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月刊児童文学翻訳

─2000年12月号(No.26 書評編)─

※こちらは「書評編」です。「情報編」もお見逃しなく!!

児童文学翻訳学習者による、児童文学翻訳学習者のための、
電子メール版情報誌<HP版>
http://www.yamaneko.org/mgzn/
編集部:mgzn@yamaneko.org
2000年12月15日発行 配信数 2,010


「どんぐりとやまねこ」

     M E N U

◎特集 第3回やまねこ賞
会員が選んだ、今年の邦訳児童書ベスト5は?
読み物部門
絵本部門
未訳部門
オールタイム部門

◎速報
2000年 全米図書賞、スマーティーズ賞発表

◎Chicoco の親ばか絵本日誌
第6回「発見がいっぱい」(よしいちよこ)



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【FOSSIL .....The American Authentic】
1984年、テキサス州ダラス生まれ。「fun, smile and humor」がモットーです。楽しいイラスト入りのティン缶がパッケージ。お店でお好きな絵柄をお選びください。申し遅れましたが私は「カジュアル・ウオッチ」。老若男女の皆様にご提供できる豊富な品揃えが自慢です。日本でもお買い求めいただけます。詳しくはフォッシル・ホームページまで。

 


特集 第3回やまねこ賞 協賛:フォッシルジャパン

 

 過日、やまねこ翻訳クラブで、昨年11月から今年10月までに出版された邦訳児童書、および、過去に海外で出版された未訳児童書を対象に、ベスト5の投票が行われました。以下に、その結果をご報告します。大賞に輝いた邦訳作品の翻訳家の方には、賞状と副賞が贈られます。なお今回より、株式会社フォッシルジャパンの協賛を得て、副賞の時計をご提供いただくことになりました。 副賞「Big Tic」
副賞「Big Tic」

 「読み物」「絵本」の分類については、原則として(株)図書館流通センター(TRC)による分類種別に準拠していますが、一部の本については、当クラブの判断で種別を変更しています。なお、シリーズ作品につきましては、合わせて一作品としました。

 

★☆★☆【2000年 第3回やまねこ賞 読み物部門】☆★☆★

 

★ 大賞
『黄金の羅針盤』
『神秘の短剣』

(「ライラの冒険」シリーズ1、2)
フィリップ・プルマン作 大久保寛訳 新潮社

 さらわれた子どもたちを探すため、真理を語る羅針盤を手に北へと向かう少女、ライラ。ふとしたことで別世界の入口を見つけたウィルは、そこでライラと出会う。次元を越えて巡り合ったふたりが、過酷な試練と戦いながら探索の旅をする姿を描いた、壮大なファンタジー。第1巻は、96年度カーネギー賞、ガーディアン賞を受賞。

『黄金の羅針盤』表紙 『神秘の短剣』表紙

(本誌98年8月号「注目の記事」、2000年4月号情報編「プロに訊く」に関連記事を掲載しています)

 

  • もう、これしかないというくらい魂をゆさぶられる作品でした。訳書が待ちきれないから、3巻目は原書を読むぞぉ!(SUGO)
  • ファンタジーを超えたファンタジー、物語を超えた物語。完璧に構築された架空の世界で、現実以上の現実を生きる主人公たちの「冒険」の物語は、わたしの一生の宝物です。(くるり)
  • 読み出したら止まらない、迫力満点のファンタジーです。タフなライラに拍手を送りたい! ああ、でも、3巻ではどうなるの? どきどき。(どんぐり)
  • この壮大なファンタジー、早く結末を知りたい!(Blue Jay)

 

☆【受賞のことば】 翻訳家 大久保寛 さん☆

 念願かなって、児童文学の翻訳を初めて手がけることができましたが、いきなりすばらしい賞をいただけて光栄の至りです。永遠の名作を書いてくれた作者、翻訳をまかせてくれた心やさしき編集者、児童文学に目を開かせてくれた二人の愛娘、『黄金の羅針盤』を一年かかってまだ読み終えていない妻、賞をあたえてくださったやまねこ翻訳クラブのみなさま、すべてに感謝を捧げます。今後も、機会があったら、どんどん児童文学を手がけたいと思っています。

