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※こちらは「書評編」です。「情報編」もお見逃しなく!!
児童文学翻訳学習者による、児童文学翻訳学習者のための、
M E N U
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賞情報1 |
6月15日、チルドレンズ・ブック賞が発表された。1980年に「子どもの本グループ連盟(FCBG)」主催で始められたこの賞は、子ども向けのフィクションを対象に、候補作から受賞作まで子どもたちの投票によって決められる。幼年向け、低学年向け、高学年向けという3つのカテゴリーでそれぞれ1作ずつ賞が与えられ、さらにその中から大賞が選ばれる。審査員の子どもたちには、受賞パーティーへ出席し候補作家たちと交流できる、という素敵な特典までついている。
今年度の大賞作★、受賞作☆、は以下の通り。最終候補作(The Top Ten)についてはやまねこ翻訳クラブサイトの「海外児童文学賞速報」などを参考にして欲しい。 (The Top Ten については、資料室のチルドレンズ・ブック賞のリストを参考のこと:2008年3月追記)
★大賞(高学年向け部門) ☆低学年向け部門(The Winner of Books for Younger Readers) ☆幼年向け部門(The Winner of Books for Younger Children) |
大賞を受賞した "Noughts & Crosses" は、今年度のランカシャー・チルドレンズ・ブック賞も受賞している。作中の社会では、Crosses と呼ばれる人々が権力をもち、Noughts の人々を抑圧している。その社会の中で幼なじみの男女が、お互いの立場の違いや人種差別、偏見に立ち向かいながらも、社会構造の重圧に打ちのめされていく。重いテーマを、リアルに表現した作品だ。
低学年向け部門を受賞したのは、一昨年に大賞受賞、昨年は最終候補作入りを果たしているモーパーゴ。今回の作品は口蹄疫が発生してしまった農場に住む少女が主人公である。この作品を手がけた当時、英国では口蹄疫があちこちで発生し、彼自身が運営する体験農場も被害に遭い閉鎖している。作者にとって、見過ごすことのできない事件だったのだろう。
幼年向け部門で受賞した "The Man who wore all his Clothes" は、受賞作の中で唯一愉快な作品。主人公のお父さん、なぜか服をどんどん着込んでいく。理由は本を読んでのお楽しみ。アルバーグは、「ゆかいなゆうびんやさん」シリーズでおなじみ。最近の邦訳絵本としては、『たからものさがし』(黒木瞳訳/小学館)が出版されている。
(西薗房枝)
【参考】 |
賞情報2 |
7月12日、イギリスで最も権威ある児童文学賞、カーネギー賞、およびケイト・グリーナウェイ賞の発表が行われた。受賞作、および次点は以下の通り。 |
【カーネギー賞】(作家対象) ★Winner ☆Highly commended ・Commended |
【ケイト・グリーナウェイ賞】(画家対象) ★Winner ☆Highly commended "Sometimes I Like to Curl up in a Ball" Charles Fuge (Gullane) |
※候補作リストは本誌5月号書評編参照。全候補作のレビューを先月号および今月号の特集記事で掲載。ただし、カーネギー賞候補作のうち、以下の2作品のレビューは、すでに本誌バックナンバー及び増刊号に掲載済みなので、そちらを参照願いたい。
"Journey to the River Sea" by Eva Ibbotson(エヴァ・イボットソン) |
(西薗房枝)
【参考】 ◇カーネギー賞、ケイト・グリーナウェイ賞サイト ◆カーネギー賞、ケイト・グリーナウェイ賞について (本誌1999年7月号書評編「世界の児童文学賞」) ◇やまねこ翻訳クラブ作成 カーネギー賞、ケイト・グリーナウェイ賞リスト |
特集1 |
先月号に引き続き、両賞の候補作のレビューをお届けする。書誌に注記がないもののレビューは、英国版の本を参照して書かれている。 |
******************************** ★カーネギー賞(作家対象)候補作
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"Love that Dog" 『だいすきな ぼくの犬』(仮題) by Sharon Creech シャロン・クリーチ作 Bloomsbury Children's Books 2001, 96pp. ISBN 0747556164(UK)
Joanna Cotler Books 2001, 105pp. ISBN 0060292873(US) (このレビューは、US版を参照して書かれています) |
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ぼく、詩なんて書きたくない。だって男だもの。詩なんて、女の子が書くものさ。
新学期、詩の授業がはじまった。ジャックは先生が教えてくれる有名な詩に、はじめは戸惑いをおぼえる。ただ単語をならべただけみたいな、あれが詩だっていうの?それなら短い行にして書けば、どんな言葉だって詩になっちゃう。そんなふうに思ったジャックは、いろんな詩をまねして書くうち、しだいに詩の魅力に引きこまれていく。気がつけば、"Love that Boy" という詩を書いた詩人の大ファンに!
