メニュー「月刊児童文学翻訳」バックナンバー>2013年12月号   オンライン書店
※1月は定期休刊です。1月号外を1月末に発行予定です。どうぞお楽しみに!

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2013年12月号
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  =====★   月 刊  児 童 文 学 翻 訳   ★=====
   =====☆   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ☆=====
                                No.154
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児童文学翻訳学習者による、児童文学翻訳学習者のための、電子メール版情報誌
http://www.yamaneko.org                         
編集部:mgzn@yamaneko.org     2013年12月15日発行 配信数 2380 無料
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●2013年12月号もくじ●
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◎特集:第16回やまねこ賞──会員が選んだ、今年の児童書ベスト5は?
◎注目の本(邦訳絵本):『ちがうねん』ジョン・クラッセン文・絵/長谷川義史訳
◎賞速報
◎イベント速報
◎読者の広場

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    ☆☆ FOSSIL 〜 Made in USA のライフスタイルブランド ☆☆
 独創的なデザインで世界120ヶ国以上で愛用されているフォッシルはアメリカを代
表するライフスタイルブランドです。1984年、時計メーカーとして始まったフォッシ
ルは時計をファッションアクセサリーのひとつと考え、カジュアルでポップなライン
からフォーマルなシーンにも使えるアイテムまで、年間300種類以上のモデルを発売
し続けています。またフォッシル直営店では、時計以外にもレザーバッグ、革小物、
ファッションサングラスなどのラインを展開しています。
TEL 03-5992-4611
http://www.fossil.co.jp/     (株)フォッシルジャパン:やまねこ賞協賛会社

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●特集●第16回やまねこ賞            協賛:(株)フォッシルジャパン
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 さる11月1日から17日までの間、やまねこ翻訳クラブ恒例のやまねこ賞の投票が、
当クラブ特設掲示板にて開催されました。やまねこ賞は、前年10月から本年9月まで
に出版された邦訳児童書、未訳・既訳・言語を問わない原書、および、過去1年間に
読んだ邦訳児童書を対象に、会員がベスト5を選び、大賞作品を決定するものです。
新刊を対象とする読み物部門と絵本部門の大賞に輝いた作品の翻訳者には、賞状と副
賞が贈られます。今年も株式会社フォッシルジャパンより、副賞の時計をご提供いた
だきました。

