※2月の通常号は休刊致します。次回は2016年3月号です。どうぞお楽しみに! ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 号外    =====☆                    ☆=====   =====◆   月 刊  児 童 文 学 翻 訳   ◆=====    =====☆   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ☆=====                                      #24 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ◆児童文学翻訳学習者による、児童文学翻訳学習者のための、電子メール版情報誌◆ ◆http://www.yamaneko.org/                        ◆ ◆編集部:mgzn@yamaneko.org     2016年1月15日発行 配信数 2560 無料◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●号外 もくじ● ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◎速報1:2016年 ニューベリー賞/コールデコット賞/プリンツ賞発表!! ◎速報2:2015年度 コスタ賞児童書部門発表!! ◎賞速報 ◎イベント速報 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●速報1●2016年 ニューベリー賞/コールデコット賞/プリンツ賞発表!! ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  1月11日朝8時(現地時間)よりボストンにて、アメリカで最も権威ある児童文学 賞、ニューベリー賞/コールデコット賞の発表が行われた。これらの賞は、米国図書 館協会(ALA: American Library Association)が、前年にアメリカで出版された子 どもの本の中で、最も優れた作品に対して贈るものである。  同時に、ヤングアダルト(YA)作品を対象とするマイケル・L・プリンツ賞の発 表も行われた。この賞の主催は米国図書館協会(ALA)のヤングアダルト部門 (YALSA: Young Adult Library Services Association)である。 ▼ALA 公式ウェブサイト http://www.ala.org/home/ ▼YALSA 公式ウェブサイト http://www.ala.org/yalsa/ ▼各賞の受賞作品・オナー(次点)一覧ページ(ALA内) http://www.ala.org/news/press-releases/2016/01/american-library-association-announces-2016-youth-media-award-winners ▼ALA Youth Media Awards ウェブキャスト            (発表の様子がオンタイムで流された。現在も視聴できる) http://ala.unikron.com/2016/  各賞の受賞作品、およびオナー作品は以下の通り。 【ニューベリー賞】(作家対象)  ★Winner  "Last Stop on Market Street" written by Matt de la Pena,            illustrated by Christian Robinson (G. P. Putnam's Sons)                  (「Pena」の「n」の上にティルデ(~)がつく)  ☆Honor Books(3作)  "The War that Saved My Life" by Kimberly Brubaker Bradley                        (Dial Books for Young Readers)  "Roller Girl" by Victoria Jamieson (Dial Books for Young Readers)  "Echo" by Pam Munoz Ryan (Scholastic Press)                  (「Munoz」の「n」の上にティルデ(~)がつく)  2016年のニューベリー賞は、YA小説で高い評価を受けている Matt de la Pena の "Last Stop on Market Street" に贈られた。絵本2作目となる本書は、画家を対 象としたコールデコット賞のオナーにも選ばれている。毎週日曜日、小さな男の子 CJ とおばあちゃんの決まりごとは、バスに乗ってあるところに出かけること。とこ ろが今日の CJ は不満ばかり。やれ雨でぬれるのは嫌だだの、どうしてうちには車が ないのだの、携帯音楽プレーヤーがほしいだの……。そのたびに、おばあちゃんがや さしく諭すように、人生をより美しいものにするための、物事の捉え方を教えてくれ る。