ジャックは心に、あるしこりをかかえている。それが、詩を受けいれ、みずから書くことによって、解きはなたれてゆく。詩に秘められた癒しの力の大きさというものをあらためて感じずにはいられない。またこの本は、詩が苦手だという子どもたちに、「もっと自由に書いていいんだよ」と教えてくれる。巻末に、作中で先生が紹介した詩をまとめて掲載してくれているのも楽しい。なかでも、単語をつらねてリンゴの形にした "The Apple" という詩などを見る(「読む」というよりも「見る」!)と、ほんとうに自分でもまねして書いてみたくなってしまう。もちろん、クリーチ独特のあの胸キュン、この本のなかにも生きている。犬と心を触れあわせ、切ない思いをしたことのある人にとって、それはそれはたまらない1冊になることだろう。
(清水陽子)
【作】Sharon Creech(シャロン・クリーチ) 1945年、米国オハイオ州生まれ。渡英後、教職のかたわら執筆を始める。『めぐりめぐる月』(もきかずこ訳/講談社)で1994年度ニューベリー賞などを受賞。昨年度 "The Wanderer" でも同賞オナーおよびカーネギー賞候補に選ばれる。現在は米国に戻り、ここ2年ほどは絵本の執筆も手がける。最新作はYA向け小説の "Ruby Holler"(今年3月出版)。 |
◇シャロン・クリーチの公式サイト ◇シャロン・クリーチ作品リスト(やまねこ翻訳クラブ データベース) |
"Jake's Tower" 『ジェイクの塔』(仮題) by Elizabeth Laird エリザベス・レアード作 Macmillan Children's Books 2001, 154pp. ISBN 033396215X |
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「濠に囲まれた高い塔。そのてっぺんがぼくの部屋。はね橋を上げておけば、誰も入って来られない。大丈夫、絶対に安全だ」ジェイクが安心できるのは、秘密の場所に築いた空想の塔にいるときだけ。現実の生活では、母親の愛人から暴力をふるわれ、安全など存在しなかった。ある日、これまでにないほどすさまじく殴られたジェイクは、ついに家を逃げ出す――もう耐えられない。ジェイクは秘密の場所へ向かった。しかしそこは何者かによって、めちゃめちゃに荒らされていた。「ぼくにはもういる場所がない……」
冒頭から張りつめた雰囲気が漂い、読み進むにつれ、心が重くなっていった。章立てのないこの物語は、ジェイクの心の動きをノンストップで綴っている。それを追っていくのは辛い。しかしある出来事をきっかけに、ジェイクの心に光が差し始め、物語が暗から明へと転じていくと、ページを繰る手の緊張もほどけていった。
作者はジェイクの内面を一人称で細やかに描き、児童虐待の問題をあぶり出している。結末はやや安易に思われなくもないが、物語の中にだけでも解決を求めたくなるほど、虐待に直面している子どもたちの状況は厳しいのだろう。ちなみに賞のシャドウイング(子どもの評価)では、本書は多くの支持を集めている。
(蒲池由佳)
【作】Elizabeth Laird(エリザベス・レアード) ニュージーランド生まれ。幼少期に英国に移住。ブリストル大学、エディンバラ大学で語学を学び、マレーシア、エチオピア、インドで教鞭をとる。結婚後は、イラクやレバノンなどに移り住んだ。邦訳にカーネギー賞の候補になった『ひみつの友だち』(香山千加子訳/徳間書店)などがある。英国サリー州在住。 |
◇カーネギー賞サイト内のシャドウイングのページ 12日に発表になった投票結果では、"Jake's Tower" が1位となっている。 |
"The Kite Rider" 『凧乗り』(仮題) ★2001年スマーティーズ賞ブロンズ賞受賞作 |
