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Japanese Children's Books 日本語版

2005年4月28日発行
English Version


特集: どうぶつの本








 写真絵本
『ミミズのふしぎ』
皆越(みなごし)ようせい 写真・文
ポプラ社 2004年6月
ISBN 4-591-08172-9
1260円(税込)
『ミミズのふしぎ』表紙画像

 子ども、特に小さい子ほど、うんちという言葉が大好きです。それを口にした時のまわりの大人たちのリアクションを楽しんでいるのでしょうか。この写真絵本はうんちそのものの本ではありませんが、うんちがたくさんでてきます。ですから、わが家の子どもたちはこの絵本を「うんちの本」とよんでいるほど。それではこれから、うんち写真いっぱいのミミズの絵本をご紹介します。ミミズという目にしやすく身近な土壌動物――しかしながら肉眼ではなかなか目撃できない生態をつぶさに見せ、驚かせてくれる科学写真絵本です。

 なかなか目撃できないもの、そのひとつが目をひく表紙写真。タイトルを見ないとこれがミミズかどうかも理解できなかった私です。表紙では、そのミミズが小枝をくわえたところが、大きく拡大されています。一見しただけではとてもミミズとはわかりません。「これがミミズ!! わぁーー!」と子どもともに声をあげてしまいました。ミミズも、何かを食べて生きている、と頭でわかっていても、実際に、もぐもぐしているところなど見たことがなかったのですもの。口を開いている姿が別の生き物を見るようです。ぱくぱく食べている姿にいちいち、ひゃー、こんなモノも食べてる! これもだ! とにぎやかに反応しながらページを繰っていきます。ミミズの不思議さと魅力が写真を見ているだけでどんどん増すのです。またそればかりでなく、産卵シーンも目をうばうものがあります。写真では、ミミズの体を大きく見せて、どちらが頭で、卵のもとになっているのはどこで、と丁寧に説明してくれます。そして、よいしょ、よいしょと卵がぬげる(!)シーンに続いて、卵が登場。「すごぉい!」と、一緒に読んでる子どもたちと、しばし感動をわかちあいました。
 さて、冒頭でうんちの話をしましたが、うんちは、ほとんど全ページに登場しています。巣穴の入り口をうんちでふさいで身を守るシーンを見ても、うんちとミミズの密接な関係がよくわかります。食べてうんちをして、うんちをしてまた食べて、こうした行為が土の成分を豊かなものにしてくれるのだ、などと大人はつい知識で見てしまいがちですが、子どもは丸ごとそのまま受け止めています。ぐにゅぐにゅ排泄される一面うんちの写真を、「あ、うんち、ここにもうんち。次もうんちだ!」と、笑って飽きずにながめます。さまざまなうんちの形態を見ていると、あー、あれうんちだったんだと以前見たことのある土を、あらためて思い出したりもします。食べてはうんち、食べてはうんちのミミズを見ていると、なんだかうんちもふかふかして美味しそうに見えてきたり……はしません。でも、とってもミミズに興味をもち、いつか産卵シーンを自分の目で見てみたいなぁという野望をいだく私でありました。子どもはもちろん、雪がとけたらうんちを探そう!とはりきっています。


皆越ようせい(みなごしようせい)
1943年生まれ。自然写真家。土壌生物を専門に撮影し、その写真は高い評価を得ている。各地でスライド&トークを開催し、土壌生物の存在と理解を深める活動も展開している。子ども向けの写真絵本は他に2冊でており、『おちばのしたをのぞいてみたら…』、『ダンゴムシ みつけたよ』(共にポプラ社)がある。

(林 さかな)

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 日本文化の紹介

『しばわんこの和のこころ』
川浦良枝 文・絵
白泉社
『しばわんこの和のこころ』表紙画像『しばわんこの和のこころ2』表紙画像『しばわんこの和のこころ3』表紙画像

『しばわんこの和のこころ』
『しばわんこの和のこころ2 
    ―四季の喜び―』
『しばわんこの和のこころ3 
    ―日々の愉しみ―』
2002年1月

2002年12月

2004年3月
ISBN:4-592-76096-4 1470円(税込)

