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号外 No.34

●速報●2026年 ニューベリー賞/コールデコット賞/プリンツ賞発表!!

 現地時間の1月26日朝10時よりシカゴにて、アメリカで最も権威ある児童文学賞、ニューベリー賞/コールデコット賞の発表が行われた。これらの賞は、米国図書館協会(ALA: American Library Association)が、前年にアメリカで出版された子どもの本の中で、最も優れた作品に対して贈るものである。
 同時に、ヤングアダルト(YA)作品を対象とするプリンツ賞の発表も行われた。この賞の主催は米国図書館協会(ALA)のヤングアダルト部門(YALSA: Young Adult Library Services Association)である。

▼ALA公式ウェブサイト
https://www.ala.org/

▼YALSA公式ページ(ALA内)
https://www.ala.org/yalsa

▼各賞の受賞作品・オナー(次点)一覧ページ(ALA内)
https://www.ala.org/news/2026/01/american-library-association-announces-2026-youth-media-award-winners

▼ALA Youth Media Awardsウェブキャスト(発表の様子がオンタイムで流された)
https://www.ala.unikron.com/

 各賞の受賞作品、およびオナー作品は以下の通り。
(※邦訳がある作家、画家については初出の際に片仮名表記を併記しています)

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【ニューベリー賞】(作家対象)

★Winner

“All the Blues in the Sky”
 by Renee Watson (Bloomsbury Children’s Books)

☆Honor Books(4作)

“The Nine Moons of Han Yu and Luli”
 by Karina Yan Glaser (Allida)
“A Sea of Lemon Trees: The Corrido of Roberto Alvarez”
 by Maria Dolores Aguila (Roaring Brook Press)
“The Teacher of Nomad Land: A World War II Story”
 by Daniel Nayeri (Arthur A. Levine)
“The Undead Fox of Deadwood Forest”
 by Aubrey Hartman, illustrated by Marcin Minor (Little, Brown and Company)

【特殊文字】
「Renee Watson」:「Renee」の2つめの「e」の上に(´)がつく
「Maria Dolores Aguila」:
「Maria」の「i」、「Aguila」の「A」の上に(´)がつく

 本年のニューベリー賞に輝いたのは”All the Blues in the Sky”。13歳の誕生日に、大親友を交通事故で亡くしたばかりの少女Sageの心を、詩の形式で綴った作品だ。作者のRenee Watsonは、人種差別や性差別を題材にした作品に定評があるアフリカ系アメリカ人。2018年に”Piecing Me Together”で本賞のオナーに選出され、コレッタ・スコット・キング賞作家部門を受賞した実力者が、本作では、大切な人を失った子どものグリーフケアを取り上げている。

 オナーには4作品が選ばれた。”The Nine Moons of Han Yu and Luli”は歴史的事実にもとづくフィクションだ。唐代の都、長安で疫病にたちむかう少年Han Yuと、大恐慌時代のニューヨークで、生活苦から家族をすくう少女Luliの物語が交互に描かれ、やがてひとつになる。作者のKarina Yan Glaser(カリーナ・ヤン・グレーザー)はニューヨーク在住の中国系アメリカ人。入念なリサーチをかさね、先人たちの努力を見事に描きだした。

 ”A Sea of Lemon Trees: The Corrido of Roberto Alvarez”は、メキシコ系アメリカ人作家Maria Dolores Aguilaが自由詩で綴った作品。2025年全米図書賞児童書部門ロングリスト選出に続いて、2026年スコット・オデール賞を受賞。2026年プーラ・ベルプレ賞児童向け小説部門オナーにも選ばれた。

 ”The Teacher of Nomad Land: A World War II Story”は、イラン生まれのDaniel Nayeri(ダニエル・ネイヤーイー)による1941年のイランを舞台にした物語で、2025年全米図書賞児童書部門で見事受賞に輝いている。

 上記2作品の詳しい内容については、本誌2025年10月号「賞情報」(以下のリンク)をご参照いただきたい。
▽本誌バックナンバー(2025年10月号)
https://yamaneko.org/bn-202510/#toc1