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元の時代。中国では船が出港する前に人を乗せた大凧をあげ、航海の先行きを占う「風見」の儀式がおこなわれていた。港町で生まれ育った、12歳の少年ハオヨウは、父の仇を町から追い出すために、未経験ながら風見の凧乗りをかってでる。やがて、町で興行中だった蒙古族のサーカス団の団長、ミャオがハオヨウをスカウトしにやってきた。一族を仕切る大叔父は金に目が眩み、団長の申し出を受けてしまう。こうしてハオヨウはサーカスの凧乗りになった。一行は巡業しながら川を遡り、フビライ・ハンが夏を過ごす都、キサナドゥーをめざした。
ハオヨウの父が殺された事件を皮切りに、物語は冒頭から坂を転がる石の勢いで急進展し、盛りだくさんのエピソードを絡めながらハオヨウの遍歴を紡いでいく。一方、テーマは意外に単純だ。儒教の基本である孝行を重んずるハオヨウが、いかにして大叔父の束縛からのがれ、個を確立していくか。作者はこの過程を描こうとしている。
儒教を宗教的にとらえたり、鼻白むような「東洋」の誇張があったりと「イギリス人の書いた中国」という域をでる作品でないことが残念だ。だが、なんといってもこの作品の醍醐味は作者の「物語る力」といえる。13世紀の中国、凧、サーカス団、フビライ・ハンなど、心躍る素材をちりばめた各場面が、あたかも映像を見るように読者の脳裏に再現されてゆく。エンターテインメント性の高い読み物だ。
(大塚典子)
【作】Geraldine McCaughrean(ジェラルディン・マコーリアン) 1951年イギリス生まれ。テレビ局、大学勤めの後、ロンドンでライターとなる。結婚後は執筆を専業として、子どもの本や大人の本など、合わせて100をこえる作品を発表。また、戯曲やラジオのシナリオなども書く。『不思議を売る男』(金原瑞人訳/偕成社)でカーネギー、ガーディアンの両賞を受賞している。今回のカーネギー賞は本作品と "Stopthe Train" (レビューは本誌6月号掲載)の2作品がノミネートされた。 |
************************************ ★グリーナウェイ賞(画家対象)候補作
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"Pirate Diary: The Journal of Jake Carpenter" 『海賊日記』(仮題) ★ケイト・グリーナウェイ賞受賞作 |
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ジェイク・カーペンター、10歳。将来は医者である父親と同じ道を進むつもりでいた。しかし、大きな変化が彼におとずれる。海に出ることになったのだ! 医学の世界に進む前に、広い「世界」を彼にみてほしいと願った父親が、船乗りの弟に手紙を書いた、息子の面倒を少しの間みてくれないかと。ふってわいた、海の世界、さぁ、船に乗るぞ、世界をみるぞと意気込むジェイク。
大判絵本の体裁にこの題材はぴったりだ。そして、クリス・リデルの緻密な絵が、船の生活をつぶさに伝えてくれる。船の断面図は見開きいっぱいに描かれ、それぞれの部屋を観察できる。ある部屋には樽がたくさんあり、別の部屋には大砲があり、そしてハンモックが吊されている部屋では誰かが休憩し、その隣の部屋ではヤギや鶏も住んでいる。しかし、『海賊日記』とくれば、おだやかな船の生活は長くは続かない。海賊の襲撃がはじまると、まぁ、目を覆いたくなるような血しぶき飛び散る戦いのシーン! 絵のもつ力を存分に発揮している1冊だと思う。特に船のマストから見おろす海の絵にはほれぼれさせられる。読者もマストにのぼっているような気分を味わえるにちがいない。リデルは前作、"Castle Diary" で1999年度グリーナウェイ賞HCを受けた。そして、今回みごと大賞受賞となった。
