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2017年12月号
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  =====★   月 刊  児 童 文 学 翻 訳   ★=====
   =====☆   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ☆=====
                                No.182
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児童文学翻訳学習者による、児童文学翻訳学習者のための、電子メール版情報誌
http://www.yamaneko.org                         
編集部:mgzn@yamaneko.org     2017年12月15日発行 配信数 2570 無料
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●2017年12月号もくじ●
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◎特集:第20回やまねこ賞──会員が選んだ、今年の児童書ベスト5は?
◎注目の本(邦訳読み物):『わたしがいどんだ戦い 1939年』
            キンバリー・ブルベイカー・ブラッドリー作/大作道子訳
◎賞情報:2017年全米図書賞児童書部門発表!
◎賞速報
◎イベント速報:
     ★やまねこ翻訳クラブ20周年関連イベント(一般公開)のお知らせあり★
◎音楽のしおり:第3回 クリスマスの歌 『もみの木』ほか
◎読者の広場

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    ☆☆ FOSSIL 〜 Made in USA のライフスタイルブランド ☆☆
 独創的なデザインで世界120ヶ国以上で愛用されているフォッシルはアメリカを代
表するライフスタイルブランドです。1984年、時計メーカーとして始まったフォッシ
ルは時計をファッションアクセサリーのひとつと考え、カジュアルでポップなライン
からフォーマルなシーンにも使えるアイテムまで、年間300種類以上のモデルを発売
し続けています。またフォッシル直営店では、時計以外にもレザーバッグや革小物な
どのラインを展開しています。
TEL 03-5992-4611
http://www.fossil.com/     (株)フォッシルジャパン:やまねこ賞協賛会社

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●特集●第20回やまねこ賞           協賛:(株)フォッシルジャパン
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 さる11月1日から17日までの間、やまねこ翻訳クラブ恒例のやまねこ賞の投票が、
当クラブ内オンライン投票所にて開催されました。やまねこ賞は、前年10月から本年
9月までに出版された邦訳児童書を対象に、会員がベスト5を選び、大賞作品を決定
するものです(読み物部門、絵本部門)。これに加え、会員が過去1年間に読んだ原
書と、新刊以外の邦訳児童書を対象とする、別賞(原書部門、オールタイム部門)も
設けています。新刊を対象とする読み物部門と絵本部門の大賞に輝いた作品の翻訳者
には、賞状と副賞が贈られます。今年も(株)フォッシルジャパンより、副賞の時計
をご提供いただきました。