また、同じバスに乗り合わせた人たちとの出会いや、外を行き交う人々から、さ まざまな人生があることにも、男の子は気づいていく。おそらく裕福ではないであろ う CJ とおばあちゃん。2人が目的地に着いたとき、本当の豊かさとはなにか、深く 考えさせられる。  オナーには3作品が選ばれた。歴史小説に定評のある Kimberly Brubaker Bradley の "The War that Saved My Life" は、第2次世界大戦下のイギリスが舞台。右足が 重度の内反足であるため、家に閉じ込められ、母親から虐待を受けてきた少女 Ada。 弟の学童疎開を機に、Ada は母親から逃げ出す決意を固める。新たな地で姉弟を受け 入れてくれた女性の無償の愛に触れるも、母親の精神的支配の影響は根強く、Ada が 本当の自由を手にいれるまでには、長い時間がかかるのだった。少女の一人称の語り 口で、家族やアイデンティティについて描いた1冊だ。シュナイダー・ファミリーブ ック賞 Middle School 部門も同時受賞。  "Roller Girl" は絵本作家 Victoria Jamieson が手がけた初めてのグラフィック ノベル。12歳の少女 Astrid は、ローラーダービーというローラースケートのチーム 競技に魅せられ、いつも一緒だった親友と離れて、夏のキャンプに参加する。独りき りで新しい世界に飛びこんだものの、思うようにはいかないうえに、親友との距離も 開いてしまう。葛藤の日々を送りながら、主人公はたくましく成長していく。作者自 身の競技経験が生かされた意欲作だ。  絵本や低学年向けのシリーズを含む、数多くの児童文学作品を世に送り出している Pam Munoz Ryan。今回オナーに選出された "Echo" は、5つの物語で構成された長編 作品だ。差別や貧困に立ち向かう少年少女たちの姿を通して、音楽の持つ大きな力が 描かれている。ナチス政権下のドイツ、大恐慌時代のペンシルベニア州など、各物語 の舞台は異なる。けれども音楽に対する愛と、謎めいたハーモニカが、物語と物語を 結びつけていく。それぞれの運命と物語が複雑に絡み合い、まるでオーケストラの深 い響きが聞こえてくるような、重層的で壮大な物語に仕上がっている。  今年のニューベリー賞は、絵本、グラフィックノベル、600ページ近い大作など、 バラエティ豊かなものが並んだ。ジャンルや形態に縛られず、良いものは良いと主張 しているかのようなラインアップだ。これまで読んでこなかったジャンルに手を伸ば す絶好の機会となりそうだ。 《参考》 ▼ニューベリー賞公式ウェブサイト http://www.ala.org/alsc/awardsgrants/bookmedia/newberymedal/newberymedal ▼Matt de la Pena 公式ウェブサイト http://mattdelapena.com/ ▼Kimberly Brubaker Bradley 公式ウェブサイト http://www.kimberlybrubakerbradley.com/ ▼Victoria Jamieson 公式ウェブサイト http://www.victoriajamieson.com/ ▼Pam Munoz Ryan 公式ウェブサイト http://www.pammunozryan.com/ ▽ニューベリー賞受賞作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室) http://www.yamaneko.org/bookdb/award/us/newbery/index.htm                                 (森井理沙) 【コールデコット賞】(画家対象)  ★Winner  "Finding Winnie: The True Story of the World's Most Famous Bear"          illustrated by Sophie Blackall, written by Lindsay Mattick                          (Little, Brown and Company)  ☆Honor Books(4作)  "Trombone Shorty" illustrated by Bryan Collier, written by Troy Andrews                       (Abrams Books for Young Readers)  "Waiting" by Kevin Henkes (Greenwillow Books)  "Voice of Freedom: Fannie Lou Hamer, Spirit of the Civil Rights Movement"       illustrated by Ekua Holmes, written by Carole Boston Weatherford                              (Candlewick Press)  "Last Stop on Market Street" illustrated by Christian Robinson,               written by Matt de le Pena (G. P. Putnam's Sons)                  (「Pena」の「n」の上にティルデ(~)がつく)  今年のコールデコット賞は、今から100年ほど前に実在したクマ、ウィニーを題材 とした絵本 "Finding Winne: The True Story of the World's Most Famous Bear" に贈られた。