(林さかな)
【絵】Chirs Riddell(クリス・リデル) 日本では「崖の国物語」シリーズの詳細な表紙絵や挿絵で名前が知られている。絵本では、『ぞうって、こまっちゃう』(たなかかおるこ訳/徳間書店)1冊のみ邦訳されている。文章を書いたプラットとのコンビに "Castle Diary" があり、他に「The Observer」誌の漫画を描く仕事もしている。 |
"Sometimes I Like to Curl up in a Ball" 『まぁるくなるのがすき』(仮題) ★ケイト・グリーナウェイ賞 Highly Commended |
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まぁるくなって遊ぶのが好き。だって、小さくなるからだれもぼくをみつけられないんだ。できるだけ高く飛び上がるのも好き。おりたとき、どれだけ大きな音をたてられるかためすんだよ。大きな声で叫ぶのも好き。怒っているわけじゃないんだけど。それにどろんこ遊びも楽しいな。からだじゅうどろだらけになっちゃうんだ。それから、それから好きなのはね……。
表紙にはイチゴ畑でまるくなって笑う、ウォンバットの子どもがいる。裏表紙では、まるくなって、斜面をころころところがっている。手で足をつかむこの格好、赤ちゃんがよくやるポーズみたい。そう思いながら物語を読むと、ウォンバットは、自分の好きなことを次々と教えてくれる。みんな子どもの好きなことばかり。表情がとてもいきいきと描かれていて、読んでいるこちらも楽しくなってくる。一番笑ってしまうのは、目尻をひっぱったり、舌をだしたりと、おもしろい顔をする場面。鮮やかな色彩でくっきりと描かれた絵は、幼い子どもたちにもわかりやすいだろう。いっしょに遊んでいるコアラやウサギなどの動物たちは、とぼけた表情をしていておもしろい。ウォンバットやコアラには、さわってみたくなるような質感があり、子どもたちに喜ばれそう。ほっとするラストは、1日の終わりに読んであげたくなる。
(竹内みどり)
【絵】Charles Fuge(チャールズ・フュージ) 英国のカンバーウェル・カレッジ・オブ・アート在学中に描いた "Bush Vark's First Day Out" で、学生に贈られるMacmillan Children's Books 賞を1987年に受ける。同作は翌年、Macmillan 社から出版され、マザー・グース賞を受賞。以来、多くの絵本の制作や挿絵で活躍中。 |
"The Witch's Children" 『魔女の子どもたち』(仮題) by Ursula Jones, illustrations by Russell Ayto アーシュラ・ジョーンズ文/ラッセル・エイト絵 Orchard Books 2001, 32pp. ISBN 1841215511 |
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びゅーびゅー風ふく秋の日に、公園にやってきた魔女の子3人。あわてて鳥たち木にかくれ、そっと様子をうかがった。大きい子、小さい子、まん中の子。なかよくアイスクリーム食べていた。ところが大変、「たすけて」と、さけぶ少女の声! 「池に浮かべたおもちゃの舟が、風にたおされ、沈みそう!」魔女の子出番とはりきって、大きい子、少女をカエルにかえた。「自分で泳いでとっといで」「お舟は助けたから、もとの姿にもどしてよ」「もどす魔法はまだしらない」少女はカエルの姿のまま、大きな声で泣くばかり……。
