メニュー「月刊児童文学翻訳」バックナンバー>2021年9月号   オンライン書店


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2021年9月号
   =====☆                    ☆=====
  =====★   月 刊  児 童 文 学 翻 訳   ★=====
   =====☆   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ☆=====
                                No.208
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
児童文学翻訳学習者による、児童文学翻訳学習者のための、電子メール版情報誌
http://www.yamaneko.org                         
編集部:mgzn@yamaneko.org     2021年9月15日発行 配信数 2470 無料
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●2021年9月号もくじ●
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

◎特集:第4次原書読破マラソンから その1
 "Voyage of the Sparrowhawk" ナターシャ・ファラント作
 "On Midnight Beach" マリー=ルイーズ・フィッツパトリック作
 "The Valley of Lost Secrets" レスリー・パー作
◎mikiron の親ばか絵本日誌:第4回 『ラチとらいおん』
◎賞速報
◎イベント速報:★やまねこ翻訳クラブ協力企画のお知らせあり★
◎映像化された児童文学:第6回 『恐竜が教えてくれたこと』
◎読者の広場

▲ページのトップへ


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●特集●第4次原書読破マラソンから その1
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 やまねこ翻訳クラブでは、現在「第4次原書読破マラソン」を開催中。7月中旬か
ら12月中旬までの5か月にわたって、参加者は各自で選んだ原書を読み、あらすじと
感想を会員限定のオンライン掲示板にアップしていく。「広い意味で児童文学に含ま
れる作品」であることだけが条件で、グラフィックノベルも可、言語も問わない。紙
の本や電子書籍のほか、オーディオブックで「読む」参加者も。誰もが知る古典名作、
人種問題を扱ったもの、ディストピアものなど、さまざまな本が取り上げられ、掲示
板は日々盛り上がっている。その中から、お勧めの未訳作品をレビューでご紹介する。
今後も幅広いジャンルのレビューをお届けする予定なので、お楽しみに!

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

"Voyage of the Sparrowhawk" 『スパローホーク号の航海』(仮題)
by Natasha Farrant ナターシャ・ファラント作
Faber & Faber, 2020, 368pp. ISBN 978-0571348763 (PB)
★2020年コスタ賞児童書部門受賞作品
Amazonで検索する:ISBN  Amazonで検索する:書名と作者名

 1919年、第1次世界大戦後の英国。主人公はともに12歳のベンとロッティ。ベンは
運河ボート、スパローホーク号でロッティと出会う。ベンは優しい養父を戦争で亡く
し、ボートでスパニエル犬エルシーと暮らしていた。ロッティは冷酷な伯父夫婦と同
居していたが、チワワのフレデリコを連れてスパローホーク号に逃げこんできたのだ。
やがてひとりの巡査が現れ、2人は急いでフランスへ船出する。捕まればベンは孤児
院へ、ロッティは寄宿学校へ送られてしまうからだ。自由を求めた逃走だった。
 孤児院出身のはにかみ屋のベンと、大きなお屋敷育ちのおてんばなロッティが織り
なす冒険物語だ。巧みな語りで、ユーモラスかつシリアスに物語を運ぶ本作は、英国
クラシック作品のモチーフが彩りを添えている。ディケンズ作品の数々、そしてバー
ネットの『小公女』と『秘密の花園』だ。
 主人公が健気である。2人のフランス行きへの切なる思いが胸に響いた。ベンは、
戦地で行方不明になった兄を探すため、ロッティは、非道な飼い主から救ったフレデ
リコを守るためと、音信不通の祖母を訪ねるためだった。
 道中、いくつもの困難に見舞われるが、そこで大活躍するのが、いたずら好きの犬、
エルシーとフレデリコだ。切実な船旅は先行き不明だったが、2匹が思わぬ道をひら
く。2匹が窮地を救い、出会う大人たちを巻きこみ旅に協力させるのだ。戦争と愛す
る人を待つ暮らしで疲弊した大人たちは、乗員のひたむきさに突き動かされ、関所か
ら関所へ優しさのリレーを始めた。痛快で心温まる展開だ。
 英国の内陸の村から運河と川を経て、外洋へ出る。その旅路は、主人公たちの心の
内奥が外に現れるまでの経過に重なった。2人は深いところで悲しみを抱えていた。
旅の高揚で一時は忘れていた感情が、戦争の爪痕に触れたことでこみあげたのだろう。
苦悩に揺れる姿に胸が詰まる。だが、嵐の中のドーバー海峡越えを遂げた2人には確
たる自信が見え、「なんだってできる」という希望を感じさせた。けれど、油断は禁
物。ともに、必死で追ってくる巡査から逃走中なのだ。果たして目的を達成できるの
か。手に汗握る逃走劇は最後まで読者の心をつかんで離さない。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【作】Natasha Farrant(ナターシャ・ファラント):ロンドン生まれロンドン在住、
夫と2人の娘と暮らす。英国、フランス、オランダにルーツを持つ。大学卒業後、出
版社勤務を経て2008年に一般書でデビュー。2013年にYA作品 "The Things We Did
for Love" がブランフォード・ボウズ賞ショートリスト、カーネギー賞ノミネートと
なる。本作で2020年コスタ賞児童書部門を受賞した。

