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月刊児童文学翻訳

─2006年10月号(No. 84)─

児童文学翻訳学習者による、児童文学翻訳学習者のための、
電子メール版情報誌<HP版+書店街>
http://www.yamaneko.org/
編集部:mgzn@yamaneko.org
2006年10月15日発行 配信数 2410

もくじ

 ◎特別企画:『大人のファンタジー読本 未知なる扉をひらく180選』出版記念特集 その1
       第1部 やまねこの本ができるまで 〈前編〉
       第2部 特別鼎談:「ファンタジーって、なんだよ?」
 ◎注目の本(邦訳読み物):『ベネチア人にしっぽがはえた日』
アンドレア・モレジーニ作/長野徹訳

 ◎賞速報
 ◎イベント速報
 ◎やまねこカフェ:海外レポート 第4回オーストラリア(シドニー)
 ◎読者の広場:海外児童文学や翻訳にまつわるお話をどうぞ!

●このページでは、書店名をクリックすると、各オンライン書店で詳しい情報を見たり、本を購入したりできます。

 

●特別企画●
『大人のファンタジー読本 未知なる扉をひらく180選』出版記念特集 その1

 本誌を発行している「やまねこ翻訳クラブ」では、2006年11月末に、ファンタジー作品のブックガイドを出版することになった。そこで、10月号と11月号の2回にわたり、今年の春からクラブ内で繰り広げられている、やまねこたちの微笑ましい(?)出版奮闘記をお伝えしていく。今月は、第1部で企画が船出するまでの顛末を、第2部では、日頃より応援いただいているメルマガ読者のみなさまに感謝を込めて、ブックガイド掲載予定の鼎談記事を、出版より先にお届けする。

◎第1部 やまねこの本ができるまで 〈前編〉

●やまねこたちの決断――夢の扉を開こう!

 2006年3月、やまねこ翻訳クラブに突然、すごい企画が飛び込んできた。
「ファンタジー・ブックガイドをクラブで執筆してみませんか?」
 とにかくびっくりした。「大人のためのブックガイド」というコンセプトのもと、やまねこがおすすめのファンタジーを選んでレビューを書く、という企画。出版社から1冊丸ごと本の執筆を任せてもらうなんて、クラブにとって初の大仕事だ。もちろん、やりたい。けれども、引き受けたとして、本当にできるのか不安がよぎる。この大所帯でどうやって仕事を進めればいいんだろう。選書の基準や方法は……? ちょっと考えただけでも、わからないことだらけだし、企画が走り出したら、予想外のことだって起こるだろう。
 引き受けられるかどうか、みんなでもんもんと頭を悩ませる日々が続いたある日、別の企画でスタッフや元スタッフが大勢集まる機会があった。話題はやっぱり、ブックガイドのことに。当然、慎重な意見も出た。けれど……多くの声は、圧倒的に「やりたい!」だった。わたしも「やりたい!」派のひとり。そのとき述べた少々ノーテンキな発言は、今でも覚えている。
「“やまねこ”ができたばかりのころ、みんなで言ってた冗談、覚えてる? 『いつか“やまねこ著”とか“やまねこ訳”って書かれた本を出せたらいいね』って笑ってたの。それが実現するかもしれないんだよね……なんか……わくわくするよね!」たいへんなのはわかっていたけれど、話し合っているうちに、みんなの気持ちがぐんぐん高まった。そして最後には、ウェブ上での決議のもと、「やろう」「できるよ」とひとつになった。
 こうして、ブックガイドの企画がスタートした。
 今回は、100名以上いる会員全員で動く時間の余裕がなかったため、スタッフで相談した結果、メールマガジンの関係者を中心としたメンバーで作業を進めることになった。実際、常に締め切りに追われながら、ひとつひとつ話し合って作業を進めるのは、キツいことではあった。けれどもそれ以上に楽しかった。この感覚は、ほとんど学園祭のノリ。みんなで大いにセーシュンした数か月だった(作業の様子等については、本誌2006年11月号「やまねこの本ができるまで〈後編〉」をお楽しみに!)。今は完成まであと少し、ラストスパートに突入したところだ。
 ところで、作業が始まって少し経ったころ、この企画とはまったく関係なく、翻訳家の金原瑞人さんが、訳書を出していてクラブの会員でもある宮坂と田中(わたし)に、いっしょに鼎談のイベントをやらないか、と声をかけてくださった。そこで、わたしたちはひらめいた。鼎談の話題を「ファンタジー」にして、ブックガイドに収録させてもらえないだろうか。金原さんにお願いしたところ、即ご快諾。こうしてちゃっかり(?)そのときの鼎談の記事を、ファンタジーの定義を語る前書きとして、ブックガイドに掲載できることになった。なお今回、特別に本誌でもその記事をご紹介する。
 いろんな面でご協力いただいた金原瑞人さんには、心よりお礼を申し上げたい。また、出会った当初から常にやまねこを信頼して太っ腹な対応をしてくださる株式会社マッグガーデンさんにはとても感謝している。今回の鼎談記事の本誌掲載も、快く許可してくださった。
 それでは、『大人のファンタジー読本 未知なる扉をひらく180選』に掲載予定の鼎談記事を、ひと足早くどうぞ。