副賞の時計の写真1      副賞の時計の写真2

▽2017年やまねこ賞投票所 http://www.yamaneko.org/yn_award/index.htm ※本号に掲載しているコメントは、投票時のままです。 「読み物」「絵本」の分類については、原則として各出版社、書店などの種別を参考 に、当クラブの判断で決定しています。  記事中に記載した、本誌の過去のレビューについては、やまねこ翻訳クラブウェブ サイトに掲載のバックナンバーをご参照ください。 http://www.yamaneko.org/mgzn/bncorner.htm  やまねこ翻訳クラブは、会員・非会員を問わず、海外児童書を主とした本の話題が 書き込める「読書室掲示板」を運営しています。 http://www.yamaneko.org/dokusho/index.htm      ★☆★☆【2017年 第20回やまねこ賞 読み物部門】☆★☆★ ★大賞 『わたしがいどんだ戦い 1939年』         キンバリー・ブルベイカー・ブラッドリー作 大作道子訳 評論社 Amazonで検索する:書名と作者名  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  1939年、第2次世界大戦中のロンドン。生まれつき右足が不自由なエイダは、母親 から虐待を受け、アパートの一室に閉じこめられていた。近所の子どもたちが郊外へ 疎開することを知ったエイダは、弟とともに家を抜けだし、痛む足を引きずって集合 場所へと向かう。汽車にゆられてたどり着いた先で出会ったのは、ひとりの女性と黄 金色のポニーだった……。自分の殻に閉じこもっていた少女が、村の人々との交流や 馬とのふれあいを通じ、少しずつ心を開いていく様子を描く。エイダの目から見た外 の世界の描写がみずみずしい。2016年ニューベリー賞オナー作品。 (本誌今月号「注目の本(邦訳読み物)」のレビューをご参照ください) ◎第二次世界大戦中の話だけれど、違う時代(現代を含めて)、違う国でも、エイダ のように戦っている子どもがいると、あらためて考えさせられた。(Chicoco) ◎折れない心と賢さで自分の人生を必死に手に入れていくエイダの姿がとても力強く、 ものすごい生命力を感じた。(おとむとむ) ◎今で言う「毒親」の呪縛からエイダがどう逃れていくのか、はらはらどきどきしな がら読みました。戦争をこういう角度から描いたのも新鮮。(ベス) ◎冒頭からぐいぐい惹きこまれました。戦争というテーマへの切り込み方が独創的で、 新鮮な面白さを感じました。続編も是非読みたいです!(mamacho) ◎凄まじい虐待による自己全否定から、苦しみながら自信をとりもどしていく姿に感 動!(ちゃぴ) ◎つらい場面が多いけど、たくまざるユーモアに思わずふふっと笑ってしまう場面も。 口調や会話に、それぞれのらしさがにじみ出ていて、登場人物がみんな生きてる感じ がすごく好き。(BUN) ☆~~~~~~~~~~~~~~~~~【受賞のことば】 翻訳家 大作道子さん ~~~~~~~~~~~~~~~☆ |                                    | | やまねこ賞に選んでいただき、ありがとうございます。自分が受賞するとは夢| |にも思わなかったので、結果を知ったときには驚くばかりでしたが、じわじわと| |喜びがわいてきました。受賞作の原書 "The War That Saved My Life" は、昨年| |のやまねこ賞原書部門で1位になっています。その紹介記事を読んだ直後に、思| |いがけず翻訳の依頼をいただきました。評価の高い作品を訳す機会に恵まれ、本| |当に幸運です。読んでくださったみなさまに、心から感謝申し上げます。   | ☆                                    ☆  ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ◆2位 『レイン 雨を抱きしめて』                アン・M・マーティン作 西本かおる訳 小峰書店  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  アスペルガー症候群のローズはパパとふたり暮らし。ある雨の夜、パパが1匹の犬 を連れて帰ってきた。「レイン」と名づけたその犬は、学校でクラスにうまくなじめ ないローズにとって、かけがえのない友だちとなる。だが、ハリケーンが町を襲った 日、レインが姿を消してしまった。ようやくレインを見つけだし、再会を喜んだのも つかの間、ローズは思いがけない事実を知らされた。物語の最後で親子それぞれの下 す決断は切ないが、未来への確かな希望が感じられる。 (本誌2017年3月号「プロに訊く連動レビュー」をご参照ください) ◎ハラハラしながら一気に読んだ。悲しいできごとがあれこれ起こるのに、読後感は さわやか。希望を感じた。(ゆま) ◎かわいい、愛しい、せつない。(おちゃわん) ◎ローズも、酒飲みのお父さんも、悲しみと勇気に満ちた決断をした。涙がこみあげ てきたけど、さわやかな読後感。(BUN) ◎ローズの言動の意図が周囲に理解されないのがはがゆいが、理解者のおじさんがい てよかった。光が見えるラストにほっとした。(shoko) ◎主人公ローズのこだわりや思いがうまく描きだされていた。父親のだめな部分がき ちんと描かれていた点も良かった。(ワラビ) ◆3位 『ジョージと秘密のメリッサ』アレックス・ジーノ作 島村浩子訳 偕成社  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  10歳のジョージには秘密があった。それは、女の子向けの雑誌を隠れて読んでいる ことや、鏡のなかの自分に「メリッサ」と名づけて語りかけていることだ。大好きな ママに自分が「女の子」だと認めてもらうため、ジョージは親友ケリーの協力を得て、 ある計画を立てる。ジョージ(メリッサ)が自分らしく生きようともがく姿に胸が熱 くなる。トランスジェンダーである作者が、自身の経験をもとに書きあげた作品。 ◎性同一性障害の男の子が主人公の物語。ジョージが、親友の女の子の協力を得て女 の子の服をいろいろ試すときの、はちきれんばかりの喜びが、とても印象的でした。 (ナウシカ) ◎トランスジェンダーというデリケートな問題を扱いながらも、ここまで爽快な読後 感を得られる作品に巡り合えたことに、ただただ感謝感激です!(やまのまま) ◎ジョージのけなげさに、途中なんども泣きそうになった。ありのままの自分を受け 入れてくれる人の存在が、どれほど大切かが心にしみる。どこかで悩んでいる誰かに とって、きっと大きな力になってくれる本。(くるり) ◎スコットのジョージへの対応にほろりとしてしまった。いいお兄ちゃんだなあ。 (hanemi) ◆4位 『太陽と月の大地』      コンチャ・ロペス=ナルバエス作 宇野和美訳 松本里美絵 福音館書店  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  舞台は16世紀のスペイン、グラナダ。エルナンドの家族は「モリスコ」と呼ばれる、 キリスト教に改宗した元イスラム教徒だ。エルナンドと幼なじみのマリアは、互いに 淡い恋心を抱いていた。だがマリアはキリスト教徒で、エルナンド一家が仕える伯爵 家の娘でもあった。宗教間の対立がしだいに激しくなる中、ついに戦争がはじまり、 エルナンドと家族は先祖代々受け継いできた土地から追放されてしまう。スペインの 美しい自然を背景に、時代の波に翻弄される人々を壮大なスケールで描く。 ◎この薄さに、この壮大な物語がとじこめられているのが信じられない。読了後、し ばらく時間の感覚がなくなりました。(NON) ◎遠いグラナダの悲しい歴史や人々の思いを知ることのできる貴重な一冊。薄い本な のに中身が濃く、物語も絵も文章もすばらしかった。(ベス) ◎16世紀のスペインが舞台で、1984年に書かれた作品だが、今こそ多くの人に読まれ るべき話だと思う。(くるり) ◎16世紀のスペインを描いた短い物語に、現代と通じる重要なテーマが盛り込まれて いる。30年前の作品が、今この世に出たことに感謝。(anya) ◎これまでなじみの少なかった16世紀のスペインが舞台。時代が違えども、為政者の せいで憎しみや不幸が生まれる現実は同じであることに心が痛んだ。文学性豊かな作 品。