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2011年12月号
   =====☆                    ☆=====
  =====★   月 刊  児 童 文 学 翻 訳   ★=====
   =====☆   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ☆=====
                                No.136
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児童文学翻訳学習者による、児童文学翻訳学習者のための、電子メール版情報誌
http://www.yamaneko.org                         
編集部:mgzn@yamaneko.org     2011年12月15日発行 配信数 2360 無料
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●2011年12月号もくじ●
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◎特集:第14回やまねこ賞──会員が選んだ、今年の児童書ベスト5は?
◎注目の本(邦訳絵本):『おきゃく、おことわり?』『おとまり、おことわり?』
     ボニー・ベッカー文/ケイディ・マクドナルド・デントン絵/横山和江訳
◎賞速報
◎イベント速報
◎お菓子の旅:第57回 しっかり食べて、元気を出して! 〜チャパティ〜
◎読者の広場

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     ☆☆ FOSSIL 〜 Made in USA のライフスタイルブランド ☆☆
 独創的なデザインで世界100ヶ国以上で愛用されているフォッシルはアメリカを代
表するライフスタイルブランドです。1984年、時計メーカーとして始まったフォッシ
ルは時計をファッションアクセサリーの一つと考え、カジュアルな「TREND」ライン
からフォーマルなシーンにも使える「CERAMIC」など、年間300種類以上のモデルを発
売し続けています。またフォッシル直営店では、時計以外にもレザーバッグ、革小物、
ファッションサングラスなどのラインも展開しています。
TEL 03-5992-4611
http://www.fossil.co.jp/     (株)フォッシルジャパン:やまねこ賞協賛会社

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●特集●第14回やまねこ賞            協賛:(株)フォッシルジャパン
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 さる11月1日から15日の間、やまねこ翻訳クラブ恒例のやまねこ賞の投票が、当ク
ラブ特設掲示板にて開催されました。やまねこ賞は、前年10月から本年9月までに出
版された邦訳児童書、未訳・既訳・言語を問わない原書、および、過去1年間に読ん
だ邦訳児童書を対象に、会員がベスト5を選び、大賞作品を決定するものです。新刊
を対象とする読み物部門と絵本部門の大賞に輝いた作品の翻訳者には、賞状と副賞が
贈られます。今年も株式会社フォッシルジャパンより、副賞の時計をご提供いただき
ました。

「読み物」「絵本」の分類については、原則として各出版社、書店などの種別を参考
に、当クラブの判断で決定しています。
 記事中に記載した、本誌の過去のレビューについては、やまねこ翻訳クラブウェブ
サイトに掲載のバックナンバーをご参照ください。
http://www.yamaneko.org/mgzn/
 すべての投票と感想はこちらでご覧いただけます。
http://www.yamaneko.org/yn_award/index.htm
 やまねこ翻訳クラブは、会員・非会員を問わず、海外児童書を主とした本の話題が
書き込める「読書室掲示板」を運営しております。
http://www.yamaneko.org/dokusho/index.htm


     ★☆★☆【2011年 第14回やまねこ賞 読み物部門】☆★☆★

★大賞 『闇のダイヤモンド』キャロライン・B・クーニー作 武富博子訳 評論社
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 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 アフリカからの難民家族を一時的に自宅で受け入れることになったフィンチ家。高
校生のジャレッドは、他人と部屋を共有するなんてまっぴらだと思うが、妹モプシー
はルームメイトができると単純に喜んでいる。そして到着した一家は、ジャレッドの
想像していた以上に奇妙な家族だった。そのうえ、なにか恐ろしい秘密をかかえてい
るらしい――。アフリカの内戦など重い題材を扱いながらも決して暗くなりすぎない。
冒頭から結末まで読者を引きつけて離さない、奥の深いミステリー。2008年MWA賞
(エドガー賞)YA小説賞候補作品。
(本誌2011年10月号「出版社シリーズ研究連動レビュー」をご参照ください)

◎アメリカの普通の子どもと、複雑な事情を抱えたアフリカ難民が同居し、しだいに
共感していきます。他者の境遇に思いを寄せる想像力の大切さが胸にしみました。
(キジトラ)
◎濃密な文体で過酷な状況をぐいぐい読ませる。今年一番集中して読んだ本。(さか
な)
◎最後までハラハラ。そして読後には熱いものが胸にこみあげてきて涙が……。ミス
テリーってこんなにおもしろかったのか!(MOMO)
◎前半は少しずつ明かされる難民家族の謎、後半は心を閉ざした少女の気持ちの変化
に心を奪われ、ラストは感動でいっぱいになった。(ちゃぴ)
◎アフリカの抱える悲しい現実に心が痛みましたが、この作品に出会ったおかげで視
野が広がりました。登場する子どもたちそれぞれが、前へと進もうとする姿に心を打
たれました。(Mar)

