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| プロに訊く 第6回 |
今回は、ヤング・アダルト文学から絵本の翻訳、さらには挿し絵に、創作絵本と、幅広い活動で注目を集める中川千尋さんにお話をうかがいました。お忙しい中、快くインタビューに応じてくださった中川さん、まことにありがとうございました。
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【中川千尋(なかがわちひろ)さん】 1958年生まれ。東京芸術大学美術学部芸術学科卒業。翻訳書にドハティ『ディア ノーバディ』(新潮社)、サーバー&スロボドキン『たくさんのお月さま』(徳間書店)など多数。ケネディ『ふしぎをのせたアリエル号』(ベネッセ)では翻訳と挿し絵を手がける。また『のはらひめ』(徳間書店)、『ぼくにはしっぽがあったらしい』(理論社)などの創作作品もあり、活動は多彩。 |
そもそもは、荻原規子さんの『空色勾玉』です。あれをアメリカ人の友人と組んで英訳したいという大それた望みにとりつかれて福武に電話をしました。わたしは日頃電話恐怖症なので、なぜそんな大胆なことができたのか、いまもって謎です。残念ながら(幸い?)「勾玉」の英訳はすでに他の方に任されていたのですが、その電話で編集の方と子どもの本をめぐって長々と話しこみ、つづきはお会いしてということで会社に伺い、ますます意気投合しました。当時の福武から出るものはことごとく面白く、それを作っている人たちの輪に加われるのはとてもうれしかったです。
『シェフィールドを発つ日』を訳して以来、著者ドハティさんとは、たまに手紙のやりとりがありました。92年にイギリスに遊びにいったとき、旅の途中でカーネギー賞の発表があり、彼女の二度目の受賞を知ったのです。二度ももらう人は稀です。お祝いの電話を入れ、予定を変更して会いにいきました。ドハティさんはテレビや新聞の取材で忙しかったはずなのに、雨の日の午後、静かで穏やかな時間を過ごさせてくれました。(インタビュアー:内藤文子)
| 中川千尋さんインタビュー 洋書の買い方大研究 展示会情報 セミナー・講演会情報 『時計ネズミの謎』 "My Louisiana Sky" お菓子の旅 MENU |
| 特集 |
〜 洋書の買い方大研究 〜
翻訳家をめざすからには、日本語の本ばかりでなく洋書もたくさん読みたいもの。日本国内で洋書を手に入れるには、大型書店の洋書売り場や洋書専門店に出かける、インターネットのオンライン書店を利用するなどの方法がある。書店に行けば実際に本を手に取って確かめることができるが、値段が高いのが難点だ。バーゲンを狙うという手もあるが、大都市近辺に住んでいなければ洋書のバーゲンに出かけるのもなかなか難しい。しかしオンライン書店なら全国どこからでも洋書が安く手に入る。そこで今回は、おすすめのオンライン書店を紹介しながら、賢いオンライン洋書ショッピングについて考えてみたい。
【スカイソフト】――安さと速さが魅力―― 2006年3月に閉店しました
【アマゾン・コム】――情報の宝庫――
【iBS】――検索結果が見やすい――
【アマゾンUK】――今後が楽しみ――
【Heffers】――カタログもあり――
【Dymocks】――オーストラリア最大の書店――(生方頼子)
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| 展示会/セミナー・講演会情報 |
ゴールデンウィークは展示会へ行こう!
| ☆西武アートフォーラム「世界の絵本原画展'99」 | |
|---|---|
| 所在地: | 西武百貨店池袋店6F 西武アートフォーラム |
| 電 話: | 03-3981-0111 |
| 会 期: | 平成11年4月28日(水)〜5月6日(木)まで |
| 入場料: | 高校生以上500円 小中学生200円 |
| 内 容: | アジア、アフリカ、ラテンアメリカのイラストレーターによる絵本原画展。 |
| ☆小田急美術館「絵本の100年展」 | |
| 所在地: | 小田急百貨店新宿店 11F |
| 電 話: | 03-3342-1111 |
| 会 期: | 平成11年4月21日(水)〜5月9日(日)まで |
| 入場料: | 800円 |
| 内 容: | プーさんやババールなど、長く親しまれてきた絵本250点を紹介。 |
| ☆名古屋三越「ディック・ブルーナの世界展」 | |
| 所在地: | 名古屋三越 栄本店 7F 催物会場 |
| 電 話: | 052-252-1111 |
| 会 期: | 平成11年4月28日(水)〜5月4日(火)まで |
| 入場料: | 一般600円 |
| 内 容: | ミッフィー(うさこ)ちゃんで有名なブルーナの原画展。 |
| ◎斑尾高原絵本美術館「イギリス女流絵本画家展」 | |
| 所在地: | 長野県飯山市斑尾高原11492-224 |
| 電 話: | 0269-64-2807 |
| 会 期: | 開催中/平成11年6月30日(水)まで |
| 休館日: | 火曜日 |
| 入場料: | 700円 |
| 内 容: | ヘレン・オクセンバリー、アンジェラ・バレット、シャーロット・ヴォークなど、イギリスの第一線で活躍する女流絵本画家の原画を展示。 |
| ◎JR大阪セルヴィス・ギャラリー「谷内こうた ノルマンディーの便り展」 | |
| 所在地: | JR大阪駅構内 |
| 電 話: | 06-6346-3564 |
| 会 期: | 開催中/平成11年4月22日まで |
| 休館日: | なし |
| 入場料: | 無料 |
| 内 容: | 絵本作家・谷内こうた氏が活躍するノルマンディー地方の風景のイラストを中心に展示。 |
