、翻訳学校に通い始めたのですが、そこで師事して
いた金原瑞人先生に、ある出版社のリーディングの仕事を紹介していただいたんです。
デビュー作は、その仕事を通して出会った作品でした。2、3冊訳書が出れば、他の
出版社からも仕事が来るだろうと高をくくっていたら、これが大間違い。自分から動
くしかないと気づき、いろいろな出版社に持ち込みを始めました。選書については、
テーマ云々より、面白かったかどうか、これに尽きます。著名な作家の作品や有名な
賞をとった本は、すでに版権が取られて訳者が決まっている場合も多々あるので、新
人作家のデビュー作で評判の良いものが狙い目かもしれません。

Q★質問を会社員時代に戻しますが、イラクのバスラに駐在されたご経験があるとか。

A☆赴任したのは入社2年目の1981年、24歳の時でした。当時はイラン・イラク戦争
のさなかで、駐在3日目に据付現場に爆弾が落ち、仕事は1か月ストップ。それまで
も頭では分かっていましたが、「戦争で人が死ぬ」という事実を肌で感じましたね。

Q★そして、そのご経験が、訳書2冊目となる『弟の戦争』につながっていくわけで
すね。この本は、1995年の刊行以来、長く読み継がれています。

A☆徳間書店を別件で訪れた時、編集者さんの机の上に原書が置いてあったんです。
原題の "Gulf" から、イラクと関係があるのではないかと興味をそそられましてね。
当時、多国籍軍がイラクを空爆し湾岸戦争が勃発する瞬間を、テレビで観た人も多い
んじゃないでしょうか。しかも、その本をよく見ると作者はウェストール。頼み込ん
で持ち帰らせてもらい、読んでみたら、それはもう衝撃的で。イラクの子どもたちの
顔が……ニュースの裏側にある暮らしが……浮かんでくるんですよ。『弟の戦争』は、
自分の訳書の路線を決定づけてくれた作品で、特に思い入れのある1冊です。

Q★他にも、戦争を扱った作品を数多く訳されています。

A☆使命感からでしょうか。日本では戦後70年以上が経ち、あと十数年すれば体験者
もいなくなります。でも、戦争の記憶を風化させてはいけない。歴史の教科書は史実
を教えてくれますが、物語は戦争のさなかにいる人々の感情をも伝えてくれます。

Q★とはいえ、自国の軍隊を戦地に派遣している諸外国の読者と比べると、日本の読
者は戦争をどこか他人事のように捉えてはいないでしょうか。

A☆距離感があるのは、悪いことじゃないと思うんです。例えば日本の戦時中の子ど
もたちを描いた児童書もありますが、自国の忘れたい過去となると、生々しすぎて冷
静に見られなかったりします。海外の作品の方が、戦争というものを客観的に見られ
て、読みやすいという面があるのではないでしょうか。外国の人たちも自分と同じよ
うに感じるのだという気づきや、外国と自国との関係を考えるきっかけが得られるの
も、海外の本ならではですよね。

Q★YA作品を数多く手がけられていますが、翻訳の際、特に気をつけているのは、
どういったところですか?

A☆とにかく読みやすさですね。不必要に難しくならないように気をつけています。
とはいえ、作者が読者に考えさせたい場面で、その負荷を取り除くようなことはしま
せん。文化的な違いによって理解が難しくなる部分は補足しますが、解説しすぎては
いけないと肝に銘じています。

Q★ずばり、YA文学の魅力は?

A☆あらゆる社会問題・テーマを分かりやすく描いているところでしょうか。また、
多少無理があったり、ありえないと思ったりする設定でも、読者に受け入れてもらい
やすいんです。例えば『スピリットベアにふれた島』では、暴行事件の加害者の少年
が、服役する代わりに無人島で1年を過ごし、自分を見つめ直します。その設定や展
開には、やや非現実的な部分がありますが、その分、作家のメッセージがストレート
に伝わってくるんです。

Q★吃音の少年が主人公の『ペーパーボーイ』は、2017年の第3回日本翻訳大賞で最
終選考まで残りました。ご自身のブログで、「尖った翻訳」であることも評価された
のではないか、と書かれていますが、もう少し詳しくお聞かせください。

A☆私の言う「尖った翻訳」とは、特殊な文体であるとか、構成にひねりがあるとか、
視点が複数あるとか、原書に目立った特徴があるおかげで、工夫のあとが見えやすい
翻訳のことです。『ペーパーボーイ』について言えば、地の文では、読点を一切使い
ませんでした。原書でも、コンマが使われていません。主人公がタイプライターで打
ったという設定で、せめて文章の中では、つっかえずに話を進めたいという思いがあ
るからです。また、主人公の吃音を表す原文 "ssss" は、カタカナで表記することも
考えたのですが、あえてそのままにしました。アルファベットだと記号化され、読者
はいちいち読まずにすみます。つまり、読み進める上で、邪魔にならないんですね。

Q★では、原田さんご自身は、海外文学が評価される時、何をどのように評価すべき
だと思われますか?

A☆日本語の作品としてどうか、でしょうね。正当に翻訳書を評価しようと思ったら、
原書と訳書を比較するだけでなく、作家のこれまでの作品や文化的背景なども調べな
くてはなりません。でも、そこまでするのは、現実的にはなかなか難しい。ですから、
結局は、日本語の作品としての質が問われることになります。今回、日本翻訳大賞で、
YA小説の『ペーパーボーイ』が一般書と等しく取り上げられたのは、読者対象のい
かんに関わらず「いいものはいい」と言っていただけたようで素直に嬉しいです。

Q★実際の翻訳作業は、どのように進めていらっしゃいますか?

