BL出版 新刊情報


2009年3月刊行

アンデスの少女ミア:表紙 栄光の大飛行:表紙 ダッシュだ、フラッシュ!:表紙
アンデスの少女 ミア
 ――希望や夢のスケッチブック


マイケル・フォアマン 作
長田弘 訳

ISBN 978-4-7764-0334-0
定価 本体1500円+税
栄光への大飛行


アリス&マーティン・プロヴェンセン 作
今江祥智 訳

ISBN 978-4-7764-0353-1
定価 本体1400円+税
ダッシュだ、フラッシュ!

ドン フリーマン さく
なかがわちひろ やく

ISBN 978-4-7764-0336-4
定価 本体1300円+税
作者、マイケル・フォアマンがチリのサンティアゴからアンデスの山へ向かっていた時、ミアという少女に出会った。

絵本の主人公ミアの村は、高い山々の間にある小さな集落にある。村の家々は、みんなで見つけた半端物や残り物を集めてつくられている。ミアのお父さんは街から出た不要物から使えるものを集めては売りに出かけるのが仕事だ。ある日、お父さんはミアに子犬をみつけてくれた。ポコと名付けたその犬とミアは大の仲良しになる。ポコは、ミアの生活にある変化をもたらす……。

スケッチした絵を貼り付けたようなページもあり、清書されたかのように、美しい水彩画もあり、ミアのそれぞれの生活の描かれた方は、サブタイトルにつけられているように、スケッチブックのような絵本。
つつましい生活を、あたたかいまなざしをそそぎ、美しい色に彩色されたミアたちの生活。もちろん、そこには、生活の厳しさがあるのだが、ミアたちの表情は決して暗くない。夢をもって生活している。いつか、ミアやお父さんたちの夢がかないますように。
福音館書店で脇明子さんの訳で出ていた『パパの大飛行』の新訳です。なつかしく思われた方も多いのではないでしょうか。長く品切れが続きましたが、これでまた入手しやすくなりました。

1984年にコールデコット賞を受賞した本作は、夢にチャレンジしつづけた、ルイ・ブレリオ氏のお話。

ことは、1901年にはじまる。ブレリオパパは、家族と一緒に朝食をすませ、天気のいいその日に、新車でドライブに出かけます。すると、空から聞こえる不可思議な音。
クワラン…クワラン…クワラン…。
それは白い飛行船の音でした。ブレリオパパは、その時以来、「わたしも空飛ぶ機械をつくるとも」と家族に宣言、実行にうつします。ブレリオ1号がつくられ、2号、3号、そして11号で……。

パパの夢を実行にうつしている間、最初に赤ちゃんだった子どももすっかり大きく成長し、時の流れを感じさせます。プロヴェンセン夫妻の描く人々の表情は、シンプルなのですが印象に残る空気をもっています。夢を追いかけていくパパがやってのける冒険は何分だったと思いますか?
ぜひ、絵本で確かめてみてください。
表紙のフラッシュはとっても働き者に見えませんか。犬が活躍するお話かなとあたりをつけて、、最初のページを繰ると、二匹のダックスフントが迎えてくれました。名札もちゃんとつけています。「フラッシュ」と「シャッセ」。あら? でもフラッシュの表情はさえません。シャッセは利発そうな犬に見えるのですが。
読み進めていくと、フラッシュはとてもなまけものだということがわかってきます。そしてシャッセがとても働き者だということも。
働かないフラッシュに、とうとうシャッセがこう言います。
「きょうは あなたが しごとに いって、ふたりぶんの たべものを もらってきてちょうだい」

さあ、ここからフラッシュは気持ちを入れ替えるでしょうか?

