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月刊児童文学翻訳

─99年10月号(No.14 情報編)─

※こちらは「情報編」です。「書評編」もお見逃しなく!!

児童文学翻訳学習者による、児童文学翻訳学習者のための、
電子メール版情報誌<HP版>
http://www.yamaneko.org/mgzn/
編集部:mgzn@yamaneko.org
1999年10月15日発行 配信数1,245


「どんぐりとやまねこ」

     M E N U

◎プロに訊く
第7回 堀川理万子さん(画家)

◎出版社研究
第5回 東京創元社

◎コンテスト情報
バベル・プレス「第8回絵本翻訳コンテスト」他

◎展示会情報
丸善日本橋店「第37回せかいの絵本展」他

◎セミナー・講演会情報
日本子どもの本研究会・公開講座「子どもの本の学校」他

◎世界の文学賞
第7回 ハンス・クリスチャン・アンデルセン賞



プロに訊く 第7回

―― 堀川理万子さん(画家) ――

 

 今回は、画家の堀川理万子さんにご登場いただきました。本誌読者には、絵本や挿絵など、子どもの本の分野でのご活躍がおなじみかもしれませんが、堀川さんはタブロー(一枚画)の絵描きさんでもあります。タブローと挿絵と絵本、それぞれについて、お手紙で丁寧に答えてくださった堀川さん、本当にありがとうございました。


【堀川理万子(ほりかわ りまこ)さん】

 東京生まれ。東京芸術大学デザイン科卒業、同大学院修了。毎年、銀座と京都で油絵の個展をひらく。『小さな男の子の旅』(小峰書店)、『きつねのスケート』(徳間書店)、『リリィおばあさん なげキッス!』(偕成社)など、絵本や挿絵の分野でも活躍中。


★タブローの画家になられたきっかけを教えてください。中学生のときに美大を目指す決心をされたそうですが、何か特別な出会いがあったのでしょうか。

 ごく小さい頃から絵をかくのも見るのも好きだったのに、小学校の図工の先生の猛烈な怖さに、そのすべてを奪われていたんです。ただ、家にいつもいろんな油絵や版画がかかっていて、私の部屋にも静物をかいた油絵をかけてもらっていて、そんな絵をいつも眺めていました。中学にはいって美術の授業で放っぱらかしの先生に出会って、それは大きかったですね、影響が。その先生は彫刻をやっていて、ちょっとかわりものでしたが、知的で純粋な感じでしたね。そして文化祭のポスターに絵を使ってもらったりして、だんだん「これは楽しい」と思うようになったんだと思います。


★タブローのお仕事と挿絵のお仕事との兼合いは、どのようにされていますか。

 基本的に自然光(太陽光)のさす時間にタブローをかき、陽がおちてから蛍光灯で挿絵はかいています。タブローは、光の条件がいい方がいいのです。絵肌がでこぼこしているということもありますし。でも、どちらにしても、だんだん締切りが近付いて時間がなくなってくると、夜中にタブローをかき、朝、挿絵をかくということもあります。

 仕事はタブローが中心ですし、時間のかかる悩みの多い仕事なので、時間の絶対量は断トツにタブローの方が多いんです。


『光草――ストラリスコ――』表紙

光草 ―ストラリスコ―
ロベルト・ピウミーニ作/長野徹訳
小峰書店 1998年10月28日発行
★『光草――ストラリスコ――』の表紙画制作中のお話をお聞かせください。

 原書には挿絵がたくさんあって、そしてストラリスコの絵だけはない、ということでした。でも、編集者の方との相談で、これは原書の逆、つまり、ストラリスコだけというのがいいという解釈におちつきました。絵の話であるだけに、たくさんの挿絵をかくのは必要がないのではとも思いました。(本がでたあと、原書を見せてもらいましたら、それはそれで、きれいな絵がついていてよかったですが……)