 

◆2位
『ハリー・ポッターと賢者の石』表紙 『ハリー・ポッターと秘密の部屋』
『ハリー・ポッターと賢者の石』
『ハリー・ポッターと秘密の部屋』

(「ハリー・ポッター」シリーズ1、2)
J・K・ローリング作 松岡佑子訳 静山社

 世界中に「ハリー旋風」を巻き起こした冒険ファンタジー。魔法学校の生徒ハリー・ポッターと、邪悪な魔法使いヴォルデモートとの激しい戦いを描く。第1、2巻ともにスマーティーズ賞を受賞。


(詳細は、本誌98年9月号「おすすめの本」のレビュー、99年9月号情報編の「出版社研究」、同号書評編の特集記事をご参照ください)

 

  • 読み始めると止められないのは、ハリーの魔法なのでしょうか。(SUGO)
  • この物語に出会えたことを、本当に幸せに思います。(みるか)
  • んもう、何だかんだ言っても、おもしろいものはおもしろいのだ(笑)。(どんぐり)
  • 読み出したらもう止まらない。魔法をかけられたみたいに生活のすべてがストップしてしまう。夢の中にもホグワーツの景色が広がっている。(Incisor)

 

◆3位
『第八森の子どもたち』
エルス・ペルフロム作 野坂悦子訳 福音館書店

 第二次世界大戦末期、11歳の少女ノーチェは父親とともに農家に疎開してきた。戦時下の冬を生きる人々の姿を細やかに描いたオランダ児童文学の傑作。1977年に金の石筆賞を受賞。

『第八森の子どもたち』表紙

(詳細は、本誌2000年7月号書評編の特集記事をご参照ください)

 

  • 戦争の話なのに、終わらないで、この世界!と思いながらページを繰りました。時時読み返してはあの農場に戻っていきたいな。(NON)
  • どんな情況においても、子どもは逞しく楽しみを見つけ、美しい景色は美しく人の情は温かい。生きることの素晴らしさを教えられた本でした。(ちゃぴ)
  • 読み応えがあって、ナチス支配下の“普通の人々”の生活が身にせまってきました。(ワラビ)
  • 子どもにとっては、戦争があろうとなかろうと、子どもの時間が流れていくということに少しほっとしました。同時に、子どものもつ強さを感じました。(河まこ)

 

◆4位
『地獄の悪魔アスモデウス』表紙
『地獄の悪魔アスモデウス』
ウルフ・スタルク作 菱木晃子訳 あすなろ書房

 悪魔の子アスモデウスは、父親から人間の魂を奪ってくるように命ぜられ、地上に送られた。でも、およそ悪魔らしくないアスモデウスの性格が災いして、なかなかうまくいかず……。コミカルでちょっと切ない物語。


(詳細は、本誌2000年5月号書評編「注目の本」のレビューをご参照ください)

 

  • ぶっとんでて、しんみりしてて、痛快。ヘグルンドの絵も、菱木さんの訳も、これ以上望むべくもないほどはまっている。悪魔のパパのまっとうさがかっこいい。(BUN)
  • スタルクとヘグルンドの息がぴったり。スタルクのリアリスティックな作品もいいけど、ファンタジーもこれまたすばらしい。(MOMO)
  • スタルク作品、いつも父と子の関係を巧みに描写していますね。重層的に読める作品だと思います。(ながさわくにお)
  • まず、悪魔の絵に、ひと目で惚れました(^.^)。スタルクの描く男の子って、いつもかわいいなって思います。このお話でも、主人公の悪魔くんが、とってもキュート。そして、スパイシーな笑いが、ここでも炸裂してました。(キャトル)

 

◆5位
『金鉱町のルーシー』
カレン・クシュマン作 柳井薫訳 あすなろ書房

 夢を求めて新天地カリフォルニアにやって来たウィップル一家。しかしそこには厳しい現実が待ち受けていた。19世紀半ばのゴールドラッシュに湧く金鉱町を舞台に、少女ルーシーの心の葛藤と家族の奮闘を描いた物語。

