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2010年2月号
   =====☆                    ☆=====
  =====★   月 刊  児 童 文 学 翻 訳   ★=====
   =====☆   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ☆=====
                                No.117
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児童文学翻訳学習者による、児童文学翻訳学習者のための、電子メール版情報誌
http://www.yamaneko.org                         
編集部:mgzn@yamaneko.org     2010年2月15日発行 配信数 2370 無料 
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●2010年2月号もくじ●
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◎特集:ニューベリー賞/コールデコット賞受賞作及びオナー(次点)作レビュー
 "When You Reach Me" レベッカ・ステッド作
 『席を立たなかったクローデット 15歳、人種差別と戦って』
                      フィリップ・フース作/渋谷弘子訳
 "The Lion and the Mouse" ブライアン・ピンクニー作
 "Red Sings from Treetops: A Year in Colors"
               ジョイス・シドマン文/パミラ・ザガレンスキー絵
◎賞速報裏話:ALAの各賞発表を追って
◎賞速報
◎イベント速報
◎世界のお祭り:第20回 春節(中国)
◎読者の広場

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●特集●ニューベリー賞/コールデコット賞受賞作及びオナー(次点)作レビュー
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 1月18日、米国図書館協会(ALA)から発表された、今年のニューベリー賞/コ
ールデコット賞の受賞作とオナー(次点)作レビュー4本をお届けする。未訳レビュ
ーは米国版の本を参照して書かれている。
 本誌1月号外の速報記事は、こちら。
http://www.yamaneko.org/mgzn/dtp/2010/01g.htm

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"When You Reach Me"『タイムトラベラー“あなた”へ』(仮題)
by Rebecca Stead レベッカ・ステッド作
Wendy Lamb Books, 2009, 199pp. ISBN 978-0385737425
★2010年ニューベリー賞受賞作
Amazonで詳細を見る

 マンハッタンに住む12歳の少女ミランダは、幼なじみの少年サルとともに学校に通
ったり遊んだりする平凡な毎日を過ごしていた。ところがある日、下校中にサルが見
知らぬ少年に殴られるという事件が起こる。それからまもなく、ミランダのもとに差
出人不明の謎めいたメモが届くようになった。最初のメモには「きみの友だちの命と
自分の命を救いに行くつもりだ」とあり、続くメモには近い未来の出来事を予言する
言葉が記されていた。送り主は未来を知る人物なのか? そしてメモの目的は?
 わたしは「時間のふしぎ」を感じさせてくれる、いわゆるタイムファンタジーが大
好きだ。本書を手に取ったのも、タイムトラベルを扱う物語だと書評誌で知ったから
だった。でも読んでみると、時の流れを行き来する場面がメインになっているわけで
はなく、語り手のミランダも、謎のメモのことよりむしろ家族や友だちのことを熱心
に語る。シングルマザーの母とその恋人のリチャード。殴られた日からちっとも遊ん
でくれなくなった幼なじみのサル。代わりに仲よくなったクラスの女の子や、自慢ば
かりするいやな友だち……。ミランダの語り口は、12歳らしくはつらつとしてウイッ
トに富み、同時に少し大人びた観察眼の裏づけもあって、周囲の人たちや出来事を生
き生きと描き出す。読み始めるとたちまちタイムトラベルのことなど忘れて、ミラン
ダの日常の世界に引き込まれてしまう。ところがやがて事件が起きて、こまかく記さ
れた出来事とメモの投げかける謎とが重なり合うと、またべつの絵が浮かび上がって
きて、すべての「ふしぎ」が解き明かされるのだ。やっぱりタイムファンタジーはお
もしろい。読み終えてからもう一度読み返さずにいられなくなる。
 しかしこの作品は謎解きだけの物語ではない。たしかに謎のパズルはよくできてい
るけれど、一番心に残るのは、実はミランダとその友人たちの成長ぶりなのだ。大嫌
いだった子と友だちになったり、アルバイトを通じて大人の悪意に直面したり。思春
期の入り口に立つ12歳たちは、それぞれ自分の小さい世界から踏みだしてもっと大き
な世界を知り、わずか半年のあいだに思ってもみなかった変化を遂げる。これぞまさ
に「時間のふしぎ」といえるのではないか? そんな思いも抱かせてくれる傑作だ。