誰もが知る「クマのプーさん」のモデルとなった子グマの物語だ。ウ ィニーは第1次世界大戦のさなか、カナダの軍医によって保護され、連隊のマスコッ ト的な存在となった。数年後、ウィニーはイギリスの動物園に寄贈され、そこへあの クリストファー・ロビンがやってくる。この出会いこそが、プーさんの物語誕生のき っかけとなった。著者の Lindsay Mattick は、ウィニーを保護したカナダの軍医の ひ孫に当たる女性だ。物語は、Lindsay が息子にベッドタイムストーリーとしてウィ ニーのお話をするかたちで進んでゆく。Sophie Blackall が手掛けたイラストは、水 彩絵の具とペンを使って細部まで丁寧に仕上げられ、色鮮やかで美しい。表紙には軍 医とウィニー、裏表紙にはクリストファー・ロビンとぬいぐるみのクマが描かれ、ウ ィニーとプーさんの深いつながりが感じられる。  オナーには4作品が選ばれた。"Trombone Shorty" は、アメリカのトロンボーン奏 者 Troy Andrews が書いた自伝的絵本だ。幼くしてトロンボーンを手にした彼は、ど のようにして世界的ミュージシャンになったのか。Bryan Collier の力強い写実的な 絵から、トロンボーンのパワフルな音が聴こえてくるようだ。Collier は、これまで にもアフリカ系アメリカ人を描いた絵本を数多く手掛けており、今年のコレッタ・ス コット・キング賞画家部門を受賞している。なお、コールデコット賞オナーに選ばれ るのは4度目だ。  "Waiting" の Kevin Henkes は、2005年に "Kitten's First Full Moon"(『まん まるおつきさまをおいかけて』小池昌代訳/福音館書店)でコールデコット賞を受賞 している。本作では窓辺に置かれたおもちゃたちの世界を描く。彼らが心待ちにして いるのは、窓の外に見える月、雨、風、雪。そこへある日、新しいおもちゃがやって きて……。淡い色彩と、スペースをたっぷりとったイラストの配置で表現される穏や かな時間。おもちゃたちの出会いと別れを通して「命」を感じさせる構成も見事だ。  "Voice of Freedom: Fannie Lou Hamer, Spirit of the Civil Rights Movement" はアフリカ系アメリカ人の市民活動家、Fannie Lou Hamer の生涯を散文詩形式でつ づった作品だ。本作で絵本デビューを果たした Ekua Holmes が描くイラストは、新 聞紙、地図、楽譜などを組み合わせた力強いコラージュで、どんな困難にもくじけな かった Hamer の強い意志を物語っている。なお、本作は今年のロバート・F・サイバ ート知識の本賞オナーにも選ばれたほか、コレッタ・スコット・キング賞 John Steptoe New Talent Illustrator Award(新人画家賞)も受賞している。  "Last Stop on Market Street" のイラストを手掛けたのは Christian Robinson だ。アクリル絵の具でくっきりと仕上げたカラフルな絵で、主人公がバスで出会うバ ラエティに富んだ乗客たちが印象的。本作は今年のニューベリー賞を受賞したほか、 コレッタ・スコット・キング賞画家部門オナーにも選ばれた。物語については、ニュ ーベリー賞の項を参照していただきたい。  今年は実話をモチーフにした作品が多く入賞した。特に、オナーにはアフリカ系ア メリカ人のイラストレーターによるテーマ性の強い作品が目立つ。今まで知らなかっ た歴史、音楽などの世界に興味をもつきっかけとなりそうだ。 《参考》 ▼コールデコット賞公式ウェブサイト http://www.ala.org/alsc/awardsgrants/bookmedia/caldecottmedal/caldecottmedal ▼Sophie Blackall 公式ウェブサイト http://www.sophieblackall.com/ ▼Bryan Collier 公式ウェブサイト http://www.bryancollier.com/ ▼Kevin Henkes 公式ウェブサイト http://www.kevinhenkes.com/ ▼Ekua Holmes 公式ウェブサイト http://www.ekuaholmes.com/ ▼Chirstian Robinson 公式ウェブサイト http://theartoffun.com/ ▽コールデコット賞受賞作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室) http://www.yamaneko.org/bookdb/award/us/caldecot/index.htm ▽ブライアン・コリアー作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室) http://www.yamaneko.org/bookdb/author/c/bcollier.htm ▽ケヴィン・ヘンクス作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室) http://www.yamaneko.org/bookdb/author/h/khenkes.htm                                 (安田冬子) 【プリンツ賞】(YA作品対象)  ★Winner  "Bone Gap" by Laura Ruby (Balzer + Bray)  ☆Honor Books(2作)  "Out of Darkness" by Ashley Hope Perez (Carolrhoda Lab)             (「Perez」の最初の「e」の上にアクセント(´)がつく)  "The Ghosts of Heaven" by Marcus Sedgwick (Roaring Brook Press)  プリンツ賞は、作品の分野や作者の居住地に制限がなく、前年にアメリカで出版さ れたYA作品なら、過去に他国で出版された作品も対象となる。  受賞作 "Bone Gap" は、大人から子どもまで幅広い年代向けの小説を発表している Laura Ruby による作品。イリノイ州の小さな町ボーン・ギャップで、美しい少女 Roza が失踪したが、誰も奇妙には思わない。不思議な出来事がしばしば起こる町は、 「裂け目(Gap)」があるといわれているからだ。Roza と暮らしていた18歳の少年 Finn は、彼女が謎の男に連れ去られたところを目撃したが、なぜかその男の顔を思 い出せない。誰にも誘拐を信じてもらえない中で、Finn は Roza を探し始める。複 数の視点で語られる、現実と架空の世界を融合したミステリアスなストーリーで、 2015年全米図書賞児童書部門でも最終候補に選ばれている。  オナーには2作が選ばれた。"Out of Darkness" は、1937年にテキサス州で起きた 歴史的大惨事、ニューロンドン学校爆発事故を背景に描かれるフィクション作品。根 強い人種差別が人々を分断する町で、メキシコ系の少女 Naomi と黒人の少年 Wash は禁じられた恋に落ちる。描かれるテーマは差別、愛、家族、そして破壊。不寛容な 社会を覆う憎悪の闇の中、愛し合うふたりは希望の光を見つけられるのか――? ラ テンアメリカ文学の研究者でもある作者の Ashley Hope Perez は比較文学の博士号 を持ち、現在はオハイオ州立大学の教壇に立っている。  "The Ghosts of Heaven" は、2014年に "Midwinterblood" で同賞を受賞した Marcus Sedgwick の作品。旧石器時代の少女から始まる物語は、魔女狩りの迫害を受 ける Anna に受け継がれ、時代が進み20世紀の海を見つめる狂気の詩人、さらには舞 台を未来に移し宇宙船で新世界を目指す Keir Bowman の姿へとつながっていく。4 つの異なる時空間で紡がれる物語が、強迫的ともいえる「らせん」のイメージのもと でひとつに結びつき、その渦の中に読者をとらえて離さない。2014年度コスタ賞児童 書部門ショートリスト作品。  今年のプリンツ賞候補にはシリアスな力作がそろった。人間の本質を見据え、読者 に多くを考えさせるこれらの作品を、次世代の若者たちに手渡す意義は大きいと感じ る。 《参考》 ▼プリンツ賞公式ウェブサイト http://www.ala.org/yalsa/printz/ ▼Laura Ruby 公式ウェブサイト http://www.lauraruby.com/ ▼Ashley Hope Perez 公式ウェブサイト http://ashleyperez.com/ ▼Marcus Sedgwick 公式ウェブサイト http://www.marcussedgwick.com/ ▽マイケル・L・プリンツ賞受賞作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室) http://www.yamaneko.org/bookdb/award/us/printz/                            (井原美穂/小島明子) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●速報2●2015年度 コスタ賞児童書部門発表!! ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  2016年1月4日、2015年度コスタ賞各部門の受賞作品が発表された。この賞は、英 国とアイルランドに居住する作家が書いた作品の中から、最も優れたものに贈られる。 児童書部門を含め、全5部門から成る。  本年度の児童書部門受賞作品およびショートリスト作品は以下の通り。 