(ワラビ) ◆5位 『スピニー通りの秘密の絵』            L・M・フィッツジェラルド作 千葉茂樹訳 あすなろ書房  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  しっかり者の女の子セオは、幼い頃から画家の祖父ジャックによる美術の英才教育 を受けていた。そのジャックが、交通事故で突然この世を去った。「卵の下を探せ」 という謎の言葉を遺して。謎を解くカギが、ジャックの大事にしていた1枚の絵にあ ることに気づいたセオは、偶然出会ったセレブな少女ボーディとともに謎解きに挑む。 ユーモラスな登場人物たちにクスッと笑いながら、予想のつかない展開に引きこまれ る。絵画の知識がふんだんに盛りこまれている点も魅力だ。 ◎突然の祖父の死で、少女が日々生きていくために奮闘することが、祖父の遺した絵 画をめぐるミステリー、思いがけないファミリーヒストリーにいきつき、ページをめ くる手がとまらなかった。(Incisor) ◎ミステリー的展開にはらはらどきどき。さらに家族、戦争、芸術への愛などいくつ もの要素がうま〜く入っていて、心ゆすぶられます。(キャメル) ◎主人公のセオとセレブなボーディの調査力や行動力が気持ちいい。少しずつ明らか になる絵の謎や祖父の過去に惹きつけられて一気に読んだ。(shoko) ◆6位以下の作品 6位『もうひとつのワンダー』 7位『ファニー 13歳の指揮官』 8位『オオカミを森へ』 9位『コードネーム・ヴェリティ』『100時間の夜』   『ぼくとベルさん 友だちは発明王』(3作同点)       ★☆★☆【2017年 第20回やまねこ賞 絵本部門】☆★☆★ ★大賞 『どれがいちばんすき?』『こうえん』          ジェイムズ・スティーブンソン文・絵 千葉茂樹編訳 岩波書店 Amazonで検索する:書名と作者名  Amazonで検索する:書名と作者名  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  詩集絵本 "Corn Book" シリーズから2冊に編さんされたアンソロジー。見開きご とに現れるシンプルなスケッチ画は小粋な印象で、やさしい言葉で綴られる短い詩が 読者をくすりと笑わせたり、しんみりさせたり。洗濯物、おんぼろの門、ピザ屋もゴ ミ袋も、思いがけない物語を秘めている。1コマ漫画の名手として知られるスティー ブンソンならではの切り口と、身近なものへの温かいまなざしが心地よい。文字のデ ザインも遊び心がいっぱいだ。絵と文が一体となった珠玉の詩集絵本がやまねこ会員 の心をとらえ、本年の大賞を受賞した。 ◎詩はいつだってそばにおいておくものです。『こうえん』と共にこの詩集もそばに おいておくものなのです。(さかな)※『どれがいちばんすき?』への投票 ◎言葉のひとつひとつがすっと心に入ってきて、何気ない日常の風景やふだん目にし ているものがとても愛おしく感じられてくる。(asayaka) ◎ページを開いて最初の「かさ」でハートを射抜かれました。イラスト、訳、レイア ウト、どれも粋なユーモアがあっておしゃれ。いろんなものへの愛にあふれています が、とくに犬愛を強く感じました。(Chicoco) ◎楽しい! 軽やかでシニカルな面もあり、声に出して読みたくなるえりすぐりの詩 がぎっしり。読んだあとには「どれがいちばんすき?」と人に聞いてみたくなる。丁 寧な本作りにも、うっとり。(SUGO) ◎暮らしの一瞬を切り取って、違う角度からみたものや、隠された物語を感じさせる。 読むほどに魅力が増す。(ちゃぴ) ☆~~~~~~~~~~~~~~~~~【受賞のことば】 翻訳家 千葉茂樹さん ~~~~~~~~~~~~~~~~☆ |                                    | | 実はこの2作が形になるまでには、やまねこさんの歴史より長い時間がかかっ| |ています。なにせ、シリーズの第1巻がアメリカで出版されたのは1995年なんで| |すから。それ以来ずっと、なんとか日本にも紹介したいとあちこち持ちこんだり| |もしましたが、ようやくこのような形で本になり、しかもそれがやまねこ賞の大| |賞に輝くなんて! 出版直前に永眠されたスティーブンソンさんも、きっとよろ| |こんでくださっているでしょう。ほんとうにありがとうございました!    | ☆                                    ☆  ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ◆2位 『世界食べものマップ』                ジュリア・マレルバ&フェーベ・シッラーニ文・絵 中島知子&赤塚きょう子訳 辻調グループ辻静雄料理教育研究所監修 河出書房新社  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  手にするだけで楽しくなってくる、ずっしり重たい大判絵本。世界のさまざまな国 の食べ物が、地図の上にイラストで紹介される。日本の地図には、ひじきやシイタケ のような定番もあれば、静岡メロンやたこ焼きのように“通”なものまで。食の宝庫 イタリアには、びっくりするようなチーズも! 北米・南米・ヨーロッパ・アジア・ アフリカ・オセアニア、次はどのページを開きましょうか? ◎楽しくて楽しくて何度も眺めてしまう。ワクワクすればするほどお腹がペコペコに。 (Incisor) ◎何度ひらいても新たな発見があって見飽きないです。食べてみたいものも、ええっ? とびっくりするものも満載で世界は広いと実感できる楽しい本。(からくっこ) ◎この本に投票しないわけには絶対にいかない。何度見てもどこを見ても楽しい。す ばらしさしかない。(くるり) ◎何度もひらいて楽しめる絵本。海外の本や映画で食べものの名前が出てきたときに 調べてみると大抵のっているのでうれしくなります。(Chicoco) ◆3位(2作同点) 『天女かあさん』                 ペク・ヒナ文・絵 長谷川義史訳 ブロンズ新社  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  衝撃の『天女銭湯』に続く、韓国作家の人形絵本。ひどい雨の日、仕事中のかあさ んは、息子のホホが熱で早退したとの連絡を受ける。ホホの世話を頼もうとあちこち 電話をかけ、やっとつながった先は、なぜか天女だった。「きょうは わたしを か あさんと おもいなはれ」。天女かあさんが卵を片手に台所に立つと、あら不思議。 ホホを優しく看護する、天女ならではの技の数々がおもしろい。人情味あふれる人形 の造形とともに、生活感たっぷりの舞台小道具にも注目したい。 ◎天女さま、あなたのインパクトはすごすぎます。(MOMO) ◎今回も細部まで作りこまれていて、すごい!(モリー) ◎この作者の手による人形が素晴らしい。表情、しぐさ、仕掛け。どれをとっても楽 しめます。(おちゃわん) ◎ほんわかするような、ぞくぞくするようなふしぎな感触。(ちゃぴ) ◎独特な表情のキャラクターたち。関西弁と愛情たっぷりなストーリーにほっこり。 (おとむとむ) ◆3位(2作同点) 『ふたりはバレリーナ』           バーバラ・マクリントック文・絵 福本友美子訳 ほるぷ出版  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  小さなエマと大きなジュリア、ふたりの1日がシーンごとに交互に描かれる。年齢 も離れていて出会ったことのないふたりだけれど、エマもジュリアもバレエが大好き! バレエのレッスン、そして夜の劇場公演へと期待感は高まって……。主人公をはじめ、 作中にはさまざまな人種の人々が登場し、アメリカ社会の多様性を映し出している。 バレエを共通項としたふたりの姿が、夢を追う少年少女たちの心を躍らせてくれるだ ろう。 ◎どの絵もほんとうに踊りだしそう。何度見ても飽きません。(モーモー) ◎最後の場面がとても素敵。「ふたりはバレリーナ」という邦題が、一言でこの絵本 を表現していて素晴らしいです。(みーこ) ◎バレエが好きで、バーバラ・マクリントックが好きなので、この絵本はどんぴしゃ りでした。(コアラン) ◎ふたりの姿がシンクロしつつ進み、最後になんてまあ、ステキなこと。バレエファ ンにはたまらない!