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【作】Rebecca Stead(レベッカ・ステッド):1989年ヴァッサー大学を卒業。弁護
士として活動していたが、2007年に子ども向けSF "First Light" で作家デビュー。
本書が2作目。生まれ育ったマンハッタンで、夫と息子ふたりとともに暮らしている。

【参考】
▼レベッカ・ステッド公式ウェブサイト
http://www.rebeccasteadbooks.com/

                             (ないとうふみこ)

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『席を立たなかったクローデット 15歳、人種差別と戦って』
フィリップ・フース作/渋谷弘子訳
汐文社 定価1,470円(税込) 2009.12 184ページ ISBN 978-4811386805
"Claudette Colvin: Twice toward Justice" by Phillip Hoose
Farrar, Straus and Giroux, 2009
★2010年ニューベリー賞オナー(次点)作
★2010年ロバート・F・サイバート知識の本賞オナー(次点)作
★2009年全米図書賞児童書部門受賞作
Amazonで詳細を見る  bk1で詳細を見る
Amazonで原書の詳細を見る

 1955年に、アラバマ州モントゴメリで、ローザ・パークスの行動を機に始まったバ
スのボイコット運動は、広く知られていることと思う。しかし、それ以前にも、モン
トゴメリの人種差別的な市バス条例に抵抗した黒人たちがいた。その1人で、当時15
歳の少女だったクローデット・コルヴィンが、半世紀を経てインタビューに応じた。
本書は、アメリカ公民権運動の隠れた一面を、クローデットの半生とともにほりおこ
したノンフィクションである。
 1955年3月、市バスに乗っていたクローデットは、白人女性に席を譲ることを拒否。
白人警官に「立て」と命令されてもひるまず、「すわる権利は、人種を問わず憲法で
保証されている」と主張した。逮捕、投獄されたが、保釈されたクローデットは誇ら
しい気持ちだった。しかし、この勇気ある行動に対する黒人たちの反応は、称賛ばか
りではなかった。差別が助長されるとして迷惑がる人々もいたのだ。半月後には裁判
で有罪と宣告され、保護観察の身になったクローデットは、さらに孤立してしまう。
 正義を主張する勇気の先には、孤立やバッシングが待っている。家族など身近な
人々をも巻きこんでしまう。若くしてそんな試練に直面したクローデットは、悲痛な
思いに苦しみもしたし、投げやりな気持ちにもなったそうだ。さらに、望まぬ妊娠、
出産と、人生を大きく左右するできごとも経験。しかし、それでも勇気を失わず、
1956年には、州の憲法違反を問う重要な裁判の原告として法廷で証言し、大きな役割
を果たす。試練に耐える強さ、揺るぎない正義感、それに利発さをそなえた少女だ。
 クローデットは、ひどい人種差別に怒っていたと同時に、抵抗しない黒人たちにも
疑問と怒りを感じていたという。私たちの社会でも、同じような状況がいたるところ
にあるように思う。明らかにまちがっていることでも、それがまかり通ってしまうと、
異議を唱えるのはほんとうに難しく、長いものに巻かれてしまいがちだ。でも、クロ
ーデットの勇気を、私もほんの少しでも見習おう、絶対に譲れない信念だけは守り通
そう、そんな気持ちになった。若い読者たちも、同じように感じてくれたらうれしい。
 公民権運動の歴史を改めて知ったことも意義深かったが、それと同時に、純粋な勇
気について考えさせられ、刺激を受けた1冊だった。

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【作】フィリップ・フース(Phillip Hoose):米国インディアナ州生まれ。インデ
ィアナ大学、イェール大学大学院に学ぶ。代表作に、2005年ボストングローブ・ホー
ンブック賞ノンフィクション部門受賞の "The Race to Save the Lord God Bird"、
2001年全米図書賞児童書部門最終候補作の "We Were There, Too!: Young People in
U. S. History"(ともにヤングアダルト向けノンフィクション)などがある。

