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※こちらは「情報編」です。「書評編」もお見逃しなく!!
児童文学翻訳学習者による、児童文学翻訳学習者のための、
M E N U |
| 出版社研究 第11回 |
―― みすず書房 ――
| 哲学・思想書でおなじみのみすず書房が、2000年9月から12月にかけて、<詩人が贈る絵本>というシリーズで絵本を7冊出した。同シリーズの出版には、どのような経緯があったのか。今回は東京・文京区にあるオフィスを訪ね、絵本の話題を中心に、編集部長、守田省吾さんにお話をうかがった。 |
★会社概要 〜文化のあらゆる領域を本にして
みすず書房の創立は1945年12月。はじめは「美篶書房」と漢字で書いていたが、当初の読者から時代錯誤の用字法との指摘があり、漢字制限で作字もままならなくなったため、平がなに変更した。そもそもこの社名は、『万葉集』に出てくる「みすず刈る」に由来する。それは、一千年以上も昔、まだ文字もなかった頃、上代人が信濃の荒野に生い茂る篠竹「みすず」を見て、感動のあまり思わず口ずさんだ言葉。そのときの、荒野に立つ人間の姿こそ、「物」を「文」に化そうとする出版事業のシンボルにふさわしいという思いから社名にした。
最初の出版物は1946年の『詩心の風光』(片山敏彦著)。以来、現在まで発行書数は3000点を超える。ジャンルは、ざっと挙げただけでも、哲学・思想、心理学・精神医学、社会科学、教育・社会・環境問題、歴史、文学、芸術、自然科学と、文化の全領域を網羅している。さらに、そこには全集、著作集、シリーズものや専門的な書籍が数多く含まれている。その広いうえに深いラインナップには、「物を文に化」してきた地道な努力がうかがえる。
★出版傾向 〜読者が求める「最高」の作品を
創立当初、日本の有名な作家は、大手出版社におさえられていたこともあり、みすず書房はヨーロッパの芸術・文化を日本に紹介することに力を入れてきた。そのため、フランス語、ドイツ語からの翻訳書が多く、その傾向は今も変わらない。英語からの翻訳が増えたのは、80年代を過ぎてからだ。
出版物を企画する際には、つねに「文化の最高のものを読者に手渡す」という観点を重視してきた。それが、『ロマン・ロラン全集』43巻をはじめ、ロングセラー『夜と霧』(V・フランクル著/霜山徳爾訳)などの出版につながっている。
児童書に関しては、特に読者を子どもにしぼって本を企画したことがないため、ほとんど出版していないが、自然と入り込んだものもある。たとえば、『わたしが子どもだったころ』(ケストナー作/高橋健二訳)や『赤い月と暑い時』(カウフマン作/大塚勇三訳)などは、児童書として出したわけではなかったが、結果として、子どもの本の名作と数えられるものとなった。
★絵本の出版 〜<詩人が贈る絵本>シリーズ
その「児童書の出版社ではない」みすず書房が、このたび<詩人が贈る絵本>というシリーズを出して話題になっている。「児童書に関してはいわば『外部』の当社が絵本を出すことで、業界の活性化につながればとのねらいもありました」と守田さん。実はみすず書房が絵本を出したのは、今回が初めてではない。恋人たちの世界をソフト・タッチで描いた『愛の本』(R・ペイネ著/串田孫一解説)を1975年に出版している。今回のシリーズも、そのイメージが多少もとになっているとのことだ。1999年には『いろいろずきん』(エランベルジェ原作/中井久夫文・絵)という絵本も出した。ただし、これはエランベルジェの著作集に収めようとした作品があまりにもよかったため、編者であり翻訳者でもあった中井久夫さんが絵もつけて、結果的に絵本になったものだ。
<詩人が選ぶ絵本>シリーズは、詩人の長田弘さんから持ち込まれた企画だった。長田さんはみすず書房から多数の著書を出しているほか、絵本コレクターであり、自ら絵本の翻訳も手掛けている。同社としては全幅の信頼をおいて、選書から翻訳までお願いした。シリーズ7冊に共通のテーマはないが、どれも錚々たる作家、画家によるものだ。次の読者層となる子どもたちが本を手にとるきっかけになりたい。本の魅力を世代を越えて伝えていきたい。そんな、みすず書房の願いと合致する本が揃う結果となった。
守田さんは、絵本の持つさまざまな可能性にも魅力を感じたという。今回の絵本づくりにおいても、新しい挑戦を試みた。原書で7冊ばらばらだった判型を、共通の大きさにして統一感を出したのだ。というのも、同シリーズのコンセプトは、本のあり方のひとつである「贈り物」。「本は人と人とを結びつけるもの」という考えから、プレゼントしやすい小さめの形が出来上がった。「各冊のカバーにある応募券を集めてみすず書房に送ってください。7冊が収まるきれいな箱を差し上げます。ぜひ、贈り物にどうぞ」(守田さん)