『金鉱町のルーシー』表紙

 

  • クシュマンの書くヒロインには、なぜか心惹かれてしまうのです。後ろ向きすぎて逆に前向きになってしまっているカリフォルニア(ルーシー)の姿に、大いに笑い、泣き、勇気づけられました。(くるり)
  • 本が好きでたまらないルーシーに共感すること大。(さかな)
  • 読み終えた直後は感想をまったく表現できないくらいせつない気持ちになった。しかし、日にちがたつにつれ心が晴れ、いつしかルーシーに絶え間なく拍手をおくっていた。「おめでとう」と言うと輝く笑顔のルーシーが見えるようだ。(Incisor)

 

◆6位以下の作品◆

6位  『羽がはえたら』
『ゾウの王 パパ・テンボ』(2作同点)
8位  『宇宙人が来た!』
9位  『エンデュアランス号大漂流』
『イスカンダルと伝説の庭園』
『海の魔法使い』
『イーグルカイト ぼくの父は、エイズとたたかった』(4作同点)

 

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★☆★☆【2000年 第3回やまねこ賞 絵本部門】☆★☆★

 

★ 大賞
『かようびはシャンプー』
ウーリー・オルレブ作 ジャッキー・グライヒ絵
もたいなつう訳 講談社

 シャンプーが大きらいなイタマル。毎週火曜日には、イタマルの泣き叫ぶ声が家中にひびきわたる。困ったお姉ちゃんのダニエラは、ある晩いい方法を思いついた。

『かようびはシャンプー』表紙

(詳細は、本誌2000年4月号書評編「注目の本」のレビューをご参照ください)

 

  • 素朴なお話と絵がしみじみと心にしみました。作者の愛情あふれる視点が、本当にいいのです。シャンプーを嫌がって泣いているイタマルの表情が最高!(くるり)
  • 初めて読んだとき、「そうそう、子どもってこうだよねー!」って叫びたくなった。もう、そのひとことに尽きます。イタマルがかわいいよー。(BUN)
  • イタマルがかわいかったです。親のための本じゃなくて、子どもの視点にたっていてくれるのがいいなあと思いました。(河まこ)
  • シャンプーをいやがる少年の気持ちがのびやかで、表情豊かに描かれています。(Chicoco)

 

☆【受賞のことば】 翻訳家 もたいなつう さん☆

 イタマルのおかげで「やまねこ賞」をいただけて、幸せです! はちきれそうに元気なグライヒの絵のドイツ語版色校正刷りをオルレブの家で見て以来、日本語版が出るといいなあ、と思っていました。賞をいただき、訳者になれてよかった、としみじみ思っています。1月には、イタマルの『Tシャツのライオン』が出る予定、とっても素敵な本ですので楽しみにしてらしてください。みなさま、どうもありがとうございました。

 

◆2位
『エヴァ 花の国』表紙
『エヴァ 花の国』
ラスカル文 ルイ・ジョス絵 山田兼士訳 セーラー出版

 子どもたちが夢の国へと出かけるころ、10歳の少女エヴァは、花売りの仕事を始める。ひと晩じゅう花を売ったその後でエヴァが思い描くのは、「花の国」のことだ。


(詳細は、本誌2000年9月号書評編「注目の本」のレビューをご参照ください)

 

  • 絵本というもののすばらしさを実感した1冊。ラスカルの絵本を思わず全部購入した年になりました。(さかな)
  • 子どもって、おとなが思っているより生きる力を持っているのかもしれない、と感じました。(みーこ)
  • ラスカルの世界にはいつもやられてしまいます。この人の作品は、なんでこんなに深いんでしょう。さまざまな読みを許してくれる絵本です。(ながさわくにお)
  • 心がうつむいたとき、思い出すと背筋をのばすことができる1冊。(Incisor)

 