【参考】
▼ナターシャ・ファラント公式ウェブサイト
https://www.natashafarrant.com/

                                (小原美穂)

+ + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + +

"On Midnight Beach" 『ミッドナイト・ビーチ』(仮題)
by Marie-Louise Fitzpatrick マリー=ルイーズ・フィッツパトリック作
Faber & Faber, 2020, 310pp. ISBN 978-0571355594 (PB)
★2021年カーネギー賞ショートリスト作品
Amazonで検索する:ISBN  Amazonで検索する:書名と作者名

 1976年、記録的猛暑の夏を迎えたアイルランド。さびれた港町の入り江に、1頭の
イルカが迷いこんだ。野生の神秘と愛らしさをあわせもつイルカに、若者たちは夢中
になる。17歳の少女イーマーも、こっそり家をぬけだしては、夜の海に通う。父親に
恋愛や進学を禁じられ、息苦しさをおぼえる毎日だが、イルカの待つ真夜中の海辺に
は、つかのまの自由があった。イーマーが幼なじみの少年ドッグと恋に落ちると、秘
密の初恋を見守るイルカの存在は、いっそう輝きを増してゆく。
 一方、大人たちはイルカを使った金もうけを企て、となり町の嫉妬を買う。対立は
過熱し、ついに2つの町の若者のあいだで抗争が起きる。ドッグも決闘にのめりこみ、
ふくれあがる憎しみに毒されたかのように、イルカまでもが凶暴になってゆく。イー
マーは不毛な争いに疑問を抱き、暴力の連鎖を止めようとするが……。
 本作は、ケルト神話を下敷きにした青春小説だ。伝説の英雄クー・フーリンがドッ
グに、英雄の妻エウェル姫がイーマーに置きかえられている。もちろん、もとの伝説
を知らなくても楽しめる。あらすじを読んだだけでは、「イルカくらいで大さわぎす
るだろうか」と思うかもしれない。しかし、ひとたびページをめくれば、行間からに
じみでる神秘的な雰囲気とひと夏の高揚感が、読者を神話の世界にひきずりこむ。閉
塞感のある小さな港町の描写からは、いかにも不穏な気配が漂う。若者の率直な欲望
と神話のふしぎな魅力とが、詩情豊かな文章でうまく調和され、暴力や性的シーンも
幻想的に表現される。なかでも印象に残るのが、戦いを前に血気にはやる少年たちの
裸体をテントウムシの大群が赤く染める場面だ。残酷で美しい神話に心躍らせるとき
のように、いったん理性を脇において、青春の痛みと喜びを肌で感じてみてほしい。
 語りの視点に、現代的・ジェンダー的ひねりを効かせているのも面白い。伝説では
エウェル姫は脇役だが、イーマーは自分の声で語り、物語の主役として力強く歩みだ
す。その姿に胸が熱くなった。巻末の解説を読み、本作は選択肢を奪われた少女の物
語でもあると気づく。イーマーが自由をつかめるのか、それは読者の判断に委ねられ
ている。イーマーに心の中でエールを送るとき、わたしもまた、彼女に強さをもらう。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【作】Marie-Louise Fitzpatrick(マリー=ルイーズ・フィッツパトリック):アイ
ルランドの作家・イラストレーター。かわいらしい絵本から幻想的な読みものまで幅
広い作品を手がける。CBI最優秀児童図書賞/旧ビスト最優秀児童図書賞(現KP
MGアイルランド児童図書賞)の受賞回数は4回にのぼり、2010年の受賞作 "There"
は『あそこへ』(加島祥造訳/フレーベル館)として邦訳出版された。日本では他に、
文字のない絵本『ふくろうおやこ おやここうもり』(BL出版)が紹介されている。