 ”The Undead Fox of Deadwood Forest”の主人公は、アンデッドのキツネのClare。〈枯森〉に住み、さまよえる魂を死後の国へ送り出す役目を担っている。ところがアナグマのGingersnipesの魂は、なぜか死後の国へ向かえなかった。このままでは生と死の繊細なバランスが崩れてしまう。助けをもとめて、ふたりの危険な旅が始まった。2023年に児童向けファンタジー”The Lion of Lark-Hayes Manor”でデビューし高い評価をうけたAubrey Hartmanが、死と愛、そして本当の自分を発見する姿を描く。

 今年も幅広いジャンル、表現形式の作品が並んだ。特にオナーには過去の歴史を背景にした作品が多く、「今」「ここ」ではない世界に触れて、さまざまなことを感じてもらいたいというメッセージが伝わってくるようだ。

《参考》
▼ニューベリー賞公式ウェブサイト
https://www.ala.org/alsc/awardsgrants/bookmedia/newbery

▼Renee Watson公式ウェブサイト
https://www.reneewatson.net/

▼Karina Yan Glaser公式ウェブサイト
https://www.karinaglaser.com/

▼Maria Dolores Aguila公式ウェブサイト
https://mariadoloresaguila.com/

▼Daniel Nayeri公式ウェブサイト
https://www.danielnayeri.com/

▼Aubrey Hartman公式ウェブサイト
https://aubreyhartman.com/

▽ニューベリー賞受賞作リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)
https://yamaneko.org/bookdb/award/us/newbery/index.htm

(進藤浩子/森井理沙)

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【コールデコット賞】(画家対象)

★Winner

“Fireworks”
 illustrated by Catia Chien, written by Matthew Burgess (Clarion Books)

☆Honor Books(4作)

“Every Monday Mabel”
 by Jashar Awan (Simon & Schuster Books for Young Readers)
“Our Lake”
 by Angie Kang (Kokila)
“Stalactite & Stalagmite: A Big Tale from a Little Cave”
 by Drew Beckmeyer (Atheneum Books for Young Readers)
“Sundust”
 by Zeke Pena (Kokila)

【特殊文字】
「Catia Chien」:「Catia」の1つめの「a」の上に(´)がつく
「Zeke Pena」:「Pena」の「n」の上に(~)がつく

 2026年のコールデコット賞は、Catia Chien(カティア・チエン)が絵を手がけた”Fireworks”に贈られた。ニューヨークに暮らす姉妹の独立記念日の1日を描く。7月4日、街はひと際賑わいを見せ、蒸し暑さも増していく。姉妹は水遊びをし、スイカにかぶりついて夏の祝日を満喫する。夕暮れどきに2人が屋上にのぼって見るのは名物の花火。ここからは画家の独壇場だ。花火も圧巻だが、終わったあとの空がまた儚い美しさを湛えて秀逸。2回めの共作となるMatthew Burgessの文章は、耳に心地よいオノマトペが楽しい。それに応えるように、チエンはスクラッチボードの手法なども取り入れながらグラデーションを自在に操り、水、空、光、影、煙、さらには熱や音までも美しく見せてくれる。子どもの夏の思い出をつめこんだ宝箱のような作品。チエンは、2015年にシュナイダー・ファミリーブック賞、2021年にMatthew Burgessとの共作で、ゴールデン・カイト賞絵本・絵部門を受賞している。

 オナーは4作品。”Every Monday Mabel”は、幼い読者向けの作品に定評のあるJashar Awanが女の子を主人公に描いた一冊。Mabelは月曜日の朝になると自分の椅子を引きずってシリアル片手に表に出ていく。姉、母、父はこの行動についてそれぞれ異なる感想を抱いているが、Mabel自身は「世界一最高のもの」を見るために、毎週ガレージ前に陣取っている。子どもにとって大切な何かに熱中する時間をユーモラスに描く。鮮やかな色面によるグラフィックは、長年広告を手がけている作者らしく、ポップで親しみやすい。

 中国系アメリカ人の画家Angie Kangがデビュー作”Our Lake”で描いたのは、兄弟の夏の一日。2人は湖へ向かう。高い岩から湖に飛びこんで、弟を待つ兄。足がすくんだ弟は目をつぶる。そのとき瞼に浮かんだのは……。喪失を抱えた少年が大切な人との思い出に背中を押されて一歩踏み出す様子が丁寧に描かれる。ラフなタッチの表情がむしろ心のうちをよく表している。グワッシュによる水と影の描写も印象的だ。湖の静けさと寒色の色遣いが静謐な物語と呼応する一方、思い出は明るく彩られぬくもりを感じる。