副賞の時計の写真

「読み物」「絵本」の分類については、原則として各出版社、書店などの種別を参考 に、当クラブの判断で決定しています。  記事中に記載した、本誌の過去のレビューについては、やまねこ翻訳クラブウェブ サイトに掲載のバックナンバーをご参照ください。 http://www.yamaneko.org/mgzn/  すべての投票と感想はこちらでご覧いただけます。 http://www.yamaneko.org/yn_award/index.htm  やまねこ翻訳クラブは、会員・非会員を問わず、海外児童書を主とした本の話題が 書き込める「読書室掲示板」を運営しております。 http://www.yamaneko.org/dokusho/index.htm      ★☆★☆【2013年 第16回やまねこ賞 読み物部門】☆★☆★ ★大賞 『マルセロ・イン・ザ・リアルワールド』              フランシスコ・X・ストーク作 千葉茂樹訳 岩波書店 Amazonで詳細を見る  hontoで詳細を見る  Amazonで原書を見る  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  17歳のマルセロは発達障害を抱えていたが、心の調和を保てる環境で、のびやかな 生活をしていた。だが、現実に適応することを求める父親に法律事務所でのアルバイ トを命じられ、「リアルな世界」と向き合うことに。真っ正直で繊細であるがゆえに、 戸惑いは尽きない。そんななか、事務所の秘密を知ってしまったマルセロは、ある決 断を迫られる。現実の厳しさをあぶり出しつつも、美しさすら感じさせる世界観が魅 力的な本書は、やまねこ会員からの圧倒的な支持を集め、堂々の大賞受賞となった。 (本誌2013年9月号「特集1」のレビューをご参照ください) ◎ふだん、わかったふりをしてやりすごしていることの意味を、マルセロは真正面か らひとつずつ問い直していく。その過程で摩擦も生まれれば、真実も掘り起こされる。 つらい目にも遭えば、おかしみも生じる。そのすべてがすばらしい。(BUN) ◎世間の波にさらされて傷つき悩みながらも成長していくマルセロの成長がうれしい。 読後すがすがしい気持ちになれる作品。(shoko) ◎マルセロの真面目な考え方が好き。本を通して彼と話すのが楽しかった。(ちゃぴ) ◎クールな映画をみたあとのような読後感で、目を閉じてしばし暗い映画館に座って いる気分にひたりました。(NON) ◎『夜中に犬に起こった奇妙な事件』をちょっと思いださせる本。こちらのほうがよ りリアルな感じはします。(りり) ◎ごまかさずにていねいに自分の心と向き合うのは大変だけれど価値のあることなの だとマルセロに教わった気がします。(くらら) ☆~~~~~~~~~~~~~~~~【受賞のことば】 翻訳家 千葉茂樹さん ~~~~~~~~~~~~~~~~☆ |                                    | |マルセロには一目ぼれでした。ぐいぐい引き込まれ、次の展開が気になって気に| |なって、読み終わったときにはぜひとも自分の手で訳したいと願っていました。| |ある事情で、一度は手の届かないところへいってしまったのですが、思いがけず| |再度チャンスがめぐってきたときにはとてもうれしかったものです。そんな思い| |入れのある作品を、熟練の目利きぞろいのやまねこさんたちに高評価いただき、| |翻訳者冥利につきるというものです。ほんとうにありがとうございました!  | ☆                                    ☆  ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ◆2位 『モッキンバード』キャスリン・アースキン作 ニキリンコ訳 明石書店 Amazonで詳細を見る  hontoで詳細を見る  Amazonで原書を見る  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  アスペルガー症候群のケイトリンは、物事を理詰めで考える傾向を持ち、他人の気 持ちを推し量るのは苦手だ。そんなケイトリンの理解者だったお兄ちゃんが、銃乱射 事件で死んでしまった。お兄ちゃんの突然の死を、ケイトリンは自分なりに受けとめ ようとしているが、その言動はパパを悲しくさせてばかり。どうにかして、気持ちの 〈区切り〉を見つけないと……。主人公による一人称の語りが、読者の心をわしづか みにする感動作。2010年全米図書賞児童書部門受賞。 (本誌2011年4月号「注目の本」の未訳レビューをご参照ください) ◎とにかく訳が衝撃的だった。句読点なしに長い文章をひらがなだけで綴ることで、 パニックの様子を表現するなんて!(ナウシカ) ◎アスペルガー症候群を抱える主人公に対する、著者の温かいまなざしが感じられる 作品。