【参考】
▼マリー=ルイーズ・フィッツパトリック公式ウェブサイト
https://www.marielouisefitzpatrick.com/

▼作者による作品紹介動画(YouTube 内 Faber & Faber のチャンネル)
https://www.youtube.com/watch?v=InLLSiWJPVY

                                (綿谷志穂)

+ + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + +

"The Valley of Lost Secrets" 『谷に秘められた謎』(仮題)
by Lesley Parr レスリー・パー作
Bloomsbury Children's Books, 2021, ISBN 978-1526620507 (EPUB)
Bloomsbury Children's Books, 2021, 304pp. ISBN 978-1526620521 (PB)
(このレビューは電子書籍版を参照して書かれています)
Amazonで検索する:ISBN  Amazonで検索する:書名と作者名

 第2次世界大戦中の1939年、12歳のジミーは集団疎開によって、ロンドンから南ウ
ェールズの炭鉱町にやってきた。共に疎開した弟のロニーや同級生たちは新しい暮ら
しにすぐなじんだのに、自分だけ順応できず、いら立ちながら日々を過ごしていた。
ある日、1人で谷を見下ろす丘にのぼったジミーは、大きな木のうろの中から頭蓋骨
を見つける。なぜこんなところに頭蓋骨が? この町には殺人犯がいるのか? 恐怖
を感じたが、だれにも相談できずにいた。
 ジミーは、弟ロニーを町の意地悪な少年たちから助けてくれた同級生の少女、フロ
ーレンスと仲良くなる。ロンドンでは不潔な身なりのせいで嫌われていたフローレン
スだが、疎開先ではきちんとした服装をして見違えるほど明るくなっていた。彼女が
実母から虐待を受けていたという秘密を知り、ジミーも秘密にしていた頭蓋骨のこと
をフローレンスに打ち明けた。ロニーも加わり、3人は頭蓋骨がだれのもので、なぜ
そこにあったのかという謎を解き明かしていく……。
 自然が美しい田舎を舞台に、戦時中の疎開の苦労、家族愛や友情、子どもの成長を
描いた、長く読み継がれてほしい作品である。はじめはかたくなだった主人公ジミー
が、次第に周囲を信頼し、心を開いていく様子が丁寧に語られる。幼い弟を懸命に守
ろうとする姿は胸を打つし、反抗的なジミーを辛抱強く見守る大人の存在も良い。フ
ローレンスはつらい経験をしてきたが、疎開先に救いを見出し、新たな自分として生
き直そうとする。彼女の強さは作中でジミーを変えるきっかけになるだけでなく、読
者である私の心までも大きく揺さぶるものだった。
 本作はさらに、ミステリーをうまく融合させることで、現代の子どもたちも入り込
みやすく、楽しめる物語になっている。小さな伏線が回収されて謎の答えにつながっ
ていく過程は見事だ。ペーパーバック版ではイラストやページ番号部分に作中の謎を
解くヒントがかくされているので、読者もジミーたちと共に謎を解いている気分が味
わえる。謎解きの果てには、残酷でもあるが過去を解き放ち未来に希望を与える、感
動的な結末が待っている。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【作】Lesley Parr(レスリー・パー):英国の作家。本作の舞台にもなっている英
国の南ウェールズの出身。バース・スパ大学の小説創作に関する課程を修了し、現在
は小学校教師の傍ら、作家として活動している。本作で作家デビュー。

