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※こちらは「書評編」です。「情報編」もお見逃しなく!!
児童文学翻訳学習者による、児童文学翻訳学習者のための、
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賞情報1 |
8月15日、本年度受賞作およびオナー(次点)がオーストラリア児童図書評議会により発表された。1946年に創設されたこの賞は、オーストラリアで最も歴史と権威のある児童文学賞で、全5部門がある。
2003年の ★Winner(受賞作)、☆Honor Books(次点)は以下の通り。
2003 Children's Book of the Year Awards
【Older Readers】(高学年向け) | |
★"The Messenger" by Markus Zusak (Pan Macmillan Australia)
☆"Painted Love Letters" by Catherine Bateson (University of Queensland Press) ☆"Walking Naked" by Alyssa Brugman (Allen & Unwin) |
【Younger Readers】(低学年向け)
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★"Rain May and Captain Daniel" by Catherine Bateson (University of
Queensland Press)
☆"Horrendo's Curse" by Anna Fienberg, illus. by Kim Gamble (Allen & Unwin) ☆"The Barrumbi Kids" by Leonie Norrington (Omnibus Books, Scholastic Australia) |
【Early Childhood】(幼年向け)
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★"A Year on Our Farm" by Penny Matthews, illus. by Andrew McLean (Omnibus
Books, Scholastic Australia)
☆"The Potato People" by Pamela Allen (Viking, Penguin Books Australia) ☆"Too Loud Lily" by Sofie Laguna, illus. by Kerry Argent (Omnibus Books, Scholastic Australia) |
【Picture Book】(絵本) |
★"In Flanders Fields" by Brian Harrison-Lever, text by Norman Jorgensen
(Sandcastle Books, Fremantle Arts Centre Press)
☆"A Year on Our Farm" by Andrew McLean, text by Penny Matthews (Omnibus Books, Scholastic Australia) ☆"Diary of a Wombat" by Bruce Whatley, text by Jackie French (Angus & Robertson, HarperCollinsPublishers) |
【Eve Pownall Award for Information Books】(ノンフィクション) | |
★"Iron in the Blood: Convicts and Commandants in Colonial Australia"
by Alan Tucker (Omnibus Books, Scholastic Australia)
☆"The Mighty Murray" by John Nicholson (Allen & Unwin) ☆"Black Snake: The Daring of Ned Kelly" by Carole Wilkinson (Black Dog Books) |
【参考】
◆オーストラリア児童図書評議会サイト ◇オーストラリア児童図書賞受賞作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室) ◇オーストラリア児童図書賞について(本誌1998年9月号) |
オーストラリア児童図書賞発表 ブランフォード・ボウズ賞発表 『ステラもりへいく』 『ハングマン・ゲーム』 "baby loves" "The Messenger" MENU |
賞情報2 |
2003年ブランフォード・ボウズ賞が、6月25日に発表となった。この賞は1999年に世を去った児童文学作家 Henrietta Branford と、彼女の才能を見出した Walker Books の編集者 Wendy Boase を偲んで、2000年に設立された。イギリス在住の作家が最初に著した児童文学作品が対象となる(一般向けの作家としてすでに地位を築いている作家でも、子ども向けの作品を書いたのが初めてなら対象となる)。また受賞作の編集者には、新しい才能を育てたとして Editor's Award が贈られる。
2003 Branford Boase Award
