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月刊児童文学翻訳

─2003年5月号(No. 50 書評編)─

※こちらは「書評編」です。「情報編」もお見逃しなく!!

児童文学翻訳学習者による、児童文学翻訳学習者のための、
電子メール版情報誌<HP版>
http://www.yamaneko.org/mgzn/
編集部:mgzn@yamaneko.org
2003年5月15日発行 配信数 2580


「どんぐりとやまねこ」

     M E N U

◎賞情報1
2003年MWA賞(エドガー賞)発表

◎賞情報2
2003年アガサ賞発表

◎賞情報3
カーネギー賞・グリーナウェイ賞候補作発表

◎注目の本(邦訳絵本)
『だいすき そんなきもちをつたえてくれることば』 ハンス&モニック・ハーヘン作/マーリット・テーンクヴィスト絵

◎注目の本(邦訳読み物)
『オスティア物語 古代ローマの謎ときアドベンチャー』 キャロライン・ローレンス作

◎注目の本(未訳読み物)
"Recycled" サンディ・マッケイ作

◎Chicoco の親ばか絵本日誌
第22回「ぼくが守ってあげる」(よしいちよこ)



賞情報1

―― 2003年MWA賞(エドガー賞)発表 ――

 

 5月1日、MWA賞(エドガー・アラン・ポー賞)が発表された。アメリカ探偵作家クラブ(Mystery Writers of America)が主催。前年度に出版された広義のミステリー作品の中より選出される。現在12の部門賞が設けられているがここでは児童文学に関係する2部門のみ掲載する。

 

 2003年の★Winner(受賞作)、☆Nominees(候補作)は以下の通り。

【最優秀ヤングアダルト小説賞】(Best Young Adult)

★Winner

"The Wessex Papers, Vols. 1-3" by Daniel Parker (Avon)

☆Nominees

"Cheating Lessons" by Nan Willard Cappo (Atheneum)

"Safe House" by Jenny Carroll (Simon & Schuster)

"Hit and Run" by Mark Delaney (Peachtree)

"The Night the Penningtons Vanished" by Marianna Heusler (Larcom Press)

 

  YA部門受賞作は、Wessex Academy を舞台にしたサスペンスストーリー。自分の生活レベルの違いに苛立ちを覚えた少年たちが、生活レベルの高い者たちを次々に脅かしていく。全3巻で完結。"Cheating Lessons" は Cappo のデビュー作。ディベートチームに所属する少女が主人公。"Safe House" は超能力を持つ少女 Jess が、ふとしたきっかけで行方不明の子どもを捜すこととなり、事件に巻き込まれていくという話。作者の Jenny Carroll は、実は『プリンセス・ダイアリー』(金原瑞人・代田亜香子訳/河出書房新社)の Meg Cabot である。"Hit and Run" の主人公は、十代ばかりの探偵4人組。単なるひき逃げ事件の調査を引き受けたはずが、とんでもないことに発展してしまう。"The Night the Penningtons Vanished" は、主人公の Isabella が、叔母の店から忽然と消えたつがいの小鳥を探すうちに、友人2人と共に事件に関わってしまう話。

 

【最優秀児童図書賞】(Best Juvenile)

★Winner

"Harriet Spies Again" by Helen Ericson (Random House/Delacorte Press)

☆Nominees

"O'Dwyer & Grady: Starring in Acting Innocent" by Eileen Heyes (Simon & Schuster/Alladin Paperbacks)

"The Case of the Greedy Granny: Jake Gander, Storyville Detective" by George McClements (Hyperion)

"Riding the Flume" by Patricia Curtis Pfitsch (Simon & Schuster BFYR)

"Sammy Keyes and the Search for Snake Eyes" by Wendelin Van Draanen (Random House/Knopf Books for Young Readers)

 