(おとむとむ) ◆5位 『うみべのまちで』      ジョアン・シュウォーツ文 シドニー・スミス絵 岩城義人訳 BL出版  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  海のそばに住む少年の1日が、静かなトーンで描かれる。カモメの鳴く声とともに 目覚め、カーテンを開けると広がる海。公園で遊ぶとき、おつかいに行くとき、おじ いちゃんのお墓に行くときも、海はいつでもそばにある。穏やかな海、光る海。その 海の下の炭鉱で、父さんは働いているのだ。美しい海と幾度となく対照される、暗い トンネル。作者の故郷ケープ・ブレトン島(カナダ)でかつて栄えた炭鉱町へのレク イエムといえる作品だ。 ◎抑えめの色合いだけれど、輝く海が美しい。(hanemi) ◎心にしみてくる絵本でした。時代と風景、人生と生活・・・いろんなものが描かれ ている。光る海の絵が絶品。(ワラビ) ◎ページのなかの海のまぶしさに思わず目を細めてしまうほどの圧倒的な絵、シンプ ルな言葉で炭鉱町の歴史や人生のドラマまでもを描き出すテキスト。絵本の力をあら ためて感じた作品だった。(くるり) ◎海が陽光を反射し、きらきら明るい風景のなかで進む〈ぼく〉の1日。それを支え るのが、海の真っ暗な底にほられた炭鉱で働く父さん。色の対比がすばらしい。 (Chicoco) ◆6位以下の作品 6位『走れ!! 機関車』 7位『シャクルトンの大漂流』 8位『カランポーのオオカミ王』 9位『こどもってね……』『こらっ、どろぼう!』   『こわい、こわい、こわい? しりたがりネズミのおはなし』   『サイモンは、ねこである。』(4作同点)       ★☆★☆【2017年 第20回やまねこ賞 原書部門】☆★☆★  原書部門の投票条件は、児童書の原書であることのみ。言語、出版年、邦訳の有無 は問わず、この1年に読んだ原書に順位をつけず最大5作品まで投票できる。今年は 16名から投票があり、各国の児童文学賞受賞作品やノミネート作品、話題作の続編な ど、31作品が挙がった。会員それぞれの幅広い読書傾向を反映しているため、この部 門では例年票がばらけてしまう。そんな中で複数票を獲得した "Are You an Echo?: The Lost Poetry of Misuzu Kaneko"(4票)と、"Sachiko: A Nagasaki Bomb Survivor's Story"(2票)について、投票に添えられたコメントとともにご紹介す る。どちらも日本に縁のある作品というのが興味深い。残りの作品については、やま ねこ賞受賞作品リストをご覧いただきたい。 ★ "Are You an Echo?: The Lost Poetry of Misuzu Kaneko"   narrative by David Jacobson, translations by Sally Ito & Michiko Tsuboi,                       illustrations by Toshikado Hajiri  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  日本で広く親しまれている詩人、金子みすゞを英語で紹介した絵本。本作は伝記と 詩で構成されており、彼女が生きた時代の風景と文化を伝える美しい絵が全ページに わたって描かれている。詳しくは、本誌増刊号No.9「絵本 "Are You an Echo?" 〜 金子みすゞを英語圏の子どもたちへ〜」をご覧いただきたい。 ( http://www.yamaneko.org/mgzn/plus/html/z09/index.htm ) ◎イラストが美しく、みすゞの詩を英語と日本語の両方で楽しめるのが良かったです。 東日本大震災のことにも触れられていて、当時のことを思い出して胸にぐっとくるも のがありました。(まなみ) ◎米国の友人に誇りをもって贈った。この美しい絵本がうまれたことに感謝。 (Incisor) ◆ "Sachiko: A Nagasaki Bomb Survivor's Story" by Caren B. Stelson  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  長崎の被爆者 Sachiko Yasui に直接話を聞き、まとめあげられたノンフィクショ ン。当時6歳だった少女の壮絶な原爆体験と、その後の被爆者としてのつらい日々が 描かれ、平和への切なる願いが伝わってくる。2017年ロバート・F・サイバート知識 の本賞オナー、2016年全米図書賞児童書部門ロングリストに選ばれている。 ◎アメリカ人の作者による長崎のこと。姉妹都市の行事で来米した安井幸子さんの被 爆体験をきいたことがきっかけだという。海を越えて話す勇気と聞く勇気。 (Incisor)     ★☆★☆【2017年 第20回やまねこ賞 オールタイム部門】☆★☆★  オールタイム部門の対象となるのは、会員がこの1年で読んだ新刊以外の邦訳児童 書。投票者は30名で、挙げられた作品数は84に上った。この部門では、前年の読み物 部門・絵本部門の上位作品が選ばれることが多い。今年は、昨年の読み物部門大賞の 作品が7票を獲得し、堂々のトップとなった。2位の作品は2016年9月刊行で、投票 までの期間が短かったこともあり、昨年の新刊読み物部門での上位入選は逃したが、 今回オールタイム部門で3票を獲得した。両作品とも、心揺れる思春期を描いた少し 切ないYA小説である。3位は2票を獲得した8作品で、そのほかは各1票。3位以 下については、やまねこ賞受賞作品リストをご覧いただきたい。 ★1位『ペーパーボーイ』 ヴィンス・ヴォーター作 原田勝訳 岩波書店  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  吃音に悩む11歳の少年ヴィクターは、夏休みのあいだ、友だちの代わりに新聞配達 をすることになった。そのなかで個性的な人たちと出会い、思いがけない事件にも巻 きこまれて、戸惑いながらも成長していく。一人称で語られるこの物語にはコンマが ほとんどない。話すと息つぎばかりしてしまうので、タイプライターを使うときぐら いは点を打ちたくないからだ。そんな主人公の文章を、読点なしで見事に再現した訳 者の工夫がすばらしい。2014年ニューベリー賞オナー作品。 ◎主人公の気持ちがよく分かる。導き手となる知恵者の存在に励まされます。(キャ メル) ◎読者になれた幸運に感謝。(Incisor) ◎スピロさんとのやりとりがいい。読点がないのに自然に読めるのがすごい。(モリ ー) ◎周囲の人たちの細かいエピソードもよかった。登場人物たちのその後を頭のなかで 思い描いている。(hanemi) ◎時代と季節と、吃音の少年の苦悩と、閉塞感に緊張して読み進めながら、最後の最 後に感じるこの爽やかさよ! すてきな大人がいっぱい出てくるのもいい。(くるり) ◆2位『飛び込み台の女王』 マルティナ・ヴィルトナー作 森川弘子訳 岩波書店  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ “飛び込み台の女王”カルラは、ナージャにとって親友であり、飛び込み競技でのラ イバル、そしてあこがれの選手だった。ところが、ある日を境にカルラが飛び込めな くなったことで、すべては一変し――。エリート選手として、周囲からの期待とプレ ッシャーにさいなまれつつ生きる少女たちの等身大の姿を、リアルに描いた友情と成 長の物語。2014年ドイツ児童文学賞児童書部門受賞作。 ◎思春期前半の少女が主人公のスポーツ小説として、今まで読んだなかでベスト。 (hanemi) ◎飛び込みという競技と13歳の少女たちの危うさのシンクロが見事で、スポーツ物と して骨格がしっかりしていながら、児童書でしか書き得ない人生の深い哲学がある。 (くるり) 【参考】 ▽やまねこ賞受賞作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室) http://www.yamaneko.org/bookdb/award/yn/index.htm ▽やまねこ賞大賞受賞作品一覧(やまねこ翻訳クラブ資料室) http://www.yamaneko.org/bookdb/award/yn/ichiran.htm                  (山本みき/小島明子/森井理沙/牛原眞弓)

