洋書でブレイク

　日頃から原書に親しんでいる人でも、子ども向け科学本に出会う機会は意外と少ないはずだ。そこで今回は、「楽しみながら環境を考える」をテーマにした作品、THE EARTH と WATER を紹介したい。
　この２冊は、ユネスコ・アジア文化センターの依頼にこたえ、アジアや太平洋諸国から、50名以上もの一流作家・画家・写真家が参加し、英語のマスター版を共同製作、その後、各国の言語へと翻訳されているシリーズだ。カラーでご覧いただけないのがまことに残念なのだが、表紙は一度で目に焼きつくような、明るく鮮やかで、きりっと締まったデザインである。

　まず初めの章では、大地や水を科学的に理解し、環境を考えるための土台を作る。自然を美化しすぎることなく、本来あるべき地球の姿を冷静に捉えることで、読み手の心に、現状との矛盾や疑問の種を蒔く。
　続いて、各地に伝わる民話や神話、慣習を通し、人間がいかに自然との共存を請い続けてきたかが語られる。エコロジーの原点に違いない。同時に、科学が自然や文化を背景に、生きる手段として発達してきたようすを、伝承の世界に垣間見ることができる。
　だが、科学の進歩に伴い、いつしか自然と人間の立場は逆転する。公害という恐怖が写真に映し出されるとき、我々は被害者であり、加害者であるという事実を目の当たりにさせられる。
　しかし、環境問題にトラブルというマイナスのイメージを持たせることで、人間の「優しさ」へと訴えかけるのではなく、事実を踏まえ、よりよく生きるために何ができるのか、強制ではなく考えることを提示しながら、読み手へとエコロジーのバトンを渡していく。

　この環境シリーズは、既訳の TREES（『木』千葉茂樹訳／小学館）、THE SUN（『太陽』藤田千枝訳／ポプラ社）を含めて全４冊。いずれも、アジアから世界へ向けて発信された、芸術性の高い力作としてお勧めする。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

8月号「やまねこ調査隊」

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