(田中亜希子)

◎第2部 特別鼎談:「ファンタジーって、なんだよ?」

(以下の記事は、2006年7月にジュンク堂書店・新宿店で行われた、金原瑞人さん、宮坂宏美さん、田中亜希子さんによる鼎談の内容をもとに、発言者の了承を得て加筆・再構成したものです。)

●ファンタジーの幅は狭くなった!?

金原:やまねこ翻訳クラブって、翻訳ものを中心に読んでいる人たちだと思うんだけど、この本では、翻訳ものも日本のものも区別せずに集めたんだね。

田中:“大人にとって面白い”をキーワードにしたので、古今東西の幅広い作品が集まったと思います。まだ翻訳されていない海外の作品もご紹介できたのが、やまねこ翻訳クラブならではという感じで、ちょっと自慢ですね。

宮坂:でも、作品を選ぶ段階では、どこまでをファンタジーとするかというのにいちばん迷いました。金原先生は、時代によってファンタジーの定義は違うんだとおっしゃっていますよね。

金原:日本でも、1970年ごろまでは、江戸川乱歩もフランケンシュタインもドラキュラも、全部ひっくるめてファンタジーと呼んでいた。そのころでも、一部の、児童文学が好きな人とかは、今と同じような意味で“ファンタジー”という言葉を使っていたけど、どちらにせよほとんど文芸用語みたいなもので、まだ日本ではあまり知られていなかった。だから、佐藤さとるさんの「コロボックル物語」が出たときには、最初“創作民話”と呼ばれていたんだよね。もっと昔には、“異端の文学”という言い方があって、いわゆる正統派の小説からはずれたものは全部異端とされていた。ファンタジーという言葉が日本で定着するのは、80年代の後半に入ってからじゃないかな。アメリカで「指輪物語」が一大ブームになって、まずアメリカで「指輪物語」や「ナルニア国ものがたり」に代表されるような物語を“ファンタジー”と呼ぶようになって、それから10年以上たって、日本でも、エルフや英雄が出てくる、いわゆる“剣と魔法の世界”的な作品をファンタジーと呼ぶようになったわけ。

宮坂:昔に比べると、ファンタジーの定義は狭まったということですか。

金原:狭くなったね。たくさんあったファンタジーの中で、「指輪物語」「ナルニア」「ゲド戦記」など一部の作品があまりにも有名になったから、そういう世界観のものをファンタジーと呼ぼうという暗黙の了解ができたという気がする。

宮坂:「指輪物語」や「ゲド戦記」などはいわゆるハイ・ファンタジーと呼ばれていて、それ以外のものはロー・ファンタジーと分けられたりしますよね。例えば、私と金原先生の共訳の「盗神伝」がありますが、これはハイ・ファンタジーではないですよね。