【訳】渋谷弘子(しぶや ひろこ):東京教育大学文学部卒業。群馬県の公立高校で
英語教師を27年間務めた後、通信教育で翻訳を学び、児童文学の翻訳者に転身。訳書
にジーン・ユーア作『秘密のチャットルーム』(金の星社)、『双子のヴァイオレッ
ト』(文研出版)、『シュガー&スパイス』(フレーベル館)などがある。

【参考】
▼フィリップ・フース公式ウェブサイト
http://www.philliphoose.com/

▽全米図書賞児童書部門受賞作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/award/us/nba/index.htm

▽ロバート・F・サイバート知識の本賞受賞作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/award/us/sibert/index.htm

                                (大作道子)

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"The Lion and the Mouse"『ライオンとネズミ』(仮題)
by Jerry Pinkney ジェリー・ピンクニー文・絵
Little, Brown and Company, 2009, 40pp. ISBN 978-0316013567
★2010年コールデコット賞受賞作
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 ライオンの顔が目を引く。表紙から飛び出して横目で見ている? 触れればたてが
みの感触さえ味わえそうだ。その視線の先にあるのは……と絵本をひっくり返すと、
大きなネズミが見つめ返していた。両者の強烈な存在感に圧倒される。
 2010年コールデコット賞に輝いたのは、ジェリー・ピンクニーの描く「ライオンと
ネズミ」だ。最初から最後までピンクニーの絵だけで語る絵本となっている。表紙を
開くと、そこにはアフリカの大草原が広がる。群れをなすキリンやシマウマ、鼻を高
くかかげた象、ライオンの家族。大きな木のまわりを飛ぶ鳥たち。たくさんの動物が
多種多様な生きざまをくりひろげ、咆哮や羽ばたきの音さえ聞こえそうな臨場感があ
る。次の頁へ進むと、画家の視点は一転して、動物たちの足元、草の根元に照準を合
わせる。アリが隊列を組み進むのは、大きな獣の足跡の上だ。そこにネズミが登場す
る。雄大な大自然と、その片隅に生きる小さなネズミのコントラストが鮮やかで、い
やが上にも小動物が生きていく苦労を思う。ネズミはフクロウに追われ、逃げ回って
いるうちに、ライオンに捕まってしまうのだ。こんなふうにピンクニーの「ライオン
とネズミ」は始まる。
 何世紀も語り継がれてきたイソップ寓話には、どの時代の人々にも訴えかける教訓
が含まれ、良くも悪くも普遍と単一のにおいがする。ありていに言えば、万人周知の
話で、そういった意味では目新しさなどないのだ。ところが、ピンクニーはこの話に
息を吹き込み、たっぷりの水をやり、彩り豊かによみがえらせた。マンガでよく目に
するような、対象をクローズアップして強調し、音や声を描き文字にして絵に添え、
コマ割りを使って動きを追うといった描き方がみられ、作品に躍動感を与えている。
細部にまで描きこまれた熟練の技は、大画面の迫力を持って迫ってくる。動物の動き
からは音が聞こえ、しぐさや目の動きにひそむ表情が語りかける。絵本の中のライオ
ンとネズミは、今を生きているのだ。新生「ライオンとネズミ」をぜひ、味わってい
ただきたい。

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【文・絵】Jerry Pinkney(ジェリー・ピンクニー):1939年6人兄弟の4番目とし
て、米国フィラデルフィアに生まれる。Philadelphia Museum College of Art を卒
業。コールデコット賞オナー、コレッタ・スコット・キング賞オナーを5回受け、国
際アンデルセン賞にもノミネートもされたアメリカを代表するイラストレーターの1
人。作家である妻とともに、ニューヨーク在住。

【参考】
▼ジェリー・ピンクニー公式ウェブサイト
http://www.jerrypinkneystudio.com/

▼ジェリー・ピンクニーのインタビュー(Reading Rockets 内)
http://www.readingrockets.org/books/interviews/pinkneyj