 ”Stalactite & Stalagmite: A Big Tale from a Little Cave”は、絵本作家であり、また小学校教師でもあるDrew Beckmeyerによる作品。舞台は太古の洞窟。そこで成長していくStalactite(氷柱石)とStalagmite(石筍)が主人公だ。この異色のコンビ(?)が地球上に現れては消えていく生き物たちと交流しながら、数億年にわたって続ける漫才のような掛け合いで構成されている。コンビの行く末や如何に?! クレヨン、絵具、コラージュなどミクストメディアによる複雑な色と質感が効果的で、文字の配置など仕掛けも随所にあり、楽しく学べる科学絵本と言える。

 グラフィックノベルなどで活躍するメキシコ系アメリカ人Zeke Penaが初めて文章も手がけた”Sundust”。吹き出しやコマ割りを取り入れた作風は新鮮で、重層的なイメージを描き出すことに成功している。メキシコとの国境の村。空からの落下物を追って、姉と弟が国境の鉄線を越え、砂漠を探索する。そこで出会った生き物、砂漠の雨……。自身の思い出を詩的な語りとノスタルジックな色調の絵にのせた本作は、世代を越えてそこに暮らす人々を形作ってきた、厳しくも美しい自然への賛歌となっている。Zeke Penaは、Isabel Quinteroとの共作で、2018年にボストングローブ・ホーンブック賞ノンフィクション部門を受賞、2020年にはプーラ・ベルプレ賞画家部門オナーに選出されている。

 今年のコールデコット賞では、兄弟姉妹などバディものが多く見られ、少数の登場人物による物語が選ばれた印象だ。主要なテーマではないが、登場人物のルーツが想像できるケースも多く、絵本の世界に当たり前に根付いた多様性が反映されているように思う。身近な人との時間や絆を大切に子ども時代を過ごして欲しいという思いを感じる選出だった。

《参考》
▼コールデコット賞公式ウェブサイト
https://www.ala.org/alsc/awardsgrants/bookmedia/caldecott

▼Catia Chien公式ウェブサイト
https://www.catiachien.com

▼Jashar Awan公式ウェブサイト
https://jasharawan.com

▼Angie Kang公式ウェブサイト
https://www.angiekang.net

▼Drew Beckmeyer公式ウェブサイト
https://www.drewbeckmeyer.com

▼Zeke Pena公式ウェブサイト
https://www.zpvisual.com

▽コールデコット賞受賞作リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)
https://yamaneko.org/bookdb/award/us/caldecot/index.htm

(矢野彩子)

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【プリンツ賞】(YA作品対象)

★Winner

“Legendary Frybread Drive-In: Intertribal Stories”
 edited by Cynthia Leitich Smith (Heartdrum)

☆Honor Books(4作)

“Cope Field”
 by T.L. Simpson (Flux)
“The House No One Sees”
 by Adina King (Feiwel and Friends)
“Sisters in the Wind”
 by Angeline Boulley (Henry Holt Books for Young Readers)
“Song of a Blackbird”
 written and illustrated by Maria van Lieshout (First Second)

 本年のプリンツ賞を受賞したのは、ネイティブアメリカンの作家17名による短編集”Legendary Frybread Drive-In: Intertribal Stories”だ。どの短編でも、先住民の伝統料理を提供する、伝説のドライブインが物語の鍵となっている。先住民族の若者たちが年長者から薫陶を受け、同年代の仲間と交流する大切な場所だ。ドライブイン以外にも、各短編には共通するキャラクターやフレーズが登場する。さまざまな先住民族出身の作家たちは、電話やEメール、ときには対面で話し合い、連携をとったという。制作過程にも、コミュニティの大切さという主題が貫かれた作品だ。編者を務めたCynthia Leitich Smithは、絵本からYAまで、多数の著作があるベテラン作家。2025年には、アストリッド・リンドグレーン記念文学賞にノミネートされた。作家陣には、ニューベリー賞や全米図書賞児童書部門の入選歴を持つDarcie Little Badgerや、後述のAngeline Boulley(アンジェライン・ブーリー)も名を連ねている。

