2006年2月刊行
遊牧民の子どもとしてケニア北部に生まれた「ぼく」の子ども時代から、学校に行くようになったこと、ライオン狩りのエピソード、待ち望んだ割礼、大事な牛、そしてアメリカに渡るまでのことなどが、一人称で語られています。 最初の章をわが家の小学生の子どもたちに、声に出して読んでみました。 はじまりの一文はこうです。「ライオンの話をしましょう」 この言葉で、子どもたちは「え、ライオン?」と耳をぴんとたてました。夜中、牛とともに野営地ですごしていると、ライオンに取り囲まれます。緊張しながら聞いているのが伝わってきます。「これほんとの話?」「そうだよ」「すごいね」「もっともっとはやく読んで!」と感嘆していました。 ぼくの語りは非常に惹きつけるものがあります。牛との生活がどのようなものか。学校への登下校がどれほど時間のかかるもので危険に満ちているか。成人になるための儀式はどんなことをするのか。丁寧に話してくれるので、読んでいても「なるほど」と納得し、うなずきながら読み進めることができます。 ジョゼフの学ぶことを決してあきらめない、夢をあきらめない姿は、きっと子どもたちの心に残るものがあるでしょう。 (林さかな) 【著者】ジョゼフ・レマソライ・レクトン(Joseph Lemasolai Lekuton) 遊牧民の子どもとしてケニア北部に生まれる。十代の終わり近くになってアメリカに渡り、セント・ローレンス大学で文学士号と修士号を取得し、ハーヴァード大学では国際教育政策の修士号を取得する。現在はヴァージニア州北部にあるラングリー校で歴史を教えるかたわら、一年の半分をケニアで暮らす。ケニアでは、田舎の地域社会発展プロジェクトに積極的にかかわっているほか、いくつかの非営利組織と協力して、百人以上の遊牧民の子どもたちに奨学金を提供している。国への多大な貢献により、ケニアの大統領から「偉大なる戦士勲章」を最年少で授与された。 【訳者】さくま ゆみこ 1947年、東京生まれ。出版社勤務を経て、現在はフリーの翻訳者・編集者。玉川大学・大学院非常勤講師。著書に『子どもを本好きにする50の方法』(柏書房)、『イギリス7つのファンタジーの旅』(メディアファクトリー)、『エンザロ村のかまど』(福音館書店)、訳書に「リンの谷のローワン」シリーズ、『シャーロットのおくりもの』『ゆき』(以上、あすなろ書房)、『カマキリと月』(福音館書店)、『おいしそうなバレエ』(徳間書店)、『AはアフリカのA』『あかちゃんのゆりかご』(以上、偕成社)、『オスカーとフー』『かわっちゃうの?』『クロニクル千古の闇1 オオカミ族の少年』(以上、評論社)などがある。 http://members.jcom.home.ne.jp/baobab-star/ |
2005年12月刊行●ニュージーランド・ポスト「優秀児童図書賞」受賞●
頭がどうかしたんじゃないかと思ったが、先生は「今学期はゴミについて勉強しよう」と言った。 そして、ゴミ問題の解決には「リサイクル」だと言いきった。 コリンはその授業が終わった放課後、公園でのできごとでリード先生の言うことがもっともだと思いはじめ、突如エコにめざめる。 昨日までのぼくが、のんきな子どもだったなんて信じられない。悩みといえば、リジー・ベネットが話しかけてくれるかどうかしかなかったんだから。でも今日のぼくはエコ戦士。 各章ごとに、ゴミについての具体的な量が書かれ、いかに世の中でゴミが日々出されているかが想像できる。エコにめざめたコリンは家族にも理解を求め、ゴミ処理場にも関心をもつ。自分の家から出るゴミだけでなく、地球規模で考え、できることをしようとするコリンの行動は潔い。ダメなものはダメとまっすぐ進んでいく。ユーモアある語りにひかれ楽しく読みながら、リサイクルについても理解と関心をもてるのが本書の魅力。そういえば、わが家の息子も、学校でリサイクルについて学んでからは、缶の分別処理に気をつけるようになった。有益な知識を子どもが身につけると、大人と一緒にエコ活動が活発になるだろう。 【作者】サンディ・マカーイ(Sandy McKay)
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2005年4月刊行
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2005年3月刊行!2005年やまねこ賞読み物部門8位作品!
