◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 2012年3月号    =====☆                    ☆=====   =====★   月 刊  児 童 文 学 翻 訳   ★=====    =====☆   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ☆=====                                 No.138 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ◆児童文学翻訳学習者による、児童文学翻訳学習者のための、電子メール版情報誌◆ ◆http://www.yamaneko.org                         ◆ ◆編集部:mgzn@yamaneko.org     2012年3月15日発行 配信数 2370 無料 ◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●2012年3月号もくじ● ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◎特集:ニューベリー賞/コールデコット賞 オナー(次点)作品レビュー  "Inside Out & Back Again" タンハー・ライ作  『どうぶつがすき』 パトリック・マクドネル文・絵/なかがわちひろ訳 ◎特別企画:2012年国際アンデルセン賞の候補者たち その2  "Gemici Dedem" セビム・アク作 ◎賞速報 ◎イベント速報 ◎お菓子の旅:第58回 修道院で生まれたかわいいお菓子 〜パステル・デ・ナタ〜 ◎読者の広場 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●特集●ニューベリー賞/コールデコット賞 オナー(次点)作品レビュー ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  1月23日、米国図書館協会(ALA)から発表された、今年のニューベリー賞/コ ールデコット賞のオナー作品レビュー2本をお届けする。  本誌1月号外の速報記事は、こちら。 http://www.yamaneko.org/mgzn/dtp/2012/01g.htm **************************************************************************** "Inside Out & Back Again"『ふるさとを失って』(仮題) by Thanhha Lai タンハー・ライ作 HarperCollins Children's Books, 2011, 262pp. ISBN 978-0061962783 ★2012年ニューベリー賞オナー作品 ★2011年全米図書賞児童書部門受賞作品  主人公キム・ハーはベトナム戦争末期のサイゴンに暮らす10歳の女の子。家族は母、 技術者を目指し勉強中の長兄、ブルース・リーを敬愛する次兄、動物好きの三兄。父 は軍の任務中に北ベトナム軍に捕らえられ消息不明で、ハーは父親の顔を写真で知る のみだ。母は伝統的な風習を大切にしながら、女手ひとつで子どもたちを育ててきた。 ハーのささやかな楽しみは、種から育てているパパイヤの成長や、おつかいで小銭を 工面しての買い食いだ。そんな中、戦闘は次第にサイゴンへ近づいていた。親友は家 族そろって町を去った。食糧はますます不足し、物価はあがる一方だ。ついに学校が 閉鎖され、爆撃の音がさらに間近に迫ると、母はとうとう南ベトナム脱出を決意した。 大切なパパイヤの木をはじめ、なれ親しんだ全てを残して脱出船に乗りこんだ直後、 サイゴンは陥落し、国は失われてしまう。息詰まる船上生活を経て、一家は難民とし てアメリカにわたり、アラバマで新しい生活を始める。周囲の偏見と憐れみのまなざ しに耐え、言葉の壁や風習の違いを乗り越えようと、ハーはもがき苦しむが――。  本書は1975年のテト(ベトナムの新年祭)から翌年のテトまで、ハーの激動の1年 を描いた物語。詩の形式でつづった日記というのが特徴だ。作者自身ベトナム難民で あり、その実体験が作品の元になっている。ベトナム語のリズムを残しつつ、その年 ごろの語彙で主人公の感情を表現しようと、作者は心がけたという。選び抜かれた言 葉で語られる少女の胸の内と、行間にこめられた言葉にならない気持ち、その両方が 痛いほど伝わってきた。  辛くもアメリカに逃れたハーだが、戦争当時のサイゴンへ戻りたいとたびたび願う。 それは学校初のアジア人として、名前や容姿などを執拗にからかわれ、いじめられる せいだけではない。これまで培ってきたなにもかもがゼロになり、自分がまるでばか になったかのように感じられ、それが聡明な少女には耐えられなかったのだ。それだ けに、サイゴンで学んだ知識で、いじめっこにひと泡ふかせた場面では爽快さととも に、救いを覚えた。喪失を乗り越え、アメリカを新たな故郷にしようと力を合わせて いくハーたち。明るい未来を願わずにはいられない。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 【作】Thanhha Lai(タンハー・ライ):1965年ベトナム生まれ。ベトナム戦争末期、 10歳で難民として米国にわたる。テキサス大学を卒業し、カリフォルニア州の新聞社 に2年間勤務した後、小説執筆を志す。自伝的な作品である本書でデビューし、高い 評価を受けた。次回作は現代が舞台。