☆~~~~~~~~~~~~~~~~~【受賞のことば】 翻訳家 武富博子さん ~~~~~~~~~~~~~~~☆
|                                    |
|やまねこ賞受賞だなんて、夢のようです。原作を読み終わったときは思わず泣い|
|てしまい、訳している間はひとつひとつの言葉や文の奥に作者の経験や思いの深|
|さを発見していくようでした。社会派ミステリーの枠におさまらない原作の魅力|
|が伝わったのだとしたら、本当にうれしいです。この本に出てくる難民の子ども|
|の苦しみに、今年は特に共感した気がします。中学生から大人まで、心のこもっ|
|た多くの感想に接し、わたしも希望をもらいました。ありがとうございました!|
☆                                    ☆
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◆2位 『きみに出会うとき』
             レベッカ・ステッド作 ないとうふみこ訳 東京創元社
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 あるときから、ミランダのもとに謎のメモが届くようになる。「去年の秋から今年
の1月までに起こったことを手紙に書いてほしい」「きみの友だちの命がかかってい
る」さらに、近い未来を予言する内容もあり、すべてメモのとおりのことが起こって
いく。読み終わったときにパズルのピースがピタリとはまるような、爽快なタイムト
ラベルファンタジー。2010年ニューベリー賞受賞作品。
(本誌2010年2月号「特集」の未訳レビューをご参照ください)

◎読み終えると、また最初から読み返したくなる。登場人物の中で一番印象に残った
のは、ジュリア。ジュリアのこれからの物語を想像して、心が温かくなった。
(hanemi)
◎読み出したら止められなくて一気読み。面白かった〜と満足感いっぱいで本を置き
ました。小4の息子も一気読みしていました。(コアラン)
◎なかなか謎が解けず、最後に「なるほど!」。ラングルの作品がキーになっている
のも、私のつぼにはまった。(ワラビ)
◎「きみ」が果たして誰なのか。なかなか謎が解けず、読み始めはもやもやしていた
が、読み終わってからもう一度読み返して確認したくなる風変わりなタイムトラベル
もの。(タイ)

◆3位 『きみ、ひとりじゃない』
             デボラ・エリス作 もりうちすみこ訳 さ・え・ら書房
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 故郷バグダッドをあとにした15歳のアブドゥルは、フランス、カレーの港から密輸
業者のボートでイギリスへ渡ろうとするが、ボートのなかで争いが起こる。生き残っ
たのは業者の甥のヨナ、ロマ民族(ジプシー)のロザリア、ロシア人のチェスラブ、
そしてアブドゥルの4人だった。耳をふさぎたくなるような悲惨な事情により、故郷
に居場所をなくした少年少女の物語。

◎ダントツ1位です。故郷に住めなくなった少年少女たちが命がけでドーバー海峡を
渡る緊張感、主人公の少年がペニーレインを目指した理由が明かされるラストまで胸
にせまってきます。本を読んで久しぶりに涙しました。(SUGO)
◎デボラ・エリスの作品には、いつも胸をゆさぶられる。(ワラビ)
◎過酷な状況で、何とか生きていこうとする強い気持ちとプライドに圧倒されました。
(おとむとむ)
◎故郷を離れ、ひとりで生きる道を選ばざるをえなかった子どもたちの境遇に胸がし
めつけられますが、そんな彼らが出会い、少しずつ心を通わせていく姿に希望を感じ
ました。(asayaka)

◆4位 『ハティのはてしない空』カービー・ラーソン作 杉田七重訳 鈴木出版
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 幼いころから親戚の家をたらい回しにされてきた16歳のハティは、ある日ひょんな
ことから開拓途中の土地を譲り受けることになった。10か月以内に必要条件を満たせ
ば、広大な開墾地が自分のものになる。やっと自分の居場所が見つかると大喜びのハ
ティは、たったひとりでモンタナへと向かう。20世紀初頭のアメリカ北西部を舞台に
した心あたたまる物語。2007年ニューベリー賞オナー(次点)に選ばれる。

◎自らの土地を得るために開墾にとりくむ16歳の少女のたくましさと、隣人との助け
合いが感動的。また、敵国出身者を排斥する愛国キャンペーンの恐ろしさは現代のわ
たしたちにも無関係でなく、意義深い作品だと感じました。(キジトラ)
◎隣人同士が助けあって過酷な土地を開墾していく姿が印象的でした。戦中の差別な
どにも触れられていて、考えさせられました。(モリー)
◎ひとりで土地を開いて畑にする。そんな大変なことを10代で行おうとするハティの
姿に励まされた。(shoko)
◎両親のいない16歳のハティが、会ったこともないおじの遺言により、自分の土地を
手に入れようと奮闘する20世紀初頭の物語。モンタナの冬の厳しさ、しゃく熱の夏を
乗り越えるハティのたくましさに感心したり、住人たちとの人情物語にほろりとさせ
られたりしました。(SUGO)