 Juvenile 部門受賞作は、ルイーズ=フィッツヒューが1964年に書いた『スパイになりたいハリエットのいじめ解決法』(鴻巣友季子訳/講談社)の続編。前作にかなりの影響をうけた Ericson が、1974年に亡くなったフィッツヒューの後を受ける形で作品化した。両親の不在で、家政婦と2人で留守を預かる Harriet。そこへ怪しげな夫婦が近所に引っ越してきた。Harriet は2人の身辺を探り始める。"Starring in Acting Innocent" は1932年のニューヨークを舞台に、子役の O'Dwyer と共演者 Grady の2人が、同じスタジオの女優が殺された事件を解決していく話。今年6月には2作目が出版予定。探偵 Jake Gander がおとぎ話に潜りこみ活躍するのは、"The Case of the Greedy Granny"。パロディーが盛りだくさんの作品である。"Riding the Flume" は、主人公の Francie が、事故で亡くなった姉の秘密を知ったことから、事件に入り込んでしまう。Draanen の作品は、「少女探偵サミー・キーズ」シリーズの内の1作で、昨年5月に出版されたもの。邦訳は2003年4月に、『少女探偵サミー・キーズとホテル泥棒』(加藤洋子訳/集英社)が、出版されている。

(西薗房枝)

 

【参考】 ◇Mystery Writers of America 公式サイト
◆Jenny Carroll (Meg Cabot) のサイト
◇Marianna Heusler のサイト
◆Helen Ericson e-book(eBookMall)
◇Patricia Curtis Pfitsch のサイト
◆Wendelin Van Draanen 関連ページ(ランダムハウス)
◇Sammy Keyes 関連ページ《子ども向け》(Kidsreads.com)
◆MWA賞(エドガー賞)受賞作品リスト(やまねこ翻訳クラブ作成)

 

2003年MWA賞(エドガー賞)発表   2003年アガサ賞発表   カーネギー賞・グリーナウェイ賞候補作発表   『だいすき そんなきもちをつたえてくれることば』   『オスティア物語 古代ローマの謎ときアドベンチャー』   "Recycled"   Chicoco の親ばか絵本日誌   MENU

 

賞情報2

―― 2003年アガサ賞発表 ――

 

 5月3日、マリス・ドメスティック主催のアガサ賞が発表された。Best Novel、Best First Mystery Novel、Nonfiction、Short Story、Children's/YA の5部門に分けられている。ここでは児童文学に関する1部門のみ掲載する。

 2003年の★Winner(受賞作)、☆Nominees(候補作)は以下の通り。

 

【児童書及びヤングアダルト部門】(Children's/YA)

★Winner

"Red Card: A Zeke Armstrong Mystery" (The Zeke Armstrong Mysteries, 1) by Daniel J. Hale & Matthew LaBrot (Top Publications)

☆Nominees

"Whistler in the Dark"(American Girl History Mysteries, 16) by Kathleen Ernst (Pleasant Company Publications)

"Hoot" by Carl Hiaasen (Knopf)

"The Secret of the Red Flame" by K. M. Kimball (Aladdin Library)

"The Maltese Kitten: A Sam the Cat Mystery" by Linda Stewart (Cheshire House Books)

 

 受賞した "Red Card: A Zeke Armstrong Mystery" は Daniel J. Hale と Matthew LaBrot の叔父、甥コンビによる共作である。13歳のサッカー少年 Zeke が、コーチの命をねらう相手を捜し出すという話。候補に挙がった Ernst は2001年エドガー賞にノミネートされている。歴史物が得意な作家で、今回は1800年代の話。"Hoot" は今年ニューベリー賞オナーに選ばれた。すでに『ホー HOOT』(千葉茂樹訳/理論社)として、今年4月に出版されている。"The Secret of the Red Flame" は1871年のシカゴを舞台に、主人公の少年が、殺人者という汚名を着せられた友人を救うため、真犯人をみつけようと奔走する。"The Maltese Kitten: A Sam the Cat Mystery" はサムという名の灰色のネコが主人公のシリーズ、3作目。

(西薗房枝)

 

【参考】 ◇MALICE DOMESTIC 公式サイト
◆'The Zeke Armstrong Mysteries' シリーズのサイト
◇Carl Hiaasen のサイト
◆'A Sam the Cat Mystery' シリーズのサイト

 

2003年MWA賞(エドガー賞)発表   2003年アガサ賞発表   カーネギー賞・グリーナウェイ賞候補作発表   『だいすき そんなきもちをつたえてくれることば』   『オスティア物語 古代ローマの謎ときアドベンチャー』   "Recycled"   Chicoco の親ばか絵本日誌   MENU