| ◎えほんミュージアム清里「キュリアス・ジョージの世界」 | |
| 所在地: | 山梨県北巨摩郡高根町清里3545-6079 |
| 電 話: | 0551-48-2220 |
| 会 期: | 開催中/平成11年7月12日(月)まで |
| 休館日: | 火曜日 |
| 入場料: | 大人700円 小中学生400円 |
| 内 容: | 「ひとまねこざる」シリーズの原画や資料を展示。 |
| ◎山田かまち水彩デッサン美術館−常設展 | |
| 所在地: | 群馬県高崎市片岡町3-23-5 |
| 電 話: | 0273-24-3890 |
| 会 期: | 1年中(ただし季節ごとに展示内容変更) |
| 休館日: | 水曜日 |
| 入場料: | 大人500円 高中小学生200円 |
| 内 容: | 秀でた才能で、水彩画やデッサン、詩やメモなどを数多く残し、わずか17歳でこの世を去った山田かまちの常設展。 |
(瀬尾友子/菊池由美/分銅晴子)
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| ◎宝塚市立中央図書館「絵本とおはなしについての講演」 | |
|---|---|
| 講 師: | 間崎(大月)ルリ子 |
| 場 所: | 宝塚市立中央図書館 2階集会室 |
| 日 時: | 平成11年4月26日(月)10:30-12:00 |
| 参加費: | 無料 |
| 内 容: | エッツの絵本『もりのなか』などの訳者である間崎氏が、絵本やおはなしについて講演。午後には講師によるおはなし会の予定もあり。 |
| 申 込: | 不要(当日直接会場へ) |
| ◎クレヨンハウス(東京・大阪)「地球の宝探し」 | |
| 講 師: | 新宮晋 |
| 場 所: |
東京 港区北青山3-8-15 クレヨンハウス 大阪 吹田市江ノ木町5-3 クレヨンハウス |
| 日 時: |
東京 平成11年5月8日(土)16:00-17:30 大阪 平成11年5月1日(土)16:00-17:30 |
| 参加費: | 会員は無料(年会費に含まれる) 非会員は2500円 |
| 内 容: | 『じんべいざめ』や『キッピスの訪ねた地球』など、絵本作家としても知られる彫刻家・新宮晋氏が絵本誕生までの過程について語る。 |
| 申 込: | クレヨンハウスへ(東京03-3406-6492 大阪06-6330-8071) |
(菊池由美/宮坂宏美)
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| 注目の本(邦訳編) |
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ピーター・ディッキンソン作『時計ネズミの謎』 "Time and the Clockmice, Etcetera" |
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ブラントンの町の有名な大時計が、99年目を迎えて止まってしまった。そこで、時計をつくった技師の孫であるわたし、老時計技師の出番がやってきたんだ。わたしが大時計のからくり人形のふたをあけてみると、そこにいたのは普通とちょっと違うネズミ。じつは、この時計の中には、賢いテレパシーネズミの一族が住んでいた。どんなテレパシーかって? 彼らは絵言葉のようなかたちで意志を通じ合う。ほら、エマさんの描いた絵をみてごらん、こんな感じさ。
時計の修理をするうちに、からくり時計のしくみのすばらしさと共に、時計ネズミのすばらしさがわかってきた。わたしのユニークないとこたち――鐘の魔力にとりつかれたミニー、マーマレード好きで材木の研究家サイラスなど――の助けも借りながら、なんとか修理はすすんだ。だが、わたしの失言がもとで、ネズミたちに危険がせまることになってしまった!
異常な設定と超自然的な出来事が、豊富な知識に裏付けられた詳細な描写によってリアリティを持つというのが、ディッキンソンの作風である。軽いタッチのこの作品においてもその持ち味がよく生かされ、おとぎばなしのような筋立てが決して嘘っぽくならない。時々挿入される技術的な解説、哲学的な考察などの余談めいた部分も説教臭くはなく、ストーリーと絶妙にからみあってくる。章立てのかわりに、「ネズミについて その1」「鐘について その1」といった見出しの文章で全体が組み立てられる、ちょっと変わった構成。子ども対象の作品でありながら、登場人物に子どもがひとりもいないのも特徴といえる。凝った言い回しやイギリス人らしい諧謔に満ちた文章は、読書力のある子ども向けだし、設定もはじめはわかりづらいが、文章とぴったり合ったふんだんな挿絵(エマ・チチェスター・クラーク。他の作品に『竜の子ラッキーと音楽師』岩波書店など)が助けになるだろう。
お話を楽しみながらいつのまにか、真理や人間や地球について思いをはせている自分に気がつく、魅力にあふれた一冊。文字の多い絵本という体裁だが、内容は小学中学年以上向け。大人も充分楽しめる。
(菊池由美)
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【作者】Peter Dickinson(ピーター・ディッキンソン) 【訳者】木村桂子(きむらけいこ) |
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| 注目の本(未訳編) |
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『ルイジアナの空の下で』(仮題) Kimberly Willis Holt "My Louisiana Sky" 200pp.