(mapleleaf) ◎主人公の少女ケイトリンの変わった言動のすべてに、彼女なりの理由があります。 作品のテーマは重いけれど、とても胸に響く素晴らしい作品でした。(MOMO) ◎ケイトリンはアスペルガー症候群。主人公の理屈っぽさ、とめどもなく思考が展開 していく様子が訳文からも伝わってくるすごい物語だった。(モリー) ◆3位 『発電所のねむるまち』     マイケル・モーパーゴ作 ピーター・ベイリー絵 杉田七重訳 あかね書房 Amazonで詳細を見る  hontoで詳細を見る  Amazonで原書を見る  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  語り手であるマイケルは、ほぼ半世紀ぶりに故郷を訪ねた。思い出されるのは、タ イ生まれのペティグルーさんと友だちになり、美しい湿地で楽しく過ごした少年時代。 そして、忘れることのできない苦い経験。ペティグルーさんの湿地に、原子力発電所 の建設話が持ち上がったのだ。ペティグルーさんは亡き夫が愛した素晴らしい自然を 守るため反対を訴えるが、村人たちの声は次第に建設賛成に傾いていった。短い物語 ながら、投げかけるメッセージが強い印象を残す秀作。 ◎子ども時代の思い出の残る町を再訪した作者は、原発建設で変わり果てたふるさと を目にする……。人間のおろかさを糾弾する本。(あんこ) ◎原子力発電所からそう遠くないところに住んでいるのに、知らないことばかりで猛 省しました。(みーこ) ◎モーパーゴお得意の回想もの。そしてその回想の行き着く先はおそらく……と、今 この時代に読みたい気持ちにさせるための、あえてのネタバレ邦題か。これは過去で あり、現実であり、未来でもある。美しい文章が、事態の深刻さを浮き彫りにする。 (ぎねびあ) ◆4位(2作同点) 『おいでフレック、ぼくのところに』                  エヴァ・イボットソン作 三辺律子訳 偕成社 Amazonで詳細を見る  hontoで詳細を見る  Amazonで原書を見る  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  お金持ちの家庭に育つ少年ハルが本当にほしいのは、買い与えられる高価なおもち ゃではなくて、自分のそばにいてくれる犬だった。だが両親は、週末だけのレンタル 犬でお茶をにごそうとする。だまされたうえに、大好きな犬フレックと引き離された ハルは、フレックのいる「おてがるペット社」に忍び込んだ――。少年と犬の絆、逃 避行に加わる犬たちの活躍ぶりが、明るく心温まるタッチで描かれた作品。愚かな大 人たちへの皮肉も痛烈で、大人の読者には身につまされる場面があるかも? ◎イボットソンの遺作。まさにザ・児童文学。気持ちのいい物語でした。(hanemi) ◎居場所を求める少年と犬たちの旅物語。子どもと動物への愛情がひしひしとあふれ 出ていて、作者の思いの深さを感じた。(キジトラ) ◎まさかあのイボットソンが、普通に子犬と少年のお涙頂戴物語を書くなんてことは ……と、タイトルに若干の不安を覚えたが、心配ご無用のイボットソンワールド全開 だった。もう彼女の作品が新しく生みだされることがないなんて……イボットソンよ、 永遠に。(ぎねびあ) ◆4位(2作同点) 『問う者、答える者』『人という怪物』                  (「混沌(カオス)の叫び」シリーズ2、3)             パトリック・ネス作 金原瑞人・樋渡正人訳 東京創元社 『問う者、答える者』(上) Amazonで詳細を見る  hontoで詳細を見る  Amazonで原書を見る 『問う者、答える者』(下) Amazonで詳細を見る  hontoで詳細を見る 『人という怪物』(上) Amazonで詳細を見る  hontoで詳細を見る  Amazonで原書を見る 『人という怪物』(下) Amazonで詳細を見る  hontoで詳細を見る  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  シリーズ1作目『心のナイフ』以降、ガーディアン賞、コスタ賞、カーネギー賞を 立て続けにさらった衝撃の3部作が完結。人や動物の意識がノイズとなってうずまく 星を舞台に、独裁者・ゲリラ部隊・先住生物の、三つ巴の戦いの幕が切って落とされ る。暴力を憎みつつ、戦いに加わるトッドとヴァイオラ。絶望的な状況のなか、ふた りを支えるのは互いへの強い想いのみだ。この混沌とした世界に、平和への道はある のか!? (本誌2011年7月号「賞情報」の未訳レビューをご参照ください) ◎読むのに体力と覚悟がいるシリーズ、気軽にどうぞとはとても言えないけれど、絶 対に手に取る価値のあるすごい作品。(からくっこ) ◎世界観、価値観の独自性と密度の高さ、それに負けない人物造形や心理描写のリア リズムがとにかく圧倒的。物語としての評価は人によって大きく分かれると思うが、 私には、究極の希望が見えた。