2006年 あかね書房新刊情報 |
2006年6月刊行
3年前に刊行された、3巻『アトリアの女王 後編―告白―』のラストは、ジェンが思いを告げるところで終わっていた。2006年新刊で、ジェンは「新しき王」となり、読者の前にあらわれる。 少年だったジェンは誰にでも、時には自分にすら嘘をつき、盗人として自分の仕事をつらぬいていた。 しかし、ここではジェンはもう盗人としては登場しない。はつらつと動き回っていたジェンではなく、王たるジェンがいるだけだ。その変化を成長といってもいいのだろうか。ジェンの代名詞ともいえる皮肉屋ぶりがなかなかでてこないくらい、新しい立場におかれたジェンは居心地悪そうだ。その姿は、王という役割に自分をはめこもうか、それともいつか時さえ経れば王に自然となっていくのかと、自分の立ち位置を確認しているかのようだ。なぜなら、女王と結婚したから王になった、それだけでは周りはついていかない。家来たちにとって、女王は仕えるべき人だということを知っている。しかし王はどんな人間かも知らない。まして盗人だったのだ。人間として信用できるのか、自分たちの国を守れるのか。疑心暗鬼になる周囲の人間たちに囲まれるジェンの孤立は、ひどく厳しい。そこでジェンはどうするか――。 ジェンの変貌ぶりに最初は読んでいてじりじりしてきた。しかし、人の気持ちなど一朝一夕に変わることはなく、また変えることもできないのだという、ごくあたりまえのことに、最後まで読んで納得する。著者ターナー氏は、人の気持ちをとても大事に描いてくれた。読み終わったあとの、深い感動は宝物になる。 【作者】M.W.ターナー Megan Whalen Turner 1987年シカゴ大学卒業。1955年にヤングアダルト向けの短篇集" Instead of Three Wishes"で作家としてデビューし、2作目の『盗神伝I
ハミアテスの約束』で1997年のニューベリー賞オナーブック、全国図書館協会優秀図書賞、全米図書館協会ヤングアダルト部門ベストブックなど数々の賞に輝いた。
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Last Modified: 2006/07/13
担当:さかな
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