◆5位(3作同点) 『ウィッシュ 願いをかなえよう!』
                フェリーチェ・アリーナ作 横山和江訳 講談社
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 三角形を作った手を空に向け、飛んでいる飛行機が入ったところでパチンと手をた
たくと、1機の飛行機をつかまえたことになる。そうやって100機つかまえたら、お
母さんの病気は治るかもしれない。オーストラリアの片田舎に住むダウン症のセブは、
願いをかなえるために空港のある街へと向かう。セブと、街で出会ったジャックのふ
たりが巻き起こす奇跡の物語。

◎ジャックはいいやつだな〜と思いながらも、セブの弟アレックスの抱えているもの
の重さも、考えさせられました。(hanemi)
◎障害のある少年セブの冒険にハラハラしたが、目が離せなかった。ラストが爽やか!
(ゆま)

◆5位(3作同点) 『彼女のためにぼくができること』
                クリス・クラッチャー作 西田登訳 あかね書房
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 人並みはずれた〈デブ〉でコンプレックスの塊だったエリックは、顔にひどいやけ
どの跡を持ちながらも強く生きているサラ・バーンズのおかげで、前向きに生きられ
るようになる。そのサラが、ある日とつぜん言葉を失い入院してしまった。エリック
はサラを救うためならどんなことでもする、と心に誓う。
(本誌2011年5月号「出版社シリーズ研究連動レビュー」をご参照ください)

◎メルマガにレビューを書かせていただいた、思い出深い作品です。重い話ですが、
エリックとサラ・バーンズのどこまでも熱い友情にパワーをもらいました。(コアラ
ン)
◎さすがクリス・クラッチャーと思えた作品。ひどい家庭環境でくらす登場人物だが、
救ってくれる大人の存在がいい。光を感じた。(shoko)

◆5位(3作同点) 『シカゴよりとんでもない町』
                リチャード・ペック作 斎藤倫子訳 東京創元社
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 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 田舎町に越してきた新任の牧師一家の隣に住むのは、90歳に手が届こうかというお
ばあちゃん。近所づきあいはしない、教会には通わない、おまけに武装までしている
というとんでもない噂がある。『シカゴよりこわい町』『シカゴより好きな町』に続
いて、豪胆なおばあちゃんが大活躍の人気シリーズ第3弾。

◎ダウデル夫人のパワーは90歳になっても健在。隣に越してきた牧師一家もそれぞれ
人間的でいい。とくに一見おしとやかだが気丈な母が魅力的。(ちゃぴ)
◎あのおばあちゃん健在! スカッと爽快です。(おとむとむ)

◆8位以下の作品
8位『フォスターさんの郵便配達』
9位『雲じゃらしの時間』『ボグ・チャイルド』(2作同点)

     ★☆★☆【2011年 第14回やまねこ賞 絵本部門】☆★☆★

★大賞 『おとまり、おことわり?』
ボニー・ベッカー文 ケイディ・マクドナルド・デントン絵 横山和江訳 岩崎書店
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 昨年度、絵本部門5位に名前のあがった『おきゃく、おことわり?』。今年はその
続編が堂々の大賞に輝いた。1作目で「おきゃく」を受け入れたあのクマの家に、と
もだちのネズミが「おとまり」にくることに! クマはかんぺきに静かじゃないと眠
れないというのに、こりないネズミはあいかわらずで、さてさて、どうなることやら
……。前作同様のこれでもかというくりかえしが楽しく、1作目ではわからなかった
ネズミの意外な一面も垣間見ることができる。
(本誌今月号「注目の本」のレビューをご参照ください)

◎クマとネズミのほほえましいやりとりが、とっても楽しかったです。居心地の良さ
そうなクマのおうち、大好きです。(Mar)
◎クマとネズミのコンビが超ナイス。自分が夜寝るときの様子と重なる部分もあって、
クスッと笑ってしまいました。(みちこ)
◎クマとネズミのやりとりにくすくす笑い、読後はほんわかあったかい気持ちになり
ました。(からくっこ)
◎神経質なクマの性格がとても好きでした。こりないネズミの気楽さも。(はなみ)