 

賞情報3

―― カーネギー賞・グリーナウェイ賞候補作発表 ――

 

  5月2日、カーネギー賞・グリーナウェイ賞のショートリスト(最終候補作)が発表された。英国図書館協会が主催するこの賞は、イギリスでは最も権威ある児童文学賞である。今年は3月3日にロングリストとして39作品があがっていた。発表及び授
賞式は7月11日。ショートリストは以下の通り。
(ロングリストは、やまねこ翻訳クラブサイトの「速報(海外児童文学賞)」コーナーに掲載中。)

 

【カーネギー賞候補作】〜 Carnegie 〜(作家対象)

"Martyn Pig" by Kevin Brooks (The Chicken House)

"Ruby Holler" by Sharon Creech (Bloomsbury Children's Books)

"Up on Cloud Nine" by Anne Fine (Corgi Books)

"The Edge" by Alan Gibbons (Dolphin Paperbacks)

"Across the Nightingale Floor" by Lian Hearn (Macmillan Children's Books)

"The Shell House" by Linda Newbery (David Fickling Books)

"The Dark Horse" by Marcus Sedgwick (Dolphin Paperbacks)

 

 ケヴィン・ブルックスは初めての小説 "Martyn Pig" で候補となった。父親の殺害事件にまきこまれた少年を主人公としたミステリだ。シャロン・クリーチは、"Love that Dog" で昨年のカーネギー賞 Commended となった。今年は "Ruby Holler" でノミネートされている。今年3月には絵本の『みんなのすきな学校』(ハリー・ブリス絵/長田弘訳/講談社)が邦訳刊行されたばかり。『ぎょろ目のジェラルド』(岡本 浜江訳/講談社)と "Flour Babies" で2度カーネギー賞を賞、"Tulip Touch" でHighly Commended に選ばれたアン・ファイン。今回候補となったのは、ふたりの少年の友情を描いた "Up on Cloud Nine" だ。"Shadow of the Minotaur" で2001年カーネギー賞候補となったアラン・ギボンズは、先月初の邦訳『テリーの恋』(金原瑞人・田中亜希子訳/主婦と生活社)が刊行された。候補作の "The Edge" は家庭内暴力から逃げ出す母と息子を緊迫感のある筆致で描いている。"Across the Nightingale Floor" は、封建時代の日本に似た架空世界を舞台にした「鳳物語」シリーズ3部作の1作目。最近、リアン・ハーンという名前はオーストラリア在住の作家、ジリアン・ルビンシュタインの筆名であると明かされた。この作品の邦訳は来年予定されている。リンダ・ニューベリーの "The Shell House" は、現代と第一次世界大戦時の話を並行して描いた作品で、昨年のガーディアン賞候補にもなった。マーカス・セジウィックは、デビュー作 "Floodland" で2001年ブランフォード・ボウズ賞を受賞、第2作『魔女が丘』(唐沢則幸訳/理論社)で2002年エドガー賞候補となった。第3作の "The Dark Horse" は、昨年のガーディアン賞候補。北方の村を舞台としたミステリアスな物語。今年7月中旬には邦訳の出版が予定されている。

 

【参考】

◆アン・ファインのサイト
◇シャロン・クリーチのサイト
◆アラン・ギボンズ関連ページ(Allen and Unwin)
http://www.allen-unwin.com.au/authors/apGibbons.aspp
◇'Tales of the Otori'(鳳物語)シリーズのサイト
◆ジリアン・ルビンシュタインのサイト
◇リンダ・ニューベリーのサイト
◆"The Dark Horse" のレビュー(本誌2002年11月号書評編)

(竹内みどり)

 

【ケイト・グリーナウェイ賞候補作】〜 Greenaway 〜(画家対象)

"Man on the Moon" by Simon Bartram (Templar Publishing)

"Albert le Blanc" by Nick Butterworth (Collins)

"That Pesky Rat" by Lauren Child (Orchard Books)

"Who's Afraid of the Big Bad Book?" by Lauren Child (Hodder Children's Books)

"Jethro Byrde, Fairy Child" by Bob Graham (Fairy Child Walker Books)