金原:これはロー・ファンタジーだね。では、ハイ・ファンタジーとは何かというと、まったく架空の世界を創り上げて、そこでいろんな人物が登場してきて冒険や旅をする、という形のもの。「ナルニア」も、現実世界は出てくるけど、中心はナルニアの国で物語が展開されるから、あれもハイ・ファンタジーと言えるかな。その点、「盗神伝」もすべて架空の国で物語が展開するんだけど、作者も言っているように、モデルにしている国というか地域があまりにはっきりしすぎているからね。

田中:『ジャッコ・グリーンの伝説』は、昔の伝説をちりばめながら、第一次世界大戦後のイギリスを舞台にして語り直していくという作品で、これもやはりロー・ファンタジーですね。この作品のように、モンスターとか伝説とか、マザーグースのような伝承的なものが盛り込まれているファンタジーというのも、いわゆる異世界ものとは別のジャンルとしてありますよね。

金原:言ってみれば水木しげるさんの世界でしょ、これは(笑)。イギリス版子泣きじじいがいたり、一反もめんがいたりするんだから。向こうの人たちはよく知っているけど、われわれはほとんど馴染みがないから、訳すのに苦労したね。

●「ハリー・ポッター」が変えたファンタジー

宮坂:「ハリー・ポッター」の出る以前と以後で、ファンタジーが大きく変わったな、と感じるところはありますか。

金原:「指輪物語」の人気が飛び火する形で「ゲド戦記」が生まれたように、以降のほとんどの作家が「指輪」に影響されて作品を生みだしていた。そして、ファンタジーというものがどんどん専門的なほうへひっぱられていって、子どもから離れていく傾向が強くなっていった。それを再び子どもの手に取り戻したのが「ハリー・ポッター」。それ以降のファンタジーは、たいてい子どもに読まれるように書かれてるでしょ。

田中:やまねこ翻訳クラブは児童書好きのメンバーが集まっているので、このブックガイドにも児童書がけっこう入っていますけど、タイトルが『大人のファンタジー読本』ですから、児童書の範疇でも、大人も楽しめる作品を選びました。

宮坂:『クマのプーさん』や「ムーミン」など、誰でも知っているような児童書でも、実は大人の目で読むと、哲学的だったり新たな発見があったりするんですよね。子どもだけに読ませておくのがもったいないと思う作品がたくさんありますから、それを大人にもぜひ楽しんでほしいですね。逆に、『エルフギフト』のような、子どもには薦められないかなという作品もありますが(笑)。

金原:うん、薦められないね(笑)。でも、『エルフギフト』は大好きなファンタジーだな。

田中:やまねこ翻訳クラブで、自分たちなりにファンタジーの定義を挙げていった中に、支持を集めた案がありました。「現実にはありえないなんらかの法則に従う世界を舞台にした物語。あるいは、現実にはありえないなんらかの法則に従う現象を主な構成要素とした物語」というものです。ただ、それも、SFやホラーやおとぎ話に関 しては曖昧になりますね。ファンタジーと言えばファンタジーって言えるよね、という境界線上の作品がたくさんあります。

金原:それはもう読み手が区分けするしかないよね。例えば、ファンタジーとSFの共通点は、現実にありえない出来事を書くということだけど、ファンタジーはそれを初めからあるものとして書いているのに対して、SFはそれを理屈で説明しようとする。フランスの思想家ロジェ・カイヨワなんかはそう区別している。でも、SF作家のレイ・ブラッドベリはどうなんだと言われると、困っちゃう。幻想的な作風だし、科学的な説明がまったくないしね。

田中:でも今回、ブラッドベリは、入れちゃいましたよ(笑)。

宮坂:ロバート・ウェストールの『かかし』は、ちょっとホラーっぽい作品ですよね。

金原:これは普通ファンタジーには入れないよね(笑)。ホラーに入れちゃう。

田中:でも、ホラーとファンタジーってすごく重なってませんか。

金原:ホラーに子泣きじじいが出てくるとファンタジーになるんだけど。これ、かかしが出てくるだけだからなあ。

田中:スーザン・プライスの『500年のトンネル』なんかはどうですか?