A☆ケースバイケースですが、原書を読んでから、すぐに訳し始めることが多いです
ね。調べ物は、訳しながら資料を参照します。必要であれば、見取り図や地図を描く
こともあります。1日に翻訳できるのは、せいぜい5、6ページ。引っかかった単語
をめぐり、とことん悩むのも大切です。次の日は、前日に訳した部分を原文と突き合
わせながら見直します。ひとつの章を訳し終えるごとに、もう一度原文をチェックし
ながら訳文を読み、次に訳文だけを読者に近いスピードで読み直し、その後、必ずプ
リントアウトして目を通しますね。

Q★登山がテーマの物語や科学ノンフィクションなど、専門知識が必要とされる作品
も訳されていますが、調べ物にまつわるエピソードをお聞かせください。

A☆『エベレスト・ファイル シェルパたちの山』(マット・ディキンソン作/小学
館)には、登山のルートが克明に描かれているので、事実に忠実かどうかしっかりと
裏を取りました。作家自身がエベレスト登頂の経験があるので、矛盾はほとんどあり
ませんでしたけどね。科学の本は、原書に間違いがいくつかあったので、事実確認が
大変で……。また、訳語の候補がいくつかある場合、教育現場では、どの言葉が使わ
れているのかチェックしました。

Q★読者からの反響が大きかった作品を教えてください。

A☆残念ながら、子どもたちの反応は、なかなか伝わってきません。今では簡単にネ
ットで感想を読めますが、書いているのはだいたい大人ですよね。でも、読んでいる
子は、読んでいるんです。塾で教えていると、本好きの子がいるのを実感します。

Q★9月に刊行されたばかりの『オオカミを森へ』(キャサリン・ランデル作/ジェ
ルレヴ・オンビーコ絵/小峰書店)についてお聞かせください。

A☆『オオカミを森へ』は、1世紀前のロシアのサンクトペテルブルクが舞台で、貴
族に飼われていたオオカミを森へ帰すために、そのオオカミに野性を取り戻させる少
女の話です。そこに革命や、捕らわれた母を助ける冒険が絡んできます。少女の行動
力が力強く描かれていて、今まで読んだことのないタイプの作品でした。

※『オオカミを森へ』は、本誌今月号「プロに訊く連動レビュー」を参照。

Q★最後に翻訳学習者へのアドバイスをお願いいたします。

A☆例えば、邦訳のある作品の原書を取り寄せ、自分で訳してみて、訳書と突き合わ
せてみることも有効かもしれませんが、その際、お手本に自分の訳文を近づけようと
するのではなく、良いと思ったところをお手本から自分の訳文に取り入れるというス
タンスをお勧めします。他人の言っていることを鵜呑みにして、自分の方針を決めな
い方がいい。「どうして子どもの本を訳したいのか」を自身に問いかけ、自分だけの
答えをどうぞ探してください。そして、そのためには、どうすればいいのか――これ
も自分で考えるしかないと思うんです。

 *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** ***

 どの質問にも、ひとつひとつ慎重に言葉を選びながら誠実に答えてくださった原田
さん。どうして子どもの本の翻訳をしたいのか――この問いに出した自分なりの答え
を軸に据え、そのためにできることをこつこつと続けていけば、おのずと道は開ける
ような気がしてきました。翻訳にお手本はない。自分なりの正解を探しつづけるしか
ないのだ。そう心に刻んだインタビューでした。

                           (取材・文/相良倫子)

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●プロに訊く連動レビュー●
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◆オオカミと共に闘う少女◆

『オオカミを森へ』
キャサリン・ランデル作/ジェルレヴ・オンビーコ絵/原田勝訳
小峰書店 定価1,700円(本体) 2017.09 333ページ ISBN 978-4338287159
"The Wolf Wilder" by Katherine Rundell, illustrations by Gelrev Ongbico
Simon & Schuster Books for Young Readers, 2016.09
Amazonで検索する:ISBN  Amazonで検索する:書名と作者名

