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やまねこ翻訳クラブ 資料室
堀川理万子さんインタビュー
(画家)


『月刊児童文学翻訳』1999年10月号より

 東京生まれ。東京芸術大学デザイン科卒業、同大学院修了。毎年、銀座と京都でタブロー(一枚画)の個展をひらく。『小さな男の子の旅』(小峰書店)、『きつねのスケート』(徳間書店)、『リリィおばあさん なげキッス!』(偕成社)など、絵本 や挿絵の分野でも活躍中(作品リスト参照)。

きつねの質問【Q】タブローの画家になられたきっかけを教えてください。

 中学校時代に自分は絵が好きだと突然気がついて、美大を目指したとうかがいましたが、何か絵や人との特別な出会いがあったのでしょうか。

【A】 ごく小さい頃から絵をかくのも見るのも好きだったのに、小学校の図工の先生の猛烈な怖さに、そのすべてを奪われていたんです。ただ、家にいつもいろんな油絵や版画がかかっていて、私の部屋にも静物をかいた油絵をかけてもらっていて、そんな絵をいつも眺めていました。中学にはいって美術の授業で放っぱらかしの先生に出会って、それは大きかったですね、影響が。その先生は彫刻をやっていて、ちょっとかわりものでしたが、知的で純粋な感じでしたね。そして文化祭のポスターに絵を使ってもらったりして、だんだん「これは楽しい」と思うようになったんだと思います。

きつねの質問【Q】タブローのお仕事と挿絵のお仕事との兼合いは、どのようにされていますか。

 二つのお仕事は、同時進行でなさることもあるのですか? 時間的にはどちらが多いですか。お互いに影響しあうことなどありますか。そのような話をお聞かせいただければと思います。

【A】 基本的に自然光(太陽光)のさす時間にタブローをかき、陽がおちてから蛍光灯で挿絵はかいています。タブローは、光の条件がいい方がいいのです。絵肌がでこぼこしているということもありますし。でも、どちらにしても、だんだん締切りが近付いて時間がなくなってくると、夜中にタブローをかき、朝、挿絵をかくということもあります。

 仕事はタブローが中心ですし、時間のかかる悩みの多い仕事なので時間の絶対量は断トツにタブローの方が多いんです。

きつねの質問【Q】はじめての挿絵のお仕事『シロクマたちのダンス』について、お聞かせください。

 最初の児童書関係のお仕事は、まず雑誌「子どもの本」の表紙のお仕事、次に『シロクマたちのダンス』(佑学社1994)の挿絵のお仕事をされたわけですが、『シロクマ』で何か心に残るエピソードや初めての本作りの苦労話などあれば教えてください。

 徳間書店のインタビューで「本の仕事は、お話とのコミュニケーションがあるのが楽しい」と答えていらっしゃったのが印象的でした。この本では、主人公が髪の毛を切るところ、変身していくところの挿絵を、とても楽しんでいらっしゃったように拝見しましたが、お仕事は楽しかったですか。編集者の方とは、どこにどんな絵を入れる等、細かな打ち合わせはされたのでしょうか?

【A】 5、6年前にこの本のお話をいただいて、テキストを読んで、ものすごくショックを受けました。「子どもの本の世界はここまで来ているのか!」と。後になって、これは本当に極端な出会いだったということがわかりましたが。やはりこれは、児童文学の傑作の1つでしょうし、ウルフ・スタルクの作品の中でも傑作だったんですよね。

「シロクマ」をかくときは、訳者の菱木晃子さんが協力的にどんな資料もかしてくださったり、いろいろ、ストックホルム事情を話してくださったりして、大いに参考にさせていただきました。このときに「挿絵にはとにかく資料だ!」と知りました。細部をリアルに固めたフィクションはリアリティーを持つ、と思ったんです。それは、夜の動物園や街なかのシーンで晃子さんのスナップ写真をおかりしたこと、イケアのカタログで家具を見たことなど、いろいろ活かされています。そして何年か経った今でも、この資料第一主義はかわりませんね。

きつねの質問【Q】『光草――ストラリスコ――』の表紙を担当されるまでのいきさつを教えてください。

 この本は画家と難病におかされた少年、その少年の父の物語ですね。画家が登場するということで、ほかの作品以上に、思い入れがあったのではないかと想像しているのですが、このあたりのことも含めておしえてください。