"The Kiss That Missed" by David Melling (Hodder Children's Books)

"Pants" by Nick Sharratt (David Fickling Books)

"The Cockerel and the Fox" by Helen Ward (Templar Publishing)

 

 本年度の候補作品は、宇宙の話からおとぎ話まで様々なスタイルの作品が並んだ。サイモン・バートラムの "Man on the Moon" は、月へ毎日通勤するボブの1日を描いた作品で、レトロ調の画風。月で掃除をしたり観光客の相手をしたりという設定がユニークだ。ニック・バトワース(バターワース)は『ゆきのふるよる』(はやしまみ訳/金の星社)などの絵本が日本でも数多く紹介されている作家。今回の候補作品となった "Albert le Blanc" は、おもちゃ屋に並ぶおもちゃたちの中で一番悲しそうな顔をした白いくまのぬいぐるみを主人公にした話。『ぜったいたべないからね』(木坂涼訳/フレーベル館)で一昨年グリーナウェイ賞に輝いたローレン・チャイルドは、本年度も2作品が候補にあがった。1作はすでに邦訳が出版されている『ペットになりたいねずみ』(木坂涼訳/フレーベル館)。もう1作 "Who's Afraid of the Big Bad Book?" は、一昨年度候補作品『こわがりハーブ えほんのおおかみにきをつけて』(中川千尋訳/フレーベル館)の続編である。両作品ともに、遊び心にあふれたチャイルドらしい作品。ボブ・グラハムは、昨年度に引き続いてのノミネートとなった。今回の "Jethro Byrde, Fairy Child" は、セメントと雑草のはびこる都会で、女の子が妖精を探す話。パステルカラーのきれいな色が印象的だ。デイビッド・メリングの "The Kiss That Missed" は、王子をすり抜けて森の中へ消えた王様の投げキスを騎士が探しにいくおとぎ話。勇敢とはいえない騎士のどたばたぶりがおもしろい。ニック・シャラッ トの "Pants" は、下着のパンツを讃える元気いっぱいの絵本。とんでもないパンツも登場するのでお楽しみに。ヘレン・ワードの "The Cockerel and the Fox" は、チョーサー作『カンタベリー物語』の中の寓話のひとつ、高慢な雄鶏とずる賢いきつねの話を絵本にあらわしたもの。写実的な絵柄が特徴のワードは農場の動物たちを丁寧に描き、巻末に図録としてもまとめている。

 

【参考】

◆ローレン・チャイルド作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)
◇『ペットになりたいねずみ』レビュー
 (本誌増刊号 No.3 ローレン・チャイルド特集号)

(植村わらび)

 

【参考】

◆カーネギー・グリーナウェイ賞公式HP

◇過去の受賞作品リスト(やまねこ翻訳クラブ作成)
http://www.yamaneko.org/bookdb/award/uk/carnegie/
http://www.yamaneko.org/bookdb/award/uk/greenawy/

◆カーネギー・グリーナウェイ賞について(本誌1999年7月号情報編「世界の児童文学賞」)

 

2003年MWA賞(エドガー賞)発表   2003年アガサ賞発表   カーネギー賞・グリーナウェイ賞候補作発表   『だいすき そんなきもちをつたえてくれることば』   『オスティア物語 古代ローマの謎ときアドベンチャー』   "Recycled"   Chicoco の親ばか絵本日誌   MENU

 

注目の本(邦訳絵本)

―― 日蘭の5人が織りなす詩集絵本 ――

 

『だいすき そんなきもちをつたえてくれることば』
ハンス&モニック・ハーヘン作/マーリット・テーンクヴィスト絵/野坂悦子・木坂涼訳
金の星社 本体1,500円 2003.03 49ページ

"Jij Bent de Liefste"
text by Hans and Monique Hagen, Illustrated by Marit Tornqvist
Em. Querido's Uitgeverij B.V., 2000
(Tornqvist の o の上にウムラウト)

 『だいすき そんなきもちをつたえてくれることば』表紙

 

 見開き一面に広がる木の床。少女が床に赤いペンキでたくさんのハートを描いている。そんな絵の上に「だいすき」というタイトルの詩が白抜きの文字で記してあった。

 だいすき

 さがしているの/あたらしい ことば/だれも しらない ことば/
 さがしているの/だいすき/わたしの そんなきもち/つたえてくれる ことば (本文より)