<詩人が贈る絵本>シリーズ | ||
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『白バラはどこに』 『……の反対は?』 |
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『十月はハロウィーンの月』 『おやすみ、おやすみ』 |
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『夜、空をとぶ』 『アイスクリームの国』 |
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『ジョーイと誕生日の贈り物』 (マキシン・クーミン&アン・セクストン文/イーヴリン・ネス絵) |
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株式会社みすず書房
住 所 〒113-0033 東京都文京区本郷5-32-21 |
(取材・文 田中亜希子)
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| コンテスト/展示会/セミナー・講演会情報 |
―― コンテスト情報 ――
| ◎バベル・プレス「第9回絵本翻訳コンテスト」 | |
|---|---|
| 課 題: | "MAD DOG McGRAW" by Myron Uhlberg, Lydia Monks (Illustrator) |
| 締 切: | 平成13年1月31日(水)必着 |
| 問合せ: | TEL 03-5530-2205 E-mail prs@babel.co.jp |
| 詳 細: | http://www.babel.co.jp/ |
(中野伊都子)
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―― 展示会情報 ――
| ◎国際子ども図書館「絵本が映し出すオーロラ――北欧の作家と絵本展」 | |
|---|---|
| 所在地: | 東京都台東区上野公園12-49 |
| 電 話: | 03-3827-2053 |
| 会 期: | 平成12年12月2日から平成13年2月4日まで |
| 休館日: | 月曜・祝祭日および年末年始(12月28日から1月4日まで) |
| 入場料: | 無料 |
| 内 容: | アンデルセン、ヤンソンをはじめとする北欧の絵本約120点を展示。また、週替わりの特別展示では『三びきのやぎのがらがらどん』の原画が公開される。 |
| ◎浅草松屋「松屋浅草開店70周年記念 2001年安野光雅美術館開館特別展 安野光雅の世界展」 | |
| 所在地: | 東京都中央区銀座3-6-1 松屋浅草7階大催場 |
| 電 話: | 03-3567-1211 |
| 会 期: | 平成13年1月2日から15日まで |
| 休館日: | 会期中無休 |
| 入場料: | 一般600円 大学生・高校生400円 中学生以下無料 |
| 内 容: |
平成13年3月開館の安野光雅美術館を記念して行われる展示会。だまし絵本の原画をはじめ、国内外各地の風景画など約200点が公開される。 ※1月7日の午後1時と3時にはサイン会あり。 |
(瀬尾友子)
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―― セミナー・講演会情報 ――
| ◎東京都児童会館 作家との集い「子どものこころ 詩のこころ」 | |
|---|---|
| 講 師: | 工藤直子(詩人、童話作家) |
| 場 所: | 東京都児童会館(東京都渋谷区渋谷1-18-24)4階講堂 |
| 日 時: | 平成12年12月23日(土)14:00〜16:00 |
| 入場料: | 無料 |
| 定 員: | 100名(申し込み先着順) |
| 内 容: | 『のはらうたIV』『でんせつ』出版記念講演。サイン会も開かれる。 |
| 申 込: | 子どもの本の店(東京都渋谷区渋谷2-7-9 TEL 03-3400-2723) |
| 詳 細: | http://www.litrans.net/maplestreet/book/index.htm |
