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やまねこ10周年記念「世界の児童文学賞ラリー」レビュー集> オランダの賞レビュー集



オランダの賞レビュー集 一覧

金・銀の石筆賞  金・銀の絵筆賞  オランダ作品レビュー集(2000〜2001年)

このレビュー集について 10周年記念「世界の児童文学賞ラリー」においてやまねこ会員が個々に書いたレビューを、各児童文学賞ごとにまとめました。メルマガ「月刊児童文学翻訳」「やまねこのおすすめ」などに掲載してきた〈やまねこ公式レビュー〉とは異なる、バラエティーあふれるレビューをお楽しみください。
 なお、レビューは注記のある場合を除き、邦訳の出ている作品については邦訳を参照して、邦訳の出ていない作品については原作を参照して書かれています。



 やまねこ10周年記念「世界の児童文学賞ラリー」レビュー集

金・銀の石筆賞(オランダ) レビュー集
Gouden Griffel / Zilveren Griffel
 

★ Yamaneko Honyaku Club 10th Anniversary ★ Yamaneko Honyaku Club 10th Anniversary ★

最終更新日 2008/11/01 レビューを2点とリンクを1点追加

金・銀の石筆賞リスト(やまねこ資料室)  賞の概要(月刊児童文学翻訳7月号)


"Kees en keetje"『ケースとケーチェ』 * "De eend, de dood en de tulp"『死神さんとアヒルさん』(リンク) * "Kleine Sofie en Lange Wapper"『小さなソフィーとのっぽのパタパタ』←追加 * "Deesje"『デージェだっていちにんまえ』←追加


1976年銀の石筆賞

"Kees en Keetje"(1975) by Jantien Buisman ヤンティーン・バウスマン
『はりねずみのケースとケーチェ』 横山和子訳 岩崎書店 1989
改題改訳版:『ケースとケーチェ』 横山和子訳 岩崎書店 2001 

その他の受賞歴


(このレビューは、1989年刊の『はりねずみのケースとケーチェ』を参照して書かれています) 

 ケースとケーチェは大の仲良し。やねのない人形の家に一緒に住んでいました。二人はお互いが大好きでしたから、何をするにもいつも一緒でした。ところがある日、ケーチェはケースがぴちゃぴちゃ舌を鳴らしてご飯を食べたり、ずるずるお茶をすすったり、おならをするのが気になってきました。ケースのぴちゃぴちゃやずるずるが、どんどん大きくなってくるような気がします。とうとうケースのくせが許せなくなり、大げんか。別々に暮らすことになりましたが……。

 無くて七癖というように、だれにでも癖はあります。でも大好きな人の癖なら気にならない、いえ、時にはそれが愛しく思えることもあるでしょう。でも歳月を重ねていくと、ある日その癖が気になってくることも。そして一旦気になりだすと、気になって気になって仕様がなくなってくる……。こんな経験をしたことがある人は結構いらっしゃるのでは? ケーチェとケースもそうでした。そして大げんかの末、別居と相成ります。なんでも自分の好きなことができる一人暮らしは最初はとても楽しかったのですが、すぐつまらなくなり、寂しくなってきました。でも、一旦別れたあとって、中々きっかけが掴めず、仲直りが大変ですよね。さて、二匹の場合は……。うーん、とってもロマンチック!
 ストーリーの内容は深く、子ども向けというよりはどちらかというと大人向けのような気もしますが、素朴なかわいらしい絵がそれを和らげてくれます。怒ってくるんと丸くなったり、ギュッと抱きしめあっている愛らしいハリネズミの絵を見ていると思わず頬がゆるんできます。ベストパートナーに贈る本としてお勧めの一冊です。

(吉崎泰世) 2008年8月公開

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2008年銀の石筆賞

"De eend, de dood en de tulp" (2007) by Wolf Erlbruch ヴォルフ・エァルブルッフ
ドイツ語原書版:"Ente, Tod und Tulpe"(2007)
邦訳:『死神さんとアヒルさん』 三浦美紀子訳 草土文化 2008.04

 やまねこ公式レビュー  レビュー(月刊児童文学翻訳2008年7月号)

その他の受賞歴
2007年ドイツ児童文学賞絵本部門ノミネート作品

2008年オランダ吹流し(Vlag em Wimpel)賞(絵筆賞)


 ラリーから、月刊児童文学翻訳2008年7月号のレビューへと発展しました


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1985年金の石筆賞

"Kleine Sofie en Lange Wapper"(1984) ←追加
  by Els Pelgrom エルス・ペルフロム、illustrations by The Tjong-Khing テー・チョン・キン
『小さなソフィーとのっぽのパタパタ』 野坂悦子訳 徳間書店 1999

 やまねこ公式レビュー  レビュー(月刊児童文学翻訳2000年7月号)