☆~~~~~~~~~~~~~~~~~【受賞のことば】 翻訳家 横山和江さん ~~~~~~~~~~~~~~~☆
|                                    |
|やまねこ賞は、児童書の翻訳をはじめたころからの、あこがれとともに目標でし|
|た。今回、絵本部門の大賞に選んでいただいたことは、初めて訳書が出たときと|
|同じくらいうれしく、みなさまへの感謝の気持ちでいっぱいです。ほんとうにあ|
|りがとうございました。一時は出版社への紹介をあきらめかけたこともありまし|
|たが、このネズミのようにしつこく粘り続けてよかったです(笑)。     |
☆                                    ☆
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★2位 『ハスの花の精リアン』チェン・ジャンホン文・絵 平岡敦訳 徳間書店
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『ウェン王子とトラ』で2007年絵本部門の大賞を受賞したチェン・ジャンホンの邦訳
3作目が、第2位にくいこんだ。本作は、中国出身の画家ならではの、水墨画の画法
を見事に用いた迫力ある大型絵本である。花の精リアンを主人公にした、山あり谷あ
りのストーリーが魅力的。また、リアンと人間のおじさんの不思議であたたかな交流
も、やまねこ会員たちの心に深くひびいたようだ。
(本誌2011年6月号「注目の本」のレビューをご参照ください)

◎この作家の絵の力強さと、人の情けをじんわり感じさせてくれる物語は本当にすば
らしい。(ゆま)
◎元気、勇気、活力にあふれたリアンがかわいい。(おちゃわん)
◎水墨画の手法を取り入れたダイナミックな絵を存分に楽しみました。(コアラン)

★3位(3作同点) 『ながいながいよる』
   マリオン・デーン・バウアー文 テッド・ルウィン絵 千葉茂樹訳 岩波書店
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 雪が深くつもった森では、ながいながい夜が続いていた。太陽が姿を消してから、
もうずいぶんと時間がたつのだ。カラス、ヘラジカ、キツネが声を荒らげる――自分
が太陽を取りもどしてやろう、と。しかし、それができたのは彼らではなかった……。
3色の絵の具だけで描いたという夜の森の場面は重厚感があり、冷たい空気までもが
伝わってくる。一方、喜びにあふれたラストの場面も印象的だ。詩のようなりんとし
た文章が評価され、2010年ゴールデン・カイト賞絵本(文)部門を受賞。

◎雪深い森に春が訪れる、その瞬間を切り取った雄大で詩的な作品です。とても迫力
のある動物たちの描写、まるでその場にいるように厳しい寒さを感じられる夜の場面、
そして、美しい訳文が心に残りました。(Mar)
◎深い青色の冬の続いた先に待つ、ラストの黄色がまぶしすぎて心にしみました。
(おとむとむ)

★3位(3作同点) 『名前をうばわれたなかまたち』
                 タシエス文・絵 横湯園子訳 さ・え・ら書房
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 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 学校を舞台にした「いじめ」を描いた本作は、作者タシエスの思いが込められた力
作で、いじめについて深く考えさせる力を持っている。力強い線画が特徴的で、生徒
の頭の部分がリンゴに置きかえられているなど、一度手に取ったら簡単には忘れられ
ない印象を与える。スペインの絵本作家であるタシエスは、"El nen perdut" という
作品で2009年度ブラティスラヴァ世界絵本原画展賞のグランプリに輝いている。

◎重たい内容をハッとさせる絵で訴えている。強く強く印象に残ります。(さかな)
◎原画もみましたが、迫力たっぷり。ずんときます。(shoko)

★3位(3作同点) 『ぺろぺろキャンディー』
                ルクサナ・カーン文 ソフィー・ブラッコール絵
                      もりうちすみこ訳 さ・え・ら書房
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 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 3人姉妹の一番上のルビーナは、ともだちの誕生会に妹を連れていかなくてはなら
なくなった。そのうえ、大事に取っておいたおみやげのぺろぺろキャンディーまでも
妹に食べられてしまい、がまんできずけんかに! でも、しかられるのはいつもお姉
ちゃんなのだ。姉と妹のいさかいだけでなく、そこから一歩ふみこんだラストを描く
ことで、姉と妹それぞれの心のひだと成長をみずみずしく表現し、2011年ゴールデン
・カイト賞絵本(文)部門を受賞している。

◎ひどいことをされたらつい仕返しをしたくなるもの。でもルビーナは許します。心
の中ではきっと葛藤があったはず。「がんばったね」と声をかけたくなりました。
(みーこ)
◎悔しさや悲しさを思いやりにかえたお姉ちゃんに拍手。少しくすんだ淡い色使いの
絵は、清楚で新鮮。顔や体全体の表情がとても豊か。(ちゃぴ)

◆6位以下の作品
6位『じゃがいも畑』『ちいさな死神くん』(2作同点)
8位『あたまをなくしたおとこ』『アートとマックス ゴキゲンなゲイジュツ』
  『アライバル』『おにいちゃんがいるからね』
  『くまのオットーとえほんのおうち』『ニコとねずみのすてきなせかい』
  『ほんなんてだいきらい!』(7作同点)