ISBN: 4-592-76097-2 1418円(税込)

ISBN: 4-592-76102-2 1470円(税込)
 柴犬のしばわんこと、三毛猫のみけにゃんこは、床の間のある日本家屋に2匹で暮らしています。しばわんこはおっとりした性格。掃除・洗濯・料理とまめに働きます。対照的にちょっと気性が激しいみけにゃんこ。家事はあまり得意ではありません。こんな2匹が、お客さまの迎え方、お正月の過ごし方、着物の楽しみ方など、毎回ひとつの題材に沿って、四季折々の和の生活を学びます。
 実用的な知識を紹介しながら、2匹をめぐる人たちの物語も描かれています。新聞配達少年は、新聞の集金に来てしばわんこにお客さまと間違えられてしまったのがきっかけで、しばわんこたちと仲良くなりました。桜の季節に失恋して落ち込んでいるところを、しばわんこに花見に誘われ、花の下で抹茶を点てているうちに、いつしか立ち直っていたことも。少年のおばあさん、さちこさんは着物が似合う粋な女性で、歌舞伎や日本の伝統的な文様などに詳しいので、しばわんこの師匠的な存在になりました。大晦日に年越しそばを出前してきて、しばわんこにお茶に誘われたおそば屋さんも、しばわんことすっかり親しくなりました。このおそば屋さんは小学1年生の男の子と女の子の双子のお父さんでありながら、わけあって独身。その後、ゆきちゃんという恋人の存在が発覚します。読者は、七夕の歴史やお盆のことなどを知りながら、失恋ばかりしている新聞配達少年の身を案じたり、おそば屋さんとゆきちゃんの恋の進展を見守ったりします。
 作者の川浦良枝さんは、一般的な礼儀作法の本のもつ、知らないと恥をかくといったような厳しい印象を変えたくて、動物を主人公にすることを思いついたとか。以前から好きだった柴犬と、長年一緒に暮らしている三毛猫を主人公にしただけあって、2匹とも表情豊かで愛くるしく、思わず本を手にとってみたくなります。春の桜や秋の紅葉などの風景だけでなく、着物の柄はもちろん、ほうきや茶碗など、小物のひとつひとつまで丁寧に美しく描かれていて、絵をじっくりと眺めて楽しむこともできます。
 この3冊は2000年8月号から始まった、雑誌「月刊MOE」の人気連載を絵本にしたもの。連載はまだ続いていますので、いずれ第4巻が刊行され、おそば屋さんとゆきちゃんのその後が伝わるはずです。あわただしい世の中の流れに巻き込まれず、煩悩もなくゆったりと暮らすしばわんこの生活に、憧れる人はきっと多いことでしょう。


川浦良枝(かわうらよしえ)
1963年東京都生まれ。武蔵野美術短期大学卒業後、デザイナーとして、カレンダーや文房具の制作に携わる。「月刊MOE」編集部にイラストを持ち込んだのがきっかけで、「しばわんこの和のこころ」を発表。2005年3月4日に『しばわんこと童謡を歌おう CDつき絵本』が発売された。

(赤塚 きょう子)

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 幼年向け人気シリーズ
penphoto




『ペンギンたんけんたい』

斉藤洋 文  高畠純 絵
講談社 各1155円(税込)
『ペンギンしょうぼうたい』表紙画像
『ペンギンおうえんだん』表紙画像
『ペンギンサーカスだん』表紙画像
『ペンギンたんけんたい』表紙画像
『ペンギンパトロールたい』表紙画像
『ペンギンおんがくたい』表紙画像
『ペンギンたんていだん』表紙画像

『ペンギンたんけんたい』
『ペンギンしょうぼうたい』
『ペンギンおうえんだん』
『ペンギンサーカスだん』
『ペンギンパトロールたい』
『ペンギンおんがくたい』
『ペンギンたんていだん』
1991年8月
1993年6月
1994年9月
1996年3月
1997年7月
1998年5月
2002年10月
ISBN:4-06-197824-1
ISBN:4-06-197834-9
ISBN:4-06-197838-1
ISBN:4-06-197839-X
ISBN:4-06-197842-X
ISBN:4-06-197843-8
ISBN:4-06-198151-X