2015 Costa Children's Book Award  ★Winner  "The Lie Tree" by Frances Hardinge (Macmillan Children's Books)  ☆Shortlist  "Sophie Someone" by Hayley Long (Hot Key Books)  "An Island of Our Own" by Sally Nicholls (Scholastic)  "Jessica's Ghost" by Andrew Norriss (David Fickling Books)  受賞作の "The Lie Tree" は、"Fly by Night" で2006年ブランフォード・ボウズ 賞を受賞した Frances Hardinge による歴史ファンタジーである。舞台は19世紀の英 国。14歳の少女 Faith は、家族とともに孤島へ移ってきた。ところがある日、牧師 で科学者の父が謎の死を遂げる。不審に思った Faith は父の身辺を探り、彼が隠し ていた木に不思議な力があることを発見する。その木は、うそをささやかれると成長 し、隠された真実を暴露する実をつけるのだ。うそが大きいほど、そして信じる人が 多いほど、重要な真実がわかる。Faith はこの木を使って父の死の真相を突きとめよ うと、島じゅうにうそを広めていくが、やがて収拾がつかなくなり……。暗く、ミス テリアスな雰囲気とともに、ヴィクトリア朝社会における女性の地位、進化論と宗教 の対立、うそが及ぼす力など、意味深いテーマを描いた渾身の1作。2015年ガーディ アン賞のショートリストに選ばれ、2016年カーネギー賞にもノミネートされている。  ショートリストに選ばれたのは、以下の3作品。  "Sophie Someone" の作者 Hayley Long は、2012年にも本賞のショートリストに選 ばれた人気作家で、現役教師でもある。主人公は14歳の少女 Sophie。4歳の時に英 国からベルギーへ引っ越したが、その理由は知らされていなかった。やがて父親から 真実を聞き、自分の信じていたものが崩れ、大きなショックを受ける。小さい時から つづりを書くのが苦手な Sophie は、自分なりの暗号を使いながら、親友に、そして 読者に心の内を打ち明ける。暗号を解く楽しみとともに、笑いと涙を誘うハートウォ ーミングな作品。  Sally Nicholls の "An Island of Our Own" は、家族愛をテーマにした物語で、 希望と勇気にあふれている。両親を亡くした12歳の少女 Holly は、18歳の兄と6歳 の弟の3人だけで暮らしていたが、生活はとても苦しかった。そんな時、裕福で偏屈 な大おばが倒れたため見舞いに行くと、何枚かの写真を手渡される。大おばの死後、 写真の場所に遺産の宝石が隠されていると確信した Holly たちは、宝探しに出発す る。子どもたちの貧しい生活に胸が痛むが、語り口はユーモラスで明るい。著者のデ ビュー作 "Ways to Live Forever" は、2009年に邦訳出版されている(『永遠に生き るために』野の水生訳/偕成社)。  "Jessica's Ghost" の作者 Andrew Norriss は、"Acuila"(『秘密のマシン、アク イラ』原田勝訳/あすなろ書房)で、1997年ウィットブレッド賞(現コスタ賞)を受 賞した児童文学作家。中学生の少年 Francis が、同じ年頃の幽霊 Jessica に出会う。 Jessica の姿は Francis にしか見えない。2人は親友になり、とても楽しい時を過 ごした。やがて Jessica の姿が見える友だちがもう2人増え、なぜ彼らだけに Jessica が見えるのかという疑問がわく。心を揺さぶるその答えとは――。子どもた ちの友情をコミカルかつ感動的に描く作者の本領が、ここでも存分に発揮されている。  今年度のコスタ賞は、ショートリストを含め、いずれも受賞経験のある実力派ぞろ いとなった。それぞれの作家が自身の持ち味を生かして、愛と希望、誠実であること の大切さを見事に描き出している。世界が不安定な今だからこそ、こういう作品をぜ ひ子どもたちに届けたい。 《参考》 ▼コスタ賞公式ウェブサイト https://www.costa.co.uk/costa-book-awards/welcome/ ▼Frances Hardinge 公式ウェブサイト http://www.franceshardinge.com/ ▼Haylay Long 公式ウェブサイト http://www.hayleylong.org/ ▼Sally Nicholls 公式ウェブサイト http://www.sallynicholls.com/ ▼Andrew Norriss 公式ウェブサイト http://www.andrewnorriss.co.uk/ ▽コスタ賞受賞作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室) http://www.yamaneko.org/bookdb/award/uk/whit/index.htm ▽コスタ賞児童書部門(本誌1999年5月号情報編「世界の児童文学賞」) http://www.yamaneko.org/mgzn/dtp/1999/05.htm#a1bungaku                                 (牛原眞弓) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●賞速報● ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★2016年スコット・オデール賞発表 ★2016年ロバート・F・サイバート知識の本賞発表 ★2016年ローラ・インガルス・ワイルダー賞発表 ★2016年コレッタ・スコット・キング賞発表 ★2016年シュナイダー・ファミリーブック賞発表 ★2016年セオドア・スース・ガイゼル賞発表 ★2016年プーラ・ベルプレ賞発表  海外児童文学賞の書誌情報を随時掲載しています。「速報(海外児童文学賞)」を ご覧ください。 http://www.yamaneko.org/cgi-bin/sc-board/c-board.cgi?id=award ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●イベント速報● ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★展示会情報  東松島市図書館「世界の子どもの本展」  ブロンズ新社・青銅Room J「『ヨクネルとひな』酒井駒子絵本原画展」 など ★講座・講演会情報  サンクリスタル高松「翻訳で日本の文化を海外へ そのプロセスと意義」  せんだいメディアテーク       「イギリスの絵本作家エミリー・グラヴェット―絵に生きる」 など  詳細やその他のイベント情報は、「速報(イベント情報)」をご覧ください。なお、 空席状況については各自ご確認願います。 http://www.yamaneko.org/cgi-bin/sc-board/c-board.cgi?id=event                           (冬木恵子/山本真奈美) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●お知らせ●  本誌でご紹介した本を、各種のインターネット書店で簡単に参照していただけます。 こちらの「やまねこ翻訳クラブ オンライン書店」よりお入りください。 http://www.yamaneko.org/info/order.htm  本号の html 版を1月17日に公開予定です。以下の URL よりお入りください。 http://www.yamaneko.org/mgzn/bncorner.htm#html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▽▲▽▲▽   海外児童書のシノプシス作成・書評執筆を承ります   ▽▲▽▲▽   やまねこ翻訳クラブ(yagisan@yamaneko.org)までお気軽にご相談ください。 PR━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━     ☆☆ FOSSIL 〜 Made in USA のライフスタイルブランド ☆☆  独創的なデザインで世界120ヶ国以上で愛用されているフォッシルはアメリカを代 表するライフスタイルブランドです。1984年、時計メーカーとして始まったフォッシ ルは時計をファッションアクセサリーのひとつと考え、カジュアルでポップなライン からフォーマルなシーンにも使えるアイテムまで、年間300種類以上のモデルを発売 し続けています。またフォッシル直営店では、時計以外にもレザーバッグや革小物な どのラインを展開しています。 TEL 03-5992-4611 http://www.fossil.com/      (株)フォッシルジャパン:やまねこ賞協賛会社 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 発 行 やまねこ翻訳クラブ 編集人 蒲池由佳/三好美香(やまねこ翻訳クラブ スタッフ) 企 画 赤塚きょう子 井原美穂 植村わらび 牛原眞弓 大作道子 尾被ほっぽ     岡田衣央 加賀田睦美 かまだゆうこ くどうあきこ 小島明子 児玉敦子     相良倫子 手嶋由美子 冬木恵子 増山麻美 森井理沙 安田冬子     山本真奈美 協 力 出版翻訳ネットワーク 管理人 小野仙内     からくっこ くらら SUGO ながさわくにお みーこ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ・このメールマガジンは、「まぐまぐ」( http://www.mag2.com/ )を利用して配信 しています。購読のお申し込み、解除もこちらからどうぞ。 ・バックナンバーは、http://www.yamaneko.org/mgzn/ でご覧いただけます。 ・ご意見・ご感想は mgzn@yamaneko.org までお気軽にお寄せください。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ◆無断転載を禁じます。