 ★☆★☆【2011年 第14回やまねこ賞 原書部門・オールタイム部門】☆★☆★

 原書部門とオールタイム部門は、新刊のみを対象とする読み物部門・絵本部門と区
別して、やまねこ賞「別賞」と呼んでいるもの。いずれも1人5作品までを、順位を
つけずに投票する。

 出版年や邦訳の有無を問わず、児童書の原書すべてを対象とする原書部門には、9
名が投票し、作品数は39で、すべて1票ずつという結果となった。この1年で本誌に
レビューを掲載したものが9作品。その多くが、今年、英米の児童文学賞で受賞作や
候補作に選ばれたものである。特にイギリスのカーネギー賞とケイト・グリーナウェ
イ賞は、毎年当クラブの読書室掲示板で「候補作を読もう会」を開催している上に、
今年は連動企画として「レビュー勉強会」を行ったこともあり、会員の注目度も高か
った。近い将来邦訳が出そうな作品もあり、楽しみだ。一方で、"Anne of Green
Gables"(L・M・モンゴメリ作/邦訳『赤毛のアン』)や "Pitschi"(ハンス・フ
イッシャー作/邦訳『こねこのぴっち』)など、邦訳で長く読み継がれている名作に
も票が入っている。読み物と絵本では、読み物の割合が若干多かった。言語別で見る
と、英語で書かれた作品が大多数。英米のみならず、オーストラリア、ニュージーラ
ンドの作品にも、このところ毎年票が入っている。英語以外では、イタリア語2作品、
トルコ語1作品に票が投じられた。日本語での情報が少ない言語の作品を知ることが
できるのは、原書部門の醍醐味といえるだろう。

 以下、投票者のコメントとともに3作品をご紹介する。
★ "Turtle in Paradise"(ジェニファー・L・ホルム作 ※本誌2011年3月号「特
集」のレビューをご参照ください) 2011年ニューベリー賞オナー作品。「今年読ん
だ洋書の中で、わたしにとってダントツ1位の作品。主人公の少女と彼女を取り巻く
人々とのふれあいに心が揺さぶられた。ぜったい邦訳がでてほしい」(MOMO)
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★ "Unhooking the Moon"(グレゴリー・ヒューズ作 ※本誌2011年9月号「特別企
画」のレビューをご参照ください) 2011年カーネギー賞ロングリスト作品。「メル
マガでも紹介された、兄と妹の冒険物語です。妹のラットがとっても魅力的。ほろ苦
いラストに泣けました」(コアラン)
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★ "April Underhill, Tooth Fairy"(ボブ・グラハム作) 2011年ケイト・グリー
ナウェイ賞ショートリスト作品。「歯の妖精というテーマと妖精の家の中のすてきな
描写に、とりこになった」(ワラビ)
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 オールタイム部門は、この1年で読んだ新刊以外の邦訳児童書が対象。今年は、投
票者数14名、作品数は49だった。その中から複数票を獲得した3作品をご紹介する。
いずれも、昨年の読み物部門または絵本部門で上位にランクインした作品だ。

★1位(3票)
『アニーのかさ』リサ・グラフ作 武富博子訳 講談社 2010年
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 昨年の読み物部門で6位につけた、心にじんとくるストーリー。明るくておもしろ
い女の子だったアニーは、お兄ちゃんが病気で死んでしまってから、気をつけてばか
り。病気になるといけないから、体に悪いものは食べない。けがをするといけないか
ら、危ないことはしない。雨も降っていないのにかさをさしているアニーの心を癒や
してくれるのは……。
「明るく振る舞いながら、本当の意味で生きていないアニーが、周りの人の助けで少
しずつ、生の喜びをとりもどす姿に、元気づけられる」(ちゃぴ)
「ひとつの出会いから次第に癒やされていく、アニーの深い悲しみ。少女の成長と、
それを見守る周りの温かさを感じる作品」(ゆま)

★2位(各2票/2作同点)
『おきゃく、おことわり?』
     ボニー・ベッカー文 ケイディ・マクドナルド・デントン絵 横山和江訳
                              岩崎書店 2010年
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            (本誌今月号「注目の本」のレビューをご参照ください)
『ピーティ』ベン・マイケルセン作 千葉茂樹訳 鈴木出版 2010年
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『おきゃく、おことわり?』は、ほのぼのとしたユーモアが魅力の絵本。昨年の絵本
部門で5位にランクインし、今年は続編の『おとまり、おことわり?』が大賞を受賞
と、シリーズで話題になっている。「読み聞かせで、今年一番子どもたちが笑ってく
れた絵本。ネズミとクマのかけあいが、読んでいるほうも楽しめた」(ゆま)、「ネ
ズミとクマのやりとりが、楽しい! 読み聞かせの定番です」(ワラビ)とのコメン
トから、この絵本を味わう子どもたちの笑顔が目に浮かぶ。
『ピーティ』は、重い障害を持って生まれた主人公の一生を描いた作品。昨年の読み
物部門で2位に選ばれている。「無理解が生む残酷さ。理解を深め、人と心を通わせ
合う喜び。ピーティの人生は、その両方を教えてくれている気がします」(asayaka)
とコメントにある通り、差別や偏見に満ちた過酷な毎日を送りながらも、生きる喜び
を見いだしていくピーティに、心を動かされる。涙なしには読めない。