 オナーは4作品。T.L. Simpsonの小説”Cope Field”の主人公は、アーカンソー州の小さな町で暮らす野球少年Craw。MLBでもプレーした元野球選手の父を持ち、将来有望とされていたが、実はその父から暴力を受けていた。現在の生活を失うことを怖れ、誰にも打ち明けずにいたが、ある少女との出会いをきっかけに考えが変わっていく。ジャーナリストでもある作者は、地元アーカンソー州の新聞社で多くの記事を書き、現在は主筆を務める。作家としては、2024年に、アメフト選手の少年が主人公の”Strong Like You”でデビューし、本作が2作目となる。

 Adina Kingの”The House No One Sees”は、現在米国で社会問題となっている、鎮痛薬オピオイドの依存症を取り上げた作品だ。少女Pennyは、16歳の誕生日の夜、かつて依存症の母親と過ごした家を訪れる。辛い子ども時代と向き合い、長いトラウマから目覚めようとするPennyの心情が、童話『眠り姫』をなぞりつつ、詩的な文章で綴られる。作者は、ベテラン教師として中学・高校で英語を教えるほか、さまざまな職業を経験。児童文学の芸術修士号を取得し、本作でデビューを果たした。

 ”Sisters in the Wind”は、Angeline Boulley(アンジェライン・ブーリー)の長編第3作。Lucyは母親を知らずに育ち、14歳のときに父親を亡くした。18歳になり、弁護士から、母親がネイティブアメリカンだったと知らされる。突然の話に警戒するLucy。さらに、彼女をねらった爆破事件が起き――。作者ブーリーは、デビュー作”Firekeeper’s Daughter”が2022年の本賞大賞やMWA賞YA小説部門大賞などに輝き、一躍人気作家に。昨年、同作の邦訳版が刊行された(『真実に捧げる祈り』吉田育未訳/早川書房)。先住民のアイデンティティや差別の問題を、魅力的なキャラクターと手に汗握るサスペンスで若い読者に届ける手腕が、高い評価を受けている。

 ”Song of a Blackbird”は、オランダ出身のMaria van Lieshoutによるグラフィックノベル。2025年全米図書賞児童書部門のロングリストにも選ばれた。詳しい内容は、本誌2025年10月号「賞情報」(以下のリンク)をご参照いただきたい。
▽本誌バックナンバー(2025年10月号)
https://yamaneko.org/bn-202510/#toc1

 本誌では、2022年号外の賞情報記事で、アンジェライン・ブーリーの、「18歳になるまでネイティブアメリカンが主人公の物語を読んだことがなかった」という言葉を紹介した。それから4年、ネイティブアメリカンの主人公ばかりの短編集が大賞に輝いたことは感慨深い。新しい声を得て、豊かさを増していくYA文学。来年の受賞作発表が今から楽しみだ。

《参考》
▼プリンツ賞公式ウェブサイト
https://www.ala.org/yalsa/printz/

▼Cynthia Leitich Smith公式ウェブサイト
https://cynthialeitichsmith.com/

▼T.L. Simpson公式ウェブサイト
https://tlsimpson.net/

▼Adina King公式ウェブサイト
https://adinakingauthor.com/

▼Angeline Boulley公式ウェブサイト
https://angelineboulley.com/

▼Maria van Lieshout公式ウェブサイト
https://www.vanlieshoutstudio.com/

▽マイケル・L・プリンツ賞受賞作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)
https://yamaneko.org/bookdb/award/us/printz/index.htm

(綿谷志穂)

●賞速報●

★2026年スコット・オデール賞発表
★2026年MWA賞(児童図書部門/YA小説部門)候補作発表
 (受賞作品の発表は4月29日の予定)
★2026年バチェルダー賞発表
★2026年ロバート・F・サイバート知識の本賞発表
★2026年シュナイダー・ファミリーブック賞発表
★2026年国際アンデルセン賞ショートリスト発表
 (受賞者の発表は4月13日の予定)

 2025年より「速報(海外児童文学賞)」をnoteに移行しました。海外児童文学賞の書誌情報を随時掲載していますので、ぜひご覧ください。
https://note.com/awards_yamaneko

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●お知らせ●

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・本誌のウェブ版は、以下のURLよりご覧いただけます。
https://yamaneko.org/bn-202602g/

・2月の通常号は休刊いたします。次回は2026年3月号です。どうぞお楽しみに!

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編集人 三好美香/平野麻紗/森井理沙/進藤浩子(やまねこ翻訳クラブ スタッフ)
企画・執筆・協力 やまねこ翻訳クラブ会員有志
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