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2009年12月刊行
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人形劇場へごしょうたい
サリー・ガードナー 作・絵
村上利佳 訳
ISBN 978-4-03-521520-2
定価 本体1200円+税 |
2年前に出た「公園の小さななかまたち」の1冊目を覚えてらっしゃいますか?
『気むずかしやの伯爵夫人』がそれです。
本作は、刊行が待たれていたシリーズ続編。
今回は公園の小さななかまたちの中でも、とりわけしっかりもので、みんなからの信頼の厚いブーラーに光があてられています。
ネズミさんたちの近くの居心地のよい箱で人形たち4人は暮らしています。小さな人形たちは、日々の暮らしに満足していました。長い夏の日々はとても楽しく、人形たちは、こういう日に終わりがくるとは考えてもいません。ところが、夏が終わった頃から、ネズミさんたちは必死に食べ物を食料部屋に貯め込みますが、季節の移り変わりがわからない人形たちには、なかなかネズミさんたちの必死さが理解できませんでした。それでも、必要とされているので、ブーラーともうひとりの人形キルトは毎日食料探しに公園に出かけるのです。
そんな時、あやつり人形劇場のミスター・ウルフがブーラーに、一座の公演の主役を依頼しました。本来の主役の人形が劇場に届かなかったからです。思いもかけないことでしたが、ブーラーは劇場という新しい場所にすっかり魅了されていきます。毎日の食料さがしからも解放され、自由と新しい世界を満喫し、元の世界から離れます。ブーラーにたよっていた、ネズミさんたちは困ってしまい……。
前作同様、魅力的な挿絵たっぷりの物語は、人形ひとりひとりのキャラクターがしっかり描かれ、ぐっとひきこまれます。
ブーラーのおかれた立場や態度も、とてもよくわかり、最後にどんな選択をするのか目を離せません。
★さて、版元の偕成社サイトでは、「話題の新刊」コーナーで翻訳者、村上利佳さんがとりあげられています。
こちらもあわせてどうぞ → 「話題の新刊」vol.139
【作・絵】サリー・ガードナー Sally Gardner
ロンドンに生まれ育つ。難読症のため14歳まで読み書きができなかったが、やがて美術の才能に気づき、アートカレッジで本格的に絵を学ぶ。その後15年にわたって劇場に勤務し、舞台美術や舞台衣装のデザイナーとして活躍。出産を機に児童書の創作を始め、現在に至るまで多くの絵本や童話を発表しつづけている。邦訳された作品に、長編『コリアンダーと妖精の国』、絵本『フェアリーショッピング』がある。
【訳】村上利佳 むらかみ りか
南山大学外国語学部英米科卒業。商事会社に勤務後、結婚を経て翻訳の勉強を始める。児童書の翻訳家をめざすオンラインクラブ《やまねこ翻訳クラブ》に参加し、スタッフとして精力的に活動中。名古屋市在住。訳書に同シリーズの『気むずかしやの伯爵夫人』や、『フルハウス ステフ&ミシェル2』がある。
装丁/矢野徳子(島津デザイン事務所)
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2009年11月刊行
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マルベリーボーイズ
ドナ・ジョー・ナポリ
相山夏奏 訳
ISBN 978-4-03-726770-4
定価 本体1600円+税 |
本書は著者ドナ・ジョー・ナポリの祖父をモデルにしています。とはいえ、祖父や両親から直接聞いた話はわずかであり、ふくらませたエピソードは歴史に関する本や、雑誌、新聞、写真を自らの足で得てきたものからきているそうです。
その祖父(父方)はわずか5歳の時にイタリアからアメリカに密航しました。その祖父は、生まれた時から父親がいなく、アメリカに渡ってから若いときにビジネスマンとして成功したと、ドナ・ジョー・ナポリは聞いたそうです。