金原:ぼくだったらこれはSFに入れちゃうかなあ。

宮坂:でも、これは「ファンタジー文庫」に入ってますよね。

金原:うーん。……というふうに、ファンタジーのくくり方というのは難しいね(笑)。「ハリー・ポッター」以降、ファンタジーブームといわれてけっこう経つけど、今はどんどんいろんな方向に広がりはじめている時代なんだよね。

田中:そうなんですよ。今回のブックガイドでも、最初は収録する作品を選ぶ前に、ファンタジーの定義を決めようかという話が出たんですが、収拾がつかなくなりました。みんなの薦めたい作品の幅が広すぎて(笑)。結局、「ハリー・ポッター」などでファンタジーの魅力を知った人のためのブックガイドというコンセプトなので、そういう人が面白いと思える作品という観点で選んでいます。

宮坂:「ハリー・ポッター」や「ナルニア」の魅力って、9と4分の3番線ホームから魔法の世界へ旅立つところだったり、タンスを開けるとその奥に異世界が広がっているところだったりと、未知の世界をのぞく楽しさがありますよね。だから、「指輪物語」に代表されるハイ・ファンタジーだけじゃなくて、日常の中のちょっとした魔法を描いたもの、民話をもとにしたもの、リアリズムの中にファンタジーが顔を出すようなものなど、いろんなファンタジーの形をみなさんに楽しんでいただけたらいいなあ、と思っているんです。

金原:それって結局、みんなが好きな作品を集めましたっていうことじゃないの?(笑)

田中:ぎくっ!(笑) でも、いろいろな方の好みに対応できるブックガイドになったと思いますよ。

金原:今の話を聞いていると、昔々、リアリズム小説から離れたものは全部ファンタジーと呼んでいたという、その時代に帰った感じがして興味深いな。そこから新しいファンタジー観が生まれてくるのかもしれないね。

宮坂:このブックガイドを読んだ読者のみなさんが、それぞれ自分なりのファンタジー観というものを新たに創る助けになったら、うれしいですね。

(文責:長澤國雄)

 
【書誌情報】
「コロボックル物語」(佐藤さとる作/講談社)
「指輪物語」(J・R・R・トールキン作/瀬田貞二・田中明子訳/評論社)
「ナルニア国ものがたり」(C・S・ルイス作/瀬田貞二訳/岩波書店)
「ゲド戦記」(アーシュラ・K・ル=グウィン作/清水真砂子訳/岩波書店)
「盗神伝」(メーガン・ウェイレン・ターナー作/金原瑞人・宮坂宏美訳/あかね書房)
『ジャッコ・グリーンの伝説』(ジェラルディン・マコックラン作/金原瑞人訳/偕成社)
「ハリー・ポッター」(J・K・ローリング作/松岡佑子訳/静山社)
『クマのプーさん』(A・A・ミルン作/石井桃子訳/岩波書店)
「ムーミン童話全集」(トーベ・ヤンソン作/山室静ほか訳/講談社)
『エルフギフト』(スーザン・プライス作/金原瑞人訳/ポプラ社)
『かかし』(ロバート・ウェストール作/金原瑞人訳/徳間書店)
『500年のトンネル』(スーザン・プライス作/金原瑞人・中村浩美訳/東京創元社)

 

 『大人のファンタジー読本 未知なる扉をひらく180選』
☆ やまねこ翻訳クラブ編 ☆

定価1,850円(税込) 株式会社マッグガーデンより 11月30日出版予定
本の大好きなやまねこによる、渾身のレビューがつまったファンタジー・ガイド
(あの……できましたら……買っていただけると、非常にありがたいです!) 