 本になるまで(表紙画をかき出すまで)1年弱あったと思います。《美しい光草》のイメージをなるべくシンプルに抽出したいと思っていました。編集者の方と、とにかくきれいな本にしたいね、と話し合っていました。そのことが見てくださる方々に通じているとしたら、とても嬉しいことです。


★はじめての挿絵のお仕事『シロクマたちのダンス』について、お聞かせください。

 5、6年前にこの本のお話をいただいて、テキストを読んで、ものすごくショックを受けました。「子どもの本の世界はここまで来ているのか!」と。後になって、これは本当に極端な出会いだったということがわかりましたが。やはりこれは、児童文学の傑作の1つでしょうし、ウルフ・スタルクの作品の中でも傑作だったんですよね。

「シロクマ」をかくときは、訳者の菱木晃子さんが協力的にどんな資料もかしてくださったり、いろいろ、ストックホルム事情を話してくださったりして、大いに参考にさせていただきました。このときに「挿絵にはとにかく資料だ!」と知りました。細部をリアルに固めたフィクションはリアリティーを持つ、と思ったんです。それは、夜の動物園や街なかのシーンで晃子さんのスナップ写真をおかりしたこと、イケアのカタログで家具を見たことなど、いろいろ活かされています。そして何年か経った今でも、この資料第一主義はかわりませんね。


★好きな絵本作家は、いらっしゃいますか。

 ブーテ・ド・モンヴェルのジャンヌ・ダルクの絵、本当に美しいと思います。ポール・ランドのビジュアルの端的さも好きですし、オランダで買ったHARRIET VAN REEKのLena Lena(レナレナ)、大好きです(リブロポートからも出ています)。オランダ語はよめませんが絵を見ているだけでムフッと笑えてきます。よめなくても字面も感じがいいのです。


★今後のご予定を教えてください。堀川さんのタブローを見たい人は、どこに行けば見ることができますか。

 出版の仕事は本屋さんで見ていただけますが、タブローは本当に展覧会にいらしてくださる方にしか見ていただけないんです。そういう意味で展覧会を見ていただけることは絵を描くものにとってこの上ない喜びです。絵本や挿絵の原画展のお約束は今のところありません。


 2000年  3月28日〜(2週間くらい)  南青山 新生堂
   4月か5月(1週間くらい)  銀座 和光4階ギャラリー
   10月か11月(10日間くらい)  京都 蔵丘洞画廊
 2001年  初夏  銀座 麻樹画廊
 2002年  4月か5月  銀座 和光6階催事場


以上がむこう3年の個展の予定です。

(インタビュアー:河原まこ/植村わらび/立石万希子)


※堀川さん作品リスト
http://www.yamaneko.org/bookdb/int/ls/rhorikaw.htm

※堀川さんインタビュー ノーカット版
http://www.yamaneko.org/bookdb/int/rhorikaw.htm

※福音館書店『おおきなポケット』2000年1月号(12/3頃発売)には、ゆもとかずみさんとのコンビによる、入れ歯が旅をするお話が掲載されます。

※本文中「HARRIET VAN REEK」のHARRIETのEにはウムラウトが付きますが、フォントの関係でウムラウトなしで表記しました。

 

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出版社研究 第5回

―― 東京創元社 ――

 

 第5回は、創元推理文庫をはじめ、ミステリやSF、幻想小説などでおなじみの「東京創元社」。今年度のカーネギー賞とウィットブレッド賞をダブル受賞して話題の作品、"Skellig"(デイヴィッド・アーモンド著/本誌99年7月号「書評編」参照)を出版予定との情報を得たことから、東京・飯田橋の閑静な一角にある本社を訪ね、編集部の松浦正人さん、山村朋子さんに、本書を手がけることになったいきさつや、今後の出版予定などについてお話を伺った。