【参考】
▼レスリー・パー公式ウェブサイト
https://www.lesleyparr.com/

▼作者による作品紹介動画(YouTube 内 Waterstones のチャンネル)
https://www.youtube.com/watch?v=in1r8jClhu4

                                (池田幸子)

▲ページのトップへ


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●mikiron の親ばか絵本日誌●第4回『ラチとらいおん』
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 本コーナーでは、わたくし mikiron が親ばかを承知のうえで、5歳になったばか
りの息子「青(しょう)ちゃん」との日常を記しつつ、お気に入りの絵本をご紹介し
ていきます。どうぞおつきあいくださいませ。

 今回ご紹介するのは、わたしにとっても青ちゃんにとっても思い出深い絵本『ラチ
とらいおん』(マレーク・ベロニカ文・絵/とくながやすもと訳/福音館書店)です。
5年前、友人から出産祝いにもらったプレゼントの中に、オレンジ色の鮮やかな、小
さなライオンのぬいぐるみが入っていました。青ちゃんはそのぬいぐるみがとても気
に入ったようで肌身離さず握りしめ、成長してからは「らいちゃん」と名前をつけて、
いまでも大切にしています。わたしのほうも愛着が湧いてきて、1歳になるころ「こ
のライオンって何かな?」と気になって調べたところ、ハンガリーの有名な絵本のキ
ャラクターだというではありませんか。さっそく取り寄せた絵本は、いまやわが家の
本棚の古株になりました。1965年に邦訳が刊行された絵本なので、ご存じのかたも多
いかもしれませんね。表紙は黒で、中身の絵はどのページもオレンジ色、黄、緑の3
色だけというシンプルさが潔く、お話を引き立てています。
 主人公ラチは、よわむしの男の子。犬を見ると逃げだし、暗い部屋にはこわくて入
れません。友だちにもばかにされて、泣いてばかり。そんなある朝、ラチが目をさま
すと小さならいおんがいました。見た目に反してつよいらいおんは、「きみも つよ
くなりたいなら、ぼくが つよくしてやるよ」とラチに言うのです。ラチは毎朝らい
おんといっしょに体操をし、つよくなる訓練をはじめました。やがてラチは……。
 わたしが思う、この絵本のいちばんの魅力は、いじわるをしている子に立ち向かう
とき、ラチくんがけっして暴力に訴えず、自分ならできるという自信と、らいおんへ
の信頼をもとに果敢に挑むところ。ほんとうのつよさって、肉体的な、目に見える力
のつよさではないんだよ、とやさしく諭してくれているようです。
 実は、マイペースでのんびり屋の青ちゃんは集団生活が苦手らしく、幼稚園ではひ
とりで遊んでいることが多いようです。同じく協調性に欠ける母(わたし)は、本人
が楽しんでいるなら、それでいいよね、と思います。いまは、ひとりの世界をとびき
り豊かに充実させて、ありのままの自分自身を大切にしてほしい。そして、いつかき
っと、心から守りたいと思える存在に出会う日のため、ほんとうのつよさを少しずつ
身につけていこうね。

【参考】
▽本誌バックナンバー「親ばか絵本日誌」コーナー
「mikiron の親ばか絵本日誌」(2021年4月号〜連載中)
http://www.yamaneko.org/mgzn/corner/oyabaka.htm#mikiron

「Chicoco の親ばか絵本日誌」(2000年6月号〜2004年7月号掲載)
http://www.yamaneko.org/mgzn/corner/oyabaka.htm#chicoco

『ラチとらいおん』を Amazonで検索する:書名と作者名

                                (山本みき)

▲ページのトップへ


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●賞速報━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

★2021年ニュージーランド児童書及びヤングアダルト小説賞発表
★2021年オーストラリア児童図書賞発表

 海外児童文学賞の書誌情報を随時掲載しています。「速報(海外児童文学賞)」を
ご覧ください。
http://www.yamaneko.org/cgi-bin/sc-board/c-board.cgi?id=award