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●注目の本(邦訳読み物)●

―― とつぜんしっぽがはえてきた! どうする! ――

『ベネチア人にしっぽがはえた日』
アンドレア・モレジーニ作/長野徹訳
 汐文社 定価1,575円(税込) 2006.08 118ページ ISBN 4811380878
"Quando ai veneziani crebbe la coda" by Andrea Molesini
Mondadori, 1989

 イタリアでは、1月6日の公現祭の前夜、魔女ベファーナがやってくるという。よい子にはお菓子やおもちゃを、悪い子には炭を持って。
 この年も、ベファーナはベネチアの町にやってきた。ところが、乗っていたほうきがこわれてしまったので、スカートをパラシュートにして商人の家の庭に降り立った。中にいたふたりの商人は、新しいほうきと靴を用意してくれた。ベファーナは、お礼に彼らの子どもたちには特別なものをあげると約束する。それから急いで家々の煙突をまわり、贈り物を靴下に入れていった。もちろんあの商人たちの家の靴下にも。ところが、ふたりにごちそうになったワインで酔っていたのか、ベファーナは贈り物すべてに魔法の粉をふりかけてしまう。翌日、人々は背中にひどいかゆみを感じ、なんとその次の朝には、みんなのおしりにしっぽがはえてきた。ふたりの商人の子どもたち以外みんな……。魔法など信じない大人たちは、この一大事の責任を誰かに求めなければ気がすまない。そして非難の矛先は、とんでもないところに向けられていった。
 語りを聞いているような、やさしい雰囲気の物語。人々には守護天使がついているのだが、それぞれお月さまに恋をしていたり、水たまりに化けるのが好きだったりと、とてもユーモラス。また、「ベネチアでは」ということばで始まる人々の習慣や暮らしぶりの説明は、時に楽しく、時に皮肉も含んで笑わせてくれる。だがそんな愉快なお話の中で、悪意あるひとりの人間の発言が、あっという間におおぜいの気持ちを変えていくおそろしさが語られる。あくまでもおだやかな口調を保ちながら、読む人に差別について考えさせる。そこにおしつけがましさはみられない。そして、差別など 頭にない子どもたちの素直さが、問題を解決へと導いていくのも、自然な流れだ。
 作者が詩の研究者であるためか、「いちごの形のちっちゃなげっぷ」、「銀色のわらい声」など、独特の表現があちこちにちりばめられ、重いテーマを含みながらも、読んでいて気持ちが明るくなる。そして何より心強いのは、守護天使たちが、ついた相手をやみくもに守るわけではなく、正しいほうの味方になってくれるということだ。そんな愛すべき守護天使たちを探しに、ベネチアに行ってみたくなった。

(冬木恵子)


【作】アンドレア・モレジーニ(Andrea Molesini):

1954年ベネチア生まれ。パドヴァ大学で現代イタリア文学を教えるかたわら、児童文学の翻訳、創作を行っている。児童書第1作である本書で、イタリア・アンデルセン賞を受賞。本書が初の邦訳作品。

【訳】長野徹(ながの とおる):

1962年山口県生まれ。東京大学大学院博士課程修了(イタリア文学)。イタリア留学の後、現在はイタリア文学の研究、紹介に従事している。主な訳書に、『光草(ストラリスコ)』(ロベルト・ピウミーニ作/小峰書店)、『ポリッセーナの冒険』(ビアンカ・ピッツォルノ作/徳間書店)などがある。

【参考】
▼アンドレア・モレジーニの公式ウェブサイト(イタリア語/英語)
http://www.andreamolesini.it/

 

※編集部注:イタリア・アンデルセン賞については、本誌9月号「世界の本棚」参照。
http://www.yamaneko.org/mgzn/dtp/2006/09.htm#sekai

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●賞速報●

★2006年ガーディアン賞発表
★2006年ネスレ子どもの本賞ショートリスト発表(受賞作の発表は12月13日の予定)
★2006年ドイツ児童文学賞発表
★2006年エスター・グレン賞/ラッセル・クラーク賞/エルシー・ロック賞発表
(ショートリストは10月4日に発表されました)
★2006年 Booktrust Early Years Awards 発表
★2006年オランダ金の石筆賞・絵筆賞発表
★2006年全米図書賞(児童書部門)最終候補作発表(受賞作の発表は11月15日の予定)

海外児童文学賞の書誌情報を随時掲載しています。「速報(海外児童文学賞)」をご覧ください。

 