▽ジェリー・ピンクニー邦訳作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/author/p/jpinkn_j.htm

                               (尾被ほっぽ)

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"Red Sings from Treetops: A Year in Colors"
『〈あか〉はこずえで歌をうたう』(仮題)
text by Joyce Sidman, illustrations by Pamela Zagarenski
ジョイス・シドマン文/パミラ・ザガレンスキー絵
Houghton Mifflin Books for Children, 2009, 32pp. ISBN 978-0547014944
★2010年コールデコット賞オナー(次点)作
Amazonで詳細を見る

 おしゃれに着飾り、王冠をかぶった「わたし」が、ショウジョウコウカンチョウの
喜びの声に耳をすます。アメリカ人にはおなじみのまっ赤な鳥だ。飼い犬のパップも
目をつぶり、春を感じている。そして、詩はこのようにはじまる。
 春、〈あか〉はこずえでさえずる。ピュイ、ピュイ、ピュイ。さくらんぼになった
〈あか〉は、わたしの耳へと落ちてくる。うまれたばかりの〈みどり〉は、そよかぜ
に、ふるるとふるえる。……夏、〈しろ〉がグラスの中で、カランと音をたてる。
〈きいろ〉は、触れるものすべてをとかす。バターのような、しおの香り。……秋、
〈オレンジ〉は、しっかり熟して、中身のずっしりつまった月になる。……冬の夜明
けに、〈ピンク〉が咲いた。丘一面に、ふわりふんわり、やわらかな色。
 ちょこんと小さな冠をのせた赤い鳥が、導くようにページをすいすいと飛んでゆく。
「わたし」は、自然の中に色を感じ、見つけ、詩を口ずさむ。
 五感へと訴えかけてくる文章と幻想的なイラストが、うまく溶け合い、互いに補い
合って、ひとつの世界をつくりあげている。移りゆく季節の中に見られる、時に鮮や
かで、時にささやかで、それでいて当然のように存在する色。詩人と画家のコラボレ
ーションが、見過ごしがちな季節の色をまざまざと映し出し、その見事さに、思わず
息をのむ。春には春の、夏には夏の、四季それぞれのひそやかな美しさがあり、どの
季節もそれぞれに輝いている。日常にある小さな発見を楽しむ登場人物たちの姿に、
読者は四季の喜びを感じることだろう。
 秋がきて、冬になり、〈あか〉い鳥はどこにいるのだろう? 忙しく日々を過ごし
ていると、人はつい目の前にある美しいものを見落としてしまう。ちょっと心が疲れ
た時、この絵本を開いてみてほしい。〈あか〉い血は、春を感じてドクドクと脈うち、
太陽では〈あか〉い炎がさんさんと輝いている。こずえにとまる〈あか〉い鳥。ほら、
〈あか〉は、いつだって、あなたのそばにあるのだから。

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【文】ジョイス・シドマン(Joyce Sidman):米国コネティカット州出身、ミネソタ
州在住の詩人。2000年より8冊の本を出版し、数々の賞を受賞するなど、高い評価を
得ている。"Song of the Water Boatman and Other Pond Poems" は、2006年のコー
ルデコット賞オナー作品。パミラ・ザガレンスキーとのコンビによる作品に、"This
Is Just to Say: Poems of Apology and Forgiveness" がある。

【絵】パミラ・ザガレンスキー(Pamela Zagarenski):米国コネティカット州、ス
トーニングトンとカナダのプリンス・エドワード島を行き来するイラストレーター。
コネティカット大学でグラフックデザインを学んだ後、新聞や雑誌のイラストを経て、
児童書のイラストを手がける。他の作品は、"Mites to Mastodons: A Book of
Animal Poems" や "My Very Own Big Spanish Dictionary" など多数。

【参考】
▼ジョイス・シドマン公式ウェブサイト
http://www.joycesidman.com/

▼パミラ・ザガレンスキー紹介ページ(At the gallery 内)
http://www.atthegallery.com/artists/zagarenski.html