「エンヤラ、ドッコイ」「エンヤラ、ドッコイ」――かけ声とともにカヌーにのったペンギンたちがやってきた。双眼鏡を首にかけたペンギン隊長、その後ろには、副隊長と、副々隊長、隊員たち、あわせてなんと50羽もいる。
 南の島の浜辺にカヌーをつけると、ペンギンたちは一列になり、ジャングルに踏みこんでいく。木陰から飛び出してきたライオンにいきなり吠えられても、大きなニシキヘビやワニにすごまれても、ペンギンたちは逃げだしたりしない。それどころか「ぼくたちは……ペンギンたんけんたいだ」とあっさり宣言して先に進んでいく。ライオンたちは、誰からもおそれられていると確信していたのに、ペンギンたちの無関心ぶりにとまどう。それにペンギンたちが一体何を「たんけん」しにきたのか不思議でならない。その謎を解こうとライオンもニシキヘビもワニも、ペンギンたちの後をついていくことにするのだが……。
 このお話の楽しさは、私たちの予想を絶妙に裏切りながら展開させる、斉藤氏のストーリーの見事さにある。ライオンと比べペンギンは弱いはずだという私たちの想像に反し、ペンギンたちはライオンに吠えられたからといって逃げ出したりしない。それどころか超マイペースな行動でどう猛な動物たちを振り回していく。予想外の展開にひっぱられて最後まで一気に読んでしまう。
 また、高畠氏の描く動物たちのユーモラスな姿も見逃せない。一見何気なく見えるが、高畠氏の挿絵の構図はまちがいなく斉藤氏の文を盛り上げている。特に、山を登っていくペンギンの後を動物3匹が追っていくシーン、ラスト1ページに描かれているライオンの物言いたげな後ろ姿は必見だ。
 初めて読み物に挑戦する小学一年生ぐらいを対象に書かれた本だが、幅広い年齢層の心を言葉や絵のユーモアとナンセンスでくすぐる。「ペンギン」シリーズは、この本を始めとして現在全7巻が出ているが、巻ごとにペンギンたちは毎回違った任務(?)で登場している。この秋に8巻目が出るそうだが、ペンギンたちが今度は何に変身するのか楽しみだ。
 海外では、『ペンギンたんけんたい』『ペンギンしょうぼうだん』『ペンギンおうえんだん』『ペンギンサーカスだん』『ペンギンパトロールたい』が台湾で出版されている。


斉藤洋 (さいとうひろし)
1952年東京都生まれ。亜細亜大学経営学部教授(ドイツ文学担当)。1986年に『ルドルフとイッパイアッテナ』(講談社)で講談社児童文学新人賞受賞。以来多数のベストセラーを発表し続けている。『ジーク』(偕成社)、「なん者ひなた丸」シリーズ(あかね書房)、「白狐魔記」シリーズ(偕成社)など、数多くの作品がある。

高畠純 (たかばたけじゅん)
1948年名古屋市生まれ。東海女子大学教授。1983年に『だれのじてんしゃ』(フレーベル館)でボローニャ国際児童図書展グラフィック賞受賞。『あそぼ あそぼ』(講談社)、『ドッキドキ』(フレーベル館)、『だじゃれどうぶつえん』(中川ひろたか文/絵本館)など作品多数。最近では『オー・スッパ』(越野民雄文/講談社)で第9回日本絵本賞受賞。

(高橋 美江)

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「14ひきのシリーズ」
いわむらかずお 作
童心社 各1260円(税込)
『14ひきのひっこし』表紙画像
『14ひきのやまいも』表紙画像『14ひきのさむいふゆ』表紙画像
『14ひきのぴくにっく』表紙画像『14ひきのおつきみ』表紙画像


