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やまねこ10周年記念「世界の児童文学賞ラリー」レビュー集>BGHB賞ノンフィクション部門と特別賞レビュー集

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 やまねこ10周年記念「世界の児童文学賞ラリー」レビュー集

ボストングローブ・ホーンブック賞(アメリカ) レビュー集
Boston Globe–Horn Book Award

(ノンフィクション部門/特別賞)
 

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最終更新日 2008/09/01 新規公開(レビュー2点追加)

フィクションと詩 部門 / 絵本部門 / ノンフィクション部門 と特別賞
BGBH賞リスト(やまねこ資料室) 
BGHB賞の概要

このレビュー集について
 10周年記念「世界の児童文学賞ラリー」においてやまねこ会員が個々に書いたレビューを、各児童文学賞ごとにまとめました。メ ールマガジン「月刊児童文学翻訳」「やまねこのおすすめ」などに掲載してきた〈やまねこ公式レビュー〉とは異なる、バラエティーあふれるレビューをお楽しみください。
 なお、レビューは注記のある場合を除き、邦訳の出ている作品については邦訳を参照して、邦訳の出ていな作品については原作を参照して書かれています。


 "The Road from Home"『アルメニアの少女』 * "Appalachia: The Voices of Sleeping Birds"


1979年ボストングローブ・ホーンブック賞 ノンフィクション部門受賞作品

"The Road from Home: The Story of an Armenian Girl" (1979)
 by
David Kherdian デーヴィッド・ケルディアン
『アルメニアの少女』 越智道雄訳 評論社 1990
その他の受賞歴 
1980年ニューベリー賞 オナーブック

 ニューベリー賞レビュー集を参照のこと

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1991年ボストングローブ・ホーンブック賞 ノンフィクション部門オナーブック

"Appalachia: The Voices of Sleeping Birds" (1991) (未訳絵本)
   by
Cynthia Rylant(シンシア・ライラント)、illustrations by Barry Moser バリー・モーザー
その他の受賞作

 アパラチアで育った作家ライラントと画家モーザーが、故郷への思いを1冊の絵本にした。ライラントは語る――山の中を自由に走り回る犬のこと、その飼い主のこと、炭鉱の仕事のこと、家のこと、食べ物のこと、四季の暮らしのこと。そこから、人々の考え方や気の持ち様がわかってくる。まるで入り口に人が立ちふさがっているように、人々の前には山々が立ちふさがっていて、そのためこの地域以外のことはまるでミステリーのように思えるのだ、と。ほとんどの人が生まれた場所で人生を送るのだが、たまに医者や教師になって故郷を出ていっても、彼らもいずれ戻ってきてしまうのだ、と。各見開きの左側のページには、犬、人々、家の様子を描いたモーザーの絵がたたずんでいる。
 
 アパラチアというと、「貧困」という言葉が必ずついてくるそうだ。確かに、『メイおばちゃんの庭』の家も経済的には貧しかったなと思い至る。しかし、そういったマイナスの条件を横においた、アパラチアの人々の心根とでもいう部分が、この絵本には描きだされている。
 あらすじのところでも述べた、アパラチアの人々が他の地域をどう見ているかといったことの他にも、アパラチアの人々の素朴さや奥深さについての描写が印象深い。「多くの人は、まわりの山々に影響を受けて様々なことを考えているのだけれども、それを表現する言葉をうまく見つけ出すことができない。だからその考えは心の中にそっとしまってあるのだ」。そして、そのページの左側に描かれている女性は、まさしくそういった表情を見せている。
 また、山々や雲、木々といった自然が語られている箇所では「神」という言葉が出てくる。ついさっき神が創ったばかりのように真新しい朝の山々、神が創りだした自然にいつも触れている子どもたち。だから、ここで育ったライラントの作品には「神」をテーマにした作品が多いのだろうか。ここに出てくる「神」は、キリスト教徒でない私にとっても親しみの感じられる存在だ。
 モーザーの絵は実際の写真を元にして描かれており、ライラントの文章とのコラボレーションが素晴らしい。文と絵があいまって、アパラチアの人々の様子が浮かび上がり、作家と画家の故郷への思いが深く伝わってくる。何度でも繰り返し味わえる作品である。文章は多めで小学校高学年ぐらいから。

(植村わらび) 2008年9月公開

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