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●注目の本(邦訳読み物)●過去を乗り越え、幸せのために戦うこと
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『わたしがいどんだ戦い 1939年』
キンバリー・ブルベイカー・ブラッドリー作/大作道子訳
評論社 定価1,600円(本体) 2017.08 374ページ ISBN 978-4566024540
"The War That Saved My Life" by Kimberly Brubaker Bradley
Puffin Books, 2015
★2016年ニューベリー賞オナー作品
★2016年シュナイダー・ファミリーブック賞 Middle School 部門受賞作品

 物語は、アパートの窓から外を見ていたエイダが、母親に怒鳴られ、引っ張られて
床にたたきつけられる場面から始まる。「恥さらし」のエイダが外の人にあいさつを
して、母親の逆鱗に触れたのだ。ロンドンで暮らすエイダは10歳だが、学校に行って
いない。右足が先天性内反足のため、母親に奇形とののしられ、虐待され、家に閉じ
込められてきた。床を這って移動しながら、6歳の弟ジェイミーの世話と家事をする
毎日だったが、戦争が始まり、学童疎開したことをきっかけに人生が変わっていく。
 疎開先の村でエイダとジェイミーを受け入れてくれたのは、スーザンという女性だ
った。お風呂に入り、清潔な布団で眠り、ご飯をきちんと食べられる暮らし。エイダ
は料理や裁縫、読み書きを教わったり、一緒に買い物に出かけたりと、スーザンのお
かげで少しずつ母親の呪縛から解放されていった。しかし、ふとしたことで虐待の記
憶がよみがえり、たびたびパニックを起こしてしまう。エイダはスーザンの存在に救
われながらも、なかなか心を開けずにいたが――。
 作者自身も虐待のトラウマに苦しんだ経験があるという。エイダの心理描写がとて
もリアルで、虐待に苦しむ子どもたちの悲痛な叫びが、エイダの物語を通して聞こえ
てくるようだった。エイダは自分を、母親の言葉どおりに「見苦しい足のゴミ」だと
思い込み、触れられることにおびえ、常に人の顔色をうかがってしまう。自分の思い
を口にすると母親に殴られていたため、つらいときは頭の中に逃げ込み、ひとりで苦
しみに耐えようとする。そんなエイダを何度も抱きしめて守りたい衝動にかられた。
 また、スーザンが喜ばせようとすると、エイダがパニックを起こしてしまうことに、
トラウマの根深さを感じた。自己を否定され続けたために、自分が大切にされると混
乱してしまうのだ。エイダの戦いは厳しい。しかしスーザンと過ごす時間はとても温
かく、ジェイミーとの固い絆には希望があふれている。スーザンの家に来て、初めて
日だまりの中で草に寝転んだときや、海を目にしたときの様子は、小さな子どものよ
うでほほえましかった。"The War That Saved My Life" という原題にあるように、
エイダは戦争で人生を救われた。強い愛に満ちた物語の結末に、涙が止まらなかった。