物語では9歳のドムがアメリカに渡る船に密航するところからはじまります。母親と一緒に船に乗ったと思いきや、実はたった一人だったことをなかなか受け入れることができません。それでも彼はアメリカの地に足を踏み入れます。母さんからの贈り物の新品の靴を履いて……。
ドムがどんな風にアメリカで生きながらえていくかは強い吸引力があり、途中でページを閉じる気持ちをまったくおこさせません。だれと出会い、どんなことを体験していくか。なんと、タフな子ども時代だったのか。 守ってくれる大人のいない子どもが、商売の才能にめざめてお金をため、生き抜いていく。人のもっているそのおおきな力に心を強くうごかされました。これはドナ・ジョー・ナポリの創作ではありますが、実際にこういう子どもたちが存在した、その確かな存在感が物語の随所に感じられ圧倒されます。
【作】ドナ・ジョー・ナポリ Donna Jo Napoli
作家、言語学者。フィラデルフィア在住。
大学で教鞭をとるかたわら、児童書やYAを中心に執筆活動を行い、数々の文学賞を受賞している。著書に『バウンド』(あかね書房)『わたしの美しい娘』(ポプラ社)ほか多数。本書はユダヤ図書館協会の選出する2006年シドニー・テイラー賞オナーにかがやいた。
【訳】相山夏奏 あいやま・かなで
翻訳家。神戸女学院非常勤講師。
イギリス、ローハンプトン大学大学院、児童文学学科に学ぶ。訳書にM・T・アンダーソン作『フィード』(ランダムハウス講談社)、ティム・ボウラー作『黙示の海』(東京創元社)、SF・サイード作『バージャック』(偕成社)(いずれも共訳)など。
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2009年6月刊行
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オックスフォード物語
マリアの夏の日
ジリアン・エイブリー 作
神宮輝夫 訳
ISBN 978-4-03-631560-4
定価 本体価格1500円+税 |
原書の刊行は1957年。
作者はヴィクトリア朝時代の子どもたちを生き生きと描いたイギリスの作家。
本作品でも、19世紀末の大学街オックスフォードを舞台に、学者たち、風変わりな大人たちに囲まれながら、主人公11歳の少女マリアを中心として、子どもたちが大活躍しています。
いまから半世紀前の作品ですが、子どもたちがおもしろいと思うこと、心がくすぐられてうれしく思う気持ち、楽しいことを求める気持ち、普遍的なことは、何にも変わることはないんだなと素直に思えます。
たしかに、いまは娯楽も増え、人との関係もややこしくなりがちですが、もっともシンプルなところを引き出せば、マリアのような物語が紡げるのではないでしょうか。
どうぞお楽しみください。
【作者】ジリアン・エイブリー Gillian Avery
1926年、イギリス、サリー州に生まれる。新聞記者を経て、児童書の編集のたずさわるかたわら、本作でデビュー。19世紀のイギリス、ヴィクトリア朝時代の子どもをえがいた作品を中心に、多くの作品を発表している。1972年に『がんばれウィリー』でガーディアン児童文学賞を受賞。オックスフォード在住。
【訳者】神宮輝夫 じんぐう・てるお
1932年、群馬県に生まれる。早稲田大学英文科卒業。青山学院大学名誉教授。英米児童文学の批評と紹介につとめ、評論、翻訳で広く活躍している。著訳書に『世界児童文学案内』『アーサー・ランサム全集』『アーサー・ランサムのロシア昔話』『ウォーターシップ・ダウンノウサギたち』など多数。
【画家】杉田比呂美 すぎた・ひろみ
1959年、東京都に生まれる。絵本、本の挿絵、雑誌、単行本の表紙イラストなど、広い分野で活躍中。絵本に『なつさがし』『五感のピクニック』『散歩の時間』、共著に『ドロップロップ』『サンタのおばさん』、挿絵に『歌うネズミウルフ』『霧のむこうのふしぎな町』など多数。
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2009年3月刊行
★ 1960年 ニューベリー賞オナーブック ★
★ 全米ロングセラー 50年目の初邦訳 ★