▲ページのトップへ


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●イベント速報━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

★展示会情報
 安曇野ちひろ美術館
 「ちひろ美術館コレクション エリック・カールさんをしのんで」
 兵庫県立美術館「ハリー・ポッターと魔法の歴史」 など

★講座・講演会情報
 東京子ども図書館(オンライン)
 「田中奈津子氏講演会 学校物語の名手アンドリュー・クレメンツ――人と作品」
 パリクラブ オンライン講演会
 「大好きなもの、大好きなこと:絵本に描かれるアフリカの子どものこと」 など

★コンクール情報
 「第28回いたばし国際絵本翻訳大賞」 など

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、イベントは中止や延期になる場合がありま
す。最新の開催情報は「児童書関連イベント情報掲示板」掲載の各参考ウェブサイト
でご確認ください。
http://www.yamaneko.org/cgi-bin/sc-board/c-board.cgi?id=event

 ツイッターアカウントでも最新情報を提供していますので、どうぞご注目ください。
▽やまねこ翻訳クラブ*イベント情報 Twitter
https://twitter.com/YamanekoEvent

★★やまねこ翻訳クラブ協力企画のお知らせ★★

「読書探偵作文コンクール2021」
  主催 読書探偵作文コンクール事務局
  協力 翻訳ミステリー大賞シンジケート、やまねこ翻訳クラブ

 いつも「読書探偵作文コンクール」にご協力いただき、ありがとうございます。
 小学生部門、中高生部門ともに、今年も開催中です。
 応募締切は★9月30日★です。詳細は各部門の公式ウェブサイトをご覧ください。
 また、コンクール開催に関連して、7月18日に無料オンラインイベント「読書探偵
作文コンクール 2020年度最優秀作品を選考委員が語る!」を行いました。以下の
URL でアーカイブ映像を公開していますので、ぜひご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=l-4ZokdrolY

 公式ツイッター、フェイスブックページ、note では随時最新情報をお伝えしてい
ます、どうぞ併せてご利用ください。

▼「読書探偵作文コンクール」小学生部門 公式ウェブサイト
http://dokushotantei.seesaa.net/

▼「読書探偵作文コンクール」中高生部門 公式ウェブサイト
https://dokutanchuko.jimdofree.com/

▼「読書探偵作文コンクール」公式ツイッター
https://twitter.com/Dokusho_Tantei

▼「読書探偵作文コンクール」公式フェイスブックページ
https://www.facebook.com/dokushotantei

▼「読書探偵作文コンクール」公式 note
https://note.com/dokutan

 お子さんに、お友だちに、お知り合いに、ぜひお知らせください!

 過去の受賞作をもとに2017年に出版した『外国の本っておもしろい! 子どもの作
文から生まれた翻訳書ガイドブック』(サウザンブックス社)も、引き続きよろしく
お願いいたします。
http://thousandsofbooks.jp/project/dokutan/

                          (冬木恵子/山本真奈美)

▲ページのトップへ


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●映像化された児童文学●第6回 『恐竜が教えてくれたこと』
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 このコーナーでは、海外の児童書を原作とした、おすすめの映画やドラマをご紹介
しています。今回取り上げる作品はオランダの映画です。原作と併せて、どうぞお楽
しみください。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

★文部科学省特別選定作品
★第69回(2019年)ベルリン国際映画祭ジェネレーション Kplus 部門
                    国際審査員賞スペシャルメンション受賞

『恐竜が教えてくれたこと』(原題 "Mijn bijzonder rare week met Tess"/
                 英題 "My Extraordinary Summer with Tess")
監督:ステフェン・ワウテルロウト
出演:ソンニ・ファンウッテレン、ヨセフィーン・アレンセン、
             イェネフェル・ホッフマン、ヨハネス・キーナストほか
2019年製作/オランダ
日本劇場公開2020年/配給:彩プロ
原作:『ぼくとテスの秘密の七日間』アンナ・ウォルツ作/野坂悦子訳/
                                フレーベル館
Amazonで検索する:書名と作者名