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【作】キンバリー・ブルベイカー・ブラッドリー(Kimberly Brubaker Bradley):
1967年、米国インディアナ州生まれ。大学で化学を専攻しながら、パトリシア・マク
ラクランのもとで児童文学を学ぶ。研究者として勤めながら創作を続け、1998年
"Ruthie's Gift" で作家デビュー。今年10月には本作品の続編 "The War I Finally
Won" を出版した。現在はテネシー州の農場で、家族や動物たちと暮らしている。

【訳】大作道子(おおさく みちこ):1964年千葉県生まれ。大学卒業後、会社員を
経て、ワーキングホリデーでニュージーランドに滞在。帰国後、翻訳を学ぶ。訳書に
『ハンター』(ジョイ・カウリー作/偕成社)、『プケコの日記』(サリー・サット
ン作/デイヴ・ガンソン絵/文研出版)などがある。やまねこ翻訳クラブ会員。

【参考】
▼キンバリー・ブルベイカー・ブラッドリー公式ウェブサイト
https://kimberlybrubakerbradleycom.wordpress.com

▼キンバリー・ブルベイカー・ブラッドリーのインタビュー
                  (School Library Journal ウェブサイト内)
http://www.teenlibrariantoolbox.com/2016/01/mhyalit-chronic-post-traumatic
-stress-disorder-ada-and-me-by-kimberly-brubaker-bradley/

▼訳者による本作品紹介記事
      (こどもの本 on the web 内/月刊「こどもの本」2017年11月号掲載)
http://www.kodomo.gr.jp/kodomonohon_article/14045/

                               (山本真奈美)

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●賞情報●2017年全米図書賞児童書部門発表!
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 11月15日、2017年全米図書賞の受賞作品が発表された。本号では、全4部門のうち
児童書部門について取り上げる。なお、同部門のファイナリスト作品は、本誌2017年
10月号「賞情報:速報! 2017年全米図書賞児童書部門 ファイナリスト発表!」を
参照のこと。

The National Book Awards 2017 Winner

★児童書部門(Young People's Literature)

"Far from the Tree" by Robin Benway (Harper Teen)

 今年の児童書部門賞に輝いたのは Robin Benway の "Far from the Tree"。家族と
いうテーマを軸に、10代の妊娠・出産、子どもへの虐待、離婚、アルコール依存症、
同性愛といったさまざまな問題を織り交ぜた力作だ。温かい養父母のもとで育った16
歳の Grace は、思いがけず妊娠し、生まれたばかりのわが子を手放した喪失感を埋
められずにいた。そんな折、血のつながった兄と妹の存在を知り、ふたりと会う決心
をする。裕福な家に引き取られて何不自由なく育ちながらも、家族の中で疎外感を味
わってきた15歳の妹 Maya。いくつもの家庭をたらい回しにされ、新しい里親に心を
開けずにいる17歳の兄 Joaquin。幼いころから別々の環境で育った3人が出会い、徐
々に心を通わせ合うようになり、ともに実の母親を探し始める。境遇も抱える悩みも
異なる3人の目を通して描かれる物語から、現代の多様な家族像が浮かび上がる。大
切な人や家族とどのように信頼関係を築いていくべきか、深く考えさせられる作品だ。
 Benway は出版業界で働いたあと、UCLAの公開講座で創作を学び、そのときに
書き始めた "Audrey, Wait!"(2008年)でデビューを果たした。これまでに手がけた
6冊のYA作品は、すでに20か国以上で翻訳されている。

【参考】
▼2017年全米図書賞発表ページ(National Book Foundation ウェブサイト内)
http://www.nationalbook.org/nba2017.html

▼Robin Benway 公式ウェブサイト
https://www.robinbenway.com/

▽全米図書賞児童書部門について(本誌2003年12月号情報編「世界の児童文学賞」)
http://www.yamaneko.org/mgzn/dtp/2003/12a.htm#bungaku

▽本誌2017年10月号
    「賞情報:速報! 2017年全米図書賞児童書部門ファイナリスト発表!」
http://www.yamaneko.org/mgzn/dtp/2017/10.htm#sokuho

▽全米図書賞(児童書部門)受賞作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/award/us/nba/index.htm

                               (手嶋由美子)

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●賞速報━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