『14ひきのあさごはん』表紙画像

『14ひきのせんたく』表紙画像
『14ひきのあきまつり』表紙画像『14ひきのこもりうた』表紙画像
『14ひきのかぼちゃ』表紙画像『14ひきのとんぼいけ』表紙画像
『14ひきのひっこし』
『14ひきのあさごはん』
『14ひきのやまいも』
『14ひきのさむいふゆ』
『14ひきのぴくにっく』
『14ひきのおつきみ』
『14ひきのせんたく』
『14ひきのあきまつり』
『14ひきのこもりうた』
『14ひきのかぼちゃ』
『14ひきのとんぼいけ』
1983年7月
1983年7月
1984年7月
1985年11月
1986年11月
1988年6月
1990年5月
1992年10月
1994年7月
1997年4月
2002年6月
ISBN:4-494-00618-1
ISBN:4-494-00619-X
ISBN:4-494-00622-X
ISBN:4-494-00627-0
ISBN:4-494-00673-4
ISBN:4-494-00683-1
ISBN:4-494-00695-5
ISBN:4-494-00857-5
ISBN:4-494-00862-1
ISBN:4-494-00874-5
ISBN:4-494-00898-2

*絵本にっぽん賞受賞
*小学館絵画賞受賞

「14ひきのシリーズ」は、里山の自然の中で生きるねずみ一家の、四季折々の暮らしを描いたロングセラー。国内はもとより、フランス、ドイツ、台湾などでも翻訳出版され、世界の子どもたちに愛され、親しまれてきた人気シリーズである。
 主人公のねずみ一家は3世代14匹の大家族だ。各巻の物語は、いつも扉のこの言葉から始まる。

おとうさん おかあさん
おじいさん おばあさん
そして きょうだい 10ぴき。
ぼくらは みんなで
14ひき かぞく。

 表紙をめくり、この言葉に出会うたび、温かく、優しいものがじんわりと胸の奥から広がってくる。大家族のぬくもりは、核家族に育ったわたしにも、なぜか言い知れぬ懐かしさを感じさせる。物知りで優しいおじいさん、おばあさん、働き者のおとうさん、おかあさん、元気で明るい子どもたち。作品のこの設定を類型的だという批判は聞いたことがない。絵本の中では、ねずみたち1匹1匹がそれぞれの命をもって生きている。ほんのちょっとしたしぐさや表情からも、本物の愛情がこの家族をつないでいるのがわかるのだ。
 作者いわむら氏は、シリーズの制作にあたって、14匹の性格を描き分けることをまず念頭に置いた。それぞれの内面を見つめながらスケッチを繰り返し、主人公たちとの心のつながりを深めていったという。そうするうち、14匹全員、ことに10匹の子どもたちを平等に活躍させなくてはという気になっていったそうだ。「一度も声をかけてあげなかった子がいるとかわいそう」「出番の少ない子がいると、その子がどこかでしょんぼりしているような気がして心が痛む」と、その親心を語っている。
 さあ、不平等にならないよう、10匹の子ねずみたちを紹介してみよう。しっかり者で頼もしい長男のいっくん。おっとりタイプだがおどけたところのあるにっくん。小さなおかあさんといった感じのさっちゃん。しぐさがとても女の子らしいよっちゃん。わんぱくで元気な男の子、ごうくん。おっちょこちょいでちょっとこわがりのろっくん。女の子で元気のいいのは、なっちゃん。なっちゃんとごうくんはよくけんかをしているが、いつもくっついているところをみると、一番なかよしなのだろう。はっくんは身軽でなかなか器用なタイプ。いつも小さなねずみのお人形を大事そうに連れているくんちゃんが、読者からの人気は一番らしい。まだまだ小さい末っ子とっくんは、やはり何をしていてもかわいい。
 ねずみたちは擬人化され、人間のような暮らしをしているが、モデルとなっているのは、雑木林などに住むヒメネズミ。親指ほどの大きさしかないこの小さなねずみの目の高さに視点を置くため、いわむら氏は「地面にはいつくばって」野の草花をながめるようになったという。丁寧に描きこまれた草木や虫、小動物たちは緻密で美しく、ねずみの目線で見た自然は豊かな上に新しい発見に満ちている。いわむら氏は、このシリーズ1作目を発表する8年前に北関東の雑木林に移り住んでいる。少年時代を過ごした東京・杉並の雑木林の思い出を原風景として芽生え始めたイメージの世界を、「現実の暮らしとして実現したい」という、強い思いからだ。自然の中に暮らし、じっくりと時間をかけて観察し、スケッチを重ねてイメージをふくらませていく。最新刊の『14ひきのとんぼいけ』も、3年にわたってひとつの池を見つめ続けた中から生まれた作品だ。
 絵本の中で、わたしも14匹のねずみたちとともに野山に遊び、折々の自然に触れ、季節の恵みを味わう。また、そこには家族の笑顔があり、温かい食卓があり、優しい子守唄がある。最後のページを閉じるときには、いつもほうっとため息がもれてしまうのだ。