 オールタイム部門は、例年同様、前年のやまねこ賞対象作だったものが数多く投票
され、全体の半分弱を占めた。毎年、投票結果を見て読書欲をかき立てられている会
員が多いことの現れだろう。得票の内訳は、読み物が7割、絵本が3割だった。読み
物では、ヤングアダルト向けのリアリズム作品が最も目につくが、ファンタジーや
SFあり、低〜中学年向けの楽しい読み物ありと、さまざまなタイプの作品に票が投
じられている。絵本も同様で、ほのぼのした作品から、『百年の家』(J・パトリッ
ク・ルイス文/ロベルト・インノチェンティ絵/長田弘訳/講談社)のような大人に
訴える作品、はたまた『ワニのオーケストラ入門』(ドナルド・エリオット文/クリ
ントン・アロウッド絵/芥川也寸志、石井史子訳/岩波書店)のような茶目っ気たっ
ぷりのノンフィクション絵本まで、バラエティー豊かだ。子どものころに読んだ懐か
しい作品のタイトルを発見するという、オールタイム部門ならではの楽しみもある。

 やまねこ賞は、会員同士でお気に入りの本を紹介し合える楽しいイベントであると
ともに、海外児童文学の魅力を多くの人に伝える窓口としても意義があるといえるだ
ろう。読んだ本は忘れずに記録して、また1年後に盛り上がりたいと思う。

【参考】
▽やまねこ賞受賞作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/award/yn/index.htm

▽やまねこ賞大賞受賞作品一覧(やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/award/yn/ichiran.htm

                     (石井柚実/植村わらび/大作道子)

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●注目の本(邦訳絵本)●こんなすてきな家なら、泊まってみたい?
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『おきゃく、おことわり?』2010.09 56ページ
『おとまり、おことわり?』2011.09 48ページ
ボニー・ベッカー文/ケイディ・マクドナルド・デントン絵/横山和江訳
岩崎書店 定価各1,365円(税込)
ISBN 978-4265068296, 978-4265068319
"A Visitor for Bear"
"A Bedtime for Bear"
text by Bonny Becker, illustrations by Kady MacDonald Denton
Walker Books, 2008, 2010
Amazonで詳細を見る bk1で詳細を見る Amazonで原書の詳細を見る
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 長い間だれも訪ねてこなかったので、クマはお客なんて好きじゃないと思い、ドア
に〈おきゃく、おことわり〉の張り紙をした。そこへ、灰色の小さな体にくりっとし
た目のネズミがやってくる。断ったはずが、いつのまにか戸棚の中にいたり、引き出
しの中に入っていたり。まるでコントのようなやりとりが続き、最後はクマが根負け。
一緒に暖炉にあたってお茶を飲むうちに……というのが『おきゃく、おことわり?』。
 その後、知らない間にクマとネズミは友情を深めていたらしく、『おとまり、おこ
とわり?』では、ネズミがクマの家に泊まりにくる。お客を泊めたことがなく、何も
かもきちんとしていないと落ち着かないクマに対し、ネズミはよその家でもマイペー
ス。寝る時間となり、ベッドに入るが、クマはネズミの立てる音が気になって、なか
なか眠れない。クマが注意すると、ネズミはあわててやめるが、また別の音を出し、
また注意され……の繰り返し。はたしてクマは無事眠れるのだろうか?
 物語はいたってシンプルで結末もあらかた予想できる。どちらも絵本としては少々
長めであるが、クマとネズミのやりとりがテンポよくコミカルに続くので、飽きさせ
ない。断られても、注意されてもめげないネズミと、ネズミに振り回されるクマのや
り取りが楽しく、大きいものが小さいものに、という図がまた痛快である。
 そして、ケイディ・マクドナルド・デントンが丁寧に描いたクマの家の何とすてき
なこと! すっかり魅了されてしまった。こんな家なら、ネズミでなくてもお客にな
りたいと思うだろう。タイル張りのキッチンには手押しポンプの井戸や旧式のコンロ
があり、暖炉の上にはろうそく、寝室にはランプがあるので、少し古い時代なのだろ
うか。きちんと整理されたクローゼットから、クマの几帳面な性格がうかがえる。
 クマとネズミの話はこれだけではなく、『おきゃく……』と『おとまり……』の間
に "A Birthday for Bear" が出版されており、4作目となる "The Sniffles for
Bear" では、風邪を引いたクマをネズミが看病するようである。ネズミがクマの家に
引っ越してくる日も、そう遠くないかもしれない。