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★"Martyn Pig" by Kevin Brooks (Chicken House)★
Editor's Award: Barry Cunningham (Publishing Director at Chicken House) |
"Massive" by Julia Bell (Macmillan)
"The Ice Boy" by Patricia Elliott (Hodder) |
"The Firing" by Richard MacSween (Andersen)
"The Quigleys" by Simon Mason (David Fickling Books) |
"Frank and the Black Hamster of Narkiz" Livi Michael (Puffin) "Feather Boy" Nicky Singer (HarperCollins) |
(赤塚京子)
オーストラリア児童図書賞発表 ブランフォード・ボウズ賞発表 『ステラもりへいく』 『ハングマン・ゲーム』 "baby loves" "The Messenger" MENU |
注目の本(邦訳絵本) |
『ステラもりへいく』
メアリー=ルイーズ・ゲイ作/江國香織訳 光村教育図書 本体1,400円 2003.07.20 32ページ "Stella, Fairy of the Forest" by Marie-Louise Gay Groundwood Books, 2002 |
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【文・絵】メアリー=ルイーズ・ゲイ(Marie-Louise Gay)
1952年カナダ生まれ。モントリオールの学校で美術を学びながらイラストの仕事をする。1977年から1980年までサンフランシスコのアカデミー・オブ・アート・カレッジで学び、モントリオールに戻った後、絵本の制作をはじめる。"Rainy Day Magic" でカナダ総督文学賞を受賞するなど、カナダの代表的な絵本作家のひとりである。 【訳】江國香織(えくに かおり) 1964年東京生まれ。目白学園短期大学国語国文科を卒業。アメリカに1年留学する。1987年『草之丞の話』で《小さな童話》大賞を受賞し、その後も創作を重ね、『ぼくの小鳥ちゃん』で路傍の石文学賞、『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞など数々の賞を受賞。絵本の翻訳も『3びきのぶたたち』(デイヴィッド・ウィーズナー作/BL出版)ほか多数ある。 |
【参考】
◆メアリー=ルイーズ・ゲイの紹介記事 (The National Library of Canada -- The Art of Illustration) |
オーストラリア児童図書賞発表 ブランフォード・ボウズ賞発表 『ステラもりへいく』 『ハングマン・ゲーム』 "baby loves" "The Messenger" MENU |
注目の本(邦訳読み物) |
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『ハングマン・ゲーム』
ジュリア・ジャーマン作/橋本知香訳 偕成社 本体1,400円 2003.07 269ページ "Hangman" by Julia Jarman Andersen Press, 1999 |
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【作】ジュリア・ジャーマン(Julia Jarman)
1946年、イギリス生まれ。マンチェスター大学で文学と演劇を学ぶ。卒業して教師となり、児童書を書きはじめた。60作以上の作品を発表している。本作がはじめての邦訳で、他の作品には "The Haunting of Nadia" などがある。イギリス中部ベッドフォード市郊外在住。 【訳】橋本知香(はしもと ちか) 1966年、大阪生まれ。イギリスと日本で育つ。早稲田大学ロシア文学科卒業。CM製作会社勤務を経て、TV字幕・文芸翻訳者となる。主な訳書に『ジャックと離婚』(コリン・ベイトマン作/金原瑞人共訳/東京創元社)。 |
【参考】
◆ Julia Jarman 公式サイト |
オーストラリア児童図書賞発表 ブランフォード・ボウズ賞発表 『ステラもりへいく』 『ハングマン・ゲーム』 "baby loves" "The Messenger" MENU |
注目の本(未訳絵本) |
『ベイビー ラブ』(仮題)
メアリー・カサット画/ウィリアム・ラック文 "baby loves" works of art by Mary Cassatt, by William Lach The Metropolitan Museum of Art Atheneum Books for Young Readers 2002, ISBN 0689853408 48pp. |
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【画】Mary Cassatt(メアリー・カサット)
1844年アメリカ・ペンシルヴァニア州に生まれる。ペンシルヴァニア美術アカデミーで学んだのち、画家を志し、1866年単身でパリに渡る。ドガとの出会いにより印象派に参加。以後、創作とともに、母国アメリカに印象派を広めるため、絵画購入のコーディネーターを長年つとめた。1914年、白内障が悪化、一切の創作をやめる。1926年没。 |