◆会社概要 〜エンターテインメントから専門書まで〜

 1925年、もとは関西を中心に書籍の取り次ぎを行っていた会社が「創元社」となり、後に、その東京支店を母体として1954年に「東京創元社」が発足。1959年、日本ではじめてのエンターテインメント専門文庫である「創元推理文庫」が創刊され、人気を博した(本年、文庫創刊40周年ということで記念フェアを展開中)。欧米のミステリ、SFなどを中心とした翻訳出版を広く手がけている。

 代表作としては、「007ジェイムズ・ボンド」シリーズや、近年再評価が高まっているディクスン・カーの一連の作品、ドロシー・L・セイヤーズの長編作品などがある。また、単行本サイズで刊行されている「海外文学セレクション」のシリーズは、これまでほとんど紹介されることのなかった東欧圏(ユーゴスラビア、アルバニア等)のほか、フランス、アメリカの若手小説家の作品が多数収録されているのが特徴だ。

 ヤングアダルト関連では、SF作家ロバート・A・ハインラインのユーモア小説や、カーネギー賞作家メルヴィン・バージェスの作品(石田善彦訳『メイの天使』、雨沢泰訳『エイプリルに恋して』)、ネイティブ・アメリカン作家として最近注目を集めているシャーマン・アレクシーの短編集(金原瑞人・小川美紀訳『ローン・レンジャーとトント、天国で殴り合う』)などがある。
 文学のみならず、芸術・人文・社会科学など、さまざまな分野にわたる作品の出版を行っている。


◆出版傾向 〜ヤングアダルト作品の場合〜

 バージェスのヤングアダルト作品の出版は、エージェントの側から企画が持ち込まれたことがきっかけだったという。以前、編集部の松浦さんが、創元推理文庫のミステリシリーズでドン・ウィンズロウの『ストリート・キッズ』を担当したことから、「雰囲気が合っていそう」ということで進められた企画だったそうだ。そこから、同じように"Skellig"の紹介を受け、こちらも出版が決定した。

 一見、児童文学とは縁のなさそうな東京創元社が、なぜこのように数多くのヤングアダルト作品を扱っているのか伺ったところ、「特にヤングアダルトの枠を設けているわけではありません。ヤングアダルト作品を意識的に探すこともしていません。読書の楽しさを満喫できるような作品を選んでいるうちに、自然にラインナップに含まれるんですよ」(山村さん)「我が社は枠にとらわれず広範に翻訳小説を扱っているので、児童書専門の出版社が尻込みするような、ちょっと内容の厳しい作品でも、出版できるということではないでしょうか」(松浦さん)、とのことだった。

 これまでにも、創元推理文庫でダイアナ・ウィン=ジョーンズやチャールズ・デ・リントなどの、対象年齢がやや若い層にも広がるような作品がいくつか出版されている。東京創元社の柔軟な姿勢が良くあらわれているといえるだろう。また、この10月には、『指輪物語』(J・R・R・トールキン)と双璧を成すともいわれる『ゴーメンガースト』(マーヴィン・ピーク)3部作の残り2冊の復刊も予定されており、読者層の広がりを予感させる(第1巻は今年の春に復刊された)。


◆出版までの過程 〜年間100冊近いペースで刊行〜

 ところで、こうした作品が出版へ至るまでには、まず「エージェント、あるいは翻訳者からの企画の持ち込み」「リーディング(レジュメ)の依頼」「企画会議」などを経ることになる。もちろん、編集者が海外の書評などから作品を探す場合もある。外部からの持ち込みはまれだが、中でも児童文学関連の作品はほとんど紹介されることがないという。基本的に絵本の類は対象外になるが、編集者が興味を持てる作品なら、ヤングアダルトでも歓迎するとのことだ。

 作品の出版が決まると、その作品に合った翻訳者を探して仕事を依頼する。ミステリに造詣が深い人、SFやファンタジー作品に詳しい人など、普段の仕事を通じてつきあう中からその得意分野を伺っているそうだ。海外作品の編集に携わっているのは7名ほど(他に、日本の作品の編集者が1、2名)。それぞれの担当した作品が、毎月平均1冊(全体では約10冊)のペースで刊行されている。中でも、英米以外の言語圏(フランス語やイタリア語など)の情報に明るい編集者が『薔薇の名前』(ウンベルト・エーコ)に早くから注目し、大ヒットとなったお話が印象的だった。