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●イベント速報●

★展示会情報

静岡アートギャラリー「世界の絵本がやってきた ブラティスラヴァ世界絵本原画展」
木城えほんの郷「たからもののコレクション連続公開絵本原画展」など
 

★セミナー・講演会情報

熊本子どもの本の研究会「さくまゆみこ講演会 物語を楽しむ」など
 

★コンクール情報

板橋区立中央図書館「いたばし国際絵本翻訳大賞」
 
 詳細やその他の展示会・セミナー・講演会情報は、「速報(イベント情報)」をご覧ください。なお、空席状況については各自ご確認願います。

(井原美穂/笹山裕子)



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●やまねこカフェ 海外レポート●第4回オーストラリア(シドニー)

〜 州立小学校の図書教育現場を訪ねて 〜

 本誌2月号でご紹介したフィリピンに続き、今回はオーストラリアから海外図書教育レポート第2弾をお届けする。
 日本に秋の気配が訪れるころ、南半球に位置するオーストラリアは初夏の空気に包まれる。生徒たちが校庭を元気に走り回る9月半ば、シドニーのニューサウスウェールズ州立小学校、アーンクリフ・パブリックスクール(APS)を訪ねた。APSは、市の中心部から南に約10キロ、シドニー国際空港からは車で約10分の場所にある。生徒は約390人で、レバノン、マケドニア、フィジー、ニュージーランド、アジア諸国など様々な文化背景を持つ。世界各国からの移民が暮らす多文化国家、オーストラリアを象徴するような学校である。
 今回、質問回答や授業見学を快く引き受けてくださった図書の先生、ミセス・エドワーズはAPSで教え始めて6年目、通算17年の豊富な図書教育指導の経験を持つ。
 教室を2つ合わせた程度のこじんまりした図書室には、フィクション、絵本(それぞれ作家名のABC順)、ノンフィクション(国際十進分類法に準拠)に分けて本が配置されている。蔵書の数は約7000冊で、生徒の興味、カリキュラムに沿ったテーマ、書評などを基準に毎年約400冊の新しい本が購入される。図書教育の目的は、キンディー(Kindergarten)から2年生までは「良質な文学作品に親しみ、読書を愛する心 を育てること」、3年生以上になると、これに加えて高次な思考力を養うことにも重点が置かれる。また、基本的なコンピューター技能の習得にも力を入れており、文書や図の作成の仕方、インターネットの使い方を学ぶために、図書室の隣に約20台のコンピューターが設置された部屋がある。
 授業には読書を中心に行うものと、調べ学習を行うものの2種類がある。まずは読書中心の1年生のクラスを見学。担任の先生に引率されて図書室に入ってきた20人あまりの生徒たちは、エドワーズ先生を囲むようにしてカーペットにじかに座る。今日の絵本は、今年のオーストラリア児童図書賞候補作品のひとつ "Rex" だ。クラスのペット、カメレオンの "Rex" を子どもたちが順番に家に持って帰り、世話をするという楽しいお話。自分だったら一緒に何をして遊ぶか、生徒は思い思いに意見を述べながら、絵本に見入る。その後、2人1組になって、先生が配ったそれぞれの絵本を読む。1年生の図書の時間は週1回30分と限られているので、なるべく新しい本を紹介するように心がけているとのことだ。床に寝転んで読む生徒がいても、先生は気にする様子もなく「仲良く読んでいるわねえ。感心だわ」と、常に声をかけながら笑顔で巡回していた。行儀にこだわるよりも、本に親しむことを優先しているのだろう。 大らかなお国柄が感じられた一場面だった。
 休憩を挟んで、次は調べ学習を行う6年生の授業。今学期のトピックは「古代エジプトについて」だ。「古代エジプトツアーのパンフレットを作成する」、「エジプト人の姿を絵に描く」、「古代エジプトと現代の子どもの生活を比較し、レポートにまとめる」など、30種類もある課題から生徒は自分の興味に合わせて4、5種類を選ぶ。そして本から情報や資料を集め、各自のペースで課題に取り組む。中にはインターネットを使う課題も含まれ、エドワーズ先生はコンピューター室と、図書室とを行き来しながら指導する。その一方で、引率で来た担任の先生は絵を描く課題を選んだ生徒と他の教室へ移動する。学ぶ本人である生徒の自主性が重視されていること、選択肢の多さと、それをサポートする体制が十分に整っていることが特に印象に残った。また、今まで図書教育といえば読書奨励と単純に考えていたが、本から得た知識を分析、応用し、それに対する意見を発表するという総合的な力が養われていることがこの授業を通してわかり、その点も大変有意義だった。
 授業終了15分前、本の貸し出しの指示が出る。生徒に人気のある作家はダイアナ・ウィン・ジョーンズ、「世にも不幸なできごと」シリーズのレモニー・スニケットなど。ロアルド・ダールの作品や「ナルニア国ものがたり」シリーズも根強い人気があるらしい。男子生徒はオーストラリア人作家、エミリー・ロッダの「デルトラ・クエスト」シリーズをよく読むそうだが、そのほかはジョーク・ブックや宇宙、恐竜、スポーツなどのノンフィクションを好むとか。これとは対照的に、女子生徒が読むのは主にフィクションだという。良書なら作家の出身国にはこだわらないそうだが、蔵書はやはりオーストラリア人作家の作品が多い。書棚の横にはヤングアダルトの本が載せられたワゴンがあり、児童文学から次のステップへと進む生徒のための配慮が見られた。適切な本を推薦するために、生徒が普段どんな本を借りているか先生は常にチェックを怠らない。出来るだけ多くの作品にも目を通すようにしているが、プロによるレビューを参考にすることも多いという。
 時にささやくように、また時に厳しい口調を使い分けながら、生徒にぼんやりする隙をあたえないエドワーズ先生のキビキビとした授業は、あっという間に時間がたってしまった。ほんの数時間ではあったが、先生の図書教育に対する意識の高さと熱意がしっかりと伝わってきた。機会があれば他のクラスの授業も、ぜひまた見学してみたい。