いわむらかずお(岩村和朗)
1939年東京生まれ。東京芸術大学美術学部工芸科卒業。栃木県在住。パッケージデザイン、テレビアニメーション等の仕事を経て、絵本の仕事を始める。『ひとりぼっちのさいしゅうれっしゃ』(偕成社)でサンケイ児童出版文化賞、『かんがえるカエルくん』(福音館書店)で講談社出版文化賞絵本賞受賞。「こりすのシリーズ」(至光社)も人気。読み物に「トガリ山のぼうけん」シリーズ(理論社)、エッセイに『14ひきのアトリエから』(童心社)などがある。 1998 年、子どもたちに自然の実体験をと、フィールドミュージアム「いわむらかずお絵本の丘美術館」を開館、館長を務める。

☆参考サイト
いわむらかずお絵本の丘美術館


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『14ひきのあさごはん』

 朝の光のすがすがしい森の中、早起きのおじいさんは、もう外で火をおこしている。大きな木の根元につくった家の中では、おかあさん、おばあさん、続いて子ねずみたちが目を覚ます。「おねぼうさんはだれ?」という作者の問いかけに、絵本を前にした子どもたちは目をキョロキョロ。このシリーズでは、どのページも見開きいっぱいに1枚の絵が大きく描かれて、下にほんの1行だけ言葉が添えられている。「〜してるのはだれ?」という問いかけや「あっ ○○がいるよ」などという小さなヒントに、子どもたちは目を皿のようにして絵の隅から隅までながめ回し、たくさんの発見に心躍らせるのだ。
 身支度のすんだねずみたちは、手分けして朝ごはんの用意。さっちゃんとよっちゃんは、おばあさんとおかあさんを手伝って、台所でどんぐりパンを焼く。外のかまどでは、おじいさんとおとうさんがスープをつくっている。そこに小さなとっくんだけを残して、ほかの子ねずみは野いちごつみに。
 野山を描いた場面は特に楽しみが多い。生い茂る名も知らない雑草の間に可憐な花が咲いている。よく見れば、そこにもここにも小さな虫たちが息をひそめている。ひとしきり絵の中の自然を探検したら、今度はねずみたちの様子も確かめてみる。「ろっくん、ケガしちゃったんだね」「痛そう」「でも左手でよかったね」「くんちゃん、泣いてるね」「疲れちゃったのかな?」「あっ、お人形置いてきたのに気がついたんじゃない?」言葉では書かれていない1匹1匹の小さなストーリーを追って、子どもたちはページを行きつ戻りつしながらねずみたちへの親しみを深めていく。
 ラスト・シーンは、外の大きな丸テーブルをみんなで囲んだ「あさごはん」。一家そろっての朝ごはんは、にぎやかで楽しく、おいしそう。「ああ、いいなあ」と、満ち足りた気分にさせてくれる。



(杉本 詠美)

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 英訳された絵本
"Animal Faces"
Akira Satoh and Kyoko Toda
Translated by Amanda Mayer Stinchecum
ISBN 0-916291-62-6
Kane/Miller Book Publishers, March 1996