 大好きという気持ちを伝える言葉が、ハートを描く少女を通して、23篇の詩と23枚の絵で綴られる。少女は夢や空想の世界にいったり、現実の世界に戻ったり。季節も、雪におおわれた街、フリージアの花、真っ青に輝く青空、ひまわりの花の海、落ち葉……と移り変わっていく。

 四季折々の日常のなかから、小さな女の子のなにげない言葉を拾い集めてつくった詩集。けがをして〈ひざが赤い涙をながす〉なんて、ああ、小さな子の気持ちだなあと思う。一方で、大人の心に鋭く突き刺さる詩もある。〈なくしたものは見つからないけど、目をつぶれば頭の中に見える――〉子ども時代に別れをつげ、大人になるときに失ってきたものが頭に浮かんでくるようだった。

 詩、そこには言葉の行進の心地よいリズムがある。でも、おすまししたお行儀のよい言葉だけが続くのではない。たとえば、赤ちゃんに花を届ける詩がある。なぜ花をもっていくのかというと、オムツのにおいを消すためなのだ。きれいな絵に不釣り合いかなと思える〈うんこくさいの どっかいけ〉というせりふも、一度絵本の世界に入ってしまうと、声に出して読んでも気にならなくなっている。

 すっかり絵本に浸ったあと、ふと、これが翻訳絵本であることを思い出す。オランダ語で詩を書いたハーヘン夫妻、画家、訳者と、5人の名前が連なる絵本はどうやってできたのか――。詩人がオランダ語の糸をつむぎ、それを、画家が絵という手法で織り上げる。さらに日本語という糸を、野坂、木坂両氏がまたつむぎ、織り込む。海を越えた5人の心ががっちりとからまっていることに、また嬉しくなった。

(河原まこ)

 

【文】ハンス・ハーヘン(Hans Hagen)

 1955年生まれ。"Het gouden oog"(1992年銀の石筆賞)に代表される歴史小説のほか、子ども向けの絵本、詩、散文を多数発表している。2002年金の絵筆賞に選ばれた "Ik schilder je in woorden"(ウィレミーン・ミン絵)も彼の詩集。


【文】モニック・ハーヘン(Monique Hagen)

 1956年生まれ。夫、ハンスとの共作に詩集4冊(すべてテーンクヴィスト絵)、絵本2冊(Sandra Klaassen 絵)がある。子ども向け番組の司会者としても活躍している。


【絵】マーリット・テーンクヴィスト(Marit Tornqvist:o の上にウムラウト)

 1964年、スウェーデン生まれ。『愛についての小さなお話』(野坂悦子訳/小峰書店)で1996年銀の石筆賞受賞。スウェーデンとオランダを中心に活躍している。


【訳】野坂悦子(のざか えつこ)

 1959年、東京都生まれ。オランダ語を中心に、海外の絵本や児童書を日本に紹介している。『おじいちゃんわすれないよ』(金の星社/産経児童出版文化賞)など訳書多数。「紙芝居文化の会」の運営委員でもある。


【訳】木坂涼(きさか りょう)

 1958年、埼玉県生まれ。詩人、絵本作家。翻訳絵本も数多く手掛ける。『ちちんぷいぷい ことばの宝箱』(岩崎書店)では、懐かし い日本の遊び歌などの編纂にかかわる。

 

【参考】 ◆ハンス&モニック・ハーヘンのサイト(オランダ語サイト、一部英語あり)
◇金の石筆賞・銀の石筆賞(やまねこ翻訳クラブ資料室)
◆野坂悦子訳書リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)
◇木坂涼作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)

 

2003年MWA賞(エドガー賞)発表   2003年アガサ賞発表   カーネギー賞・グリーナウェイ賞候補作発表   『だいすき そんなきもちをつたえてくれることば』   『オスティア物語 古代ローマの謎ときアドベンチャー』   "Recycled"   Chicoco の親ばか絵本日誌   MENU

 

注目の本(邦訳読み物)

―― 古代ローマを舞台に繰り広げられる、友情と冒険の物語 ――

 