ベトナム移民2世の少女が、ひと夏のベトナム 暮らしを強いられる物語を執筆中。夫と一人娘とともに、ニューヨーク在住。 【参考】 ▼タンハー・ライ紹介ページ(HarperCollins Publishers 内) http://www.harpercollins.com/author/microsite/?authorid=36544 ▼タンハー・ライのインタビュー(School Library Journal 内) http://www.schoollibraryjournal.com/slj/home/893040-312/the_inside_story_it_took.html.csp                                 (森井理沙) **************************************************************************** 『どうぶつがすき』 パトリック・マクドネル文・絵/なかがわちひろ訳 あすなろ書房 定価1,575円(税込) 2011.09 40ページ ISBN 978-4751525463 "Me...Jane" by Patrick McDonnell Little, Brown and Company, 2011 ★2012年コールデコット賞オナー作品  お話の主人公はジェーン。お気に入りのチンパンジーのぬいぐるみジュビリーと一 緒に、外で遊ぶのが大好きな女の子だ。外の世界には生き物がいっぱい。ジェーンは 動物や虫や植物と触れ合ったり、じっと観察したりしては、自然の不思議を感じて、 そのすばらしさに心おどらせる。そしていつしか夢みるようになった。ターザンみた いにアフリカに住みたいな。困っている動物がいたら、助けてあげたいな。  ジェーンとは実在の人物ジェーン・グドール博士のこと。チンパンジーが道具を使 うこと、作ることを発見した動物行動学者であり、国連平和大使でもある。作者マク ドネルは温かみのあるアイボリー色の紙に、淡い色彩でジェーンやジュビリーをかわ いらしく描くと同時に、動物や植物などをモチーフにした写実的な版画も、数多くち りばめている。異国の動物たちに思いをはせてファンタジーの世界に遊びながら、自 然に関する知識を熱心に吸収していたジェーンの子ども時代が、このユニークな構成 でうまく表現されている。  動物が大好きで、たくさんの動物と仲よくなりたい、もっと彼らのことを知りたい と思い続け、そのとおりの道を進んだジェーン。解説によれば、実際には夢の実現に 至るまでの道のりは決して平坦ではなかったらしい。けれどもジェーンの夢が夢で終 わらなかったのは、幼い頃に芽生えた「どうぶつがすき」という気持ちを、ずっと抱 き続けてきたからだろう。物語のラスト、研究者となったジェーン・グドール博士と 小さな相棒の写真を目にして、胸が熱くなった。  巻末にはジェーンから読者へのメッセージが寄せられている。「ひとりひとりがど う生きるかによって、世界はかわっていくのです」という言葉を、しっかりと心に留 めたい。「この地球を人間と動物、すべての命にとって、よりよい場所にしていこう 」とよびかけるジェーンは、幼いころ夢みていたとおりに、動物や自然のために精力 的に活動している。情熱とあきらめない心があれば、夢はきっとかなうはず。大きな 夢を抱くすべての子どもたち、そして大人たちを応援してくれる絵本だ。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 【作】パトリック・マクドネル(Patrick McDonnell):1956年米国生まれ。スクー ル・オブ・ビジュアル・アーツで美術を学ぶ。代表作のコミック "Mutts" は20か国 700の新聞に掲載され、多くの賞を受賞。2005年より絵本も手がけ、邦訳作品に『お くりものはナンニモナイ』(谷川俊太郎訳/あすなろ書房)、『ハグタイム』(覚和 歌子訳/同上)などがある。 【訳】なかがわ ちひろ(中川千尋):絵本作家、翻訳家。1958年生まれ。東京芸術 大学美術学部卒業。最近の訳書に『ぼくのゆきだるまくん』(アリスン・マギー文/ マーク・ローゼンタール絵/主婦の友社)、『いちばんのおくすり』(ジュリー・ア イグナー・クラーク文/ジャナ・クリスティ絵/金の星社)などがある。創作作品も 多数。 【参考】 ▼パトリック・マクドネルの絵本紹介ページ(Hachette Book Group 内) http://www.hachettebookgroup.com/features/patrickmcdonnell/ ▼ジェーン・グドール・インスティテュート・ジャパン公式ウェブサイト http://www.jgi-japan.org/ ▽中川千尋(なかがわ ちひろ)作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室) http://www.yamaneko.org/bookdb/int/ls/cnakagaw.htm                                 (佐藤淑子) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●特別企画●2012年国際アンデルセン賞の候補者たち その2 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  3月12日に、2012年国際アンデルセン賞の候補者のなかから、ショートリスト5名 ずつが発表された。