その他の受賞歴 1985年金の絵筆賞


 小さなソフィーには知りたいことがたくさんある。「水はどこからくるの?」「鳥は空気のないところまで飛んでいけるの?」「どうして草は緑なの?」どれも簡単には答えられないことばかりで、大人たちは困ってしまう。ソフィーはもう長いこと病気なのだ。ベッドのまわりにはおもちゃがいっぱい。とりわけ「のっぽのパタパタ」は大好きだった。
 ある夜、突然、おもちゃの人形達が動き出し芝居が始まった。けれども、ありきたりの芝居では満足しない。てんでに文句を言い始めた。そこへ猫のテロールが出て「人生でなにが手に入るか」という長い芝居を始めた。その役者に「のっぽのパタパタ」は志願する。パタパタと一緒にいたいソフィーも参加することにした。

 絵が素晴らしい。とてもかわいい。結局芝居に参加するのは、ぬいぐるみのクマと、のっぽのパタパタ、ソフィーと猫のテロールといったでこぼこチームなのだけど、巻き込まれていく芝居といったら夢が幻か。どこにも大人の良識や、見識といったもので、解釈できてしまうような道徳訓話はでてこない。それこそ、波乱万丈の山あり、谷あり、決して一筋縄ではいかない芝居が続く。
市場の場面で登場する「人生の天秤」の見世物がすごい。片側には「繁栄と幸福」もう一方には「災難」。この人生の天秤は、どんなときもつりあいがとれているという。「支配人」は叫ぶ「世界のある場所が、災難におそわれているとしても、まさに同じ瞬間、ほかの場所では、豊かさと健康、そして繁栄を楽しんでいる人がいる。このぐるぐるとまわる地球は、そうやって、つりあいをとっているのであります。さもなければ、地球はひゅーっと軌道からはずれ、宇宙のかなたに消えてしまうでしょう!」もちろん、ソフィーはこの天秤を試してみる。さてソフィーの運命はいかに。

(尾被ほっぽ) 2008年11月公開

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1986年銀の石筆賞

"Deesje"(1985) by Joke Van Leeuwen ヨーク・ファン・リューベン 作・絵 ←追加
『デージェだっていちにんまえ』 下田尾治郎訳 福音館書店 1991

 やまねこ公式レビュー  オランダ作品レビュー集

その他の受賞歴 1986年銀の絵筆賞 1988年ドイツ児童文学賞 児童書部門


 デージェはお父さんと年の離れた二人のお兄さんとの4人暮らし。お父さんはいつも部屋でひとりっきりでいるデージェのことを心配して、同じ年ごろの子どもを持つ遠くの町のおばさんの所にデージェを遊びに行かせることにした。会ったこともないおばさんの住む町まで、デージェはドキドキしながら一人で電車で向かう。おばさんとは駅のホームで待ち合わせのはずだったが、ホームは人でいっぱい。デージェはおばさんと会うことができなかった。その上、電車の中で起こったハプニングのせいでおさいふを落としてしまい、お金もおばさんの住所と電話番号を書いたメモもなくしてしまった!

 読み終えてから改めて題名を見て、首をかしげた。わたしにはデージェが「いちにんまえ」とはとても思えないのだ。ホームでおばさんに会えなかったのはデージェのせいではなく不可抗力だ。でも電車のなかで会ったゲージェと間違えられてバスに乗せられ街へ出て行くはめになったのは、デージェの責任も大きい。バスに乗っているのは「全国作文コンクール決勝大会」に参加する子どもたちと引率のマンズ先生。本来はゲージェが乗るはずのバスだ。デージェも人違いされたことにすぐ気がついた。マンズ先生は立石に水のようにしゃべり人の言うことをまったく聞こうとしない人だから、デージェが口をはさむのは難しかったろう。でもちゃんと人違いだと言う機会はいくらでもあったはず。それなのにバスに乗って、そのうえ後先考えずに知らない街なかで逃げ出してしまった。
 街では色々な人に出会うが、デージェは相変わらず「言わなくちゃ」と思いながらも、ちゃんと自分のことを言えないまま、あちこちで誤解やすれ違いをくり返す。このままではホームレスになってしまうのではないかと心配しながらページをめくりつつも、少々デージェにイライラしてきた。あげくに、またもマンズ先生に見つかり、決勝大会につれて行かれてしまう。にっちもさっちもいかない状況に追い込まれ、デージェは思わぬ才能を発揮して危機をりっぱに切り抜けはした。それだからといって、デージェがいちにんまえになったわけではないだろう。そもそもデージェがちゃんとマンズ先生に人違いだと言っていれば、決勝大会に参加することにならなかったのだから。出番を取られてしまったゲージェもかわいそうに。まあ、デージェが迷子になる原因の一つを作ったのがゲージェだったからしかたがないか。
 知らない街で右往左往するデージェの冒険はたしかに面白かったが、何度もデージェに言ってやりたくなった。「言わなければならないことはちゃんと言わなきゃ!」、と。最後の最後までそれは変わらなかった。デージェがいちにんまえになるのはまだまだ先のことみたい。この作品は銀の絵筆賞も受賞しているが、作者が描いた挿絵もとぼけた味があって楽しめる。