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ぼくだけの山の家
My Side of the Mountain
ジーン・クレイグヘッド・ジョージ
茅野美ど里 訳
ISBN 978-4-03-726740-7
定価 本体価格1600円+税
カバー装画:男鹿和雄
本文挿絵:ジーン・クレイグヘッド・ジョージ
「森の生きものたち」絵:松原巌樹
装丁:岡本デザイン室(岡本洋平+茂谷淑恵) |
父さんがサムに話してくれた。
キャッツキル山脈に土地をもっていた曾祖父のグリブリーじいさんのことを。ひいおじいちゃんは、木を切り倒して家を建て、土地を開墾した。そこまでしたけれど、自分は船乗りになりたいことに気づいたそうだ。そして、農場は失敗に終わり、ひいおじいちゃんは海へ出た。
父さんは、息子サムに言う。
「ひいじいさんの代からグリブリーの人間は陸ぐらしにむいていないんだよ」
サムもグリブリーの人間だ。けれど、サムは家出をし、いまやキャッツキル山脈の深い森にいる。だからこう思ったのだ。
「グリブリーの人間はまったくもって陸ぐらしにむいている」と。
ニューヨーク暮らしをしていたサムは、5月のある日、全財産の40ドルをもって家出を敢行する。父さんも「いいとも、やってごらん。男の子ならいちどはやってみるべきだ」と言ってくれた。
そして、サムの森での暮らしがはじまっていく。わからないことは、山からおりて図書館で知識を得、森にもどって、その知識を現実に活かしていく。もちろん、いままで本で得た知識もフル稼働しての日々。小枝で釣り針をつくり、魚を釣る、葉っぱでボウルをつくる、くくりワナをつくってしかける、役に立つ植物をいろいろ発見し、自分の住まい、寝床もつくるのだ。
すごい、すごい! 読んでいて興奮してくる。電気も通らない、火も自分でおこすのだ。そんな生活を自ら選び、時には苦しい思いをしながらも、たくましく生活している。人恋しくなることもあり、そんな時は偶然のサプライズもおきる。一年、春、夏、秋、冬、すべての季節をはたして過ごせるのだろうかと、サムの毎日を見守るように読んだ。
便利な道具から離れての生活は、“生きる”ことにより近い。少年ひとりで暮らすと聞くと、では親は?と思うだろう。物語を読んでもらえればわかるが、サムの両親なりの見守りはある。工夫された生活、日々の狩猟による食事。すっかり料理上手になっていくサムのご馳走を味見してみたいものだ。そして、生き生きと楽しくタフに生きる少年の姿をみていると、読んでいる私も力強さをわけてもらえた。
本書をより読みやすくしているのは、巻末の絵と解説。物語にでてくる、たくさんの森の生きもの、植物について、巻末に絵と解説が添えられており、きれいな絵をみながら、より具体的にサムの生活がみえてくる。この絵を描いたのは、図鑑などで活躍されている、松原巌樹氏。ちなみに、表紙のすばらしいベイツガの木を描いたのは、ジブリで活躍されている美術監督、男鹿和雄氏。本文挿絵は作者自らの手によるもの、こちらもあたたかみのある素敵な絵だ。
【作者】ジーン・クレイグヘッド・ジョージ Jean Craighead George
1919年ワシントンDC生まれ。ペンシルバニア大を卒業後、ワシントンポスト、The White HOuse Press Corps に勤務。出産後、自然のなかで動物たちと生活するようになり、作家生活にはいる。著作は100冊以上。『狼とくらした少女ジュリー』で1973年にニューベリー賞受賞。
【訳者】茅野美ど里 ちの・みどり
1954年東京生まれ。上智大学外国語学部英語学科卒。小・中学時代の3年間をアメリカ・イリノイ州ですごす。訳書に『赤毛のアン』『秘密の花園』『オリエント急行殺人事件』『アクロイド殺人事件』(以上、偕成社)『レベッカ』(新潮社)などがある。
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Last Modified: 2009/12/04
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