◆3位
『ローザからキスをいっぱい』
ペトラ・マザーズ作 えんどういくえ訳 BL出版
 お母さんの入院中、ローザは遠い農場のおばさんの家にあずけられることになった。ローザは楽しい毎日の暮しを病院のお母さんに手紙で知らせ、またお母さんからの手紙を待ちわびる。
『ローザからキスをいっぱい』

(詳細は、本誌2000年11月号書評編「注目の本」のレビューをご参照ください)

 

  • 娘を持つ母としては、胸がキュンとなる作品でした。やさしい人たちに囲まれて楽しく過ごしていても、病気の母親に対する愛情をひしひしと感じ、読んでいて心があたたかくなりました。(SUGO)
  • 人のやさしさ、あたたかさに心がなごみました。色合いに深みがあって、ちょっぴりユーモラスなところもある絵が大好き!(どんぐり)
  • 人と人のふれあいって温かいなと、嬉しい気持ちになります。(ちゃぴ)

 

◆4位
『雪の写真家ベントレー』表紙
『雪の写真家ベントレー』
ジャクリーン・ブリッグズ・マーティン作
メアリー・アゼアリアン絵 千葉茂樹訳 BL出版
 アメリカの豪雪地帯に生まれたウィルソン・ベントレー。雪の美しさに魅せられたその生涯が描かれた絵本。1999年度ニューベリー賞受賞作品。

 

  • ベントレーのひたむきな人生に感銘を受けました。雪の結晶があんなにもたくさん種類があるなんて、この絵本を読むまで知りませんでした。(SUGO)
  • アゼアリアンの版画がなんとも美しい。そして、雪に魅せられたベントレーの生涯が、素直に胸を打つ。絵、文、訳と三拍子そろった、結晶のような絵本。(BUN)
  • 素直な絵とベントレーのひたむきな生き方が良く合っていて、ほのぼのとした気持ちにさせてもらえる絵本です。(タイ)

 

◆5位
『たったひとりの戦い』
アナイス・ヴォージュラード作 平岡敦訳 徳間書店
 昔むかし、赤の国と青の国は長い間戦争を続けていた。青の国の王子ファビアンは、戦争を終わらせようとして、たったひとりで戦いをはじめる。
『たったひとりの戦い』表紙

(詳細は、本誌2000年6月号書評編「注目の本」のレビューをご参照ください)

 

  • 物語には納得できないところもあったのですが、絵の迫力は素晴らしい。大判の絵本にしてくださった徳間書店のセンスにも感謝しています。(わんちゅく)
  • 戦いってなんなのか、しみじみ考えさせられました。(MOMO)
  • 絵がいいです。遠めにみて美しい本(近くからもいいけど)は、読み聞かせにもぴったり。(河まこ)
  • 少年のまなざしに打たれました。もっともっと、話題になってほしい本。(りり)

 

◆6位以下の作品◆

6位  『いぬはてんごくで…』
『大森林の少年』(2作同点)
8位  『ピッツァぼうや』
9位  『満月をまって』
10位  『パパが宇宙をみせてくれた』
『ぞうのさんすう』(2作同点)

 

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★☆★☆【2000年やまねこ賞 未訳部門】☆★☆★

 

★ 大賞
"BUD, NOT BUDDY"
by Christopher Paul Curtis(1999年 アメリカ:ニューベリー賞受賞)
 まだ見ぬ父親を探して旅する黒人少年バドの物語。

(詳細は、本誌2000年2月号書評編特集記事のレビューをご参照ください)

 

  • わたしは何といってもこの本! バドの「ルール」がおもしろいんですよねえ。愛とユーモアがたっぷりの物語です。(どんぐり)
  • わたしの心を大きく揺さぶった、正統派ハートウォーミングストーリーです。泣ける。(くるり)
  • 最近また洋書を読み始めた、きっかけとなってくれた本で、思いで深いこともありますが、やっぱり作品自体も、いいです。心にしみます。あったかすぎて泣けてきます。アメリカにはジャズがあるんだよなぁ。(NON)

 