【翻訳家をめざすみなさんへ】

  • 「翻訳をするときに大事なのは、なんといっても想像力。文法的に正しく訳せていても、状況が見えてこないようでは、読み手に内容が伝わりません」(松浦さん)

  • 「最近は翻訳にパソコンやワープロを使う方が増えてきましたが、訳文を一度プリントアウトして推敲することをおすすめします。訳文を客観的な視点から読み直してみると、とても勉強になるはずです」(山村さん)


『ウィーツィ・バット』表紙
ウィーツィ・バット
装幀:松浦弥太郎

◆今後の出版予定

 ヤングアダルト関連では、今年10月から毎月1冊ずつ刊行される「ウィーツィ・バット」シリーズ(フランチェスカ・リア・ブロック著、金原瑞人・小川美紀訳、全5巻)が注目だ。また、来年1月には"Junk"(メルヴィン・バージェス著、池田真紀子訳/本誌98年11月号参照)、その後つづいて"Skellig"(山田順子訳)の翻訳出版も予定されている。

 創元推理文庫では、アメリカの人気ファンタジー小説家、ポール・ギャリコの作品が順次発行されていくそうだ。第1弾として、ギャリコ唯一のミステリ『幽霊が多すぎる』(山田蘭訳)が発売中である。


株式会社 東京創元社

住所 〒162-0814 東京都新宿区新小川町1-5
電話 03-3268-8201(代表)
ホームページ http://www.tsogen.co.jp/

(取材・文 分銅晴子)

 

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コンテスト/展示会/セミナー・講演会情報

―― コンテスト情報 ――

 

◎バベル・プレス「第8回絵本翻訳コンテスト」
課 題: "PIERRE'S DREAM" by Jennifer Armstrong / Susan Gaber
締 切: 1999年10月末日(消印有効)
応 募: 『翻訳の世界』(バベル・プレス)10・11月号の募集要項を参照のこと
問合先: バベル・プレス(TEL:03-5275-2438)
参 考: http://www.babel.co.jp/
 
◎板橋区・財団法人板橋区国際交流協会「第6回いたばし国際絵本翻訳大賞」
課 題: 英語部門
"SASSY GRACIE" by James Sage / Pierre Pratt
伊語部門
"NUVOLANDO" by Riccardo Geminiani / Nicoletta Ceccoli
締 切: 1999年11月10日(消印有効)
応 募: 1999年9月30日を以て課題本申込受付終了
問合先: いたばし国際絵本翻訳大賞事務局(TEL:03-3460-9602)
参 考: http://www.city.itabashi.tokyo.jp/TOSYOKAN/

 

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―― 展示会情報 ――

 

◎絵本美術館&コテージ 森のおうち 「魔女がおしえてくれたこと〜スズキコージ絵本原画展〜」
所在地: 長野県南安曇郡穂高町有明2215-9
電 話: 0263-83-5670
会 期: 平成11年9月10日から11月16日まで
休館日: 木曜日
入場料: 一般700円 小学生500円 3歳〜小学生未満250円
内 容: 絵本から舞台美術まで、幅広く活躍する、スズキコージの絵本原画展。
 
◎四季の森絵本美術館「注文の多い料理TEN」
所在地: 群馬県沼田市玉原高原口
電 話: 0278-23-9080
会 期: 平成11年9月9日から11月29日まで
休館日: 火曜日
入場料: 一般500円 小学生300円
内 容: 宮沢賢治の数ある絵本の中から、「注文の多い料理店」(司修・画)をはじめとする5作品を展示。
 