これは、頭で楽しむ作品というより、五感で味わうものだ。肌に痛いほどの強風、アイスクリームの冷たい甘さ、カエルのぬめり、少女のしょっぱい涙。どれも生き生きと伝わってくる。話の筋に意外性はないが、だれもが知るグリム童話をもじって、読者を楽しませてくれる。また、タイトルページには、羽を生やした2つのおっぱいが飛んでいる。よく見るとハトのようだが、やっぱりおっぱいにしか見えない。この鳥の存在のせいか、作品全体を通して、魔女である母親が、いたずらな子どもの仕業をどこかで見守ってくれている安心感が伝わってくる。今年の秋に続編、"The Witch's Children and the Queen" が出版予定。
(池上小湖)
【絵】Russell Ayto(ラッセル・エイト) イギリス生まれ。いったん科学者を目指したが、結局は大学に戻って画家になった。一般書、特にペンギン社の表紙画などを多く手掛けてきたが、10年程前から児童書の挿し絵を描くようになった。主な作品としては、スマーティーズ賞の候補作となった、"Quacky Quack Quack"(イアン・ワイブルー文)など。邦訳はまだない。 |
"Tatty Ratty" 『タッティー・ラッティー』(仮題) by Helen Cooper ヘレン・クーパー文/絵 Doubleday 2001, 30pp. ISBN 0385600062 |
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モリーの大事なぬいぐるみ、うさぎのタッティー・ラッティーがどこにもいない!どうやら、バスの中に置き忘れてきちゃったみたい。「タッティー・ラッティー、さみしがっているかな」と、モリーは心配顔。でも、だいじょうぶ。タッティー・ラッティーは、バスから飛びおりて、汽車を運転して、3びきのくまといっしょにおかゆを食べて、シンデレラの馬車に乗って、海に飛びこんで海賊に助けられて……と、いろんな冒険を楽しんでいるよ――。
お気に入りのぬいぐるみをなくしてがっかりしている娘を元気づけるため「タッティー・ラッティーはきっとこうしている」と話す両親と、それに応えて空想を繰り広げるモリー。物語は3人の会話で進められる。絵のほうは、親子の日常生活のシーンとタッティー・ラッティーの冒険のシーンが、見開きの左右に並んでいる。小さめに描かれた親子の姿はほほえましく、どこかなつかしい。スペースたっぷりに描かれた冒険のようすは夢がいっぱいでかわいらしく、見ているだけで心がうきうきする。
物語の結末については、論理的につじつまが合わないと感じる読者もいるかもしれない。それでもこの作品には人を惹きつける力があり、グリーナウェイ賞を2度も受賞したクーパーの実力が十分に発揮されていることは確かだ。
(生方頼子)
【文・絵】Helen Cooper(ヘレン・クーパー) 1963年、ロンドン生まれ。音楽教師を務めながら独学で絵を学び、絵本作家となる。1997年に "The Baby Who Wouldn't Go to Bed" で、1999年に "Pumpkin Soup"(『かぼちゃスープ』せなあいこ訳/アスラン書房)でグリーナウェイ賞を受賞。その他の邦訳作品に『ねことまほうのたこ』(掛川恭子訳/岩波書店)がある。夫(画家テッド・デュワン)と娘とともにオックスフォードに在住。 |
特集2 |
7月4日、都内某所で、グリーナウェイ候補作の鑑賞オフ会が開かれた。12日の発表を前に、作品を見比べながら感想を話し合い、受賞作を予想しようというものだ。今年は嬉しいことに、候補作品の8冊すべてが揃い、またとないチャンスにどの会員もしばし無言で、熱心に見入っていた。では、その座談会のようすを一部簡単に再現してみよう。
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(ダークホースが来ました! 編集担当より) |
(高原昴)
Chicocoの親ばか絵本日誌 第18回 | よしいちよこ |