◆2位(2作同点2位)
"SILENT TO THE BONE"
by E.L.Konigsburg(2000年 アメリカ)
 妹に深刻なけがを負わせたかどで、親友が補導された。ショックのためか、彼は、一切口がきけない状態だ。ぼくは真相解明に乗り出す……。カニグズバーグの新作。

 

  • 後半、ちょっと熱の足りない感じがしたけれど、カニグズバーグらしい冴えも随所に感じられてよかった。(BUN)
  • 冒頭からぐいぐい引っ張られるように読みました。心の襞をなぞるような描写には、ひとつひとつ納得がいきました。原書を読む魅力を教えられた1冊です。(Gelsomina)

 

◆2位(2作同点2位)
"THE QUEEN OF ATTOLIA"
by Megan Whalen Turner(2000年 アメリカ)
 世界一の盗人と豪語する少年ジェン。対立する二つの国に、果たして平和をもたらすことはできるのか……。1997年ニューベリー賞次点 "The Thief" の続編。

 

  • ああ、もうダントツです。プロットが複雑で、おもしろくて、完成度も高くて、本当に楽しめました。訳本出ないかなあ。(ワラビ)
  • 1巻同様、後半のどんでん返しに驚きました。ファンタジーでもあり、歴史冒険小説でもあり、ラブストーリーでもあり、とにかくおもしろかったです!(ベス)

 

◆4位(2作同点4位)
"KIT'S WILDERNESS"
by David Almond(2000年 イギリス:カーネギー賞次点)
 少年の友情に超現実的な事象が絡むちょっと不思議な物語。

(詳細は、本誌2000年9月号書評編「注目の本」のレビューをご参照ください)

 

  • ちょっと不思議なアーモンド・ワールドに浸りました。(どんぐり)
  • 繊細な少年って好き。邦訳も予定されているとか。楽しみです。(りり)

 

◆4位(2作同点4位)
"CLARICE BEAN, THAT'S ME" <絵本>
by Lauren Child(1999年 イギリス:ケイト・グリーナウェイ賞次点)
 自分の部屋がほしいクラリスが奮闘する楽しい絵本。

(詳細は、本誌2000年7月号書評編特集記事のレビューをご参照ください)

 

  • この作品を皮切りに続々と新刊が出ているので楽しみです。日本で出版されたら売れるんじゃないかな〜(SUGO)
  • 絵がキュート!(さかな)

 

◆6位以下の作品:(5作同点)◆

"FACE" by Benjamin Zephaniah
"TWO SUNS IN THE SKY" by Miriam Bat-Ami
"FOX" by Margaret Wild and Ron Brooks
"26 FAIRMOUNT AVENUE" by Tomie de Paola
"SECTOR 7" by David Wiesner
(なお "SECTOR 7" は11月、『セクター7』という題でBL出版から出版されました)

 

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★☆★☆【番外編 やまねこ賞 オールタイム部門】☆★☆★

 

『穴』表紙  出版年を問わず、過去1年間にやまねこ翻訳クラブ会員が読んだ児童書の中から、ベスト5を選出しました。 『勇者の剣』表紙

 

1位 『穴』 サッカー作 幸田敦子訳 講談社 1999
2位 『勇者の剣』 ジェイクス作 西郷容子訳 徳間書店 1999
3位 『ピーターラビットシリーズ』 ポター作 石井桃子訳 福音館書店 1971〜93
4位 『もちろん返事をまってます』 アミット作 母袋夏生訳 岩崎書店 1999
5位 『ウエズレーの国』 『海のたまご』 『海をわたったアンメイ』 『おやすみゴリラくん』 『壁の向こうの街』 『少女探偵ジュディシリーズ』 『少年時代』 『戦争の冬』 『ダンクトンの森』 『ディア ノーバディ』 『デ・ラ・メア物語集1〜3』 『ナンシー・ドルーシリーズ』 『ぼくのおさるさんどこ?』 『メイおばちゃんの庭』 『リトル・トリー』

 