                              (美馬しょうこ)

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●賞速報裏話●ALAの各賞発表を追いかけて
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 米国図書館協会(ALA)は、毎年1月後半に5日間の Midwinter Meeting を開
催し、4日目の朝に、ALA Youth Media Awards と総称される、ニューベリー賞をは
じめとする17もの賞の発表を行います。今年の発表は1月18日で、この様子はウェブ
キャストでオンタイム配信され、同時にALAのツイッターでも流されました。
 やまねこ翻訳クラブでは、発表翌日19日の午前中、速報掲示板に、主要な賞につい
てALAの発表に簡単な情報を付け加えたものを流し、21日にはメールマガジン「月
刊児童文学翻訳」号外で、ニューベリー賞・コールデコット賞・プリンツ賞の受賞作
・オナー作の紹介記事をお届けしました。また、本号でも、受賞作・オナー作のレビ
ュー4本を掲載しています。このALAの発表とそれを追いかけた当クラブの取り組
みについて、少しお話しさせてください。
 速報・号外記事の担当メンバー10名ほどは、少しでも早く準備を進めるために、日
本時間18日夜10時前から各自の家でパソコンの前に陣取り、次々と発表される賞のメ
モを取っていきました。読み上げられる受賞作タイトルのなかに、読んでいた本、持
ち込みを考えていた本、書評誌や予想サイトで取り上げられ前もって調べていた本な
どを見つけたメンバーからは、メルマガ編集用の掲示板に興奮したコメントがアップ
されます。ボストンの会場と同じような熱気です。そして、ここを出発点に号外が発
行されるまで、日本全国・世界各地のメンバーが一丸となって執筆・記事の仕上げに
まい進するのです。やまねこが1年で最も燃え上がる3日間といえるでしょう。
 さて、ニューベリー賞、コールデコット賞の受賞者はといえば、当日の朝早くAL
Aからの電話ではじめて受賞を知らされるのだそうです。アメリカ国内の時差の関係
で、2005年ニューベリー賞受賞者のシンシア・カドハタさんの家の電話は朝4時半前
に鳴ったとか。そして、取る物も取りあえず、翌日朝のテレビ番組 "TODAY"(米国N
BC放送)にほんの数分出演するため、ニューヨークまで移動するのです。この
"TODAY" に、今年も1月19日、受賞者であるレベッカ・ステッドさんとジェリー・ピ
ンクニーさんが出演し、喜びを語りました。その場面を、"TODAY" の公式ウェブサイ
トで観ることができます。
 6〜7月のALA年次総会の会期中には、The Newbery/Caldecott Banquet がとり
おこなわれ、毎年受賞者らによるウイットに富んだスピーチで会場がわくようです。
このスピーチは、書評誌 "The Horn Book" 7/8月号に掲載され、なかには作家・
画家・出版社の公式ウェブサイトで公開されているものもあります。作品研究として
も、作家・画家研究としても興味深いものが多いので、一読をおすすめします。
 振り返ってみると、われわれが賞速報を流すのは今年で12回目、メルマガ号外の発
行は11回目となります。1998年8月「月刊児童文学翻訳」創刊号で〈児童文学翻訳家
をめざすみなさんにぜひ知っておいてほしいことや、児童文学翻訳家になるために参
考となる情報を随時掲載していく〉という目標を掲げ、以来、賞情報と新刊レビュー
掲載の早さには特に力を注いできました。12年の間には、速報がきっかけとなり邦訳
が刊行される様子を目の当たりにしたり、児童文学賞の発表に関心をもつ出版社や翻
訳家の方々が当クラブの速報を利用されているのを知って喜んだりしたこともありま
した。今後もよりよい速報・号外記事・レビューを届けていきたいと、編集メンバー
一同、気持ちを新たにしています。

                               (植村わらび)

【参考】
▼ALA 2010 Midwinter Meeting について公式ウィキサイト
http://alamw.ala.org/2010/index.php?title=Main_Page

▼ALA 2010 Youth Media Award ウェブキャスト
http://alawebcast.unikron.com/_view.php?