【DVD】
『恐竜が教えてくれたこと』
発売元:TCエンタテインメント/発売日:2020年9月/本編:84分

*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-

             〜思い出は孤独を超える〜

「最後の恐竜は死ぬ時最後の1頭だって知ってたかな」

 11歳のサムは、物事を深く考える、ちょっと哲学的な男の子。自分は末っ子だから、
家族は先に死んでしまい、いつか自分は最後の恐竜のようにひとりぼっちになると思
い悩んでいる。夏のバカンスで家族とテルスへリング島にやって来ても、この悩みが
頭から離れず、休みを思い切り楽しめないでいる。そんな中、ひょんなことから、島
の住民でひとつ年上の風変りな少女テスと出会い、彼女が突拍子もない計画を立てて
いることを知る。実は、テスは死んだと聞かされていたパパが生きていると知って、
ママに内緒で嘘の懸賞当選通知をパパに送り、島に招待したという。娘の存在を知ら
ないその人がいい人だったら、自分は娘だと打ち明けるつもりだと。パパの人柄を知
るためにテスが練った作戦にサムは巻き込まれ、手伝うことに。ところが、その作戦
は予想外の展開になり――。

 本作は、オランダ北部のテルスへリング島を舞台に、サムとテスの人生を大きく変
える夏の7日間の出来事を描いた物語だ。映画の原作『ぼくとテスの秘密の七日間』
は、オランダの作家アンナ・ウォルツが手がけた児童書で、2014年にオランダの児童
文学賞「旗と吹流し賞」を受賞している。
 独特の死生観に悩みを深めるサムと、パパを知らずに生きてきたテス。サムはひと
りぼっちになる日に備え、その寂しさに耐えられるようひとりで過ごす訓練を始める
が、テスの作戦に手を貸すうち、孤独の訓練よりもテスのために自分にできることを
考えるようになっていく。孤独や寂しさを感じているふたりが次第に心を通わせてい
く様子が、自然あふれる島を背景に丁寧に描写され、見る者の心に切なさと甘酸っぱ
さが広がる。
 映画の邦題『恐竜が教えてくれたこと』は、原題・原作から大きく変えられている。
正確に言えば、恐竜が何かを教えてくれたわけではない。サムには地球最後の恐竜が
自分と重なって見えていて、死や孤独への不安にもがいている。そんなサムが孤高の
老人との出会いによって、自分のやるべきことを知る。それは、ひとりぼっちに耐え
る訓練なんかではなく、一瞬一瞬を大切にすることだと。そうやって積み重ねた思い
出は、孤独を超えるとサムは気づく。

 原作の舞台はテッセル島だが、映画の舞台となったテルスへリング島も同じ西フリ
ースラント諸島の島で、1万種以上の動植物が生息する自然豊かな場所。これらの島
々が浮かぶワッデン海は、干潮時には世界最大の干潟になる湿地帯で、2009年に世界
自然遺産に登録されている。画面いっぱいに広がる夏の島の風景は、本当に美しい。
主役のサムやテスをはじめ、キャスティングも見事で、登場する俳優たちが原作のイ
メージにあまりにもぴったりで驚いた。ストーリーは原作とほぼ同じだが、映画では
サムの孤独に対する不安が映像でより鮮明に描写されている。広い砂浜にぽつんとひ
とりいるサムを上空から映し出すシーンはとくに印象的だ。原作よりも一歩踏み込ん
で描かれたラストの場面では、サムの成長がはっきりと見てとれ、しみじみとした余
韻が残る。本作は、子どもよりも思い出を多くもっている大人のほうが、より心に染
みるかもしれない。

【参考】
▼映画『恐竜が教えてくれたこと』公式ウェブサイト
http://kyoryu.ayapro.ne.jp/

▽本誌「映像化された児童文学」コーナー
http://www.yamaneko.org/mgzn/corner/movie.htm

▽映像化された児童文学《新装版》(やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/gen/eiga/index.htm

