2016年9月刊行
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MISTER ORANGE
ミスターオレンジ
トゥルース・マティ 作
野坂 悦子 訳
ISBN 978-4-86085-124-8
定価:本体1500円+税 |
1943年。物語の舞台はニューヨーク。
ライナスの兄アプケが自ら志願して戦争に行くことになり、
兄がしていた八百屋の手伝いを引き継ぎます。
配達先でちょっと不思議な雰囲気のお客さんと出会います。
注文は毎回オレンジ1箱。
「君は健康を運んできてくれるんだよ」
いつしか彼をミスターオレンジとよぶようになります。
さて、ライナスの家では
戦場先の兄から届く手紙を家族で読み聞かせしています。
みなで兄の様子を知らせる手紙を待つ日々。
しかし、読み聞かせには向かない内容の手紙も届くようになり……。
情景がみえるような描写に冒頭からひきこまれます。
戦場に自ら志願した兄を複雑に思う母。
ライナスはなぜ誇りに思わないのか母の気持ちが解せません。
兄がしていた配達の仕事を誇りをもって引き継ぐライナス。
出会ったミスターオレンジの絵を描く仕事に惹かれるのも
帰ってきた兄にミスターオレンジを紹介したい気持ちからです。
家中に絵を描くミスターオレンジ。
彼は三原色で未来を描こうとしています。
兄にミスターオレンジの世界をみせてあげたい。
ライナスは願います。
兄から届く手紙はすこしずつ切実になり、
戦争がどんなものかを伝えます。
ミスターオレンジは戦場に行かなくても、戦えるといいます。
それはどうやって……。
未来のためにできること、
少年と画家の出会いから、
戦争について、未来について、想像することについて
広く深く考えることをうながされる一冊です。
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著者の夫であるワウター・ヴァン・レークも
同時に同じテーマの絵本をつくっており、
同じく朔北社から刊行されています。
『ケープドリとモンドリアンドリ』野坂悦子訳
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トゥルース・マティ (Trus Matti) 作
長年、編集者を務めていたマティは、2007年に『出発時間』(未邦訳)で児童文学作家としてデビュー。同作品で、オランダのフラッハ・エン・ウィンペル賞とミルドレッド・L・バチェルダー賞を受賞。バチェルダー賞は、毎年、全米図書館協会が優れた翻訳児童文学に贈る賞で、日本の作家では湯本香樹実や上橋菜穂子らが受賞している。マティは2作目の『ミスターオレンジ』で、2014年にふたたびバチェルダー賞にかがやき、今後の活躍がさらに期待される。本書は、アメリカ、日本をはじめ世界7か国で翻訳出版されているという。
野坂 悦子 (のざか えつこ) 訳
1985年より5年間、ヨーロッパに住んだ経験を活かして、オランダやベルギーの優れた絵本や物語を紹介している。『ぼくとテスの秘密の七日間』(フレーベル館)、『おしえて、レンブラントさん』(BL出版)、『ちいさなかいじゅうモッタ』(福音館書店)、『ケープドリとモンドリアンドリ』『ボッケ』『ちいさなへいたい』(以上、朔北社)など訳書は多数。長年JBBY(日本国際児童図書評議会)の理事をつとめ、「紙芝居文化の会」海外統括委員としての活動もつづけている。
平澤 朋子 (ひらさわ ともこ) 絵
2005年武蔵野美術大学視覚伝達デザイン科卒業。装画と挿絵を手がけた本に、『親子あそびのえほん』(あすなろ出版)、『ニルスが出会った物語』シリーズ(福音館書店)、『竹取物語』(偕成社)、『ハヤト、ずっといっしょだよ』(アリス館)、『クロックワークスリー』(講談社)など多数。
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