作家賞のショートリストは、Maria Teresa Andruetto(アルゼン チン)、 Paul Fleischman(アメリカ)、Bart Moeyaert(ベルギー)、Jean-Claude Mourlevat(フランス)、Bianca Pitzorno(イタリア)、画家賞は、Mohammad Ali Beniasadi(イラン)、John Burningham(イギリス)、Roger Mello(ブラジル)、 Peter Sis(チェコ)、Javier Zabala(スペイン)であった。栄えある受賞者は、来 たる3月19日、ボローニャ・ブックフェアの会場で行われる会見で、国際児童図書評 議会(IBBY)が発表する予定である。  本誌今月号では、2011年11月号に続き、作家賞候補者の中からトルコの作家、セビ ム・アクをご紹介する。普段なかなか触れることのない英語圏以外の、また、日本で は未紹介の作家である。         (「Maria」の「i」と「Sis」の「i」の上の点はアクセント記号) 【参考】 ▼国際児童図書評議会(IBBY)公式ウェブサイト http://www.ibby.org/ ▼2012年国際アンデルセン賞ショートリストおよび候補者リスト(IBBY内) http://www.ibby.org./index.php?id=1186&L=0.html ▽国際アンデルセン賞について(本誌1999年10月号情報編) http://www.yamaneko.org/mgzn/dtp/1999/10a.htm#a1bungaku ▽国際アンデルセン賞受賞者リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室) http://www.yamaneko.org/bookdb/award/andersen/index.htm ▽本誌2009年9月号「特別企画:2010年国際アンデルセン賞の候補者たち」 http://www.yamaneko.org/mgzn/dtp/2009/09.htm#kikaku ▽本誌2011年11月号「特別企画:2012年国際アンデルセン賞の候補者たち その1」 http://www.yamaneko.org/mgzn/dtp/2011/11.htm#kikaku **************************************************************************** 〜セビム・アク(トルコ)〜 『海から帰ってきたおじいちゃん』(仮題) セビム・アク作 "Gemici Dedem" by Sevim Ak, 2007 Can Cocuk Yayinlari, ISBN 978-9750708657(Turkey) 83pp. (このレビューは、2011年に出版された版を参照して書かれています)  ぼくのパパは、理想のパパからは程遠い。すぐに機嫌が悪くなるし、ぼくのことが かわいくてたまらないって感じじゃないんだ。「おまえは拾ってきた子だ」って、本 当か冗談かわからない調子で言ったりする。そういえば、ぼくとパパは似ていない。 ぼく、パパの本当の子どもなのかなあ。パパは、ぼくのこと愛してくれてるのかなあ。  大雪が降った日、年とった男の人がぼくの家をたずねてきた。そのあと、パパの様 子がおかしくなった。もしかしてあの男の人がぼくの本当のパパで、「息子を返せ、 さもなくば金を払え」なんて脅しにきたのかもしれない。でも、道でばったり会った その人は、とても感じのいいおじいさんだった。ずっと船に乗っていたけれど、年を とったので陸にあがって年金暮らしを始めたところらしい。海の話をたくさんしてく れるし、絵の描き方も教えてくれる。ぼくは「船乗りおじいさん」って呼ばせてもら うことにした。そんなある日、おじいさんの家が嵐で吹き飛ばされてしまって……。  父親と息子がしっくりいかない背景には、父と祖父の行き違いがあった。父が幼い 頃、祖父は船長として海を渡りあるき、妻と子どものいる家庭に戻らなくなった。死 んだと長年思ってきたのに、今さら受け入れることのできないかたくなな父と、一度 捨てた家族に対して申し訳なく思うようになった祖父。その間をなんとか取り持とう と、孫が奮闘する。  テーマは深刻に思えるが、子どもに語らせることで、ユーモアあふれるあたたかな 雰囲気になっている。主人公の「ぼく」は、父親についてあれやこれやと愚痴をこぼ したり、「脅迫されているのかも」「殺人事件かも」などと、次々と妄想をふくらま せたりする。おっちょこちょいなところもあるが、生き生きとした魅力的な語り手だ。 こうした子どもの視点を大事にした作品作りは、セビム・アクの得意とするところ。 読者の子どもたちは、主人公を自分にひきつけて共感することだろう。  仲直りが進まない中、祖父の絵から父の小さな頃の記憶がよびさまされる――「か わいいアザラシぼうや」とかわいがってもらったっけ。それをきっかけに「ぼく」と 父とここまで影の薄かった母親との、楽しいひと時が訪れる。心温まる秀逸な場面だ。  本書にはベヒッチ・アクのユーモアあふれる個性的なカラーの挿絵が多く用いられ ており、作品の雰囲気作りに一役買っている。作者の本の多くにイラストを描いてい るベヒッチはセビムの実の兄弟であり、トルコの著名なイラストレーターだ。自身も 物語を書き、過去に絵本が日本で紹介されたこともある。 【セビム・アク(Sevim Ak)について】  トルコ共和国、黒海沿いの都市サムスン生まれ。少女時代から、毎日の生活の中で 見聞きしたこと・考えたことをノートにつづって、観察眼と書く力を養っていたとい う。大学では生化学を修め、研究員として働きだすも、子ども向け物語への情熱を捨 てられずに書き続けていた。