【参考】
◆メトロポリタン美術館 メアリー・カサットのページ |
オーストラリア児童図書賞発表 ブランフォード・ボウズ賞発表 『ステラもりへいく』 『ハングマン・ゲーム』 "baby loves" "The Messenger" MENU |
注目の本(未訳読み物) |
―― トランプが運んでくる謎のメッセージ ――
『メッセンジャー』(仮題) "The Messenger"
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金もない。取り得もない。夢もなければ希望もない。19歳のエドはタクシードライバーの仕事をしながら、ただ何となく毎日を過ごしている。ダメ人間だった父さんそっくりだからと、兄弟の中でただひとり母さんから疎まれ、たまらず家を飛び出した。そんなエドの片思いの相手はオードリー。つぎつぎにいろんな男とつきあっては別れてばかりいる、寂しがりやの女の子だ。このオードリーに、悪友マーブとリッチーを加えた4人でするトランプゲームが、エドの生活の中で唯一の楽しみだった。
ある日マーブたちと入った銀行に強盗が押し入り、はずみで犯人逮捕に貢献したエド。新聞にも載り、めずらしく母さんまでもが誇らしげに電話をかけてきた。そしてこの事件を契機に、エドの毎日が一変する。すべては郵便受けに入っていたトランプカードに記されたメッセージから始まった……。
トランプの札を章立ての枠に使って、4つのマークが配された章が13節に分かれ、ジョーカーが登場してエピローグという凝った構成になっている。エドのもとに届くカードには毎回暗号のような謎の言葉が並び、解読すると、そこに示される特定の人物を助けよというメッセージが浮かび上がってくる。誰が? 何のために? わけもわからないまま、エドは目の前で助けを必要とする人たち――本人がそれと自覚していないときも――に、必死で手を貸していく。ときに幸福や達成感に満たされ、ときに危険な目に遭って心身ともにボロボロになりながら。
自分を蔑む母親との葛藤、うだつのあがらないまま死んでいった父親への思慕、誰よりも理解しそばにいるのに決して振り向いてくれないオードリーへの切ない恋心。エドの複雑な思いを縦糸に、エドが助ける人々のさまざまな人生を横糸として物語が進んでいく。ダメ人間エドの目を通して見る世界だからこそ、どんなに小さな問題にも重みを感じるし、ささやかな喜びにも胸が震える。凝った構成に負けない、中身が濃くて骨太のストーリー。そしてすべての謎が明らかになり……エドですら知りえない種明かしが用意された結末で、あっと驚くと同時にさわやかな感動が残る。みごと作者の術中にはまり、「物語」を読む楽しさにたっぷり浸った1冊だった。
(森久里子)
【作】Marcus Zusak(マーカス・ズサック) 1975年生まれ。歯科医院での警備員を経て2000年 "Fighting Ruben Wolfe" で作家デビューした。翌年同作で、2002年には "When Dogs Cry" でオーストラリア児童図書賞 Older Readers 部門オナー(次点)に選ばれる。現在オーストラリアで最も注目される若手作家のひとり。趣味は映画鑑賞(お気に入りを何度も見る)とラグビー(弱小チームに所属)。シドニー在住。 |
オーストラリア児童図書賞発表 ブランフォード・ボウズ賞発表 『ステラもりへいく』 『ハングマン・ゲーム』 "baby loves" "The Messenger" MENU |
●お知らせ●その1
本誌でご紹介した本を、各種のインターネット書店で簡単に参照していただけます。こちらの「やまねこ翻訳クラブ オンライン書店」よりお入りください。
●お知らせ●その2
ただいま、やまねこ翻訳クラブ・読書室掲示板にて、ウーリー・オルレブの作品を読もう!という企画が進行しています。
★フォッシルジャパン:やまねこ賞協賛会社
やまねこ翻訳クラブ (info@yamaneko.org) までお気軽にご相談ください。
増 刊 号 No.7
11月1日発行予定
ウーリー・オルレブ特集号
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No.8
12月中旬発行予定
「ガールズ」(ウィルソン作)シリーズ特集号
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秋号、10月下旬発行予定!
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(第22号は10月5日発行。申し込み手続きは前日までにおすませください。)
◆次号予告は毎月10日頃、やまねこ翻訳クラブHPメニューページに掲載します。◆
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●編集後記●
体調不良のため、編集人を交代させていただくことになりました。といっても貧血がひどいだけなので、鉄分たっぷりの食事をとって、ゆるゆると生活しつつ、時々は記事執筆で参加できるかなと思っています。半年という短い間でしたが、どうもありがとうございました。(あ)
発 行: | やまねこ翻訳クラブ |
発行人: | 西薗房枝(やまねこ翻訳クラブ 会長) |
編集人: | 赤間美和子/赤塚京子(やまねこ翻訳クラブ スタッフ) |
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