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【文】ボニー・ベッカー(Bonny Becker):絵本や児童書で受賞多数。初の邦訳作品
『おきゃく、おことわり?』はゴールデン・カイト賞絵本(文)部門、E. B. White
Read Aloud Award を受賞し、ケイト・グリーナウェイ賞ロングリストにも選ばれた。
『おとまり、おことわり?』は Crystal Kite Awards を受賞している。米国ワシン
トン州シアトル在住。

【絵】ケイディ・マクドナルド・デントン(Kady MacDonald Denton):1941年、カ
ナダ生まれ。邦訳作品に『しゃっくり1かい1びょうかん こどものためのじかんの
ほん』(ヘイゼル・ハッチンス文/灰島かり訳/福音館書店)、『おうちがふたつ』
(クレール・マジュレル文/画家名表記:カディ・マクドナルド・デントン/日野智
恵、日野健訳/明石書店)、がある。カナダ、オンタリオ州ピーターボロ在住。

【訳】横山和江(よこやま かずえ):埼玉県出身。会社員を経て児童文学の翻訳の
道をめざす。読み聞かせ活動にも取り組んでいる。主な訳書に今年のやまねこ賞読み
物部門5位となった『ウィッシュ 願いをかなえよう!』(フェリーチェ・アリーナ
作/講談社)、『グリーンフィンガー 約束の庭』(ポール・メイ作/さ・え・ら書
房)などがある。山形県在住。

【参考】
▼ボニー・ベッカー公式ウェブサイト
http://www.bonnybecker.com/

▼ケイディ・マクドナルド・デントン公式ウェブサイト
http://www.kadymacdonalddenton.ca/

▽ゴールデン・カイト賞受賞作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/award/us/gkite/index.htm

▽ケイト・グリーナウェイ賞受賞作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/award/uk/greenawy/index.htm

                              (赤塚きょう子)

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●賞速報━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

★2011年全米図書賞(児童書部門)受賞作品発表
★2011年カナダ総督文学賞(児童書部門)受賞作品発表
★2011年スペイン国民児童文学賞受賞作品発表
★2011年コスタ賞ショートリスト発表(受賞作品の発表は2012年1月4日の予定)
★2011年フィンランディア・ジュニア賞発表
★2011年ラサリーリョ賞発表

 海外児童文学賞の書誌情報を随時掲載しています。「速報(海外児童文学賞)」を
ご覧ください。
http://www.yamaneko.org/cgi-bin/sc-board/c-board.cgi?id=award

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●イベント速報━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

★展示会情報
 北海道立三岸好太郎美術館「おばけのマールと絵のふしぎ展」
 えほんミュージアム清里「エロール・ル・カイン絵本原画展」 など

★講座・講演会情報
 玉川学園チャペル「斉藤洋氏講演会」
 ヒルサイドプラザ「セミナー M.B.ゴフスタイン」 など

★イベント情報
 横浜市鶴見区民文化センター
  「開いてみよう!見てみよう! 子どもの本でラテンアメリカめぐり展」 など

 詳細やその他のイベント情報は、「速報(イベント情報)」をご覧ください。なお、
空席状況については各自ご確認願います。
http://www.yamaneko.org/cgi-bin/sc-board/c-board.cgi?id=event

                           (冬木恵子/笹山裕子)

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●お菓子の旅●第57回 しっかり食べて、元気を出して! 〜チャパティ〜
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I went down into the kitchen to get a drink because my mouth was feeling dry.
Jas was in there making chapatis for the evening meal. She smiled as I
walked in.
'Do you want some roti?'
               "(Un)arranged Marriage"
                      by Bali Rai, Corgi Books(2001)
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              『インド式マリッジブルー』
               バリ・ライ作/田中亜希子訳/東京創元社/2005年
              Amazonで詳細を見る bk1で詳細を見る