 1位の『穴』は、昨年のやまねこ賞第2位の作品。その結果を受けて読んだ会員の票が集まり、2年連続のやまねこ賞入賞となった。「物語を読む楽しさを存分に味わわせてもらいました」(MOMO)

 2位の『勇者の剣』も、昨年出版されて話題となった壮大なファンタジー。「けっこうなボリュームにもかかわらず、一気に読んでしまいました。動物たちの戦い方がリアルでおもしろかったです」(どんぐり)

 3位以下には、あらためて読み返して感銘を受けたという往年の名作やシリーズ物と、比較的新しい作品が混在。また5位の『戦争の冬』、『ぼくのおさるさんどこ?』をはじめ、日蘭交流400周年を記念して本クラブで企画された「オランダ作品レビュー集」をきっかけに読まれた作品が、投票のあった全75作中5作入る結果となった。

◇参考:やまねこ翻訳クラブ「オランダ作品レビュー集」

(蒲池由佳/植村わらび/沢崎杏子/森久里子)

 

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速報

―― 2000年 全米図書賞、スマーティーズ賞発表 ――

 

◎11月15日、全米図書賞が発表された。児童書部門の受賞者は以下の通り。


<The National Book Award>

★Young People's Literature

"Homeless Bird" by Gloria Whelan
(HarperCollins Children's Books)

 

 この部門賞は、児童文学(ヤングアダルトを含む)を対象とし、米国の作家に贈られる。受賞作は、親の決めた結婚の後、13歳で未亡人となったインドの少女が、自分の生きる道を探る物語。

◇参考:この賞を主催する The National Book Foundation の発表記事

 

◎11月29日、英国の児童文学賞、スマーティーズ賞が発表された。対象年齢別に分けられた各部門の受賞者は以下の通り。



<Smarties Book Prize>


★Gold Award

【5 and under】 
"Max"(Walker Books)
by Bob Graham
【6-8】
"Lizzie Zipmouth"(Young Corgi)
by Jacqueline Wilson,
illustrated by Nick Sharratt
【9-11】
"The Wind Singer"(Mammoth)
by William Nicholson

◆Silver Award

【5 and under】 
"Me and My Cat?"(Andersen Press)
by Satoshi Kitamura
【6-8】
"The Red and White Spotted Handkerchief"(Scholastic)
by Tony Mitton,
illustrated by Peter Bailey
【9-11】
"The Other Side of Truth"(Puffin)
by Beverley Naidoo

◆Bronze Award

【5 and under】 
"Husherbye"(Jonathan Cape)
by John Burningham
【6-8】
"Beware of the Storybook Wolves"(Hodder Children's Books)
by Lauren Child
【9-11】
"The Seeing Stone"(Orion)
by Kevin Crossley-Holland

◆Kids' Clubs Network Special Award

             
"Lizzie Zipmouth"(Young Corgi)
by Jacqueline Wilson,
illustrated by Nick Sharratt

 

 この賞は、フィクションと詩を対象にし、英国在住の作家および画家に贈られる。

 金賞を受賞した作家のうち、ボブ・グラハムは、『チャボのオッカサン』(評論社、1998年ケイト・グリーナウェイ賞次点作)などで日本でも紹介されている。ジャクリーン・ウィルソンは、"The Illustrated Mum" で今年のガーディアン賞を受賞、今イギリスで子どもたちに大人気の作家。今年は『おとぎばなしはだいきらい』など偕成社から邦訳出版があいつぎ、注目される。受賞作は、母親の再婚のせいで心と口のチャックを閉めてしまったリジーをめぐるストーリー。体裁も分量もこれまでの作品より低年齢層に配慮した、小学校低学年から読める物語である。テーマは離婚、義理の家族、母と娘の関係、そして今作品のメインテーマ、老人と子どもの交流と多岐にわたるが、少ない文字と語彙で見事に描ききっている。今までになく心温まる結末となっているのは、低年齢向けを意識したからであろうか。

