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やまねこ10周年記念「世界の児童文学賞ラリー」レビュー集>産経児童出版文化賞レビュー集その1
 

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 やまねこ10周年記念「世界の児童文学賞ラリー」レビュー集

産経児童出版文化賞(日本)
レビュー集:1

 

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最終更新日 2009/10/05 レビューを2点追加

産経児童出版文化賞リスト(やまねこ資料室)   産経児童出版文化賞の概要

このレビュー集について 10周年記念「世界の児童文学賞ラリー」においてやまねこ会員が個々に書いたレビューを、各児童文学賞ごとにまとめました。メ ールマガジン「月刊児童文学翻訳」「やまねこのおすすめ」などに掲載してきた〈やまねこ公式レビュー〉とは異なる、バラエティーあふれるレビューをお楽しみください。
 なお、レビューは注記のある場合を除き、邦訳の出ている作品については邦訳を参照して、邦訳の出ていない作品については原作を参照して書かれています。


"The Suitcase Kid"『バイバイわたしのおうち』 * 『よじはんよじはん』 NEW * "Judy Moody" 『ジュディ・モードはごきげんななめ』 NEW


以下の受賞作品は、他の賞のレビュー集ですでにレビューを公開しています。

2009年翻訳作品賞『この世でいちばんすばらしい馬』  2005年【賞】『ホリス・ウッズの絵』  2005年【賞】『ウィッシュリスト』  2000年【推薦】『ふしぎなともだち』


2001年産経児童出版文化賞【賞 】

"The Suitcase Kid" (1992) by Jacqueline Wilson ジャクリーン・ウィルソン、illustrated by Nick Sharratt ニック・シャラット
『バイバイわたしのおうち』 小竹由美子訳  偕成社 2000 (邦訳読み物)

その他の受賞歴
1993年チルドレンズ・ブック賞短編読み物部門&大賞
1992年度カーネギー賞ショートリスト


  両親が離婚し、それぞれが子どものいる相手と再婚した。一人っ子のアンディーは、1週間ずつ、お父さんとお母さんの新しい家庭を行き来することになった。自分の部屋はないし、義理の家族は気に入らないし、新生活は最悪だ。お父さんとお母さんと3人での暮らしに戻れたら、どんなにいいだろう。庭にすてきなくわの木のある、前の家が恋しい。
 ストレスだらけの日々を送っていたアンディーは、通学路に、くわの木のある庭を見つける。そして、毎日のように忍び込んでは、大切なウサギの人形ラディッシュと2人きりで、いこいのひと時を過ごすようになった。ところがある日、庭の持ち主に見つかりそうになり、ラディッシュを置いたまま逃げ出してしまう。アンディーは激しく後悔し、ラディッシュを助けにいこうと、夜中に1人で家を出た。

 ジャクリーン・ウィルソンの作品に登場する女の子たちの率直さが、私は大好きだ。不愉快なことには腹を立て、憎まれ口をきく。頑固で、大人に媚びない。この話でも、大人の都合にふりまわされる10歳の女の子の気持ちが、直球で伝わってきた。
 両親が仲直りして、もとの暮らしに戻れたら……というアンディーの願いは、かなえられそうにない。子どもの力ではどうにもならない厳しい現実を突きつけられ、切なくなるが、いいことも起こる。何もかもめでたしめでたしとはいかなくても、身近なところに小さな幸せが転がっていたりするものだ。前向きな気持ちになれば、やさしさも生まれる。
 いいことも悪いことも、ありのままをまっすぐに語るアンディーを応援しながら、読み進んだ。夜中にラディッシュを助けにいくところは、祈るような気持ちにもなった。
 シンプルなタッチのさし絵に独特のかわいらしさがあり、著者の作風と絶妙にマッチしていると思う。

(大作道子) 2009年7月公開

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2008年産経児童出版文化賞【翻訳作品賞】

"넉 점 반" (2004) by 이영경 イ・ヨンギョン、illustrated by 윤석중 ユン・ソクチュン
『よじはんよじはん』 かみやにじ訳 福音館書店 2007 (邦訳絵本)