 今から100年ほど前、ロシアの深い森で「オオカミ預かり人」として暮らす母娘が
いた。娘の名はフェオ。オオカミに囲まれて育ったため、言葉より先に遠吠えを覚え、
人間よりもオオカミと過ごすことを好んだ。幸運の象徴とされるオオカミは、森で生
まれてすぐに捕獲され貴族に高値で売られたが、扱いきれなくなると預かり人に託さ
れた。殺すと悪運を招くと信じられているためだ。預かり人は、屋敷で育ったオオカ
ミに狩りや遠吠えを教え、森へ帰した。12歳になったフェオも、オオカミの出産を一
人で世話できるほど立派な預かり人になっていた。しかしある日突然、帝国陸軍の将
軍から、オオカミの保護をやめ射殺するよう命じられる。反抗した母親は連行され、
家も燃やされた。フェオは母を救うため、4頭のオオカミを連れ、サンクトペテルブ
ルクの刑務所を目指して旅に出る。将軍に後を追われ、時に零下40度の猛吹雪に苦し
みながらも、2人の少年に助けられ、力強く進んでいく――。
 本作はロシア革命の少し前を舞台にしたフィクションだ。残忍な将軍は、多くの人
の平穏な日常を奪い、横暴を極めているのに、大人は報復を恐れて身を潜めるばかり。
変化を求めて行動を起こすのがフェオら子どもだということに、作者の強い思いを感
じた。銃を持つ兵士を相手に、勇気と知略で闘いに挑む姿はたくましく、その作戦も
見事で、子どもが持つ無限の可能性に満ちあふれている。また、オオカミ預かり人の
存在も魅力的だ。作者が幼少期を過ごしたジンバブエに実在する、ペットにされたラ
イオンを野生に返す仕事が下敷きになっているという。物語の根底に動物への愛と敬
意が満ちていて、オオカミはフェオを守る存在として美しくカッコよく描かれている。
フェオがオオカミの背に乗って雪の中を疾走する場面には、きっと多くの読者が心を
奪われることだろう。
 ふんだんに盛り込まれた挿絵も素晴らしく、森やオオカミを白黒の濃淡で繊細に美
しく描き出している。白銀の雪景色を背景に、オオカミと共に闘いに挑む少女の物語
を、じっくりと味わってほしい。

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【作】キャサリン・ランデル(Katherine Rundell):1987年英国生まれ。幼少期を
アフリカとヨーロッパで過ごす。2008年にオックスフォード大学オール・ソウルズ・
カレッジの特別研究員に選ばれ、現在は博士論文を執筆しながら小説を書いている。
アマゾンの熱帯雨林を舞台にした新作 "The Explorer" が9月に発表されたばかり。
また、数々の賞を受賞した "Rooftoppers" の邦訳が、近々小峰書店より刊行予定。

【絵】ジェルレヴ・オンビーコ(Gelrev Ongbico):フィリピン出身のイラストレー
ター。自然を題材にした絵を得意とする。児童書の挿絵を担当したのは本作が初で、
イラストを描くにあたって、エドガー・アラン・ポーの小説や黒澤明の映画、深瀬昌
久の写真、チャールズ・リビングストン・ブルの絵を参考にしたという。現在はマニ
ラ在住。

【訳】原田勝(はらだ まさる):本誌今月号「プロに訊く」参照。

【参考】
▼キャサリン・ランデル紹介ページ(Simon & Schuster ウェブサイト内)
http://www.simonandschuster.com/authors/Katherine-Rundell/410789881

▼キャサリン・ランデルのインタビュー(The Guardian ウェブサイト内)
https://www.theguardian.com/childrens-books-site/2015/sep/14/katherine-
rundell-interview-the-wolf
-wilder

▼ジェルレヴ・オンビーコ公式ウェブサイト
https://www.behance.net/gelrev

▼ジェルレヴ・オンビーコのインタビュー(Tygertale ウェブサイト内)
https://tygertale.com/2015/09/23/katherine-rundells-the-wolf-wilder-by-
gelrev-ongbico/

▽"Rooftoppers" レビュー
(本誌2014年10月号「特別企画 レビューを書こう(第5回レビュー勉強会より)」)
http://www.yamaneko.org/mgzn/dtp/2014/10.htm#myomi

                               (山本真奈美)

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◆短編集で知るウェストール作品の魅力◆

『ウェストール短編集 真夜中の電話』 ロバート・ウェストール作/原田勝訳
徳間書店 定価1,600円(本体) 2014.08 288ページ ISBN 978-4198638368
(ウェストールの短・中編全作品から厳選した18編を2分冊で刊行したうちの1冊)
Amazonで検索する:ISBN  Amazonで検索する:書名と作者名

 ウェストールの作品9編が収められた本書。時代設定は第2次大戦中から90年代ま
で、主人公も少年・少女・大人の男性などさまざまだが、イングランドの田舎を舞台
に、人と人との結びつきが生き生きと描かれた作品が並んでいる。
 私が特に気に入ったのは、16歳の少年サイモンと牧師の娘アンジェラの恋を描いた
中編「吹雪の夜」(原題 "Blizzard")だ。サイモンは、数か月ぶりに会ったアンジ
ェラが急に大人びてきれいになったのを見たとたん、恋に落ちる。熱病のような恋愛
感情は抑えがきかず、甘い時をひとしきり過ごしたあと、けんかして暴言を浴びせて、
破局。ところがその後、悪天候が予想される中、ひとり軽装でクリスマスの慰問に出
かけるアンジェラの姿を見たサイモンは、心配で矢も盾もたまらず、後を追う。案の
定、猛吹雪に襲われるも、登山経験のあるサイモンの奮闘で、命からがら村はずれの
一軒家にたどり着いたふたりだが、そこでは、出産を控えた女性が助けを必要として
いた――。サイモンの一人称の語りは、純粋でがむしゃらな男子高校生そのもの。緊
迫した状況でも若者特有の毒舌混じりで、スピード感いっぱいにぐいぐいと読者を引
きこむ。一方で、クリスマスの聖なる雰囲気やほのぼのとした温かさも描かれている。
アンジェラに夢中になったサイモンが、100パーセント下心で参加した教会の慈善活
動で子どもやお年寄りと楽しく過ごす場面、荒っぽいけれど本気で人助けに奔走する
村の男たちの様子など、味わいどころがたっぷりだ。
 表題作「真夜中の電話」("The Call")も、クリスマスの物語。悩み相談に応じる
ボランティア組織の事務所を舞台に、毎年イヴにかかってくる電話にまつわる謎を解
いていく。スリリングな展開のホラー作品だが、強い責任感を持った情け深い人びと
の存在と、彼らの必死な思いに、胸が熱くなる。
 本書に登場する人物の中には、悪い意味で自分にそっくりな性質の持ち主もいて、
欠点をさらされたような気まずさを感じることもあった。でも、そういう作品こそ自
分にとって大切なのだと思う。こんな出合いも短編集ならではだ。ウェストールの作
品、まだまだ未読のものがあるので、少しずつ読んでいきたい。