註釈:「キンディー」は日本の幼稚園年長にあたり、ニューサウスウェールズ州では義務教育に含まれる。生徒は同じ学校に計7年通うことになる。

 

【参考】
▼アーンクリフ・パブリックスクール(APS)のウェブサイト
http://www.arncliffe-p.schools.nsw.edu.au/index.htm

▽オーストラリア児童図書賞受賞作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://yamaneko.org/bookdb/award/au/cbca/index.htm

(かまだゆうこ)

【書誌紹介】
"Rex" text by Ursula Dubosarsky, illustrations by David Mackintosh
Viking, Penguin Books, 2005(Australia)

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●読者の広場●海外児童文学や翻訳にまつわるお話をどうぞ!

このコーナーでは、海外児童書にまつわるお話、ご質問、ご意見等を募集しています。mgzn@yamaneko.org までお気軽にお寄せください。
  • メールはなるべく400字以内で、ペンネームをつけてお送りください。
  • タイトルには必ず「読者の広場」とお入れください。
  • 掲載時には、趣旨を変えない範囲で文章を改変させていただく場合があります。
  • 回答も読者のみなさまから募集し、こちらに掲載させていただきます。編集部からメールでの回答はいたしませんので、ご了承ください。


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◆次号予告は毎月10日頃、やまねこ翻訳クラブHPメニューページに掲載します。◆

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●編集後記●

10月号より編集長を担当させていただくことになりました。「月刊児童文学翻訳」が、少しでも読者の皆様と“やまねこ翻訳クラブ”のパワーアップに繋がるよう、1号ずつ積み重ねていきたいと思います。よろしくお願い致します。(お)

発 行: やまねこ翻訳クラブ
発行人: 井原美穂(やまねこ翻訳クラブ 会長)
編集人: 大原慈省/横山和江(やまねこ翻訳クラブ スタッフ)
企 画: 赤間美和子 井原美穂 かまだゆうこ 笹山裕子 田中亜希子 長澤國雄 冬木恵子 村上利佳
協 力: 株式会社マッグガーデン
出版翻訳ネットワーク 管理人 小野仙内
Chicoco ベス
html版担当 蒼子

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