さ・え・ら書房 新刊情報
2008年2月刊行
☆1998年ニューベリー賞オナーブック☆
☆1997年ボストングローブ・ホーンブック賞オナーブック☆
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リリー・モラハンのうそ
パトリシア・ライリー・ギフ 作
もりうちすみこ 訳
吉川聡子 画
ISBN 978-4-378-01476-0
定価 1680円(税込)
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リリー・モラハンにとっても嘘は「なやみの種」だった。なやみの種リストの一番最初には「二度とうそをつかないこと」と書いているのだ。けれど、つい口から出てしまう。ちっぽけな嘘、大きな嘘。どんな嘘もよくないし、大きな嘘ほど、あとになれば後悔という苦い思いしか残さない。でも、ナチスから逃れてハンガリーからやってきたアルバートに、リリーはついつい大きな嘘をついてしまう。口から出た言葉はもう戻らない……。
物語の時代は1944年。著者ギフさん自身がよく覚えているというその夏は、第二次世界大戦のさなかであり、「当時のおそろしさや不安は、今でもわたしの体の中にのこっています」と巻末で読者に向けて書いています。自分の感じたおそろしさや不安と、ギフさんはどう向き合ったのか。大人も不安定な状況下で落ち着いて暮らせない当時、子ども達は子ども同士のつながりで、不安や恐怖をまぎらしていた――そういう体験からこの物語は生まれたそうです。
母親を早くに亡くしたため「思い出」すらないリリー、残された父親はリリーにとって大事な肉親。それなのに、その父親も戦争に行ってしまう。大好きな父さん、無事に帰ってきてくれる? いったいどこにいるの? 寂しさと不安を静めてくれるのは、手紙の出所は伏せられている父親からの手紙。でもその手紙にはちゃんとリリーにはわかるように父親の居場所が記されている。そんなさなか、近くにハンガリーからやってきたアルバートと出会う。でもアルバートは目の前のリリー以外のことに気がいっているようで、特別親しくなろうとはしてこない。けれど、あることがきっかけで、ふたりの距離が近づいていく。
ゆっくりゆっくり物語は進んでいく。リリーの父親は、技師として戦場に赴いてゆくのだがそれは自らの意志でそうするのだ。なぜか。理由はどこにあるのか。アルバートの両親はなぜアルバートのそばにいないのか。リリーと一緒に暮らす祖母は、子どもらにその理由をしっかりと伝える。祖母の放つ言葉は深くて重い。大人は子どもに何をしてやれるのかという答え――そのひとつが祖母の言葉の中にある。
(林さかな)
【作者】パトリシア・ライリー・ギフ(Patricia Reilly Giff)
アメリカ・ニューヨーク市ブルックリン生まれ。20年間教師をしたのち、子どものための本を書きはじめ、60冊をこえる著作は広く子どもたちに読まれ愛されている。本書と『ホリス・ウッズの絵』で2度のニューベリー・オナーブックに選ばれた他、『ノリー・ライアンの歌』では、ゴールデンカイト・オナーブックに選ばれている。他の邦訳作品に『ポークストリート小学校なかまたち』シリーズ (以上、さ・え・ら書房)がある。現在コネチカット州在住。
【訳者】もりうち すみこ(森内寿美子)
1955年、福岡県生まれ。九州大学教育学部卒業。訳書『ホリス・ウッズの絵』(さ・え・ら書房)が産経児童出版文化賞に、訳書『真実の裏側』(めるくまーる)が同賞推薦図書に選ばれる。他の訳書に『ハートレスガール』『生きのびるために』(共にさ・え・ら書房)、『ドリーム・アドベンチャー』(偕成社)、『ジンクス』(朔北社)、『戦争孤児ロンくんの涙』(汐文社)、『キング牧師の力強いことば』(国土社)など。
【画家】吉川聡子(よしかわ・さとこ)
1968年、北海道生まれ。北海道教育大学で日本画を学ぶ。作品に『イソップ』(金の星社)、『シャーロット・ドイルの告白』(偕成社)、『ビターチョコレート』『ブランディ反抗期真っ最中』(共にさ・え・ら書房)、文庫版『ガラスの仮面』シリーズ表紙画(白泉社)など。
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Last Modified: 2008/02/04
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