人間世界にも通じるような夫婦の機微にくすりとしながら、フラッシュがどんな風に変わっていくのか、ページを早く繰りたくなりました。

作者ドン・フリーマンは、子どもの本の仕事をはじめた頃、こんな風に語っています。「子どもの本の絵を描くのは、わたしにとっては、舞台を創り出していくようなものだ。ページを繰る流れ、つぎにはなにが出てくるかといったサスペンスを楽しみながら、絵本の中に自分の舞台を創造していくことができるからだ」と。この絵本もまさしく、そんなサスペンスがもりこまれています。
マイケル・フォアマン Michael Foreman
1938年、イギリス生まれ。王立美術学校で学び、アートディレクターを経て、絵本作家に。ケイト・グリーナウェイ賞を二度受賞。自身の体験をもとにした作品が多いが。その一方、イラストレーターとして、チャールズ・ディケンズ、オスカー・ワイルドなど古典的名作から現代の作品まで挿絵を多く手がける。絵本に『世界をみにいこう』(フレーベル館)『アザラシのくる海』(評論社)など。

長田弘 Osada Hiroshi
詩人。詩集に『深呼吸の必要』『食卓一期一会』(いずれも晶文社)『一日の終わりの詩集』『死者の贈り物』『人はかつて樹だった』(いずれも みすず書房)『長田弘詩集』(自選、ハルキ文庫)『幸いなるかな本を読む人』(毎日新聞社)、エッセーに『詩は友人を数える方法』(講談社文藝文庫)『読書からはじまる』(NHK出版)『読むことは旅をすること―私の20世紀読書紀行』(平凡社)、訳書に絵本『なぜ戦争はよくないか』(偕成社)『ルイーザ・メイとソローさんのフルート』(BL出版)など。
アリス&マーティン・プロヴェンセン Alice & Maritn Provensen
妻のアリスは1918年、夫のマーティンは1916年、ともにアメリカのシカゴに生まれる。二人ともシカゴ・アート・インスティテュートで学んだほか、12歳のときにカリフォルニアに引っ越ししていたり、カリフォルニア大学を卒業していたり、共通点が多い。働くようになってから出会い、1944年に結婚。その後、子どもの本の挿絵を一緒に描く。1984年に本書でコールデコット賞を受賞。ほかに、『かえでがおか農場のいちねん』や、『わたしのかわいいめんどり』(ほるぷ出版)など、50以上の作品がある。

今江祥智 Imae Yoshitomo
1932年大阪生まれ。同志社大学文学部英文科卒業。教師、編集者を経て、絵本、童話、小説、エッセイ、評論、翻訳など多岐にわたって活躍している。『ぼんぼん』(理論社)で日本児童文学者協会賞、『兄貴』(理論社)で野間児童文芸賞、『でんでんだいこいのち』(童心社)で小学館児童出版文化賞を受賞。また数々の功績に対して、2008年エクソンモービル児童文化賞を受賞。ほかの作品に『いろはにほへと』『きみとぼく』(BL出版)や、『なんででんねん天満はん』(童心社)、『ひげがあろうがなかろうが』(解放出版社)など多数。
ドン・フリーマン Don Freeman
1908年カリフォルニア州サディエゴ生まれ。ニューヨークで絵の勉強をしながら、ジャズ・トランペット奏者として生計をたて、1940年代より子どもの本を書きはじめる。おもな作品に『くまのコールテンくん』(偕成社)、『ダンデライオン』(福音館書店)など多数。

なかがわちひろ 中川千尋
絵本作家・翻訳家。創作絵本に『のはらひめ』『おたすけこびと』(ともに徳間書店)、『天使のかいかた』(理論社)、翻訳絵本に「チム」シリーズ(福音館書店)、『たくさんのお月さま』(徳間書店)、『しずかに! ここはどうぶつのとしょかんです』(BL出版)などがあるほか、創作童話『かりんちゃんと十五人のおひなさま』(偕成社)、児童画のエッセー的解説書『おえかきウォッチング』(理論社)も発表している。



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Last Modified: 2009/04/07
担当:さかな
HTML編集: 出版翻訳ネットワークやまねこ翻訳クラブ