▼ALAツイッター
http://twitter.com/ALAyma

▼"TODAY" 受賞者インタビュー("TODAY" 公式ウェブサイト内)
http://today.msnbc.msn.com/id/26184891/vp/34936060#34936060

▼書評誌 "The Horn Book" 公式ウェブサイト
http://www.hbook.com/

▼オンラインで読める受賞スピーチ
・2009年コールデコット賞 ベス・クロムス受賞スピーチ
http://www.bethkrommes.com/illustration/beths-caldecott-speech
・2008年コールデコット賞 ブライアン・セルズニック受賞スピーチ
http://www.theinventionofhugocabret.com/brian_speech.htm
・2005年ニューベリー賞 シンシア・カドハタ受賞スピーチ
http://www.scholastic.com/newbery/popup.htm

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●賞速報━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

★2009年度ローカス賞(YA部門)推薦作品発表(読者投票受付は4月1日迄)

 海外児童文学賞の書誌情報を随時掲載しています。「速報(海外児童文学賞)」を
ご覧ください。
http://www.yamaneko.org/cgi-bin/sc-board/c-board.cgi?id=award

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●イベント速報━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

★展示会情報
 伊丹市立美術館「ハンス・フィッシャーの世界展」
 世田谷文学館「石井桃子展」 など

★講座・講演会情報
 ちゅうでん教育振興財団「今江祥智講演会」 など

 詳細やその他のイベント情報は、「速報(イベント情報)」をご覧ください。なお、
空席状況については各自ご確認願います。
http://www.yamaneko.org/cgi-bin/sc-board/c-board.cgi?id=event

                           (笹山裕子/冬木恵子)

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●世界のお祭り●第20回 春節(中国) 今年は2月14日
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 花火や爆竹、龍踊りなど、春節のにぎやかなお祝いの様子が伝えられる時期になり
ました。春節は太陽太陰暦の1月1日で、中国ではこの日に新年のおとずれを祝いま
す。その由来については、古く殷の時代、年の終わりに神を祭り、先祖に感謝し、新
年の豊作を祈念していたのが起源であるなど、いくつか説があります。
 春節の準備は、1か月ほど前からはじまります。ニンニクを酢につけたり、かまど
の神さまにお供えをしたり、大掃除をしたり、ごちそうを作ったりします。大みそか
には、黒い字で縁起のよい言葉を書いた赤い紙「春聯(しゅんれん)」を、玄関の門
柱に貼ります。春聯には、邪鬼を追い払って家を守るという意味があり、日本の門松
やしめ縄のもとであるともいわれているそうです。壁には、福が来るようにという願
いをこめて「福」と書いた紙を上下逆さまに貼り、窓には「窓花」という切り紙を飾
ります。夜には家族で餃子や魚料理などを食べ、深夜12時になると爆竹を盛大に鳴ら
して邪鬼を追い払います。
 いよいよ春節の日になると、人びとは先祖にお祈りをし、家族や親戚、友人と挨拶
をかわします。子どもたちがお年玉をもらうのは、日本のお正月と同じです。戸外で
は龍踊りや獅子舞、正月踊りなどが繰り広げられます。あんの入った団子をゆでたも
のや甘い餅を食べ、年始回りのお客さんには落花生やお菓子などを出すようです。
 中国では、春節から3日間が休日になります。企業によっては、7日間ほどの長期
休暇にするところもあります。大晦日の夜までには人びとがふるさとに帰るので、日
本の帰省ラッシュのような混雑になります。
 春節のお祭りが行われているのは、中国や台湾だけではありません。中国系の移民
が世界中に定着するにしたがって春節も広まり、世界各地のチャイナタウンで盛大な
お祭りが行われています。日本でも、横浜の中華街や神戸の南京町、長崎の新地中華
街などで、実際のお祝いの様子を見ることができます。オーストラリアのシドニーで
は、食べ物の屋台が並び、華やかなパレードや花火などで祝うそうです。
 ロンドンの町を舞台に、シャーロック・ホームズ並みの推理力を持つ少年たちが大
活躍する「ベイカー少年探偵団」シリーズの第4巻『ドラゴンを追え!』(アンソニ
ー・リード作/池央耿訳/評論社)には、少年たちが、春節のお祝いでにぎわうチャ
イナタウンで、誘拐された娘たちを探し回る様子が描かれています。