(吉崎泰世) 2008年11月公開

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オランダの賞レビュー集 一覧

金・銀の石筆賞  金・銀の絵筆賞  (オランダ作品レビュー集(2000〜2001年)


 やまねこ10周年記念「世界の児童文学賞ラリー」レビュー集

・銀の絵筆賞( オランダ) レビュー集
Gouden Penseel / Zilveren Penseel
 

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最終更新日 2008/11/01 レビューのリンクを3点追加  

金・銀の絵筆賞リスト(やまねこ資料室)  賞の概要(月刊児童文学翻訳7月号)


"Pikkuhenki"『小さな小さな魔女ピッキ』(リンク) *  "Waar is de taart?"『ケーキをさがせ!』 *  "Doktor de Soto"『歯いしゃのチュー先生』(リンク)←追加 *  "Kleine Sofie en Lange Wapper"『小さなソフィーとのっぽのパタパタ』(リンク)←追加 *  "Deesje"『デージェだっていちにんまえ』(リンク)←追加


2006年金の絵筆賞

"Pikkuhenki" (2005) by Marit Tornqvist [Marit Törnqvist] マリット・テルンクヴィスト
   text by Toon Tellegen トーン・テレヘン
『小さな小さな魔女ピッキ』 長山さき訳 徳間書店 2006

その他の受賞歴
2007年ドイツ児童文学賞絵本部門ノミネート作品


 ドイツ児童文学賞レビュー集を参照のこと

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2005年銀の絵筆賞

"Waar is de taart?" (2007) by The Tjong-Khing 〔Thé Tjong-Khing〕 テー・チョン・キン
『ケーキをさがせ!』 徳間書店 2008.04 

その他の受賞歴
2007年ドイツ児童文学賞絵本部門ノミネート作品


 ことばのない、絵だけの絵本。森の中にある犬の家。庭のテーブルの上においてあったケーキを、2匹のネズミが盗んで逃げた。「まて〜!」と、犬の夫婦は追いかける。川沿いの道を走り、橋を渡り、山を越え……とい うのがメインのストーリー。同時に、ページのあちこちで、さまざまな動物のさまざまなストーリーも展開していく。ワインのびんを持ってどこかにお出かけするイタチ、花を摘んでいるカメレオン、へびのしっぽも見えるし、ボールで遊んでいるのは、カエルかな?

 いろんなストーリーが同時進行していて、何度でも最初に戻って楽しめる大型絵本。そういう意味では、「ウォーリーをさがせ」のシリーズに通じるところがある。
 中ほどで、それまでばらばらだった登場人物たちが、1点に視線を集中させる場面が出てくる。ブタの子どもが、高い崖の上から落ちる場面だ。「あれ、この子ブタはどこから来たの?」と、気になって最初に戻ると、「ああ、こんなところでパパとママと風船もって歩いてたんだ」と、またそこからブタのストーリーをたどっていくことになる 。うまい作りだなあ。
 途中、テー・チョン・キンが絵を描いた『きつねのフォスとうさぎのハース』 (シルヴィア・ヴァンデン・ヘーデ文/野坂悦子訳/岩波書店/2007)のフォスとハース も特別友情出演している。こちらはストーリーはなく1か所の登場で、作者の遊び心にくすりと笑わされた。

(植村わらび) 2008年8月公開

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1984年銀の絵筆賞

"Doktor de Soto"(1984) by William Steig ウィリアム・スタイグ ←追加
英語原書版:"Doctor DeSoto"(1982)
邦訳:『歯いしゃのチュー先生』 内海まお訳 評論社 1991

その他の受賞歴
1983年ニュベリー賞オナーブック
1983年ボストングローブ・ホーンブック賞絵本部門オナーブック

1983年米国図書賞(The American Book Award)絵本ハードカバー部門


 ニューベリー賞ラリー集を参照のこと


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1985年金の絵筆賞

"Kleine Sofie en Lange Wapper"(1984) ←追加
  by Els Pelgrom エルス・ペルフロム、illustrations by The Tjong-Khing テー・チョン・キン
『小さなソフィーとのっぽのパタパタ』 野坂悦子訳 徳間書店 1999

 やまねこ公式レビュー
レビュー(月刊児童文学翻訳2000年7月号)

その他の受賞歴 1985年金の石筆賞


 石筆賞レビュー集を参照のこと

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1986年銀の絵筆賞

"Deesje"(1985) by Joke Van Leeuwen ヨーク・ファン・リューベン 作・絵 ←追加
『デージェだっていちにんまえ』 下田尾治郎訳 福音館書店 1991

 やまねこ公式レビュー  オランダ作品レビュー集

その他の受賞歴 1986年銀の石筆賞 

1988年ドイツ児童文学賞


 石筆賞レビュー集を参照のこと

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