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【作】ロバート・ウェストール(Robert Westall):1929年、英国ノーサンバーラン
ド州生まれ。美術教師をしながら、若い世代向けの読み物を数多く発表。1975年と81
年にカーネギー賞を受賞し、85年から作家専業になる。邦訳作品は、『“機関銃要塞”
の少年たち』(越智道雄訳/評論社)、『かかし』(金原瑞人訳/徳間書店)、『ウ
ェストール短編集 遠い日の呼び声』(野沢佳織訳/徳間書店)ほか多数。1993年没。

【訳】原田勝(はらだ まさる):本誌今月号「プロに訊く」参照。

【参考】
▼ロバート・ウェストール公式ウェブサイト
http://robertwestall.com/

▽ロバート・ウェストール邦訳作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/author/w/rwesta_j.htm

                                (大作道子)

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●特別企画●2018年国際アンデルセン賞の候補者たち その1
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 今年4月、2018年国際アンデルセン賞候補者が国際児童図書評議会(IBBY)よ
り発表された。隔年で表彰されるこの賞は「児童文学界のノーベル文学賞」と評され
る権威ある賞で、今回は35か国から作家賞33名、画家賞28名がノミネートされた。こ
れらの中から、作品はもちろんのこと全業績をふまえて厳正に審査され、各賞1名が
選ばれる。受賞者の発表は、2018年3月の予定だ。
 本誌では、数名の候補者にスポットライトを当ててご紹介していく。今月号で取り
上げるのは、画家賞にノミネートされたカナダのイザベル・アルスノー(アーセノー)。

【参考】
▼国際児童図書評議会(IBBY)公式ウェブサイト
http://www.ibby.org/

▼2018年国際アンデルセン賞審査員および候補者リスト(IBBY内)
http://www.ibby.org/awards-activities/awards/hans-christian-andersen-awards/
hcaa-2018/?L=0

▽国際アンデルセン賞について(本誌1999年10月号情報編)
http://www.yamaneko.org/mgzn/dtp/1999/10a.htm#a1bungaku

▽国際アンデルセン賞受賞者リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/award/andersen/index.htm

▽本誌2015年9月号「特別企画:2016年国際アンデルセン賞の候補者たち その1」
http://www.yamaneko.org/mgzn/dtp/2015/09.htm#kikaku

▽本誌2016年3月号「特別企画:2016年国際アンデルセン賞の候補者たち その2」
http://www.yamaneko.org/mgzn/dtp/2016/03.htm#kikaku

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〜イザベル・アルスノー(カナダ)〜

 芸術性と親しみやすさを兼ね備えた、忘れがたい作品を次々と生み出すイザベル・
アルスノー。国際アンデルセン賞候補に選ばれた彼女の業績を本記事で紹介できるこ
とに、邦訳者のひとりとして身の引き締まる思いがする。アルスノーは1978年、フラ
ンス語圏カナダ・ケベック州の東部に生まれ、現在はモントリオールに住む画家だ。
ケベック大学でグラフィックデザインを学んだ彼女は、イラストレーターとしてカナ
ダやアメリカの雑誌で活躍。初めて手掛けた絵本が2005年のカナダ総督文学賞児童書
部門受賞作に輝き、一躍カナダを代表する絵本画家となった。以降、発表する作品は
国内外から注目され、これまでに3度のカナダ総督文学賞、2度のニューヨークタイ
ムズ・ベストイラスト賞を受賞している。今春のボローニャ・ブックフェアでは、ボ
ローニャ・ラガッツィ賞に特別賞として設けられたアートの本賞(Children's Books
on Art)最優秀賞を "Cloth Lullaby: The Woven Life of Louise Bourgeois"(Amy
Novesky 文)で受賞。日本でも近年、邦訳刊行が相次ぎ、多くのファンを集めている。
 柔らかく愛らしいタッチのパステルカラーで描かれる『きょうは、おおかみ』(キ
ョウ・マクレア文/小島明子訳/きじとら出版)、『アンナとわたりどり』(マクシ
ーン・トロティエ文/浜崎絵梨訳/西村書店)でアルスノーに出会った読者は、リア
ルな重苦しさが漂うグラフィックノベル『ジェーンとキツネとわたし』(ファニー・
ブリット文/河野万里子訳/西村書店)に驚いたかもしれない。とりわけ、無造作に
も思える鉛筆線で引かれた目の表情は、胸をヒリヒリさせるほどだ。心象風景が見事
に表現される前述の2作同様、心の内を鮮やかに描き出す画家のテクニックには感嘆
せざるをえない。
 この、心の姿をありありと描く技量と、根底に流れる温かさが、アルスノーの最大
の魅力ではないだろうか。エミリー・ディキンスンの詩集絵本 "My Letter to the
World and Other Poems" では、死に魅了される詩人の言葉を幻想的な絵と黒色の画
面にのせ、絶望と温かさを同時に感じさせることに成功している。『ちいさなあなた
がねむる夜』(ジーン・E・ペンジウォル文/河野万里子訳/西村書店)や "You
Belong Here"(M. H. Clark 文)の静かな画面は愛情にあふれ、子どもを包み込むよ
うな安心感が伝わってくる。
 実在の人物をモチーフとした作品が多いことにも触れておきたい。画家ゴーギャン
の少年時代のエピソードを描いたデビュー作 "Le coeur de monsieur Gauguin"
(Marie-Danielle Croteau 文)、精神を病み自死に至った作家ヴァージニア・ウル
フへのオマージュである『きょうは、おおかみ』、現代アーティスト、ルイーズ・ブ
ルジョワの伝記絵本 "Cloth Lullaby: The Woven Life of Louise Bourgeois"。作中
の主人公はみな、芸術に心を救われている。そして、救いを描いた作品そのものが、
読者個人の救いともなることがあると、私は訳書『きょうは、おおかみ』を通じて知
ることができた。心の内面を深く見つめる作品であるからこそ、その世界は読者の心
と響き合う。そして優しさがあふれるアルスノーの絵を通じ、人は希望を見いだすの
ではないだろうか。
 アルスノーはインタビューで「自分は、作品によって異なるアプローチを取る」と
語っている。テキストがかきたてるイメージを絵筆でとらえたいという、作品への敬
意と挑戦がそこにある。フランス語圏、英語圏、そしてスペイン語圏の作家とも共同
制作をおこなってきたアルスノーだが、最新作 "Colette's Lost Pet" では自らが文
章も手掛けた。想像力と友達づくりがテーマの本書は、小さな子どもたちの日常を描
いたシリーズの1作目となる。子どもの共感を呼ぶ内容と、親しみやすいコミック風
のイラストに、さらなる愛読者が増えそうだ。枠にとらわれない自由な作品づくりを
続けるアルスノーの活躍からは、これからも目が離せない。