その他の受賞歴


 小さな女の子が、近所のよろず屋さんにでかけていって、たずねました。「いまなんじ?」
 ラジオを修理中のおじさんが、壁にかけた時計を見上げて答えます。「よじはんだ」
 女の子は、お母さんにたのまれて時間を聞きにきたのです。忘れないように「よじはん、よじはん」とくりかえすのですが、店の前で、水を飲んでいるニワトリを 見つけてしまいます。ながめていると、アリが何かをはこんでいるのに気づきます。アリの行列をたどっていくと、今度はトンボが……。すぐに帰るはずが、 おうちからどんどん離れていってしまうのでした。

 時計が、村のよろず屋さんにだけある時代の韓国。チマチョゴリを着た短い前髪の女の子が、なんともかわいらしい。そうそう、子どもって今も昔もそうなのよ、どんどんそれていっちゃうの、と、ほほえみながらページをめくっていきました。前半は、空や道 といった背景が白地のままで、お店や、動物や草花を、うまく浮き上がらせています。店のこまごました様子、鶏の羽の一枚一枚、タチアオイのぐんぐん伸びる茎、オシロイバナのしぼんだ花――描かれているもの全てが田舎の懐かしい空気を作り上げていて、その世界にすうっとひきこまれてしまいま した。
 訳者あとがきによると、ユン・ソクチュン(1911-2003)が日本による植民統治時代である1940年に書いた原詩に、若手の絵本画家イ・ヨンギョン(1966- )が絵を描いて絵本にしたそうで、その際、時代設定を1960年代にしたのだそうです。子どもへのやさしいまなざし満ちた1冊です。
 さて、暗くなりかけてからやっと家に帰った女の子は、お母さんに何と言ったでしょうね。

(植村わらび) 2009年10月公開

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2005年産経児童出版文化賞【推薦】

"Judy Moody" (2000) by Megan McDonald メーガン・マクドナルド、illustrated by Peter Reynolds ピーター・レイノルズ
『ジュディ・モードはごきげんななめ』(「ジュディ・モードとなかまたち」シリーズ1) 宮坂宏美訳 小峰書店 2004 (邦訳読み物)

その他の受賞歴


 ジュディ・モードは、今日から新3年生だというのに、朝から何やらふきげんモード。夏休みの間、どこも特別なところに行かなかったので、みんなと同じようにロゴ入りのTシャツを着て学校に行くことができない のです。さらに、新しいクラスでの席は、スティックのりをたべるといううわさのフランクの隣になってしまい、フランクの誕生日パーティーに誘われてしまいます。ああ、最悪のスタート ! でも、担任の先生が提案した「自己紹介コラージュ」は、なんだかおもしろそう。家族、一番の友達、お気に入りのペット、将来の夢、今まで一番いやだったこと、楽しかったこと、などを、絵や写真や文字を組み合わせて自己紹介をするのです。ジュディは張り切ってとりかかります。

 きげんの悪い時には、いいなと思っても「いいね」って言えない、ちょっと頑固なジュディ。担任のトッド先生のことを、トド先生って呼んだり、わかっているのにわざと違う答えを言ったりもします。でも、すぐにきげんが良くなって張り切るところをみると、頑固というよりも、自分の気持ちに素直なだけですね。
 ジュディをうまくフォローしてくれる仲良しの男の子ロッキー、絵に描いたような失敗をやらかす1つ年下の弟スティンクも加わって、ジュディのまわりではいろんな事件がおこります。でも、突拍子のないことではなく、日常におこりそうなことばかり。日本の子どもたちも、きっと自分のことのように驚いたり笑ったりすることでしょう。
 ピーター・レイノルズの挿絵がぴったりとはまった、小学校中学年向けにしてはしゃれた装丁のシリーズです。邦訳は現在6巻まで。

(植村わらび) 2009年10月公開

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