「なんでも食べてえらいねー。いっぱい食べたら大きくなれるねんで」と、しゅんはいつも自分にいわれていることを絵本を見ながらいいました。その絵本は『ガブリエリザちゃん』(H・A・レイ作/今江祥智訳/文化出版局)です。蚊をぱくりとやってご機嫌の食虫植物のガブリエリザちゃんは、植物学者の研究室に連れていかれて大騒動を起こします。
ソフトな笑顔でなんでも食べてしまうガブリエリザちゃんはとても愉快です。ただいま3歳4か月のしゅんは、こわがりのくせに、ちょっぴり残酷なことが好きで、蚊をぱくり、植物学者の指をぱくり、犬のしっぽをぱくりの絵に爆笑。「カさん、たすけて〜っていってるねえ」といいながら大爆笑。「ガブリエリザちゃん、わるさのばつ」の図にまたまた大爆笑。後半のガブリエリザちゃんのお手柄のページは「ガブリエリザちゃん、たべすぎや〜! ゲボゲボでちゃうよ!」とこれまた大爆笑。絵本を閉じたら「はー」と息をついて笑いをしずめ、「もう1回読んで」といいます。
さて、先月末に幼稚園で給食参観なるものがありました。しゅんはにこにこしながら後ろばかりむいて、手をふったり、手で双眼鏡のまねをしたり。ふざけてばかりいないで、ガブリエリザちゃんのようにたくさん食べてねと願う母でした。
2歳のころからずっと乗り物が大好きだったしゅんですが、幼稚園に通うようになり、興味の対象がかわってきました。興味がなくなると早いもので、あんなに詳しかった電車の名前を忘れてしまいました。いま好きなのはヒーローもの。自分も強くてやさしいおにいちゃんになりたいと思っているようです。そんなしゅんの心をとらえたのが、すこし長い絵本『さびしがりやのドラゴンたち』(シェリー・ムーア・トーマス文/ジェニファー・プレカス絵/灰島かり訳/評論社)です。深い森のおくの洞穴に3びきのドラゴンが住んでいました。さびしくて眠れないので泣くドラゴンを、勇敢な騎士が助けに行きます。
しゅんには騎士の剣がかっこよく見えるらしく、「ぼくも、これしたい」といいました。ラップの芯をわたすと大喜びでズボンにさし、いばって歩きます。「えい!」「やっ!」などといいながら、ラップの芯の剣をふりまわしたあと、ドラゴン役の犬のぬいぐるみに「ねんねさせてあげるよ」と話しかけています。
ところでこの絵本には「きしはとうから『トオッ!』ととびおりて、へいをへいきではいおりた」などなど、言葉遊びがいっぱい。音読すると楽しいですね。
●お知らせ●
本誌でご紹介した本を、各種のインターネット書店で簡単に参照していただけます。こちらの「やまねこ翻訳クラブ オンライン書店」よりお入りください。
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洋書ビギナーにおすすめの、楽しく読める未訳書ガイド。クイズに答えてポイントをためると、プレゼントももらえます。 |
↓
http://www.yamaneko.org/mgzn/alfa/index.htm
(第11号は9月5日発行。申し込み手続きは前日までにおすませください。)
●編集後記●
プラチェットの作品がカーネギーを受賞したのは意外でしたが(作者自身も驚いたらしい)、大好きな作品なのでとっても嬉しいです!(き)
発 行: | やまねこ翻訳クラブ |
発行人: | 河原まこ(やまねこ翻訳クラブ 会長) |
編集人: | 菊池由美(やまねこ翻訳クラブ スタッフ) |
企 画: | 蒼子 河まこ キャトル きら くるり こべに さかな 小湖 Gelsomina sky SUGO 昴 Chicoco ちゃぴ つー 月彦 どんぐり NON BUN ぱんち ベス みーこ みるか 麦わら MOMO YUU yoshiyu りり Rinko ワラビ わんちゅく |
協 力: |
@nifty 文芸翻訳フォーラム 小野仙内 ながさわくにお ち〜ず |
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