新聞や雑誌に作品を紹介する機会を得たのち、1987年に 初の短編集 "Ucurtmam Blut Simdi" を出版。これまでに短編集や100ページ前後の物 語など、主に小学生向けの作品を多数発表してきた。  1999年に起きたトルコ北西部地震のあと、子どもたちのトラウマと悲しみをやわら げるために立ち上げられたリハビリ・プロジェクトでは、アクの作品が教材に用いら れた。また、2000年からはじまった移動体験プロジェクトでは、アク本人も、地方を まわって、紛争で一時期閉校になっていた学校、教師の数が不足している学校、図書 館のない学校などを訪れ、子どもたちに物語を読んだり一緒に物語を作ったりして、 読書活動を励まし続けた。他にも社会的な活動に積極的に参加している。  2009年にはアストリッド・リンドグレーン記念文学賞の候補者となり、また自身が 文章を書いた絵本 "Kirik Semsiye"(Huban Korman 絵)と "Kucuk Sirlar"(Gozde Bitir Sindirgi 絵)が、2008年と2010年のIBBYオナーリストに挙げられるなど、 ここ数年、国際的に注目を集めているセビム・アク。今回初めて国際アンデルセン賞 作家賞の候補者となった。これまでに4作品が、韓国、ドイツ、エジプトで翻訳出版 されているが、日本ではまだ紹介されていない。 【参考】 ▼セビム・アク公式ウェブサイト http://www.sevimak.com/ 【特殊文字】 「Cocuk」の最初の「C」の下にセディーユがつく 「Yayinlari」のすべての「i」に点はつかない 「Ucurtmam」の「c」の下にセディーユがつく 「Simdi」の「S」の下にセディーユがつく 「Kirik」のふたつの「i」に点はつかない 「Semsiye」の最初の「S」の下にセディーユがつく 「Kucuk」のふたつの「u」の上にウムラウト(¨)、「c」の下にセディーユがつく 「Sirlar」の「i」に点はつかない 「Gozde」の「o」の上にウムラウト(¨)がつく 「Sindirgi」の全ての「i」に点はつかない                                (植村わらび) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●賞速報● ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★2012年チルドレンズ・ブック賞受賞作品発表 ★2012年ニュージーランド・ポスト児童図書賞候補作品発表                     (受賞作品の発表は、5月16日の予定) ★2012年ゴールデン・カイト賞およびシド・フライシュマン賞発表 ★2011年度アガサ賞児童書及びヤングアダルト部門候補作品発表                     (受賞作品の発表は、4月28日の予定) ★2012年度IBBYオナーリスト発表 ★2012年ボローニャ・ラガッツィ賞発表 ★2012年国際アンデルセン賞ショートリスト発表  海外児童文学賞の書誌情報を随時掲載しています。「速報(海外児童文学賞)」を ご覧ください。 http://www.yamaneko.org/cgi-bin/sc-board/c-board.cgi?id=award ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●イベント速報● ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★展示会情報  青森県立美術館「フィンランドのくらしとデザイン―ムーミンが住む森の生活展」  石川県七尾美術館「ハンス・フィッシャーの世界展」 など ★講演会情報  岩手県立美術館「末森千枝子氏特別講演会」  教文館 子どもの本のみせ ナルニア国   「ブライアン・オルダーソン氏来日講演会」 など ★イベント情報  鎌倉文学館「おはなし会 角野栄子―『魔女の宅急便』とわたし」 など  詳細やその他のイベント情報は、「速報(イベント情報)」をご覧ください。なお、 空席状況については各自ご確認願います。 http://www.yamaneko.org/cgi-bin/sc-board/c-board.cgi?id=event                            (笹山裕子/冬木恵子) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●お菓子の旅●第58回 修道院で生まれたかわいいお菓子 〜パステル・デ・ナタ〜 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ "When do you play footy next?" she asks, as we eat these idiotic little things called Portuguese Tarts. "If it's on a Saturday morning, I could come and watch, as I usually run early then do weights in the afternoon."                     "Jarvis 24" by David Metzenthen                        Penguin Books Australia(2009) -*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*  引用はフッティー(オーストラリアで使われている、ラグビーの愛称)の試合を控 えた高校生の主人公が、付き合い始めたガールフレンドとカフェでおしゃべりしてい る場面から。