(くるり) ◎読んでいて苦しくなりました。でも3巻も読まなければと思っています。(コアラ ン)※第2巻『問う者、答える者』への投票 ◆6位以下の作品 6位『日ざかり村に戦争がくる』 7位『沈黙の殺人者』 8位『アリブランディを探して』『さよならを待つふたりのために』(2作同点) 10位『負けないパティシエガール』       ★☆★☆【2013年 第16回やまねこ賞 絵本部門】☆★☆★ ★大賞 『ちがうねん』ジョン・クラッセン文・絵 長谷川義史訳 クレヨンハウス Amazonで詳細を見る  hontoで詳細を見る  Amazonで原書の詳細を見る  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 「このぼうし ぼくのと ちがうねん とってきてん」小さな魚の盗みの告白ではじ まる、ちょっぴりドキドキの物語は、暗い水の中を舞台に、ゆっくりとすすんでいく。 こわいような、おもしろいような、でもやっぱりこわいような!? 大阪弁独特のお かしみと、シンプルながら親しみのある絵が絶妙にマッチし、最後の1ページまで目 が離せない。ものがたりに隠された仕掛けのせいで、ぼうしを盗んだ小さな魚に肩入 れしたくなる人が続出。おもしろさがひと味「ちがうねん」な本書に多くの票が集ま り、今年度やまねこ賞大賞に輝いた。 (本誌今月号「注目の本」のレビューをご参照ください) ◎今回の主人公は、大きな魚のぼうしを盗んだ小さな魚。気付かれないだろうと逃げ ていく小さな魚を、大きな魚が追い詰めていくようすがサスペンス!(SUGO) ◎「やましい」という気持ちをとてもよくあらわした絵本。いろいろ身に覚えがあっ て小魚に共感したところで、あの終局。ガガーンってなります。(ayo) ◎大胆でいてシンプルな絵、温かみがありシンプルな訳、そのふたつのバランスが絶 妙です。絵も文も同じレベルで楽しめ、どちらもシンプルながら深い内容。こどもも おとなも思わず笑ってしまう作品です。(Wink) ◎とぼけた味が好き。ラストの場面から、さまざまな想像が浮かびます。余韻の残る 結末がいい。(うりこひめ) ◎ひさびさに、ほぼ大人になりかけた息子といっしょに笑えた絵本でした。(りり) ◎面白さと怖さのバランスが絶妙〜!(おとむとむ) ☆~~~~~~~~~~【受賞のことば】 絵本作家・翻訳家 長谷川義史さん ~~~~~~~~~~☆ |                                    | |絵を描くのが生業です。文章に絵をつけるとき、その文章を読み返してそこに浮| |かぶ心情を描ければと、文章に寄り添います。そのままを説明する絵ではなく、| |いかにそこから離れるか、そこが重要で難題でやりがいです。離れすぎてはいけ| |なくて、付かず離れず、すぐ近くに座っているようでも横顔がちらっと見えるく| |らいの位置に。そんな絵を描く気持ちで翻訳しました。見えないものを探すこと| |は楽しいことです。                           | ☆                                    ☆  ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ◆2位 『わたしのすてきなたびする目』        ジェニー・スー・コステキ=ショー文・絵 美馬しょうこ訳 偕成社 Amazonで詳細を見る  hontoで詳細を見る  Amazonで原書の詳細を見る  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  うまれつき、「たびする目」をもつジェニー・スーは、左目がふらふらしたって気 にしない。だって「たびする目」は芸術家の目。冒険をして、いろんな発見をする目 なんだから。でもある日、目医者さんに行ったら、左目がなまけちゃってるね、なん て言われて……。斜視である「たびする目」が見た景色そのもののような、ポップで 鮮やかで楽しい絵が、ちがうってすてきなことだと教えてくれる。 ◎斜視をテーマにしたカラフルでおしゃれな本。前向きな主人公が魅力的。お母さん もすてき。(hanemi) ◎困難でつらい状況なのに、それはすてきな登場人物たちが、色とりどりのすてきな イラストの中で解決して見せてくれた。(おちゃわん) ◎主人公の女の子の前向きな姿勢がいとおしく、作品から元気をもらえました。逆境 をプラスの力に変える女の子と、それを支えるお母さんとの親子愛もすてきだなと思 いました。(ロールちゃん) ◎主人公の前向きな考え方とお母さんの工夫がよかった。(モリー) ◆3位(2作同点) 『紙のむすめ』  ナタリー・ベルハッセン文 ナオミ・シャピラ絵 もたいなつう訳 光村教育図書 Amazonで詳細を見る  hontoで詳細を見る  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  白い紙からうまれた、ひとりぼっちの紙のむすめのもとに飛んできたものは、1枚 の白い紙だった……。