 また銀賞では、きたむらさとしのオリジナル絵本が受賞している。『ねむいニャー』(評論社)などのオリジナル絵本、『ぼくはおこった』(ハーウィン・オラム文/評論社)『風、つめたい風』(レズリー・ノリス文/小峰書店)など絵と邦訳を担当した作品で知られ、日本でもファンの多いこの作家の、欧米での活躍ぶりがうかがえる。

◇参考:この賞を主催するブックトラストの発表記事

(大塚典子/菊池由美)

 

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Chicocoの親ばか絵本日誌 第6回 よしいちよこ

―― 「発見がいっぱい」 ――

 

 絵本を息子のしゅんと読みはじめてから、ひとりでは気づかなかったことを絵の中にたくさん発見できるようになりました。今回は、読むたびに新しいことが見つかる、ぺギー・ラスマンの絵本を2冊紹介します。

『おやすみゴリラくん』表紙

 しゅんが10か月のころ、『おやすみゴリラくん』(ぺギー・ラスマン作/いとうひろし訳/徳間書店)を読みはじめました。夜、動物園の管理人が動物たちに「おやすみ」といいながら見回りをします。管理人からこっそり鍵をとったゴリラくんが、動物たちの檻を次々に開けていき、さあ大変。そのころ、しゅんは絵本の風船を指さす癖がありました(2000年9月号書評編を参照)。この本の最初のページにもピンクの風船が浮かんでいるではありませんか。しゅんはさっそく指さしました。次のページにも風船があり、また指さしました。その次のページも、そのまた次のページも……。ラスマン・ファンのわたしは、この本を何度となく読んでいましたが、風船のことは知りませんでした。ラスマンの遊び心を見つけたようで、得をした気分です。いま1歳9か月になったしゅんの興味は、好物のバナナに移りました。ネズミとバナナの行方が気になるようで、最後にはかならず「かわー(皮)!」と叫び、うらやましそう。

『あと10ぷんでねるじかん』表紙

 さて、もう1冊は、"10 minutes till bedtime"(Peggy Rathmann/G.P.Putnam's Sons)。『あと10ぷんでねるじかん』(徳間書店)という邦訳が出ています。「あと10分で寝るんだよ」と父親にいわれ、主人公の男の子は寝る準備を始めようとします。ところが、そこへハムスターの観光客がわんさと押しかけ大騒ぎです。しゅんはいま乗り物に夢中で、この絵本の中でもハムスターの第二陣がいろいろな乗り物でやってくるところから、がぜんもりあがります。「どーしゃ(自動車)! とらっく! ばす! くしー(タクシー)!」と、次々に指さし興奮しています。気にいった絵本は、おとなでは考えられないほど繰り返し読みます。この本もそうで、わたしといっしょに何十回と読んでいます。おかげで、わたしはたくさんの発見をしました。たとえば、8番のハムスターはかならず頭をかくしているとか、9番のハムスターはいちばん高いところにいるとか……。よく見ると、『おやすみゴリラくん』のゴリラくんも登場。ゴリラくんの家と男の子の家、外の雰囲気が似ているので、ひょっとしてご近所かと思っていたら、案の定。遠い空にピンクの風船……その下には……。まだまだおもしろいことが隠れていそう。今夜も新しい発見があるかもしれません。


"10 minutes till bedtime"
(Peggy Rathmann/G.P.Putnam's Sons)

 

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●編集後記●

 やまねこ賞も第3回を迎えました。翻訳クラブの1年の成果があらわれているなあ、と思いながら、リスト片手に来年の読書計画を練っています。(き)


発 行: やまねこ翻訳クラブ
発行人: 吉井知代子(やまねこ翻訳クラブ 会長)
編集人: 菊池由美 (やまねこ翻訳クラブ スタッフ)
企 画: 河まこ キャトル きら くるり こべに さかな 小湖 SUGO Chicoco つー どんぐり NON BUN ベス みーこ みるか MOMO YUU りり Rinko ワラビ わんちゅく
協 力: @nifty 文芸翻訳フォーラム
小野仙内 ながさわくにお Gelsomina ちゃぴ Incisor


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