【A】 原書には挿絵がたくさんあって、そしてストラリスコの絵だけはない、ということでした。でも、編集者の方との相談で、これは原書の逆、つまり、ストラリスコだけというのがいいという解釈におちつきました。絵の話であるだけに、たくさんの挿絵をかくのは必要がないのではとも思いました。(本がでたあと、原書を見せてもらいましたら、それはそれで、きれいな絵がついていてよかったですが……)

 ラストの画家サクマットの行動も興味深かったですが、画家の画家たる煩悩のようなことを思うと、疑問ですし、ただこの物語にふさわしい結着だと思います。
(この部分、もう少し具体的に書いてくださったのですが、まだ読んでいない方のために、「ラストの画家サクマットの行動」という表現にしました。――編集部)

きつねの質問【Q】『光草――ストラリスコ――』の表紙画制作中のお話をお聞かせください。

 表紙はキャンバスに油彩の一枚画。挿絵よりもタブローのお仕事に近いものだったのでしょうか。ストラリスコをどのようにイメージされたか、また、完成までに要した期間などもおしえてください。

 表紙画は、実際にはどのくらいのサイズなのでしょうか。題字も堀川さんが描いていますが、ストラリスコとは別にお描きになって、あとからレイアウトされたものですか。

 我々の間でも、あの絵はもちろんのこと、装丁の美しさもとても話題になりましたが、本のできあがりをご覧になって、いかがですか。

【A】 (絵は)20×25cmくらいの大きさです。(題字も)絵の中にいっしょにかきこんであります。

 本になるまで(表紙画をかき出すまで)1年弱あったと思います。美しい光草のイメージをなるべくシンプルに抽出したいと思っていました。編集者の方と、とにかくきれいな本にしたいねと話し合っていました。そのことが見てくださる方々に通じているとしたらとても嬉しいことです。

きつねの質問【Q】好きな絵本作家は、いらっしゃいますか。

 画家として興味をひかれる絵本作家はいますか? 『リリィおばあさんなげキッス!』という絵本のお仕事をされていますが、今後も絵本のお仕事をなさりたいとお考えですか。また、創作絵本(お話も絵も堀川さんが担当される)はいかがでしょうか。

【A】 ブーテ・ド・モンヴェルのジャンヌ・ダルクの絵、本当に美しいと思います。ポール・ランドのビジュアルの端的さも好きですし、オランダで買ったHARRIET VAN REEKのLena Lena(レナ レナ)、大好きです(リブロポートからも出ています)。オランダ語はよめませんが絵を見ているだけでムフッと笑えてきます。よめなくても字面も感じがいいのです。

きつねの質問【Q】今後のご予定を教えてください。

 堀川さんのタブロー(一枚画)の絵を見たい人は、どこに行けば見ることができますか。また、挿絵の原画展などのご予定はありますか? これから出版されえる挿絵のお仕事も、差し支えなければご紹介ください。

【A】 出版の仕事は本屋さんで見ていただけますが、タブローは本当に展覧会にいらしてくださる方にしか見ていただけないんです。そういう意味で展覧会を見ていただけることは絵を描くものにとってこの上ない喜びです。絵本や挿絵の原画展のお約束は今のところありません。

2000年 3月28日〜(2週間くらい) 南青山 新生堂
    4月か5月(1週間くらい) 銀座 和光4階ギャラリー
    10月か11月(10日間くらい) 京都 蔵丘洞画廊
2001年 初夏    銀座 麻樹画廊
2002年 4月か5月 銀座 和光6階催事場

以上がむこう3年の個展の予定です。

 福音館書店『おおきなポケット』2000年1月号(12/3頃発売)には、ゆもとかずみさんとのコンビによる、入れ歯が旅をするお話『スティービーのぼうけん』が掲載されます。――編集部

 徳間書店の機関紙『子どもの本だより』に、堀川さんのインタビューとエッセーが掲載されました。徳間書店と堀川さんのご好意により、転載させていただきます。

インタビュー「私と子どもの本」

※本の表紙は、出版社の許可を得て使用しています。

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参考資料

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Illustrations copyright © 1998 Rimako Horikawa. All rights reserved.
きつねとのねずみのイラストは『きつねのスケート』(徳間書店刊)の表紙画のものを使用しています。

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