『オスティア物語 古代ローマの謎ときアドベンチャー』
キャロライン・ローレンス作/田栗美奈子訳
PHP研究所 本体1,600円 2003.03 215ページ

"The Thieves of Ostia"
by Caroline Lawrence
Orion Children's books, a division of the Orion Publishing Group Ltd.
2001

『オスティア物語 古代ローマの謎ときアドベンチャー』表紙

 

 西暦79年6月、古代ローマの港町オスティア。フラビアは、旅に出る父親のジェミナス船長を見送るため、新しい友人2人とともに波止場へ出かけた。1人は、隣に越してきたばかりのユダヤ人少年ジョナサンだ。彼に初めて会ったのは、フラビアが、カササギに盗まれた指輪を取り戻そうとカシの木に登ったとき。木の根元を野犬に囲まれているところを助けてもらったのだ。もう1人は、父親と金細工師の元へ出かける途中、奴隷として売りに出されていた黒い肌の少女ヌビア。カシの木で指輪と一緒に見つけた装身具を金細工師に売ったところ、思いがけず大金が手に入ったので、そのお金で父親にヌビアを買い取ってもらったのだった。

 波止場からの帰り道、3人はジョナサンの家へ点々と続く血痕を発見する。家の中には、番犬ボバスの首のない死体が残されていた。目撃者の証言などから、犬に娘を殺された男が犯人と思われた。さっそく謎ときを開始した3人に、舌のない孤児の少年ルーパスも加わり、徐々に事件の真相が明らかになっていく。

  子どもたちの間には宗教や身分などの大きな違いが横たわっていたが、それが友情を育む障害になることはなかった。フラビアの父ジェミナスとジョナサンの父モルデカイの、聡明で偏らない考え方に支えられていたからだ。知恵と勇気で犯人探しに駆けまわる子どもたちの姿は生き生きとしていて、読みながら彼らと一緒に冒険しているような気がしてくる。また、古代ローマの町や人々の生活ぶりも興味深い。例えば、町の目抜き通りに馬やロバのフンが落ちていたり、2階からおまるの中身を捨てる人がいたりするのは当然のことで、環境はかなり不衛生だ。しかしその一方、公衆浴場が発達していて、洗濯やアイロンがけ、マッサージ等のサービスもある。古代ローマ人のきれい好きな一面や健康嗜好がうかがえ、現代の私たちにも通じるものを感じた。

 これは 'The Roman Mysteries' シリーズの1作目である。全18作になる予定だ。作者は西暦79年8月のベスビオ山噴火とポンペイの埋没をこのシリーズの中で取り上げたいと考え、時代設定をしたという。次作では、そのポンペイで休暇を過ごすことになる子どもたち。いったいどんな謎と冒険が待っているのだろうか。

(赤間美和子)

 

【作】キャロライン・ローレンス(Caroline Lawrence)

  ロンドン生まれ。カリフォルニア大学バークリー校で古典文学を専攻し、ケンブリッジ大学で古典美術と考古学の研究を、ロンドン大学ではヘブライとユダヤに関する研究を行う。小学校教師を経て2001年に本作を発表。デビュー作であるこの作品は、世界11か国での出版が決まっている。


【訳】田栗美奈子(たぐり みなこ)

 東京生まれ。お茶の水女子大学文教育学部英文科卒業。翻訳家・桜美林大学短期大学部非常勤講師。訳書に『“It”(それ)と呼 ばれた子』『ロストボーイ』『デイヴ』(デイヴ・ペルザー著/青山出版社)、『子どもに変化を起こす簡単な習慣』『最悪なことを、子どもとともに乗りこえる心の習慣』(バーバラ・コロローソ著/PHP研究所)など。

 

【参考】 ◆'The Roman Mysteries' シリーズのサイト

 

2003年MWA賞(エドガー賞)発表   2003年アガサ賞発表   カーネギー賞・グリーナウェイ賞候補作発表   『だいすき そんなきもちをつたえてくれることば』   『オスティア物語 古代ローマの謎ときアドベンチャー』   "Recycled"   Chicoco の親ばか絵本日誌   MENU

 

注目の本(未訳読み物)

―― 環境のことと家族のこと……どちらもたいせつにしたい ――

 

『リサイクル――ぼくは地球を守る』(仮題)
サンディ・マッケイ作

"Recycled"
by Sandy McKay
Longacre 2001, ISBN 1-877135-49-6 (PB)
131pp.