※『きょうは、おおかみ』の画家名表記はイザベル・アーセノー。

【参考】
▼イザベル・アルスノー公式ウェブサイト
http://www.isabellearsenault.com/

▽イザベル・アルスノー作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/author/a/iarsenau.htm

▽『きょうは、おおかみ』レビュー
(本誌2015年6月号「この人に聞きたい! 連動レビュー」)
http://www.yamaneko.org/mgzn/dtp/2015/06.htm#hehon


■レビュー■

『アンナとわたりどり』
マクシーン・トロティエ文/イザベル・アルスノー絵/浜崎絵梨訳
西村書店 定価1,300円(本体) 2015.06 40ページ ISBN 978-4890139514
"Migrant" text by Maxine Trottier, illustrations by Isabelle Arsenault
Groundwood Books, 2011
Amazonで検索する:ISBN  Amazonで検索する:書名と作者名

 ピンク色の表紙に、ちょうちょを見上げる少女の横顔が浮かぶ。頭に巻いたスカー
フと赤いワンピースのいでたちは、どこかクラシックだ。巻末の説明書きによると、
主人公アンナの家族は、平和と非暴力を信条に簡素な生活を旨とするメノナイト派の
一家だという。アンナは、季節労働者としてメキシコからカナダへ来た自分たちを、
渡り鳥に重ねずにはいられない。空き家での寝泊りが始まると、野うさぎのようだと
思い、トマトをもぐ家族の姿を働きバチになぞらえる。アンナの想像は、画家アルス
ノーの絵筆によって具現化し、読者の心をも飛び立たせる。
 大家族の末っ子アンナの視点で描かれる、異国での生活。大地に根をおろして、木
のように暮らせたならばと、少女はあこがれを語る。だが決して、それは悲しみや不
満ではない。ときに心細さを見せることもあるが、アンナの表情は柔らかな強さをた
たえ、好奇心や家族への信頼を表している。多文化への肯定的なメッセージが伝わる
本作は、2011年ニューヨークタイムズ・ベストイラスト賞を受賞した。北米大陸の文
化的な背景を知らない子どもたちも、空想を愛するアンナを身近に感じ、異なる土地
や文化に思いをはせることだろう。

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【文】マクシーン・トロティエ(Maxine Trottier):カナダの児童文学作家。1950
年、米国生まれ。10歳で家族とカナダに渡り、1970年にカナダ国籍を取得。小学校教
師として31年間、子どもたちを指導しながら、作家として活躍。著書にはカナダの歴
史をテーマとした作品が多く、数々の賞を受賞している。本書が初の邦訳作品となる。

【絵】イザベル・アルスノー(Isabelle Arsenault):本コーナーの紹介記事参照。

【訳】浜崎絵梨(はまざき えり):幼少期より中国各地に暮らし、香港で英国系の
中学・高校に通う。慶應義塾大学法学部卒業、シドニー大学大学院美術学科修了。
2010年より翻訳家として活動。『おひめさまはねむりたくないけれど』(メアリー・
ルージュ文/パメラ・ザガレンスキー絵/そうえん社)で第21回日本絵本賞読者賞を
受賞している。

                                (小島明子)