                                (蒲池由佳)

▲ページのトップへ


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●読者の広場●海外児童文学や翻訳にまつわるお話をどうぞ!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 このコーナーでは、本誌に対するご感想・ご質問をはじめ、海外児童書にまつわる
お話、ご質問、ご意見等を募集しています。mgzn@yamaneko.org までお気軽にお寄せ
ください。

※メールはなるべく400字以内で、ペンネームをつけてお送りください。
※タイトルには必ず「読者の広場」とお入れください。
※掲載時には、趣旨を変えない範囲で文章を改変させていただく場合があります。
※質問に対するお返事は、こちらに掲載させていただくことがあります。原則的に編
集部からメールでの回答はいたしませんので、ご了承ください。

▲ページのトップへ


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●お知らせ●

 本誌でご紹介した本を、各種のインターネット書店で簡単に参照していただけます。
こちらの「やまねこ翻訳クラブ オンライン書店」よりお入りください。
http://www.yamaneko.org/info/order.htm
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
           ・☆・〜 次 号 予 告 〜・☆・

 詳細は10日ごろ「やまねこ翻訳クラブ・喫茶室掲示板」に掲載します。お楽しみに!
    http://www.yamaneko.or.tv/open/c-board/c-board.cgi?id=kissa

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
▽▲▽▲▽   海外児童書のシノプシス作成・書評執筆を承ります   ▽▲▽▲▽

 やまねこ翻訳クラブ( yagisan@yamaneko.org )までお気軽にご相談ください。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
     ★☆メールマガジン『海外ミステリ通信』 隔月15日発行☆★
          http://honyakuwhod.blog.shinobi.jp/
未訳書から邦訳新刊まで、あらゆる海外ミステリの情報を厳選して紹介。翻訳家や
編集者の方々へのインタビューもあります!    〈フーダニット翻訳倶楽部〉
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=

   ◇各掲示板の話題やクラブの動きなど、HOT な情報をご紹介しています◇

★やまねこ翻訳クラブ Facebook ページ https://www.facebook.com/yamaneko1997/

★やまねこ翻訳クラブ Twitter

 やまねこアクチベーター       https://twitter.com/YActivator
 やまねこ翻訳クラブ☆ゆる猫ツイート https://twitter.com/yamanekohonyaku
 やまねこ翻訳クラブ*イベント情報  https://twitter.com/YamanekoEvent
 巷で見かけたやまねこたち      https://twitter.com/ChimataYamaneko

*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●編集後記●原書読破マラソンでは、魅力的な作品が次々と登場しています。その紹
介に惹かれて別のメンバーが読み、さらに感想が書き込まれることも。読書の輪がど
んどん広がっています。読書の秋を迎え、よりいっそう盛り上がることでしょう。今
後も未訳作品のレビューをご紹介する予定です。お楽しみに!(も)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
発 行 やまねこ翻訳クラブ
編集人 森井理沙/平野麻紗/三好美香(やまねこ翻訳クラブ スタッフ)
企 画 赤塚きょう子 池田幸子 牛原眞弓 尾被ほっぽ かまだゆうこ 蒲池由佳
    小島明子 小原美穂 冬木恵子 山本真奈美 山本みき 綿谷志穂
協 力 出版翻訳ネットワーク 管理人 小野仙内
    からくっこ ナウシカ ながさわくにお mikkii
    html版担当 ayo
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
・このメールマガジンは、「まぐまぐ」( http://www.mag2.com/ )を利用して配信
しています。購読のお申し込み、解除は下記のページからお手続きください。
http://www.mag2.com/m/0000013198.html
・バックナンバーは、http://www.yamaneko.org/mgzn/ でご覧いただけます。
・ご意見・ご感想は mgzn@yamaneko.org までお気軽にお寄せください。
・無断転載を禁じます。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 

メニュー「月刊児童文学翻訳」バックナンバー>2021年9月号   オンライン書店

Copyright (c) 2021 yamaneko honyaku club. All rights reserved.

やまねこ翻訳クラブロゴ