むすめはその紙を使い、欲しいものをつぎつぎと切り出してい く。どこまでもどこまでも続く、切り絵だけの世界。その美しさはページをめくるた び指でなぞりたくなるほどだ。孤独なむすめの行く末を見守りながら、紙のもつ不思 議な立体感と魅力を、思う存分あじわうことができる1冊。 ◎繊細で美しい切り絵の世界。ストーリーは創世記を思わせ、いきいきとした動物た ちが印象的だった。(キジトラ) ◎評判どおりきれいな切り絵。スカートから桃を切り出し、食べ、残った種から木が 生え……というところが好きです。(ayo) ◎美しい切り絵の絵本。今まで出会ったことがないタイプの作品で、独特の味わいが ありました。(みちこ) ◆3位(2作同点) 『ぼくのサイ』                ジョン・エイジー文・絵 青山南訳 光村教育図書 Amazonで詳細を見る  hontoで詳細を見る  Amazonで原書の詳細を見る  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ある日ぼくは、「かわったペットの店」でサイを1頭かった。サイは思っていた以 上に何もしなくて、がっかりだった。専門家に聞いたところ、2つのことしかしない のだと分かった。それは、突拍子もないわりに、何の役にも立たなそうなことだった ……。主人公の少年がいきなりサイをかう、という驚きをかみしめる間もなく、つぎ つぎと予測不能な出来事が巻き起こる。ねぼけまなこで何もしないサイの特技とは? 最後に明かされるもうひとつのひみつを知れば、もう何がおこっても不思議はないと 気付くはず。 ◎とぼけた絵とストーリーが楽しい。おとなしいサイの豹変ぶりに子どもたちは喝采 を送るだろう。(キジトラ) ◎サイに対するぼくの率直な意見がツボでした。とぼけた表情のイラストも作品によ くマッチしています。(ロールちゃん) ◎サイの表情がたまりません。(コアラン) ◆5位 『ガール・イン・レッド』    アーロン・フリッシュ文 ロベルト・インノチェンティ原案・絵 金原瑞人訳                                   西村書店 Amazonで詳細を見る  hontoで詳細を見る  Amazonで原書の詳細を見る  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  赤ずきんを模したこのお話の森には、木がほとんど生えていない。コンクリートと レンガでできた森だ。オオカミは人間の姿をし、木陰でなく路地裏に潜んでいる。お 話の筋書きは分かっているはずなのに、リアルな設定が、手に汗を握らせる。赤ずき んちゃんのもとに無事、猟師はやってくるのか? 現代の教訓を含んだスリリングな 1冊。 ◎現代版赤ずきん! 毒気たっぷり。怖くてドキドキしてしまった。(おちゃわん) ◎現代版「赤ずきん」は怖かった。ひたひたと迫り来る暗い影に背筋がぞくっ。ぎっ しりと描きこまれた絵とアレンジにも脱帽!(MOMO) ◎絵の描きこみが圧巻!(ちゃぴ) ◎都会の赤ずきんちゃんには危険がいっぱい。細かく描きこまれた絵がおもしろい。 (コアラン) ◆6位以下の作品 6位『そんなときどうする?』 7位『いいこでねんね』『このあかいえほんをひらいたら』『こんな家にすんでたら』   『なりたいものだらけ』『ねこのピート だいすきなしろいくつ』『ふかいあな』                                  (6作同点)  ★☆★☆【2013年 第16回やまねこ賞 原書部門・オールタイム部門】☆★☆★  原書部門とオールタイム部門は、新刊のみを対象とする読み物部門・絵本部門と区 別して、やまねこ賞「別賞」と呼んでいるもの。いずれも1人5作品までを、順位を つけずに投票する。  今年1位に輝いた作品は、原書部門が "The Terrible Thing that Happened to Barnaby Brocket"(『浮いちゃってるよ、バーナビー!』ジョン・ボイン作/代田亜 香子訳/作品社)、オールタイム部門は『サースキの笛がきこえる』(エロイーズ・ マッグロウ作/斎藤倫子訳/偕成社)で、獲得票数はそれぞれ3票であった。両部門 とも、数多くの作品に票が投じられたので、受賞作品リストでお楽しみいただければ と思う。 【参考】 ▽やまねこ賞受賞作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室) http://www.yamaneko.org/bookdb/award/yn/index.htm ▽やまねこ賞大賞受賞作品一覧(やまねこ翻訳クラブ資料室) http://www.yamaneko.org/bookdb/award/yn/ichiran.htm                            (小島明子/岡田衣央)

