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Little Selections |
2001年4月、「Little Selections あなたのための小さな物語」と題したアンソロジーが8冊のシリーズで出版された。「本の探偵」として知られる児童文学評論家の赤木かん子さんが、古典や現代作品の中から選りすぐったもので、「マザー」「解放」などのテーマ別に、各巻3〜5つの中・短編が収められている。 池波正太郎のエッセイ、ロバート・F・ヤングのSF、山岸凉子の漫画、レイ・ブラッドベリのファンタジー、岡本綺堂のミステリーなど、取り上げている作家も個性的なら、作品もかなりユニークで幅広い。思わず別の作品も読みたくなるような解説がついている点も魅力的だ。出版に至る背景を、ポプラ社第1編集部部長の大熊悟さんにうかがった。 「5年ほど前に赤木先生からご提案がありました。図書館にせっかくヤングアダルトのコーナーができても並べられる作品が少ない、本を読まなくなった中高生に埋もれている名作を紹介したい、おもしろくてわかりやすい短編からすすめたい、というお話だったんです。内心たいへんな作業になりそうだと思いましたが(笑)、すばらしい企画でしたので、お引き受けすることにしました」 大熊さんは、赤木さんから次々と送られてくる候補作に目を通し、作家や翻訳家との版権交渉に努めた。また、若い人たちが親しみやすいように、文字の大きさや装幀にも気を配った。基本的にはもとの原稿をそのまま採用しているが、読みやすさを考慮してルビをふったもの、新たに訳し直してもらったものもある。そういった苦労を重ね、ようやくできあがったのが今回のシリーズだった。 「当初、漫画を入れることは考えていなかったのですが、どんなジャンルでもいいものはいいということで加えることにしました。中高生向けの企画ですが、僕が読んでも実におもしろいし、大人の方にもぜひお読みいただきたいシリーズです」 評判がよければ、来年に8冊、再来年にまた8冊と、全部で24巻にしたいとのこと。「ファーザー」「死」など、新たなテーマも検討中だ。次にどんな作品が選ばれるのか、中高生の読書欲を刺激することはできるのか、今後の動きに期待したい。 (宮坂宏美) |
「キッズBOOKカフェ」(月刊『eとらんす』2001年9月号掲載)のホームページ版です。
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