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 インドのパンといえば、日本ではナンがおなじみですが、実は本場インドの家庭で
はあまり食べられていません。ナンを焼くタンドール(焼き窯の一種)が普通の家に
はないためです。庶民の食卓に欠かせないのは、チャパティという無発酵平焼きパン。
「ロティ」とも呼ばれますが、これはパンの類の総称です。チャパティは、全粒粉と
塩を水でこねて薄く円形にのばし、タワという鉄板で焼いただけの素朴なパンで、カ
レーなどをつけて食べます。焼きたてがおいしいので、一家の主婦は毎食、家族のた
めに何枚もせっせと焼くそうです。このような無発酵の平焼きパンは、インドだけで
はなく世界各地にみられます。その歴史は古く、インダス文明の遺跡からはタワの原
型とみられるものも出土しており、長い年月を経てもなお、同じように作り続けられ
ていることに驚かされます。
 さて、冒頭の引用はイギリスに暮らすインド人少年の結婚をめぐる物語から。少年
はまだ16歳。恋も遊びもこれからの年頃です。親が決めた結婚に抵抗し、家族中を敵
に回した主人公に、兄嫁だけが理解を示してくれます。引用の場面では、ガールフレ
ンドからの別れをほのめかす手紙に傷ついた少年が、ひとしきり泣いたあと、台所へ
下りていきます。夕食の支度をしていた兄嫁は、事情がわからないなりにも義弟を気
遣い、チャパティを食べないかとすすめてくれました。つらく悲しいときこそ、しっ
かり食べて元気を出して。悩むのは、お腹が膨れてからのほうがいいですね。

*-* チャパティの作り方 *-*
                画像はこちら(やまねこ翻訳クラブ喫茶室)

材料(8枚)
 全粒粉            300g
 塩              小さじ1/2
 水              約200cc

1.ボウルに粉と塩をいれ、水を少しずつ注ぎ、しっかりこねる。
2.なめらかな生地になったらまるめ、生地の表面が乾燥しないようにラップをかけ、
  室温で1時間以上休ませる。
3.生地を8個に分割し、それぞれ軽くまるめておく。
4.粉をふったのし板の上に生地をおき、手のひらでつぶしてからめん棒で直径18cm
  弱の円形にのばす。
5.フライパンを熱し、油はひかずに強めの中火で焼く。生地内の空気が膨張し、表
  面がぽこぽこと膨らんできたら、乾いたふきんをたたんだもので軽く表面を押さ
  える。さらに膨れたら、ひっくり返して反対側も色がつく程度に焼く。
6.すぐに乾燥して硬くなるので、できたものから乾いた清潔なふきんなどで冷めな
  いように包み、密封容器にいれておく。

★参考文献、ウェブサイト
『インド家庭料理入門』
(ロイチョウドゥーリ・ジョイ、ロイチョウドゥーリ・邦子著/農山漁村文化協会)
『麦の自然史』(佐藤洋一郎、加藤鎌司編著/北海道大学出版会)
"A Historical Dictionary of Indian Food"
              by K. T. Achaya(Oxford University Press, 1998)

                   (加賀田睦美/冬木恵子/かまだゆうこ)

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●読者の広場● 海外児童文学や翻訳にまつわるお話をどうぞ!
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 このコーナーでは、本誌に対するご感想・ご質問をはじめ、海外児童書にまつわる
お話、ご質問、ご意見等を募集しています。mgzn@yamaneko.org までお気軽にお寄せ
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※メールはなるべく400字以内で、ペンネームをつけてお送りください。
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※質問に対するお返事は、こちらに掲載させていただくことがあります。原則的に編
集部からメールでの回答はいたしませんので、ご了承ください。

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●お知らせ●

 本誌でご紹介した本を、各種のインターネット書店で簡単に参照していただけます。
こちらの「やまねこ翻訳クラブ オンライン書店」よりお入りください。
http://www.yamaneko.org/info/order.htm
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           ・☆・〜 次 号 予 告 〜・☆・

 詳細は10日頃、やまねこ翻訳クラブHPメニューページに掲載します。
          http://www.yamaneko.org/info/index.htm
 どうぞお楽しみに!

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▽▲▽▲▽   海外児童書のシノプシス作成・書評執筆を承ります   ▽▲▽▲▽

  やまねこ翻訳クラブ(yagisan@yamaneko.org)までお気軽にご相談ください。

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             「子どもの本だより」
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新刊情報・イベント情報などを掲載いたします。詳細はmaple2003@litrans.netまで。

       出版翻訳ネットワークは出版翻訳のポータルサイトです
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●編集後記●今年はいろんなことがあったなあと、すっかり年の瀬モードの頭の中。
来年はいい年になりますように、そしてたくさんの出会いがありますように。本誌は
年明けに新しい編集人を迎えます。フレッシュな編集陣による「月刊児童文学翻訳」、
これからもどうぞよろしくお願いします。(い)
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発行人 井原美穂(やまねこ翻訳クラブ 会長)
編集人 植村わらび/大作道子(やまねこ翻訳クラブ スタッフ)
企 画 赤塚きょう子 赤間美和子 石井柚実 尾被ほっぽ 加賀田睦美
    かまだゆうこ 児玉敦子 相良倫子 笹山裕子 佐藤淑子 冬木恵子
    村上利佳 森井理沙
協 力 出版翻訳ネットワーク 管理人 小野仙内
    キャトル ながさわくにお
    html版担当 ぐりぐら
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