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●賞情報●速報! 2017年全米図書賞児童書部門 ファイナリスト発表!
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 10月4日、2017年全米図書賞(National Book Awards)のファイナリスト(最終候
補作品)が発表された。
 本賞は、アメリカ人作家による優れた文学作品の普及と読書人口の増加を目的とし
て1950年に創設され、全米図書財団(National Book Foundation)が主催している。
対象部門は時とともに変遷し、現在はフィクション、ノンフィクション、詩、児童書
の4部門。前年12月1日から当年11月末日までにアメリカで出版された(または出版
される)作品を対象に、文学的価値を重視して選考される。
 今年は9月13日に各部門のロングリスト10作品が発表され、その中から各5作品が
ファイナリストに選ばれた。受賞作品の発表は、11月15日の予定。
 本号では、児童書部門(Young People's Literature)のファイナリストに選ばれ
た5作品をご紹介する。

▼2017年全米図書賞発表ページ(National Book Foundation ウェブサイト内)
http://www.nationalbook.org/nba2017.html

▽全米図書賞児童書部門について(本誌2003年12月号情報編「世界の児童文学賞」)
http://www.yamaneko.org/mgzn/dtp/2003/12a.htm#bungaku

▽全米図書賞(児童書部門)受賞作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/award/us/nba/index.htm

★Finalists(5作)

"What Girls Are Made of"         by Elana K. Arnold (Carolrhoda Lab)
"Far from the Tree"           by Robin Benway (Harper Teen)
"I Am Not Your Perfect Mexican Daughter" by Erika L. Sanchez
                  (Alfred A. Knopf Books for Young Readers)
            (「Sanchez」の「a」の上にアクセント記号(´)がつく)
"Clayton Byrd Goes Underground"     by Rita Williams-Garcia (Amistad)
"American Street"            by Ibi Zoboi (Balzer + Bray)

 "What Girls Are Made of" では、Elana K. Arnold が、10代を生きる女の子の心
と身体を包み隠すことなく、思い切った表現で描きだしている。Nina は14歳のとき、
母親から無条件の愛情なんてないことを教えられた。母が娘を愛さなくなることだっ
てあり得るのだ、と。だから、16歳になって恋人ができると、気持ちをつなぎとめる
ために何だってしようと思った。でも、彼は離れていってしまった……。痛みを経験
しながらも、愛情の形を模索する Nina。「女の子」である自分自身の生き方と向き
合う姿が、痛いほど胸に迫る物語。
 Robin Benway による "Far from the Tree" は、家族の在り方を問いかける作品だ。
生まれてすぐ養子に迎えられた Grace は、ひとりっ子として育った。10代で思いが
けず妊娠し、出産した娘を養子に出したことをきっかけに、自分の生みの親に会おう
と決心する。実は3人きょうだいの真ん中の子だったと知り、血のつながった家族を
探し始める Grace。そして、夫婦げんかの絶えない家庭で育った妹の Maya と、里子
としていくつもの家庭を渡り歩いてきた兄の Joaquin。3人それぞれの立場から紡が
れる物語はひとつに織り上げられ、その絆が読む者の心を揺さぶる。
 "I Am Not Your Perfect Mexican Daughter" は、詩人、エッセイストとして活躍
している Erika L. Sanchez の初のYA作品。15歳のメキシコ系アメリカ人 Julia
は、メキシコの少女としての生き方を押しつけてくる母親にことごとく反発していた
が、姉の Olga は母親の理想とする娘だった。その Olga が突然の事故で帰らぬ人と
なり、かろうじて保たれていた家族のバランスが崩れてしまう。そんな中、Julia は
亡くなった姉には自分たちの知らない別の顔があったことに気づく。シカゴを舞台に、
娘と母の対立や葛藤など、メキシコ系移民家族の人間模様を、ときにユーモアを交え
ながら赤裸々に描いている。
 2010年に発表した "One Crazy Summer"(『クレイジー・サマー』代田亜香子訳/
鈴木出版)で、本賞児童書部門ファイナリストに選ばれ、コレッタ・スコット・キン
グ賞作家部門やニューベリー賞オナーにも輝いた Rita Williams-Garcia。今回は音
楽を織り込んだ "Clayton Byrd Goes Underground" でファイナリストに選出された。
ニューヨークに暮らす少年 Clayton は、ブルースギタリストの祖父やそのバンド仲
間と一緒にいるときが何よりも幸せで、自分もハーモニカで演奏に少しだけ参加させ
てもらっていた。ところが思わぬことが起こり、祖父が死んでしまう。祖父をよく思
っていなかった母親にブルースの演奏を禁じられた Clayton は、耐え切れなくなっ
て家出するが……。パワフルで心にしみる家族の物語。
 "American Street" は、ハイチ出身の作家 Ibi Zoboi の長編デビュー作。10代の
少女 Fabiola は母親と共にハイチからアメリカに移住するはずだったが、過去の不
法滞在を見とがめられた母親が空港で拘束されてしまう。デトロイトで暮らすおばと
いとこの元にひとりで身を寄せることになった Fabiola は、新生活に戸惑い、さま
ざまな問題に直面しながらも、自らが進むべき道を見つけようと奮闘する。自身も子
どものころにアメリカに移住した作者が、貧困や犯罪などが影を落とす移民社会の厳
しい現実をさらけ出しつつ、そこで懸命に生きる少女と家族の姿を描いた作品。