★2017年ドイツ児童文学賞発表
★2017年カナダ総督文学賞児童書部門発表
★2018年ケイト・グリーナウェイ賞ノミネート作品発表
★2018年カーネギー賞ノミネート作品発表
(カーネギー賞および、ケイト・グリーナウェイ賞ロングリストの発表は2018年2月
   15日、ショートリストの発表は3月15日、受賞作品の発表は6月18日の予定)
★2017年度ニューヨークタイムズ・ベストイラスト賞発表

 海外児童文学賞の書誌情報を随時掲載しています。「速報(海外児童文学賞)」を
ご覧ください。
http://www.yamaneko.org/cgi-bin/sc-board/c-board.cgi?id=award

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●イベント速報━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

★展示会情報
 板橋区立美術館「世界を変える美しい本 インド・タラブックスの挑戦」
 島根県立石見美術館「エドワード・ゴーリーの優雅な秘密」 など

★講演会情報
 教文館ナルニアホール「宇野和美さん お話と朗読」
 HMV&BOOKS SHIBUYA「柴田元幸トークショー&サイン会」 など

 詳細やその他のイベント情報は、「速報(イベント情報)」をご覧ください。なお、
空席状況については各自ご確認願います。
http://www.yamaneko.org/cgi-bin/sc-board/c-board.cgi?id=event

★★やまねこ読書会 開催のお知らせ★★

 やまねこ翻訳クラブ発足20周年を記念して、「やまねこ読書会」を開催いたします。
会員・非会員を問わず、中学生以上ならどなたでもご参加いただけます。本の感想を
ネタバレを気にせず、語り合いませんか?
 日時は2018年1月27日(土)14時から、会場は東京ウィメンズプラザ(東京都渋谷
区)です。
 課題書は、本号でご紹介している、2017年やまねこ賞読み物部門1位に輝いた『わ
たしがいどんだ戦い 1939年』。訳者の大作道子さんもご参加くださる予定です!

 申し込み方法など、詳細は、イベント情報掲示板をはじめ、やまねこ翻訳クラブの
各掲示板で近日中に発表いたします。どうぞお楽しみに!

                          (冬木恵子/山本真奈美)

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●音楽のしおり●第3回 変わらぬ緑の輝きをたたえて
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          〜クリスマスの歌 『もみの木』ほか〜

 クリスマスのこの時期、街は華やかな音楽や光に彩られていますが、絵本を開いて
静かに過ごすひとときもまた、良いのではないでしょうか。久しぶりにお届けする今
回の「音楽のしおり」では、小さな物語にのせて、昔から歌い継がれてきたクリスマ
スの歌をご紹介します。

*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
 そのよる、こどもたちが やってきて、クリスマスキャロルを うたいました。そ
のよろこびのひに、おとこのこが つくったうたを、ふるいキャロルの メロディー
にあわせて、うたいました。
                            『ちいさなもみのき』
          マーガレット・ワイズ・ブラウン文/バーバラ・クーニー絵/
                      上條由美子訳/福音館書店/1993年
*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-

 外には雪が降り積もり、窓辺にはろうそくが灯されました。あたたかな部屋の中に
は、たくさんの飾りのついたクリスマスツリーがあります。それは、男の子のために、
お父さんが森のはずれの野原から運んできた「ちいさなもみのき」でした。足が悪く
てベッドから出たことのない男の子が、元気になるよう力になってほしい――お父さ
んは、もみの木にそう願いを込めていました。そして、この引用部分で子どもたちは、
男の子が作った歌詞を、日本でもおなじみの『もみの木』のメロディーに合わせて歌
います。
 寒い冬でも緑の輝きを失わない常緑樹は、古くから強い生命力の象徴としてヨーロ
ッパで信仰の対象となっていました。もみの木に飾りつけをした現在のようなクリス
マスツリーは、ドイツにはじまったといわれ、15世紀前半にはすでにその記録が残っ
ています。そして19世紀頃には、その風習がドイツ語圏を中心に一般的なものとなっ
ていたようです。『もみの木』の歌もまた、その起源を古くにさかのぼりますが、19
世紀に入ってからドイツで形作られたものがもととなり、広く歌われるようになりま
した。多くのドイツ民謡を収集し、書物にまとめたヨアヒム・アウグスト・ツァルナ
ックが、古い詩と長く歌い継がれてきたメロディーを参考に、"O Tannenbaum(もみ
の木)" を紹介したのが、1820年頃のこと。この時はまだクリスマスの歌ではなく、
変わらないものの象徴であるもみの木と対比して、変わってしまった恋人の心を嘆く
内容になっています。その後1824年に、教師であったエルンスト・ゲプハルト・アン
シュッツが、心変わりの部分は省き、もみの木の変わらぬ緑をたたえる歌詞を2節分
加えたことで、クリスマスの時期に歌われるようになっていきました。
 アメリカへは、ドイツ移民によってクリスマスツリーや『もみの木』の歌が伝えら
れました。"O Tannenbaum" の表題が "O Christmas Tree" へと変わり親しまれてい
ることも、クリスマスツリーの広まりと関係しているようで興味深いです。英語や日
本語に訳されたものを見ると、『もみの木』はクリスマスの歌の中でも特に、歌詞の
バリエーションが多い1曲といえそうです。引用部分にもあるように、聞きなじんだ
曲に別の歌詞をのせて歌うことは、きっと色々な場面で行われてきたのでしょう。
 さて、物語の中の「ちいさなもみのき」は、春になると森へ戻されました。そして
また次の冬、男の子の家へと運ばれます。その年に子どもたちは、男の子があたらし
く作った歌詞を "O Come, Little Children" のメロディーに合わせて歌いました。
もともと、"Ihr Kinderlein, kommet" というドイツのクリスマスキャロルで、イエ
スの誕生をお祝いするために、子どもたちみんな、さあおいでと歌います。『天使の
花かご』(谷村まち子編訳/偕成社)などの著作がある児童文学作家、クリストフ・
フォン・シュミットの詩を、ドイツの作曲家ヨハン・アブラハム・ペーター・シュル
ツの曲にのせたこの歌は、ドイツを中心にクリスマスのミサでもよく歌われています。
日本ではあまり知られていない曲ですが、バイオリン教則本の中で『クリスマスのう
た』として取り上げているものがあるので、ご存知の方もいらっしゃるかもしれませ
ん。
 では、最後にもう一度、物語へと戻りましょう。また穏やかな春の日がきて、「ち
いさなもみのき」は森に帰りました。そして、季節は移り変わります。その冬、いつ
もより早く降り始めた雪が、深く積もりました。けれどもいつまで待っても、あのお
父さんはやってきません。男の子はどうしたのでしょうか。ここでは、その年「ちい
さなもみのき」が聞いた曲が、イギリスで古くから歌われてきた "The Wassail Song"
であることをご紹介するに留めます。続きは、ぜひ絵本を開いてみてください。各曲
の楽譜も添えられていますので、一緒に口ずさんでみてはいかがでしょうか。みなさ
まどうぞ、心穏やかなクリスマスを。