ここに登場する Portuguese Tarts はポルトガルの伝統菓子、パステル ・デ・ナタのことです。サクサクのパイ皮と、とろりとしたカスタードクリームのコ ンビネーションが絶妙。2、3口で食べられるかわいらしいサイズですが、スポーツ 少年には小さすぎて、不満ありげな様子です。  パステル・デ・ナタの発祥地は、ポルトガルの首都リスボンにあるベレン地区だと いわれています。ポルトガルでは1820年に自由主義革命が勃発、多くの修道院が閉鎖 されました。そのときベレン地区のジェロニモス修道院を追われた修道者たちは、生 活の糧を得るため隣接するサトウキビ精製所で甘いパイを焼き、食料品店で売り出し ました。これがたちまち評判を呼び、パスティス(パステルの複数形)・デ・ベレン (ベレンのパイ)の名は港町リスボンから各地へと広まっていったのです。1837年に は、ある事業家がレシピを買い取って地元で菓子店を創業。その後パステル・デ・ベ レンはこの店の人気商品、カスタードパイの固有名詞として使われ、他で売られてい るものはパステル・デ・ナタ(クリームパイ)と呼ばれるようになりました。この店 は今もジェロニモス修道院から歩いて5分ほどの場所にあり、長蛇の列ができる老舗 として人気を誇っています。オリジナルのレシピは200年間、選ばれた職人のみに受 け継がれ、生地とクリームはシークレット・ルームという作業部屋で極秘に作られて いるそうです。  今回は、マフィン型を使ったシンプルなレシピをご紹介します。ちょっと濃いめの コーヒーと一緒に、カフェにいる気分で召し上がれ。 *-* パステル・デ・ナタの作り方 *-* 材料(直径7cm、深さ2.5cmのマフィン型6個分)  市販のパイシート   2〜3枚  型に塗るバター(またはマーガリン) 適量  牛乳           100cc  コーンフラワー(または小麦粉) 大さじ1  砂糖            50g  卵                 1個  生クリーム        100cc  バニラエッセンス        小さじ1/4  パイ用重し(なければ乾燥した小豆、大豆などで代用)          適量 1.パイシートを直径約9cmの円型に切り、バターかマーガリンを塗ったマフィン型   に入れて、形を整える。 2.10cm四方に切ったクッキングシートをそれぞれの生地の上におき、ふくらみすぎ   ぎないようにパイ用の重しをのせて200度のオーブンで約15分、うすいきつね色   がつくまで空焼きし、その後粗熱をとる。 3.鍋にコーンフラワーと少量の牛乳を入れ、なめらかになるまで混ぜ合わせてから、   残りの牛乳とバニラエッセンスを加える。 4.別のボウルに砂糖と卵黄を入れて3を加えた後、濾しながら鍋に戻す。 5.さらに生クリームを加えて弱火にかけ、とろみがつくまで混ぜる。 6.5のクリームを、空焼きしたパイに注ぐ。 7.200度のオーブンで15分から20分焼く。しっかり焦げ目をつけたいときは、この   後オーブントースターを使って表面を焼いてもよい。 8.焼き上がったら約5分そのまま冷まし、型から取り出す。 ★参考図書・ウェブサイト "Piri Piri Star Fish" by T. Kiros(Murdock Books, 2008) "Cuisines of Portuguese Encounters" by Cherie Y. Hamilton                          (Hippocrente Books, 2001) Pasties de Belem 公式ウェブサイト (Pasties の e と Belem の2つ目の e の上にアクセント記号が付く) http://pasteisdebelem.pt/                    (かまだゆうこ/冬木恵子/加賀田睦美) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●読者の広場● 海外児童文学や翻訳にまつわるお話をどうぞ! ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  このコーナーでは、本誌に対するご感想・ご質問をはじめ、海外児童書にまつわる お話、ご質問、ご意見等を募集しています。mgzn@yamaneko.org までお気軽にお寄せ ください。 ※メールはなるべく400字以内で、ペンネームをつけてお送りください。 ※タイトルには必ず「読者の広場」とお入れください。 ※掲載時には、趣旨を変えない範囲で文章を改変させていただく場合があります。 ※質問に対するお返事は、こちらに掲載させていただくことがあります。原則的に編 集部からメールでの回答はいたしませんので、ご了承ください。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●お知らせ●  本誌でご紹介した本を、各種のインターネット書店で簡単に参照していただけます。 こちらの「やまねこ翻訳クラブ オンライン書店」よりお入りください。 http://www.yamaneko.org/info/order.htm  本号の html 版を3月18日に公開予定です。以下の URL よりお入りください。 http://www.yamaneko.org/mgzn/bncorner.htm#html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━            ・☆・〜 次 号 予 告 〜・☆・  詳細は10日頃、やまねこ翻訳クラブHPメニューページに掲載します。           