《参考》
▼Elana K. Arnold 公式ウェブサイト
http://elanakarnold.com/

▼Robin Benway 公式ウェブサイト
https://www.robinbenway.com/

▼Erika L. Sanchez 公式ウェブサイト
https://erikalsanchez.com/

▼Rita Williams-Garcia 公式ウェブサイト
https://rita-williamsgarcia.squarespace.com/

▼Ibi Zoboi 公式ウェブサイト
http://ibizoboi.net/

                      (増山麻美/蒲池由佳/平野麻紗)

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●賞速報━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

★2017年オランダ金の絵筆賞、金のパレット賞発表
★2017年エルサ・ベスコフ賞発表
★2017年ニルス・ホルゲション賞発表
★2017年オランダ金の石筆賞発表
★2017年カナダ総督文学賞(児童書部門)最終候補作品発表
                     (受賞作品の発表は11月1日の予定)
★2018年度アストリッド・リンドグレーン記念文学賞候補発表
                   (受賞者の発表は2018年3月27日の予定)

 海外児童文学賞の書誌情報を随時掲載しています。「速報(海外児童文学賞)」を
ご覧ください。
http://www.yamaneko.org/cgi-bin/sc-board/c-board.cgi?id=award

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●イベント速報━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

★展示会情報
 宇都宮美術館「エドワード・ゴーリーの優雅な秘密」
 高浜市やきものの里かわら美術館「2017イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」
                                    など

★講演会情報
 岩手県立美術館「エリック・カール展&講演会『心の中の子どもと出会う』」
 国立国会図書館国際子ども図書館「いま、カナダの子どもの本は?」 など

★イベント情報
 LETTER「ようこそ!アフリカ」
 Jテラスカフェ「『イチョウ並木の本まつり 2017』第3回瀬戸内ブッククルーズ」
                                    など

★やまねこ翻訳クラブ20周年記念イベント
 えほんやなずな/TSUTAYA LALAガーデンつくば「長友恵子さんおはなし会」 など

 詳細やその他のイベント情報は、「速報(イベント情報)」をご覧ください。なお、
空席状況については各自ご確認願います。
http://www.yamaneko.org/cgi-bin/sc-board/c-board.cgi?id=event

                          (冬木恵子/山本真奈美)

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●お菓子の旅●第68回 死者の骨を食べる? 〜オッスス・デ・モットゥ〜
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 In effetti era gia ora di pranzo e, per la festa dei Morti, Antonia doveva
aver preparato dei dolci speciali.
※「gia」の「a」の上にアクセント記号(`)がつく
                 "Ascolta il mio cuore" by Bianca Pitzorno
                      Arnoldo Mondadori Editore(1991)
           『あたしのクオレ(上・下)』 ビアンカ・ピッツォルノ作
                        関口英子訳/岩波書店/2017年
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
 カトリック教会では諸聖人の日の翌日、11月2日を死者の日としていて、イタリア
ではこの日にお墓参りをする習慣があります。プリスカも家族とお墓参りに行き、墓
地で貧しいクラスメートのイオランダに会いました。イオランダの亡くなったおじい
ちゃんの骨は共同墓所にあると聞いて、一緒に見にいきますが、骨がごちゃまぜに積
みあげられた光景にショックを受けます。あまりの衝撃に興奮して骨のことを話し続
けたため、食欲がなくなるからやめてと、お母さんにたしなめられます。もうお昼の
時間で、この日はお手伝いさんのアントニアが、死者の日に食べる特別なお菓子を焼
いてくれることになっていた……というのが、引用部分です。
 アントニアがどんなお菓子を準備したのかは残念ながら出てきませんが、死者の日
に食べるお菓子はいくつかあり、よく知られているのがオッサ・ディ・モルト(※)
という焼き菓子。イタリア各地でいろいろなタイプのものが作られていて、この物語
の舞台であるサルデーニャ島でも、地域によって異なるようですが、今回はオレンジ
フラワーウォーター入りのアイシングをかけたものをご紹介します。そこはかとなく
漂う北アフリカ風の香りを楽しみながら、地中海の島サルデーニャの来し方を想像し
てください。
 オッスス・デ・モットゥは、オッサ・ディ・モルトのサルデーニャ語表記。ちなみ
にサルデーニャ語はイタリア語の方言ではなく、別の言語とされているようです。

※死者の骨という意味。死者の日に食べる似たような焼き菓子で、オッサ・ダ・モル
デレ(噛むべき骨)と呼ばれるものもある。

*-* オッスス・デ・モットゥの作り方 *-*
                  画像はこちら(やまねこ翻訳クラブ喫茶室)

材料(20個分)
〔生地〕
 アーモンド        200g    卵白          2個分
 アーモンドパウダー    120g    シナモンパウダー    8g
 粉砂糖          120g    レモンの皮(すりおろす)1/2個分
〔アイシング〕
 粉砂糖          150g    水        大さじ2
 オレンジフラワーウォーター(※) 大さじ1
※オレンジの花から精油を抽出する過程で生まれる水蒸気の蒸留水を集めたもの。
 食用のものを使うこと。