ドレスデン大空襲の夜、ポーランド人のマレクと、ドイツ人マリアは何を見たのか――。マレクとマリアは夏に知り合った。野菜の調達に出かけたマリアがふとしたことから、強制労働者のマレクと出会う。最初は野菜を手に入れるために会っていた、それが恋心を芽生えさせた。戦時中の許されない間柄、それでもふたりは必死に人の目をしのんで会い続けた。戦況が悪化し、マリアは疎開する。でも、1945年2月13日――その後にドレスデン大空襲とよばれる日にマリアはマレクに会いにドレスデンに戻る。 二人で会っている時に耳がつぶれんばかりの大音響。 そのとき、ふりかえって二人が見たものは? 青、緑、オレンジにきらめき、うごめく、世にも美しい色のかたまりだった。それがあかあかと燃え、あらゆる光と色に変化しながら、太い流れとなって穴の中に流れ込んでいる!読んでいる間、その聞いたこともない大音響を想像した。そして二人が逃げまどう姿も。肩に力を入れて読んでいた。 緊迫した関係を強いられた若い二人。戦時下という非日常の世界で、禁止行為である相手との恋は、読んでいてもはらはらした。終章が深い余韻を残す。 【作者】ヴァルトラウト・レーヴィン(Waldtraut Lewin)
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2005年2月刊行
異端審問をご存じですか? 著者による「はじめに」から説明を引用します。 中世から近世にかけてカトリック教会が、かくれて魔術やユダヤ教などを信仰する者をあばき、いたわしい刑で撲滅しようとした裁きのことです。著者は自分が作家になっても、異端審問についてだけは書くまいと思っていたそうです。書きたくないとさえ思っていたのは、恐怖があったからだと語っています。(「日本の読者のみなさんへ」より) ところが、親類より著者のルーツがスペインにあると聞かされ、その地に向かったところ、多くの出逢いがあり、「彼らの人生を掘りおこしたい」という気持ちがこの物語の発端となったようです。 主人公カルロスは13歳になってはじめて、自分が隠れユダヤ教徒だと知りました。両親が異端審問にあい、カルロスのそれからの人生はとても厳しいものでした。ふるさとの地を離れ、親戚の家にお世話になりますが、運命の導き、周りの人からさしのべられた手によって、カルロスはその親戚とも別れて暮らします。絵の才能を見いだされ、かといってその道をつきすすむのではなく、カルロスの心にある、なしとげなければならない事に向かって、着々と計画をたて……。 厳しい環境の中でも、カルロスは少年らしい気持ちも失いません。移動の航海では、ハプニングを乗り越えて深い絆をかわす人との出会いもあります。そして少しずつ自分の宗教を受け入れてもいくのです。 読了し、私は13歳という年齢で経験することの大きさ、重たさにしみじみ感じ入りました。 移動の交通手段も今よりずっと長く大変だった時に、カルロスが旅した道のりは途方もないものです。 冒頭に17世紀のヨーロッパとして、主人公カルロスの旅路が図示されていますので、ぜひそれを時々参照しながら、物語をゆっくり読んでみてください。海原での体験、宗教などの歴史的事実、そして何より13歳の少年がいどむ「人生の冒険物語」になっています。 【作者】ドリット・オルガッド Dorit Orgad ナチス政権下のドイツに生まれ、1939年、2歳の時、家族とともに現イスラエルに帰還。ヘブライ大学にて経済学、社会学を修め、教師およびジャーナリス トになる。その後、バル・イラン大学にてユダヤ哲学博士号取得。50冊の著作のうちほとんどが、イスラエル国内テレビ、ラジオで脚色放送され、各賞受賞。 邦訳には『もうひとりの息子』(さ・え・ら書房)がある。 【訳者】樋口範子 ひぐち のりこ 1949 年生まれ。立教女学院高校卒業と同時にイスラエルに渡り、2年間キブツ・カブリ・アボガド園で働く。帰国後、山中湖畔児童養護施設保母、パン屋を経て、現 在は同地で喫茶店を営む。訳書に『キブツその素顔』(ミルトス社)、『六号病室のなかまたち』『もうひとりの息子』(共にさ・え・ら書房)。 【画家】斎藤昌子 さいとう まさこ 新潟県出身。武蔵野美術大学卒業後、キャラクター商品の企画、制作会社のデザイナー、広告プロダクションの社内イラストレーターを経て、フリーのイラストレーターとなる。現在、出版関係を中心に活動中。 |
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Last Modified: 2006/02/15
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