 

「今年はゴミについて勉強しよう」――担任のリード先生の提案で、コリンはゴミ問題に取り組むようになった。家族に協力を呼びかけるが、反応は今ひとつ。お父さんは半年前から失業中。不動産会社で働くお母さんの頭の中は仕事のことだけで、ストレスがたまるとハンググライダーをしにいく。お母さんの仕事がうまくいくたびにお父さんは不機嫌になり、2人の間の溝は深まっていた。

  リサイクルについて学ぶためにクラスで訪れた地元の施設で、コリンは責任者パディの「ここではどんなものでもリサイクルしてしまう」という説明に感銘を受けた。年配のパディと12歳のコリンは、昔からの知り合いのように親しくなった。

  ある日、パディの施設に市議会から、もうすぐ借地契約が切れるという退去勧告通知が届いた。同じころ、自分が手がけていた区域が売れ、巨額の手数料が入るとお母さんが興奮していた。しかし、売れたのはパディの施設のある土地だった。

  コリンがリード先生やクラスの仲間に呼びかけた結果、借地契約が切れる日にみんなで抗議運動を行うことが決まった。コリンの取り組みに理解を示すようになっていたお父さんは、自分たち家族も参加しようと言い出す。当然お母さんは激怒し、2人の関係はさらに険悪になる。そしてその日がきた……。

  地球を守る環境活動家としての使命に燃えるコリンの奮闘記がメイン・テーマである。同時に、気持ちがすれ違いばらばらになってしまった家族が、どうやってもう一度結びつきを取り戻したかをつづる家族再生の物語でもある。人にはそれぞれの思いがあるので、家族の問題はごみを分別するようには簡単に片付かない。コリンがいらだつ気持ちはわかるが、あせらず、時間をかけることが大事なのだ。

  あっと驚くクライマックスのあとで迎える結末は、完全なハッピーエンドではないかもしれない。けれどコリンたち家族の明るい未来が予見できるので、読み終わったあと、晴れ晴れとした気持ちになるはずだ。

 各章の冒頭に「環境問題豆知識」が、巻末に「ミミズの飼い方」「リサイクルペーパーの作り方」が掲載されている。

(赤塚京子)

 

【作】Sandy McKay(サンディ・マッケイ)

 1959年、ニュージーランド南島、モスギールに生まれる。オタゴ大学を卒業後、果物店経営に携わったのち、フリーライターに。"Recycled" は初めて書いた小説で、2002年 "New Zealand Post Children's Book Awards" のジュニア向けフィクション部門を受賞している。2002年に第2作 "My Dad, the All Black" を刊行。

※2004年3月、作者紹介文中の「ニュージーランド、ダニーデンに生まれる」を「ニュージーランド南島、モスギールに生まれる」に訂正し、「と第3作 "Becky's Big Race"」を削除

 

【参考】 ◇サンディ・マッケイ インタビュー1
 (New Zealand Book Council: New Zealand Writers)
 
◆サンディ・マッケイ インタビュー2
 (Christchurch City Libraries: Interviews with NZ Children's Authors)

 

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Chicocoの親ばか絵本日誌 第22回 よしいちよこ

―― 「ぼくが守ってあげる」 ――

 