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●注目の本(邦訳絵本)●絵と文、語りと展開のギャップを楽しむ
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『ちがうねん』 ジョン・クラッセン文・絵/長谷川義史訳
クレヨンハウス 定価1,575円(税込) 2012.11 33ページ ISBN 978-4861012334
"This Is Not My Hat" by Jon Klassen
Candlewick Press, 2012
★2013年コールデコット賞受賞作品
Amazonで詳細を見る  hontoで詳細を見る  Amazonで原書の詳細を見る

 暗い海の中、小さな魚が帽子を頭に乗っけて泳いでいる。「このぼうし ぼくのと
ちがうねん」。小魚は、大きな魚から盗んだことを告白する。それからしばらく見開
きいっぱいに描かれた大魚の絵が続くのだが、これが小魚の楽観的な独白とことごと
く対照的で愉快だ。小魚が「まだ ねてるわ」と言えば、大魚は目をぱっちりと開け、
「あやしまへんわ」と言えば、疑い深げに目を細める、といった調子。そして、小魚
は、安全な場所へ逃げこんだように見えたが……。最後の6ページは文章がなく、帽
子を盗んだ報いは、絵だけで語られていて、それがかえって恐ろしい。
 墨で描かれ、コンピューター処理された絵は、使われている色こそ少ないが、繊細
なグラデーションがつけられており、奥行きのある美しい仕上がりとなっている。動
きも抑えられているため、読者は作者の思惑通り、変化した箇所に目が引きつけられ
る。登場するのは小魚、大魚、カニの3匹だけで、プロットは、逃げて追う、といた
って単純だ。そして文章も必要最低限。少ないからこそ、行間を読む力が求められる。
例えば、小魚の最後のセリフは二重の意味があり、結末を暗示しているから、しっか
りとらえたいところだ。絵や文で説明されていないことは読者が想像するしかないが、
想像力は十人十色、そして無限だ。読み手のイマジネーションを味方につけ、シンプ
ルな要素が最大の相乗効果を生む絵本なのである。
 また、大阪弁の訳は、帽子を盗んだことに対する悪意のなさを際立たせ、作品全体
にいい意味で軽さを与えている。実際、4歳の娘に読み聞かせたところ、語調が楽し
かったらしく、「ありがとうねん」「ちょうだいねん」と、ちょっとした「〜ねん」
ブームが起きた。一方、こののんびりとした言葉づかいこそが、ショッキングな結末
とのギャップを生み、本作をシュールな魅力を持つ作品に仕立てている。
 最後に、なぜ〈帽子〉なのだろうか。英語には、"wear two hats"、"by this hat"
など、帽子を使ったイディオムが数多く存在する。その意味するところは、役割やア
イデンティティー、プライドなど、個にとって重要なものばかり。ということは……?
考えれば考えるほど深みが増す本作。まさに "hats off" (脱帽)ではないか。