1.オーブンを170度に予熱する。アーモンドを粗く刻み、12分程度焼いて、冷まし
  ておく。アーモンドパウダーとシナモンパウダー、粉砂糖は合わせてふるってお
  く。
2.ボウルに粉砂糖とアーモンドパウダー、シナモンパウダー、すりおろしたレモン
  の皮を入れ、スプーンで混ぜる。1で焼いたアーモンドも加える。
3.別のボウルに卵白を入れ、ぴんと角が立つまで泡立てる。
4.3に2を入れ、ゴムべらで切るように混ぜ合わせる。このとき、泡がつぶれても
  かまわない。
5.20等分になるよう少量を手に取り、軽く握って指のあとをつけ、オーブンシート
  を敷いた天板に並べる。オーブンを160度に予熱し、25分焼く。焼き上がったら、
  ケーキクーラーの上にのせて冷ます。
6.アイシングを作る。鍋に粉砂糖と水を入れ、へらでかき混ぜながら弱火にかける。
  温度計を差し込んで温度を確認し、116度になったら火からおろし、オレンジフ
  ラワーウォーターを加えてよく混ぜる。はけで5の表面に塗る。乾いたらもう一
  度塗り、これを何度かくり返す(途中で鍋のなかのアイシングが固まってきたら、
  少量のお湯を加える)。乾いたらできあがり。

★参考図書・ウェブサイト
Ossa di morto ricetta sarda (My Cooking Idea ウェブサイト内、イタリア語)
http://www.mycookingidea.com/2016/10/ossa-morto-ricetta-sarda/
Ossus de mottu (dolce sardo per la festa dei defunti)
   (Paradisola.it La Guida della Sardegna ウェブサイト内、イタリア語)
http://www.paradisola.it/gastronomia-sarda/ricette-sarde/dolci/6283-
ossus-de-mortu

▽"Ascolta il mio cuore" 原書レビューおよび作者紹介
(本誌2011年11月号「特別企画:2012年国際アンデルセン賞の候補者たち その1」)
http://www.yamaneko.org/mgzn/dtp/2011/11.htm#kikaku

お菓子の話題は喫茶室掲示板へどうぞ。
★「やまねこ翻訳クラブ喫茶室掲示板」
        http://www.yamaneko.or.tv/open/c-board/c-board.cgi?id=kissa

                 (赤塚きょう子/加賀田睦美/かまだゆうこ)

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●読者の広場● 海外児童文学や翻訳にまつわるお話をどうぞ!
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 このコーナーでは、本誌に対するご感想・ご質問をはじめ、海外児童書にまつわる
お話、ご質問、ご意見等を募集しています。mgzn@yamaneko.org までお気軽にお寄せ
ください。

※メールはなるべく400字以内で、ペンネームをつけてお送りください。
※タイトルには必ず「読者の広場」とお入れください。
※掲載時には、趣旨を変えない範囲で文章を改変させていただく場合があります。
※質問に対するお返事は、こちらに掲載させていただくことがあります。原則的に編
集部からメールでの回答はいたしませんので、ご了承ください。

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●お知らせ●

 本誌でご紹介した本を、各種のインターネット書店で簡単に参照していただけます。
こちらの「やまねこ翻訳クラブ オンライン書店」よりお入りください。
http://www.yamaneko.org/info/order.htm
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           ・☆・〜 次 号 予 告 〜・☆・

 詳細は10日頃、出版翻訳ネットワーク内「やまねこ翻訳クラブ情報」のページに掲
載します。どうぞお楽しみに!
          http://litrans.g.hatena.ne.jp/yamaneko1/

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▽▲▽▲▽   海外児童書のシノプシス作成・書評執筆を承ります   ▽▲▽▲▽

  やまねこ翻訳クラブ( yagisan@yamaneko.org )までお気軽にご相談ください。

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 独創的なデザインで世界120ヶ国以上で愛用されているフォッシルはアメリカを代
表するライフスタイルブランドです。1984年、時計メーカーとして始まったフォッシ
ルは時計をファッションアクセサリーのひとつと考え、カジュアルでポップなライン
からフォーマルなシーンにも使えるアイテムまで、年間300種類以上のモデルを発売
し続けています。またフォッシル直営店では、時計以外にもレザーバッグや革小物な
どのラインを展開しています。
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     ★☆メールマガジン『海外ミステリ通信』 隔月15日発行☆★
          http://honyakuwhod.blog.shinobi.jp/
未訳書から邦訳新刊まで、あらゆる海外ミステリの情報を厳選して紹介。翻訳家や
編集者の方々へのインタビューもあります!    〈フーダニット翻訳倶楽部〉
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★広報ブログ「やまねこ翻訳クラブ情報」(litrans グループ ブログ内)
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 ※各掲示板の話題やクラブの動きなど、HOTな情報をご紹介しています。

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●編集後記●編集作業のさなかに発表されたノーベル平和賞。今月号で取り上げた作
品と向き合う中で、生きることについてあらためて考えさせられました。本誌今月号
にご協力くださったみなさまに、この場をおかりしてお礼申し上げます。(み)
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発 行 やまねこ翻訳クラブ
編集人 三好美香/平野麻紗/蒲池由佳(やまねこ翻訳クラブ スタッフ)
企 画 赤塚きょう子 牛原眞弓 大作道子 尾被ほっぽ 加賀田睦美
    かまだゆうこ 熊谷淳子 小島明子 相良倫子 佐藤淑子 手嶋由美子
    名倉ゆり 冬木恵子 古市真由美 増山麻美 森井理沙 山本真奈美
協 力 出版翻訳ネットワーク 管理人 小野仙内
    くらら ながさわくにお めい レイラ ワラビ
    html版担当 shoko
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