*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*
 角をまわって飛び出した目の前に、がっと頭をもたげたのはほかでもない、眼光鋭
く八方を睨む降魔(ごうま)の龍神だった。ガーティとスパローは恐怖の叫びを発し、
ウィギンズさえもたじたじと後退ったが、よく見れば何のことはない、紙と絹地と針
金で作った胴体に泥絵の具をけばけばしく塗りたくった張りぼてではないか。腹から
にょきにょき出ているのは人の脚である。竜は顎門(あぎと)と鼻腔から盛んに煙を
吐き、これを人がかぶって街を練り歩く祭りの呼び物だった。
*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*

 今年も、エキゾチックな音楽や迫力ある龍踊りが、世界中のチャイナタウンで人び
とを楽しませていることでしょう。

★参考文献・ウェブサイト
『台湾百科』若林正丈・劉進慶・松永正義編著/大修館書店
『中国年中行事冠婚葬祭事典』周国強著/筧武雄・加藤昌弘訳/明日香出版社
『中国人の胃袋――日中食文化考』張競著/バジリコ
人民日報公式ウェブサイト
http://j.peopledaily.com.cn/cehua/20050207/home.htm
シドニー市公式ウェブサイト
http://www.cityofsydney.nsw.gov.au/cny/

                           (笹山裕子/村上利佳)

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●読者の広場● 海外児童文学や翻訳にまつわるお話をどうぞ!
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 このコーナーでは、本誌に対するご感想・ご質問をはじめ、海外児童書にまつわる
お話、ご質問、ご意見等を募集しています。mgzn@yamaneko.org までお気軽にお寄せ
ください。

※メールはなるべく400字以内で、ペンネームをつけてお送りください。
※タイトルには必ず「読者の広場」とお入れください。
※掲載時には、趣旨を変えない範囲で文章を改変させていただく場合があります。
※質問に対するお返事は、こちらに掲載させていただくことがあります。原則的に編
集部からメールでの回答はいたしませんので、ご了承ください。

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●お知らせ●

 本誌でご紹介した本を、各種のインターネット書店で簡単に参照していただけます。
こちらの「やまねこ翻訳クラブ オンライン書店」よりお入りください。
http://www.yamaneko.org/info/order.htm
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           ・☆・〜 次 号 予 告 〜・☆・

 詳細は毎月10日頃、やまねこ翻訳クラブHPメニューページに掲載します。
          http://www.yamaneko.org/info/index.htm
 どうぞお楽しみに!

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▽▲▽▲▽   海外児童書のシノプシス作成・書評執筆を承ります   ▽▲▽▲▽

  やまねこ翻訳クラブ(yagisan@yamaneko.org)までお気軽にご相談ください。
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され、時計のデザイン同様、常に世界中のコレクターから注目を集めています。
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●編集後記●1月18日のニューベリー賞他の発表以来、走り続けてきた当メルマガス
タッフも、この2月号発行とともにほっと一息つきました。春節の龍踊りや冬季オリ
ンピックなど季節の行事を、テレビなどで楽しみたいと思います。(う)
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発行人 美馬しょうこ(やまねこ翻訳クラブ 会長)
編集人 植村わらび/井原美穂(やまねこ翻訳クラブ スタッフ)
企 画 大作道子 尾被ほっぽ かまだゆうこ 児玉敦子 笹山裕子
    ないとうふみこ 冬木恵子 美馬しょうこ 村上利佳
協 力 出版翻訳ネットワーク 管理人 小野仙内
    ながさわくにお asayaka
    html版担当 ぐりぐら
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