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【文・絵】ジョン・クラッセン(Jon Klassen):カナダ出身。現在は、米国カリフ
ォルニア州在住。2010年、"Cats' Night Out"(Caroline Stutson 文)のイラストで
栄誉あるカナダ総督文学賞児童書部門を受賞し、注目を集める。邦訳に、『どこいっ
たん』(長谷川義史訳/クレヨンハウス)があり、本作と同じ帽子盗みのテーマを盗
まれた側の視点から描いている。

【訳】長谷川義史(はせがわ よしふみ):大阪府生まれ。絵本作家・翻訳家。2000
年、『おじいちゃんのおじいちゃんのおじいちゃんのおじいちゃん』(BL出版)で
デビュー。2007年に日本絵本賞を受賞した『ぼくがラーメンたべてるとき』(教育画
劇)をはじめ、創作多数。訳書にはほかに『どこいったん』、『よふかしにんじゃ』
(バーバラ・ダ・コスタ文/エド・ヤング絵/光村教育図書)がある。

【参考】
▼長谷川義史公式ウェブサイト
http://www.eonet.ne.jp/~mousebbb/hasegawahp/

▼ジョン・クラッセン公式ブログ
http://jonklassen.blogspot.com/

▽ジョン・クラッセン作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/author/k/jklassen.htm

                                (相良倫子)

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●賞速報━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

★2013年全米図書賞(児童書部門)受賞作品発表
★2013年ニルス・ホルゲション賞発表
★2013年エルサ・ベスコフ賞発表
★2014年度アストリッド・リンドグレーン記念文学賞候補発表
                   (受賞者の発表は2014年3月25日の予定)
★2013年カナダ総督文学賞(児童書部門)受賞作品発表

 海外児童文学賞の書誌情報を随時掲載しています。「速報(海外児童文学賞)」を
ご覧ください。
http://www.yamaneko.org/cgi-bin/sc-board/c-board.cgi?id=award

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●イベント速報━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

★展示会情報
 山梨県立美術館「動物ものがたり」
 北九州市立美術館分館「レオ・レオニ 絵本のしごと」 など

★講演会情報
 ふくやま美術館「佐野洋子の絵本作りの周辺から」 など

 詳細やその他のイベント情報は、「速報(イベント情報)」をご覧ください。なお、
空席状況については各自ご確認願います。
http://www.yamaneko.org/cgi-bin/sc-board/c-board.cgi?id=event

                           (笹山裕子/冬木恵子)

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●読者の広場● 海外児童文学や翻訳にまつわるお話をどうぞ!
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 このコーナーでは、本誌に対するご感想・ご質問をはじめ、海外児童書にまつわる
お話、ご質問、ご意見等を募集しています。mgzn@yamaneko.org までお気軽にお寄せ
ください。

※メールはなるべく400字以内で、ペンネームをつけてお送りください。
※タイトルには必ず「読者の広場」とお入れください。
※掲載時には、趣旨を変えない範囲で文章を改変させていただく場合があります。
※質問に対するお返事は、こちらに掲載させていただくことがあります。原則的に編
集部からメールでの回答はいたしませんので、ご了承ください。

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●お知らせ●

 本誌でご紹介した本を、各種のインターネット書店で簡単に参照していただけます。
こちらの「やまねこ翻訳クラブ オンライン書店」よりお入りください。
http://www.yamaneko.org/info/order.htm
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           ・☆・〜 次 号 予 告 〜・☆・

 ニューベリー賞・コールデコット賞・プリンツ賞の発表にともなう号外を1月末に
発行する予定です。どうぞお楽しみに!

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  やまねこ翻訳クラブ(yagisan@yamaneko.org)までお気軽にご相談ください。

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●編集後記●今年もやまねこ賞を開催し、こうして多くの作品を紹介できたことをう
れしく思います。やまねこ賞は、会員同士で盛り上がるだけでなく、海外児童文学の
魅力を多くの人に伝える窓口としても意義があると信じています。上位にランクイン
した作品を、ぜひ読んでみてください。(お)
 今月号をもちまして、編集人を卒業することとなりました。取材、情報掲載、協賛
などでご協力いただいたみなさま、ご意見、ご感想をくださったみなさま、読者のみ
なさま、ありがとうござました。編集人を交代しながら当メルマガは続いていきます。
今後とも、よろしくお願いいたします。(う)
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発 行 やまねこ翻訳クラブ
編集人 大作道子/蒲池由佳/植村わらび(やまねこ翻訳クラブ スタッフ)
企 画 尾被ほっぽ 岡田衣央 加賀田睦美 かまだゆうこ 小島明子 相良倫子
    笹山裕子 武富博子 早川有加 冬木恵子 美馬しょうこ 村上利佳
    森井理沙
協 力 出版翻訳ネットワーク 管理人 小野仙内
    ayo あんこ SUGO ながさわくにお みーこ ゆま
    html版担当 ぐりぐら
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