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やまねこ調査隊

第14回 子どもたちの好奇心に応える絵本を――リブリオ出版

 今月、やまねこ調査隊が訪れたのはリブリオ出版。図書館流通センター(TRC)の関連会社として、学校・公共図書館を主な販売先にもつ出版社で、1979年の設立以来、学習図書や子どもの好奇心に応える本を中心に手がけている。先頃、「復刊 小学生に読んであげたい絵本」シリーズとして、『こぐまくんのハーモニカ』(J・セバスチャン作/G・ウィリアムズ絵/三木卓訳)など、高く評価されながらも絶版となっていた絵本やよみものを復刊させた。

 この復刊は、図書館関係者の強い要望により、企画編集長でもある赤木かん子さん(子どもの本の研究家。“本の探偵”として有名)の協力で実現したもので、これまでのところ、売れ行きは順調である。本シリーズ刊行の背景には、昨年の『ようこそ恐竜はくぶつかんへ 全6巻』(アリキ・ブランテンバーグ文・絵)の刊行がある。赤木さんの企画で復刊させたこのシリーズは、既に初版2500セットが完売となり、増刷が決定している。

「復刊という事業に責任の重さを感じています」と営業部長の松本さんはいう。「すぐれた作品として認められてきた絵本やよみものですから、復刊した以上、できるだけ長く版を重ね続けることが大切だと考えます」新刊とは違い、多くの初版部数を見込めない復刊事業。厳しい条件のなかにありながら、良書を子どもたちに届けたいと語る松本さんは、笑顔のなかに、ちらりと厳しい表情をのぞかせた。

 リブリオ出版は、当然ながら、新刊の翻訳書も多数、出版している。そのひとつである『パチャママ』は、国連環境計画(UNEP)の企画による知識絵本の日本語版である。インカの言葉で“母なる大地”というタイトルのこの絵本を担当したのは、編集長の柏川さん。翻訳は、柏川さんが技術的に信頼する河津千代さんが行い、環境庁の神公明(じんきみあき)さんが監修を引き受けた。神さんはこの絵本に深く感銘を受け、無償で協力してくれたという。「翻訳の専門家と環境問題の専門家が、真剣に言葉を闘わせてできあがった本です」と柏川さんは語る。「世界の若者が、みずからの目で見た自然破壊のさまを、みずからの言葉で語る『パチャママ』は、環境問題の入門書として、ひとりでも多くの子どもに、そして大人に読んでほしいと願っています」

(柳田利枝)

「こぐまくんのハーモニカ」表紙 『こぐまくんのハーモニカ』
ジョン・セバスチャン作 ガース・ウィリアムズ絵
三木卓訳(本体1500円)
「復刊 小学生に読んであげたい絵本 全6巻」は、 ほかに、『もうぜったいうさちゃんってよばないで』 『とのさまサンタ』『むぎうちヨナス』 『これならおとくいジェラルディン』 『ポケットのたからもの』がある。
「パチャママ」表紙 『パチャママ』
国連環境計画/ピース・チャイルド・インターナショナル共同企画
河津千代訳(本体2850円)



「キッズBOOKカフェ」(月刊『翻訳の世界』2000年8月号掲載)のホームページ版です。

表紙の画像は、出版社の許可を得て掲載しています(無断転載不可)。

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8月号「洋書でブレイク」

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