『ひとまねこざるときいろいぼうし』表紙 ある日、しゅんと買い物に行った店で、Curious George のTシャツを見かけました。「ほしいなあ」とわたしがいうと、しゅんは「おかあさんの誕生日に買ってあげる」。「だれのお金で?」と内心つっこみながらも、わたしはしゅんの気持ちをうれしく思いました。さて、さるのジョージを指さして「これ、だれ?」ときくと、しゅんは「知らない」(!)。お話が長めだという理由で、久しく読んでいなかったので忘れてしまったのです。家に帰り、「ひとまねこざる」シリーズ6冊(H・A・レイ文、絵*/光吉夏弥訳/岩波書店)を秘密の本棚(2001年2月号の連載第7回参照)から出すやいなや、しゅんはすっかり夢中になりました。毎日たて続けに2、3冊ずつ(これ以上はこちらが苦しいので我慢させ)読んでいます。『ひとまねこざるときいろいぼうし』には、ジョージときいろいぼうしのおじさんがはじめて出会った場面が書いてあります。おじさんの置いたぼうしを好奇心からかぶってしまったジョージは、おじさんにつかまり袋に入れられ未知の世界へ……。しゅんは「ジョージはおじさんと仲良しなのにどうして?!」と不安そうです。『ひとまねこざるびょういんへいく』を読んだあとは、「おいしゃさんになりたい」といいだし、ウルトラマンや怪獣の人形をならべ、「痛いけど、こわい病気にならないからね」と注射をうちました。

『かえるだんなのけっこんしき』表紙

『かえるのだんなのけっこんしき』(ジョン・ラングスタッフ再話/フョードル・ロジャンコフスキー絵/さくまゆみこ訳/光村教育図書)を読みました。かえるだんながねずみのおじょうさんにプロポーズし、結婚式をあげます。虫や小動物が集まって楽しくお祝いのパーティーをしていると、大きな猫がやってきて、パーティーは大混乱。しゅんは「どうしてかえるは刀とピストル持って行くのかなあ。結婚するのになあ」といいました。「さあ、どうしてだろうね」とわたしがいうと、しゅんはすこし考えて「ねずみさんを守るためかな」といいました。最後に猫が登場するところを読むとかならず「ぼくがやっつけてやる!」といいます。そしてあとから、せっせと色紙とセロテープで刀とピストルを作ります。結婚といえば、しゅんは最近「おかあさん、大好き。ぼく、おかあさんと結婚する」というようになりました。しゅんが生まれてから、わたしは翻訳の仕事をしたいという夢と育児との両立に悩んでばかりで、愛情のそそぎ方に問題はないだろうかとつねに不安が頭から離れませんでした。しゅんがうまく話せるようになり優しい言葉をいうのを聞くと、かちかちだった心がふんわりとける思いがします。さてさて、何歳までこんなことをいってくれるのでしょうね。

 

*「ひとまねこざる」シリーズ6冊中2冊は「マーガレット・レイ文/H・A・レイ絵」です。

 

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●お知らせ●

 本誌でご紹介した本を、各種のインターネット書店で簡単に参照していただけます。こちらの「やまねこ翻訳クラブ オンライン書店」よりお入りください。


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☆☆ FOSSIL 〜 Made in USA のカジュアルウオッチ ☆☆

「FOSSILは化石って意味でしょ?レトロ調の時計なの?」。いえいえ、これは創業者の父親がFOSSIL(石頭、がんこ者)というあだ名だったことから誕生したブランド名。オーソドックスからユニークまで様々なテイストの時計がいずれもお手頃価格で揃います。レトロといえば、時計のパッケージにブリキの缶をお付けすることでしょうか。数十種類の絵柄からお好きなものをその場で選んでいただけます。選ぶ楽しさも2倍のフォッシルです。

TEL 03-5981-5620

http://www.fossil.co.jp/

★フォッシルジャパン:やまねこ賞協賛会社


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(第19号は6月5日発行。申し込み手続きは前日までにおすませください。)


◆次号予告は毎月10日頃、やまねこ翻訳クラブHPメニューページに掲載します。◆

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●編集後記●

 古代ローマの「フン害」と現代の「ゴミ問題」。「捨てる」という行為には、いつの世でもリスクがつきもののようです。(あ)


発 行: やまねこ翻訳クラブ
発行人: 竹内みどり(やまねこ翻訳クラブ 会長)
編集人: 赤間美和子(やまねこ翻訳クラブ スタッフ)
企 画: 蒼子 河まこ キャトル きら くるり さかな 小湖 Gelsomina sky SUGO Chicoco ちゃぴ つー 月彦 どんぐり なおみ NON ぱんち みーこ みるか 麦わら MOMO  ゆま yoshiyu りり りんたん ワラビ わんちゅく
協 力: 出版翻訳ネットワーク 管理人 小野仙内
ち〜ず ながさわくにお hanemi


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