『みんなのかお』
さとうあきら 写真 とだきょうこ 文
福音館書店 1994年11月10日発行
ISBN 4-8340-1269-7 1575円(税込)
『みんなのかお』表紙画像Animal Faces 表紙画像
 この本を子どもといっしょに読むと、かならず自分たちで考えた問題をだしあいます。
「あくびを、ふぁー。眠いのはどの子かな」
「あごに手(足)をあて、考えごと。だれだ?」
「しょんぼり、さびしそう。どの子でしょう」
「わっはっは。大笑いしているの、だれだ?」
 こたえはぜんぶ本のなかにあります。上から順に、ゴリラ、カワウソ、カンガルー、オオカミ。ぜひ探してみてください。
 写真絵本『みんなのかお』には、24種類の哺乳動物が、見開きページに21匹ずつ登場します。ずらりとならぶ写真は、北海道から沖縄まで、日本中の動物園で、お客さんが動物を見る場所から撮影したのだそうです。どの動物もこちらを見つめ、なかよくしようよ、話をきいてよと、語りかけてくるようです。
 はじめてこの本を読んだとき、人間の顔がひとりひとり違うよう に、動物の顔も1匹1匹違うことにあらためて気づきました。それに気づいたことは、人生でひとつ得をしたような幸せなことでした。同じような気持ちを、帯に記された、画家であり作家である赤瀬川原平氏の言葉がうまく表しています。「ぼくたち人間から見て、ゴリラはぜんぶゴリラだけど、それがみんなただのゴリラではないことがわかって驚いた。ラクダもみんな、ただのラクダではないとわかって驚いた」
 この本は「動物園」がもっている、ただ「動物を見る」というだけではない魅力を伝えようとする本です。写真家の佐藤彰氏とライターの戸田杏子氏はふたりで、この本の取材のために日本全国ののべ3000の動物園を訪れたといいます。動物の種類ごとに書かれた戸田氏の短い文章は、足を使って育んだのであろう動物への愛情にあふれ、さらには動物園が大好きな老若男女への優しさにあふれています。巻末に「みんなのかおが見られる動物園」として、撮影に使われたたくさんの動物園の住所と電話番号が載っています。初版から10年の時を経て、閉園になった動物園の名前をいくつか見つけることは、さびしく、残念です。
 ずいぶん昔、大学の授業で、先生が「動物園で1日カメラを持ってすごすとしたら、なにを撮りますか」ときいたことがありました。学生のわたしたちは「カバ」「猿山」などとこたえました。そのとき先生がいったのは「わたしなら、動物園に来ている人を撮ります」。『みんなのかお』を読んで、この先生の言葉を思い出しました。この本を見つめる人間の、にやにやしたり、「ほー」と感心したり、「かわいい」と目をほそめたりする顔を写真に撮ったら、さぞやいい写真がとれることでしょう。


佐藤彰(さとうあきら)
写真家。明治学院大学、東京綜合写真専門学校卒業。学生時代から動物園通いをしている動物好き。『動物園の動物』(山と渓谷社)、『たすけて』(童心社)などの作品がある。また本書と同じく戸田杏子氏と組んだ本に、『こんにちはどうぶつたち』(福音館書店)、『動物園が大好き』(新潮社/とんぼの本)、『動物園アイドル図鑑』(世界文化社)などがある。

戸田杏子(とだきょうこ)
東京生まれ。児童書の編集者から、フリーランスのライターに転身。1971年以来、東南アジアをはじめ世界を旅し、『世界一の日常食タイ料理歩く食べる作る』(晶文社)を執筆。本書と同じく佐藤彰氏の写真をともなった『タイ 楽しみ図鑑』(新潮社/とんぼの本)、『タイ料理のごはんですよ』(晶文社)もある。

(よしい ちよこ)

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"Who's Behind Me?"
Written & Illustrated by Toshio Fukuda
Translated by Mia Lynn Perry
ISBN 4-902216-29-9 2520円(税込) *CDつき
R. I. C. Publications, March 2005

『うしろにいるのだあれ』
ふくだとしお 作
新風舎
1470円(税込)
『うしろにいるのだあれ』表紙画像Who's Behind Me? 表紙画像 『うしろにいるのだあれ みずべのなかま』表紙画像
『うしろにいるのだあれ のはらのともだち』表紙画像