◎丸善日本橋店「第37回せかいの絵本展」
所在地: 東京都中央区日本橋2-3-10
電 話: 03-3273-6191
会 期: 平成11年10月24日から11月6日まで
休館日: なし
入場料: 無料
内 容: 世界の絵本、約15,000冊を展示即売する。アンドレ・ダーハンの絵本原画展も同時開催。

(瀬尾友子)

 

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―― セミナー・講演会情報 ――

 

◎クレヨンハウス 子どもの本の学校講座「峠道と子どもの私」
講 師: 飯野和好
場 所: クレヨンハウス(東京港区北青山3-8-15 大阪吹田市江ノ木町5-3)
日 時: 東京 11月6日(土)、大阪 11月13日(土) 16:00〜17:30(15:30開場)
参加費: 非会員 2,500円 会員は無料(年会費に含まれる)
内 容: 『ハのハの小天狗』(ほるぷ出版)などで知られる絵本作家の飯野和好氏が、子どもの頃に出会った人たちや、絵本のおもしろさについて語る。
問合せ: クレヨンハウス(東京 03-3406-6492 大阪 06-6330-8071)
その他: 非会員は、当日の朝11時から子どもの本売場にて販売される当日券を購入。全席自由。会員のみで定員に達した場合は立ち見になることもあり。
 
◎日本子どもの本研究会 公開講座・子どもの本の学校18期生
講 師: 10/30 広瀬恒子(研究会事務局長)「多メディア時代の子どもと読書」
11/13 猪熊葉子(白百合女子大名誉教授)「英国児童文学の今とこれから」
11/27 大江輝行(学校司書)「学校図書館講座 新しい司書教諭とは」
12/4 伊藤桂子・渡辺和子(研究会会員)「民話その楽しさ」
12/11 園田とき(元保育園長・文庫アトムの会)「幼児と絵本」
1/22 木村裕一(児童文学作家)「自作を語る」
1/29 鈴木浩子(公立学校教師)「学級や学校の読書」
2/12 松井紀子(絵本・紙芝居作家)「すてきな紙芝居の世界」
2/26 岩崎京子(児童文学作家)「自作を語る」
3/11 鈴木喜代春(児童文学作家)「子どもの読書とこれからの課題」
場 所: 多摩市立関戸図書館(東京都多摩市関戸1-1-5)集会室
日 時: 平成11年10月30日〜平成12年3月11日 毎回土曜日 14:00〜16:00
受講費: 9,000円(1回毎の受講は1,000円(修了生・会員・多摩市民は300円))
申 込: 〒176-0012
東京都練馬区豊玉北4-4-18-105 日本子どもの本研究会内
「多摩校運営委員会」(TEL 03-3994-3961)

(中野伊都子)

 

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世界の児童文学賞 第7回

―― ハンス・クリスチャン・アンデルセン賞 ――
〜児童文学界のノーベル文学賞〜

 

【 概 要 】
 名 称 : ハンス・クリスチャン・アンデルセン賞
(Hans Christian Andersen Awards)
 対 象 : 児童文学界に多大な功績があり、かつ存命している作家/画家の全業績に対して贈られる。
 創 設 : 1956年
 選 考 : 国際児童図書評議会
(IBBY:International Board on Books for Young People)
 協 賛 : 日産自動車
 発 表 : 西暦偶数年4月
関連サイト: http://www.ibby.org./


 IBBYは、1953年に国際的な児童文学の発展と、読書を通じた若い世代の国際相互理解の推進を目的として設立された非営利団体。現在、世界60か国余りが加盟している。

 ハンス・クリスチャン・アンデルセン賞は、「小さなノーベル文学賞」とも言われ、国際児童文学賞としてはもっとも栄誉ある賞のひとつで、2年に1度西暦偶数年に発表される。1956年の発足から60年までの3回は個々の作品が対象だったが、62年からは長く児童文学に貢献してきた作家の全業績を称える現在の作家賞に形式を変え、また66年には同じく画家の全業績を対象にした画家賞も設けられた。