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1950年代のアメリカ、ルイジアナ州――12歳のタイガー・アン・パーカーは、両親と祖母と4人で暮らしていた。両親には知的障害があったが、タイガーは聡明で運動神経もよく、活発な明るい女の子に成長した。両親は子どものように純粋な心でひとり娘のタイガーを愛し、しっかり者の祖母も孫の良き相談相手となっていた。
タイガーの悩みは、村の女の子たちから仲間外れにされることだった。地主の息子、ジェシーという親友もいたし、男の子たちから野球に誘われることも多かったが、年頃のタイガーにはどうしても女の子の友だちが必要だった。ある日、タイガーは母親の幼稚な振る舞いを女の子たちに笑われ、大きなショックを受ける。彼女は生まれて初めて母親に向かって怒鳴り、両親を恥ずかしく思った。
そんなタイガーに追いうちをかけるように、唯一の心の支えだった祖母が急死した。タイガーは悲しみにうちひしがれるが、その気持ちを理解してくれる人は誰もいない。そこへ大都会バトンルージュに住む叔母がやって来て、タイガーに一緒に住まないかと提案した。タイガーは、都会で新しい生活ができると大喜びするのだが……。
詩的な美しい文章でしみじみと感動できるこの作品は、98年ボストングローブ=ホーンブック賞のオナーに選ばれた。主人公タイガーの葛藤をメインに描かれているが、叔母や祖母の複雑な心境にも触れられており、知的障害者の家族を持つというのはどういうことなのか、家族・家・ふるさととは何なのかについても考えさせられる。物語の後半では、タイガーの母親に関する意外な事実も明らかになるなど、最後まで読者をひきつける作品であることは間違いない。
ただし、母親が美化されている点、結末があっさりしすぎている点が多少気になった。実際にはもっと複雑で難しい問題なのではないかと思わせるところもいくつかあり、知的障害を題材として扱うことの難しさを感じた。
作品のテーマは、おそらく祖母のセリフ"People are afraid of what's different"(人は違うことをおそれるものだ)に凝縮されていると思われる。他の人たちとは違う環境に置かれた主人公が、いかに自分の居場所を見出していくかが、この作品の読みどころといえる。
(宮坂宏美)
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Kimberly Willis Holt |
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| お菓子の旅 第4回 |
〜トライフル Trifle〜
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A moment's thought, and Tom had glided into the kitchen and thence into the larder. This would have been a routine move at home; he and Peter had often done it. Philippa Pearce "Tom's Midnight Garden" |
親戚の家で眠れぬ夜を過ごしていたトム。ある日の夜中、そっとベッドを抜け出すと……。時を超えた不思議な出会いを描いたファンタジーの名作、『トムは真夜中の庭で』(高杉一郎訳/岩波書店)の一場面です。
トムのおばさんの食料品貯蔵室に肉やパンや果物といっしょにおいてあったトライフルは、残ったスポンジケーキや果物を使って作る、イギリスの家庭ではおなじみのお菓子です。trifleとは、「とるに足らない」「つまらない」などの意味。もともと濃いクリームと砕いたビスケットを混ぜただけの質素なものだったために、この名前がついたといわれます。それぞれの家庭で、そのときにあるものを使って手軽に作るので、特に決まったレシピはありません。好きな果物をたっぷり使い、トッピングも様々に工夫して、自分だけのトライフルを作ってみませんか。
*-トライフルの作り方-* |
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*-参考文献-*
『イギリスのお菓子II』 北野佐久子著 ソニー・マガジンズ
『英国おいしい物語』 ジェイン・ベスト・クック著 原口優子訳 東京書籍
(森久里子/田中亜希子)
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やまねこ翻訳クラブ(会員数132名)
―― 99年4〜5月の主な活動 ――
海外児童文学賞受賞作読破マラソン
セーラー出版社長・小川悦子さんを招いて(座談会)
出版翻訳ネットワークのホームページに新刊情報を掲載しませんか?
http://www.litrans.net/maplestreet/
●編集後記●
インターネットの普及で、海外の洋書を安く手に入れたり、日本での出版状況を調べたりするのもだいぶ楽になりました。翻訳家志望のみなさん、是非こういった便利なツールを使って、すばらしい未訳の本を発掘してくださいね。(み)
| 発 行: | NIFTY SERVE 文芸翻訳フォーラム・やまねこ翻訳クラブ |
| 発行人: | 小野仙内(文芸翻訳フォーラム・マネージャー) |
| 編集人: | 宮坂宏美(やまねこ翻訳クラブ・スタッフ) |
| 企 画: | 河まこ キャトル くるり Chicoco どんぐり BUN ベス YUU りり ワラビ |
| 協 力: | ながさわくにお HAROU SUGO わんちゅく こべに |
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