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洋書でブレイク

絵本界、2大スターの共演

 ウィリアム・スタイグとクェンティン・ブレイク、2人とも大好きな読者(それはわたし)にはたまらない絵本が出版された。1冊で2度楽しめるというお得な絵本の題名は、Wizzil
 魔女ウィジルは、退屈でたまらなかった。誰かをいじめてやろうと、イエバエに姿を変えフリンピー農場へ。そこでたまたまこの世で一番嫌いなものがイエバエというディウィットさんに出会う。農場仕事を引退し、ハエ叩きが生きがいのディウィットさんは、ものすごい迫力でウィジルを叩きつぶそうとする。命からがら逃げ帰ったウィジルは、なんとかしてディウィットさんをぎゃふんといわせてやろうと、今度は作業手袋に変身。何も知らずに手袋をはめたディウィットさんは、とんでもない目にあってしまう。最初は、何もすることがないと不満たらたらだったウィジルが、善悪は別として、目標を持ったとたんに目の輝きが違ってみえるのがおもしろい。このお話、意外な展開でハッピーエンドを迎えるのだが、ウィジルは復讐を果たすのか? それとも……? それは読んでからのお楽しみ。
 作者のウィリアム・スタイグは、コールデコット賞、ニューベリー賞オナー(次点)など数々の受賞経験がある、94歳にして現役バリバリの絵本作家。今回挿絵を担当したクェンティン・ブレイクは、ケイト・グリーナウェイ賞をはじめ、これまた数々の賞を受賞している英国の挿絵・絵本作家である。スタイグのホームページ(http://williamsteig.com)では、今回の作品に対する2人のコメントを読むことができる。今までは文と絵の両方を手がけてきたスタイグだが、実は絵は得意でなかったとか(謙遜としか思えないが)。そこで白羽の矢を立てられたのがブレイク。ブレイクは、以前からスタイグの個性的で魅力的な挿絵を高く評価していた。まさかあの有名なスタイグから仕事の依頼が来るとは思ってもみなかったが、喜んで引き受けたという。
 スタイグは、奇想天外なストーリー展開と楽しいオチで笑わせてくれるし、ブレイクは、ペンと水彩で登場人物に生命を吹き込み、躍動感あふれる動きとユーモアたっぷりな表情を描き出す。この2人の取り合わせは、ロアルド・ダールとクェンティン・ブレイク以来の史上最強のコンビかもしれない。
                                                           

 (横山和江)
WIZZIL
text by William Steig
illustrated by Quentin Blake, 2000
(Farrar Straus & Giroux $16.00 32pages)
未訳

*ウィリアム・スタイグ:『歯いしゃのチュー先生』『ロバのシルベスターとまほうのこいし』(ともに評論社)のほか多くの訳書がある。
*クェンティン・ブレイク:自作の絵本に『みどりの船』『ピエロくん』(ともにあかね書房)があるほか、多くの作品の挿絵も手がけている。

「キッズBOOKカフェ」(月刊『eとらんす』2001年3月号掲載)のホームページ版です。

3月号「やまねこ調査隊」

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