『うしろにいるのだあれ』
『うしろにいるのだあれ みずべのなかま』
『うしろにいるのだあれ のはらのともだち』
各 1470円(税込)
2003年3月 ISBN 4-7974-2289-0
2004年6月 ISBN 4-7974-4196-8
2004年12月 ISBN 4-7974-6264-7
 

 絵もシンプルならお話もシンプル。でもそれだけじゃありません。子どもには楽しく、大人にはそっとやさしく語りかけてくる、不思議な力をもったシリーズ絵本です。
「うしろにいるのだあれ」というタイトルのとおりに、ページのはしっこに描かれた動物の体の一部で、つぎに出てくる動物を思い浮かべながらページを繰っていきます。しっぽやくちばしや角、体のもようやカラフルな羽根……すぐに「あの動物だな」とわかるヒントなので、かんたんに「だあれ」の答えは出てくるのですが、それでもぱっと開いた一面に、思ったとおりの姿があらわれると嬉しくなってしまいます。そして最後には思わず「へええ」と笑って、最初のページからもう一度めくり返したくなります。シリーズ全作とも共通の展開ですが、それでもやっぱり最後には、「へええ」と思ってしまうのです。
 この絵本の構想は、作者のふくだとしお氏が写真にうつった動物をみて絵を描いているとき、その中の1枚にうしろをふりかえっている犬がいたことから得たのだそう。1作目が好評で続いて作られた2作目、3作目では、1作目にはなかった途中の小さなひねり(?)も加えられています。
 少ないことばで同じフレーズをくりかえして進むお話は、幼い子どもにも容易に理解できる内容です。動物のあてっこをしながら、ひとりでも誰かといっしょでも、楽しく読むことができます。でもけっして、単純なだけではありません。いのちのつながり、いっしょにいることの嬉しさ……シンプルな構成の中に深みを感じられ、いろいろな読み方ができるのです。
 絵は、動物の特徴を的確にとらえた線に、甘さをおさえたやわらかな色合い。白無地の背景が動物たちの姿をくっきりと引き立たせ、かわいいだけではない豊かな表情をみせてくれます。デッサンと構図はふくだ氏が担当し、色彩は夫人のあきこさんが担当しているそうで、息のあったコラボレーションは絵本のテーマにも通じるようです。
 皇太子殿下内親王愛子様お気に入りの絵本として有名になった本作は、2005年3月に英訳が出版されました。子どもにも大人にも楽しめる、わかりやすさと深みのあるおもしろさにあふれたこの絵本は、普遍的な力できっと国や文化をこえて多くの人に愛されることでしょう。


ふくだとしお
1971年大阪府堺市生まれ。大阪芸術大学工芸学科卒業後、1998年に制作活動のためにフランスに渡る。翌年帰国して制作の場を東京に移し、絵本、絵画、立体作品などの発表を続けている。また、老若男女を対象とした絵画教室も主催するなど、幅広く活動中。

☆参考サイト
 ふくだとしお&あきこ公式サイト「accototo

(森 久里子)

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 しばらくお休みをいただいておりました。またよろしくお願いいたします。
 日本の「動物絵本」「動物文学」には、フィクション、ノンフィクションともに世界に誇れるすばらしい作品が数多くあるように思います。それらの作品の中の動物たちは、写実的であっても象徴的であっても、読むものに「生」の意味を教えてくれます。でも何より、ミミズだっていぬだってねこだってペンギンだってぶただって、みんなかわいい! 動物たちにかこまれて、幸せな編集作業でした。(も)




発 行
やまねこ翻訳クラブ
発行人
井原美穂(やまねこ翻訳クラブ 会長)
企 画 やまねこ翻訳クラブ スタッフ並びに有志メンバー
編 集 池上小湖 森久里子
編集協力
赤塚京子 菊池由美 杉本詠美 高橋めい  
竹内みどり 林さかな リー玲子
協 力
出版翻訳ネットワーク 管理人 小野仙内

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日本で出版されている作品の表紙画像は、出版社の許可を得て、掲載しています。
海外で出版されている作品の表紙画像は、 オンライン書店との契約に基づい て、掲載しています。
素材はStrange Factoryさん、柚莉湖さん、あゆの素材箱さん、ねこうららさん、のお世話になりました

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