★参考文献・ウェブサイト
『クリスマスの文化史』若林ひとみ著/白水社
『クリスマス音楽ガイド クリスマス・シーズンに歌いたい音楽50選』
                  川端純四郎・関谷直人編著/キリスト新聞社
"The Oxford Book of Carols"
          edited by Percy Dearmer, R. Vaughan Williams, Martin Shaw
                       (Oxford University Press, 1964)
"The New Oxford Book of Carols" edited by Hugh Keyte, Andrew Parrott
                       (Oxford University Press, 1992)
"The Christmas Carol Reader" by William Studwell (Haworth Press, 1995)

A Treasury of Christmas Carols: The Hymns and Carols of Christmas
http://www.hymnsandcarolsofchristmas.com

                          (増山麻美/加賀田睦美)

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●読者の広場● 海外児童文学や翻訳にまつわるお話をどうぞ!
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 このコーナーでは、本誌に対するご感想・ご質問をはじめ、海外児童書にまつわる
お話、ご質問、ご意見等を募集しています。mgzn@yamaneko.org までお気軽にお寄せ
ください。

※メールはなるべく400字以内で、ペンネームをつけてお送りください。
※タイトルには必ず「読者の広場」とお入れください。
※掲載時には、趣旨を変えない範囲で文章を改変させていただく場合があります。
※質問に対するお返事は、こちらに掲載させていただくことがあります。原則的に編
集部からメールでの回答はいたしませんので、ご了承ください。

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●読者のみなさまへ●

 ご愛読いただきまして、ありがとうございます。当メールマガジンは、来年も発行
月を3月、4月、6月、7月、9月、10月、12月の年7回とさせていただきます。ま
た、1月には増刊号、2月には号外を発行する予定です。毎月の発行とはなりません
が、毎号、充実した内容でお届けできるよう、編集部一同、努力してまいります。今
後ともご愛読のほど、よろしくお願い申し上げます。

                         「月刊児童文学翻訳」編集部

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●お知らせ●

 本誌でご紹介した本を、各種のインターネット書店で簡単に参照していただけます。
こちらの「やまねこ翻訳クラブ オンライン書店」よりお入りください。
http://www.yamaneko.org/info/order.htm
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           ・☆・〜 次 号 予 告 〜・☆・

 来年は、1月下旬発行の「やまねこ翻訳クラブ20周年記念」増刊号でスタートする
予定です。翻訳家の千葉茂樹さんと岩波書店編集者の須藤建さんをお迎えして開催し
たトークイベントのレポートなどをお届けします。また、ニューベリー賞・コールデ
コット賞・プリンツ賞の発表にともなう号外を2月中旬に発行する予定です。どうぞ
お楽しみに!

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▽▲▽▲▽   海外児童書のシノプシス作成・書評執筆を承ります   ▽▲▽▲▽

  やまねこ翻訳クラブ( yagisan@yamaneko.org )までお気軽にご相談ください。

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             http://www.litrans.net/
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編集者の方々へのインタビューもあります!    〈フーダニット翻訳倶楽部〉
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★広報ブログ「やまねこ翻訳クラブ情報」(litrans グループ ブログ内)
                  http://litrans.g.hatena.ne.jp/yamaneko1/
 ※各掲示板の話題やクラブの動きなど、HOTな情報をご紹介しています。

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●編集後記●今年、やまねこ翻訳クラブは発足20周年、やまねこ賞も20回目を迎える
という、大きな節目の年でした。ここまで歩んでこられたのも、多くの方々の応援や
ご協力のおかげです。本当にありがとうございます。この12月号を区切りに、わたし
は編集人を退任させていただきます。約6年の間、本当にたくさんのことを学ばせて
もらいました。この経験はわたしの宝物です。編集作業をともにしてくれた仲間にも
心からの感謝を。本誌は編集人を交代しながらこれからも続いていきます。来年もど
うぞよろしくお願いいたします。(か)
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発 行 やまねこ翻訳クラブ
編集人 蒲池由佳/三好美香/平野麻紗(やまねこ翻訳クラブ スタッフ)
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    熊谷淳子 小島明子 佐藤淑子 武富博子 手嶋由美子 名倉ゆり
    冬木恵子 増山麻美 森井理沙 山本真奈美 山本みき 横山和江
協 力 出版翻訳ネットワーク 管理人 小野仙内
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