 審査委員の選考は、各国IBBY事務局より推薦を受けた候補者から、言語、地理的状況を考慮の上、本部理事会が行う。構成は、委員長1名および委員9名。

 受賞候補者は、発表年前年の夏に各国事務局が各賞につき最高1名をIBBY本部に推薦する(候補者を出さない加盟国もある)。その後審査資料として、各候補者の全作品リスト、経歴等を英訳した書類および代表作数冊(原則として原語のままだが、英語の要約が添えられる場合もある)が本部に届けられ、審査員は翌年春の審査会議まで、約半年をかけて資料を検討する。審査会議では、各審査員による意見交換、数回に渡る投票等の手順を経て最終候補を絞り、その中から各賞の受賞者を決定する。

 国際賞の常として、審査の共通語である英語が母国語の作家に有利な点が多いことは否めない。しかし、候補者の言語、国籍にかかわりなく正当な評価がなされるべく、審査員選考の段階で厳密な配慮をし、さらに審査の上でも慎重な討論が行われている。


■日本人受賞者および過去の受賞者

 日本人では、1980年、84年の画家賞でそれぞれ赤羽末吉、安野光雅が、また94年には作家賞で詩人のまど・みちおが受賞している。まど氏は、美智子皇后選・英訳のアンソロジー"The Animals"(日本版『The Animals「どうぶつたち」』/すえもりブックス)が92年に日米同時出版されたことから、世界に知られるようになった。この美智子皇后の優れた英訳が、まど氏の受賞に大きく貢献したと言われている。
 過去の受賞者一覧についてはIBBYのサイトで見ることができる(上記URL参照)。


■98年の受賞者

◎作家賞◎ Katherine Paterson キャサリン・パターソン (アメリカ)
 1932年中国・北京生まれ。代表作に『テラビシアにかける橋』『北極星を目ざして』(いずれも岡本浜江訳/偕成社)など。中国や日本の古典を題材にした作品も発表している。優れた人物描写で子どもの生命力を讃える作品が多い。

◎画家賞◎ Tomi Ungerer トミー・ウンゲラー(アンゲラー) (フランス)
 1931年フランス・ストラスブール生まれ。代表作に『すてきな三にんぐみ』(いまえよしとも訳/偕成社)『ぺちゃんこスタンレー』(ジェフ・ブラウン作/さくまゆみこ訳/あすなろ書房)など。一見コミカルな画風ながら、絶妙な構図と緻密に描き込まれた細部の描写で、物語の世界に広がりをもたせる絵には定評がある。

(森 久里子)

 

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やまねこ翻訳クラブ(会員数154名)

 やまねこ翻訳クラブは、海外の子どもの本に関する情報交換、翻訳・シノプシス自主勉強会などを行っている児童書専門サークルです。翻訳と子どもの本に興味のある方でしたらどなたでも入会できますので、ぜひお気軽にご参加ください。


―― 開催中! ――

◆ニューベリー賞読破マラソン
◆遊学館絵本コンクール勉強会(10/28まで"Puddles")


出版翻訳ネットワーク・メープルストリート

http://www.litrans.net/maplestreet/

新刊情報(19冊)を掲載中!


●編集後記●

 先日、小学校の先生をしている友人にお気に入りの絵本を送ったら、その絵本が校内でブームになるといううれしい出来事がありました。また送ろ!(み)


発 行: やまねこ翻訳クラブ
発行人: 生方頼子(やまねこ翻訳クラブ 会長)
編集人: 宮坂宏美(やまねこ翻訳クラブ スタッフ)
企 画: 河まこ キャトル くるり 小湖 Chicoco どんぐり BUN ベス YUU りり ワラビ
協 力: NIFTY SERVE 文芸翻訳フォーラム マネジャー 小野仙内
ながさわくにお HAROU 万希子 きら わんちゅく


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