| ◎クレヨンハウス 子どもの本の学校「子どものうたと絵本」 | |
| 講 師: | 中川ひろたか(絵本作家、音楽家) |
| 場 所: | クレヨンハウス(東京 港区北青山3-8-15 大阪 吹田市江の木町5-3) |
| 日 時: |
東京 平成13年1月6日 大阪 平成13年1月13日(いずれも土曜) 16:00〜17:30(15:30開場) |
| 参加費: |
非会員 2,500円(当日の朝11時から販売される当日券を購入) 会員は無料(年会費に含まれる) |
| 内 容: | 絵本のメイキング話や絵本作家たちと作った歌の話。歌ったり、スライドを見たりの90分。 |
| 問合せ: | クレヨンハウス(東京 03-3406-6492 大阪 06-6330-8071) |
| ◎東京子ども図書館 講演会「アイルランドの昔話」 | |
| 講 師: |
渡辺洋子(日本アイルランド文学会連合会員) 茨木啓子(東京子ども図書館第3期お話の講習会修了生) |
| 場 所: | 東京子ども図書館(〒165-0023 東京都中野区江原町1-19-10) |
| 日 時: | 平成13年2月2日(金)14:00〜16:00 |
| 参加費: | 一般 2,000円 賛助会員 1,500円 |
| 定 員: | 50名(定員を超えたときは抽選) |
| 申 込: | 往復はがきに(1)希望する講演・講座名 (2)氏名 (3)住所(郵便番号も) (4)電話番号(昼の連絡先) (5)賛助会員か否かを記入して、東京子ども図書館まで。1人1枚に限る。1月19日締切(必着)。 |
| 内 容: | 『子どもに語るアイルランドの昔話』の共訳者ふたりによる、妖精の国アイルランドの人たちの楽しいエピソードと本ができるまでの裏話。 |
| 詳 細: | http://www.litrans.net/maplestreet/tklib/index.htm |
| ◎朝日カルチャーセンター・横浜 公開講座「英語と日本語で楽しむマザーグース」 | |
| 講 師: | 灰島かり(作家、翻訳家) |
| 場 所: | 朝日カルチャーセンター(横浜市西区高島2-16-1 ルミネ横浜8階) |
| 日 時: | 平成13年1月13日、27日、2月10日、24日、3月10日の全5回(第2・4土曜日)15:00〜17:00 |
| 参加費: | 会員15,500円 一般17,500円(税別) |
| 内 容: | マザーグースの絵本や歌から、英語のリズムを体験し、なぞときや呪文など興味深い伝承の不思議な世界を読み解く。 |
| 申 込: |
電話(045-453-1122 9:30〜19:00 日曜・祝日除く) または ホームページhttp://www.asahi.com/acc/acc.htmlからEメール。 |
| その他: | 高校生も歓迎 |
(中野伊都子)
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| お菓子の旅 第13回 |
―― イギリスに渡ったトルコ菓子 ――
(ターキッシュ・ディライト)
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He had eaten his share of the dinner, but he hadn't really enjoyed it because he was thinking all the time about Turkish Delight. "The Lion, the Witch and the Wardrobe" |
2000年9月に『ライオンと魔女と衣装だんす』という絵本が出ました。これは、世界中の子どもたちに最も愛される読み物のひとつ、「ナルニア国ものがたり」シリーズ第1作『ライオンと魔女』の絵本版です。読み物を先に読まれた方は、主役の4人きょうだいのひとり、エドマンドの好物が、「プリン」から「ターキッシュ・ディライト」に変わったことにお気づきになったかもしれません。もともと読み物の原書でも、ここの記述は "Turkish Delight" でした。しかし、翻訳出版された1966年当時は、今以上に「ターキッシュ・ディライト」の知名度が低かったため、日本の子どもに親しみ深い「プリン」に代えられたのだそうです。