http://www.yamaneko.org/info/index.htm  どうぞお楽しみに! ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▽▲▽▲▽   海外児童書のシノプシス作成・書評執筆を承ります   ▽▲▽▲▽   やまねこ翻訳クラブ(yagisan@yamaneko.org)までお気軽にご相談ください。 PR━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━      ☆☆ FOSSIL 〜 Made in USA のライフスタイルブランド ☆☆  独創的なデザインで世界100ヶ国以上で愛用されているフォッシルはアメリカを代 表するライフスタイルブランドです。1984年、時計メーカーとして始まったフォッシ ルは時計をファッションアクセサリーの一つと考え、カジュアルな「TREND」ライン からフォーマルなシーンにも使える「CERAMIC」など、年間300種類以上のモデルを発 売し続けています。またフォッシル直営店では、時計以外にもレザーバッグ、革小物、 ファッションサングラスなどのラインも展開しています。 TEL 03-5992-4611 http://www.fossil.co.jp/     (株)フォッシルジャパン:やまねこ賞協賛会社 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。           吉田真澄の児童書紹介メールマガジン              「子どもの本だより」      http://www.litrans.net/maplestreet/kodomo/info/index.htm  。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。 PR━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★☆       出版翻訳ネットワーク・メープルストリート       ☆★         http://www.litrans.net/maplestreet/index.htm 新刊情報・イベント情報などを掲載いたします。詳細はmaple2003@litrans.netまで。        出版翻訳ネットワークは出版翻訳のポータルサイトです ★☆★☆★☆★☆★☆★☆ http://www.litrans.net/ ★☆★☆★☆★☆★☆★☆★ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ =- PR -=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=      ★☆メールマガジン『海外ミステリ通信』 隔月15日発行☆★           http://www.litrans.net/whodunit/mag/ 未訳書から邦訳新刊まで、あらゆる海外ミステリの情報を厳選して紹介。翻訳家や 編集者の方々へのインタビューもあります!    〈フーダニット翻訳倶楽部〉 =-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=- PR -= ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ *=*=*=*=*=*= やまねこ翻訳クラブ発行メールマガジン&ウェブジン =*=*=*=*=*=* ★やまねこアクチベーター(毎月20日発行/無料)   やまねこ翻訳クラブのHOTな話題をご提供します!                  http://www.yamaneko.org/mgzn/acti/index.htm *=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=* ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●編集後記●今年もニューベリー賞とコールデコット賞オナー作品のレビューを掲載 できたことをうれしく思います。国際アンデルセン賞受賞者発表も間近に迫り、目が 離せません。春の風物詩ともいえるボローニャ・ブックフェアでの発表とともに、日 本も春らしくなるといいですね。(お) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 発行人 井原美穂(やまねこ翻訳クラブ 会長) 編集人 大作道子/植村わらび/蒲池由佳(やまねこ翻訳クラブ スタッフ) 企 画 赤間美和子 尾被ほっぽ 加賀田睦美 かまだゆうこ 児玉敦子 笹山裕子     佐藤淑子 冬木恵子 村上利佳 森井理沙 協 力 出版翻訳ネットワーク 管理人 小野仙内     ながさわくにお ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ・このメールマガジンは、「まぐまぐ」( http://www.mag2.com/ )を利用して配信 しています。購読のお申し込み、解除もこちらからどうぞ。 ・バックナンバーは、http://www.yamaneko.org/mgzn/ でご覧いただけます。 ・ご意見・ご感想は mgzn@yamaneko.org までお気軽にお寄せください。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ◆無断転載を禁じます。