ターキッシュ・ディライトは、トルコでロクム(lokum)と呼ばれる伝統的なお菓子です。アラブ諸国から広まり、15世紀にはすでにオスマン・トルコで大人気。それがイギリスへ渡って、クリスマス菓子として定着しました。スターチ(澱粉)と砂糖でできたとてもシンプルなものなので、果物やナッツを入れたり、香りをつけたりすることで、いろんなバリエーションが楽しめます。今回はナルニア・クックブックにも掲載されている、ゼラチンを使ったレシピをご紹介しましょう。
*-* ターキッシュ・ディライトの作り方 *-*
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★参考文献
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(田中亜希子/森久里子)
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| 読者の広場 |
―― 海外児童文学や翻訳にまつわるお話をどうぞ! ――
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★はじめまして。私は4年制の大学の2年生です。翻訳家になりたいと最近決心しました。今は、とりあえず英語の実力をつけることと、読書をすることに力を入れています。来年から、専門学校に通おうかと思っているのですが、翻訳家になるにはどのような勉強方法がいいのでしょうか……。いいアドバイスがありましたら、よろしくおねがいします。(ゆらら) ☆ゆららさんへ ★フランチェスカ・リア・ブロックの『“少女神”第9号』と「ウィーツィ・バットブックス」を読みました。どちらもぞくぞくするほど登場するキャラクターが魅力的でした。ところでそのすてきなキャラクターがよくクールという言葉を口にしますね。それ、なんとなくわかるので読んでしまいましたが、じっさいのところどのような語感なのでしょうか? 私は自分の生き方、趣味、スタイルに自信をもっていてその自信が内面からにじみでて外面を輝かせているような人をイメージしていますが。そのうち子どもたちにも読ませたいので(そうするといろいろ話になるので)勘違いがあれば訂正したいのです。ご教示いただければ幸いです。(きゃべつ) ★いつもたくさんの児童書を紹介してくださいますが、その際に、目安として、何歳向けのものかというのは明記していただけないでしょうか。紹介文を読み、子どもに読ませたいと思うのものがたくさんあります。小学校、低学年、高学年など、大まかなもので結構ですので明記していただけると購入しやすいです。(ティンカーベル) ☆ティンカーベルさんへ 貴重なご意見をありがとうございました。引き続きご愛読よろしくお願いいたします。(編集部) ☆11月号のビルドカッツェさんへ |
このコーナーでは、児童書の翻訳にまつわるお話、ご質問、ご意見等を募集しています。mgzn@yamaneko.org までお気軽にお寄せください。
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やまねこ翻訳クラブ(会員数203名)
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―― 遊学館絵本コンクール勉強会開催中! ――
(12月末まで "Stripe"。来年1月からは、いたばし国際絵本翻訳大賞勉強会。)
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渋谷の「子どもの本の店」で毎月紙ベースで出していた便りがメルマガで購読できるようになりました。スタッフが選りすぐりの児童書を紹介しています。
詳細はhttp://www.litrans.net/maplestreet/kodomo/info/index.htmにて。
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●編集後記●
もうすぐ21世紀……といってもあまり実感がわかないのが正直なところ。とにかく来年もステキな本に出会えますように。みなさま、よいお年を!(み)
| 発 行: | やまねこ翻訳クラブ |
| 発行人: | 吉井知代子(やまねこ翻訳クラブ 会長) |
| 編集人: | 宮坂宏美 (やまねこ翻訳クラブ スタッフ) |
| 企 画: | 河まこ キャトル きら くるり こべに さかな 小湖 SUGO Chicoco つー どんぐり NON BUN ベス みーこ みるか MOMO YUU りり Rinko ワラビ わんちゅく |
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