※こちらは「書評編」です。「情報編」もお見逃しなく!! ※8月は定期休刊です。次回は2004年9月号になります。どうぞお楽しみに! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● 2004年7月号(書評編)    =====☆                    ☆=====   =====★   月 刊  児 童 文 学 翻 訳   ★=====    =====☆   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ☆=====                                  No.62 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●児童文学翻訳学習者による、児童文学翻訳学習者のための、電子メール版情報誌● ●http://www.yamaneko.org/                        ● ●編集部:mgzn@yamaneko.org     2004年7月15日発行 配信数 2340 無料● ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●2004年7月号(書評編)もくじ● ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◎注目の本(邦訳絵本):〈ガラスのうし モリーのおはなし〉シリーズ             『モリーは にんきもの』                        アントニオ・ヴィンチェンティ作 ◎注目の本(邦訳読み物):『ダルシマーを弾く少年』                トア・セイドラー作/ブライアン・セルズニック絵 ◎注目の本(未訳絵本):"Bob Robber and Dancing Jane"                 アンドリュー・マシューズ文/ビー・ウィリー絵 ◎注目の本(未訳読み物):"Sisterland"        リンダ・ニューベリー作 ◎Chicoco の親ばか絵本日誌:第28回「こんな子になりました」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●注目の本(邦訳絵本)●ガラスの体はミルクと謎と魅力でいっぱい?! ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 〈ガラスのうし モリーのおはなし〉シリーズ 『モリーは にんきもの』 アントニオ・ヴィンチェンティ作/杉本詠美訳 少年写真新聞社 定価840円(税込) 2004.04 16ページ "Molly, The Glass Cow" by Antonio Vincenti Penerbitan Pelangi Sdn, 2003  めうしのモリーはなんと、体がガラスでできている。うんと用心しないと割れちゃ うよ、とまわりに心配されるけど、当のモリーはいたってのんき。だいたい、すけす けのガラスの体はいいことずくめなのだ。ことりがつっつけば、キロンコロンときれ いな音がなるし、ミルクがどれだけ溜まったかもひと目でわかる(!)。不思議で素 敵なガラスのめうしはにんきもの。「みんな、モリーが だーいすき」。  読み聞かせにぴったりな絵本『モリーは にんきもの』が今年4月に出版された。 訳者は、おはなし会の活動に熱心に取り組んでいらっしゃる杉本さん。私は幸運にも、 杉本さん自身がこの絵本を子どもたちに読み聞かせる場に居合わせることができた。 そこで驚いたのが(杉本さんの語りの力と)この絵本の実力。なにしろ、最初に「ガ ラスのうし、モリー」と言っただけで、子どもたちは興味津々、「ごはんを食べたら どうなるのかな」なんて口々に言いはじめる。ガラスの体の謎は、あっという間にみ んなを物語の世界に引き込んでくれるのだ。お話のほどよい短さも、子どもたちには いいらしい。本書はシリーズ全4冊のうちの1冊目で、巻末に「モリーのえほんは、 ほかにもあるよ! さがしてみてね!」と書いてある。杉本さんがそこを読むと、み んなきょろきょろ。さっそく探しはじめた、というわけ。もっと聞きたい、と思わせ るこの内容と長さは、聞き手にはもちろん、読み手にもうれしい。  このシリーズは親子で読んだり、ひとりで読んだりするのにもおすすめだ。17cm× 21cmというコンパクトなサイズからいくと、そういった読み方をすることで、さらに この絵本に親しめるかもしれない。たとえば、各ページにさりげなく出てくるチョウ や鳥の小さなかわいいイラストをじっくり探すのも楽しい。  モリーの絵本には、子どもの本にとってかけがえのないものが備わっている。ほの ぼのとしたお話からも、子どものお絵かきを思わせる素朴でシンプルな線にカラフル な色のやさしい絵からも、「安心感」を得ることができるのだ。ちなみに、物語では、 なぜモリーはガラスの体なのか、という謎は特に解き明かされない――が、まあいい か、と思えてしまう。これはそんな愛嬌も備えた絵本だ。                                (田中亜希子) ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 【文・絵】Antonio Vincenti(アントニオ・ヴィンチェンティ):イタリア、サンフ ェルチアーノ在住。ペルージャ大学で語学と文学を学び、のちに創作の道に入る。キ リスト教的なテーマの絵本を中心に、子ども向けの作品を発表している。同じく絵本 作家である妻のシルヴィア・ヴェッキーニとの共作も多い。〈ガラスのうし モリー のおはなし〉シリーズは、本書のほかに、『モリーと まいごの なかまたち』『モ リーの なつやすみ』『モリー テレビに でる』がある。マレーシアで出版された このシリーズは、当初英語、マレー語、中国語の3か国語で発行された。その後日本、 タイと続き、近くインドネシアでも翻訳出版される。 【訳】杉本詠美(すぎもと えみ):広島県出身。広島大学で国語学国文学を専攻。 やまねこ翻訳クラブ会員。会員有志による「おはなしこねこの会」のメンバーとして、 また二男一女の母として、書店や子どもの通う小学校などで読み聞かせの活動を行っ ている。本シリーズ4冊は翻訳デビュー作。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●注目の本(邦訳読み物)●双子の兄弟を幸せに導く、甘美で懐かしい音色 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 『ダルシマーを弾く少年』 トア・セイドラー作/ブライアン・セルズニック絵/大島英美訳 ポプラ社 定価1375円(税込) 2004.05 175ページ "The Dulcimer Boy" by Tor Seidler, illustrations by Brian Selznick HarperCollins Children's Books, 2003  双子のウィリアムとジュールは、赤ちゃんのときに母親を亡くし、カーバンクル家 に引き取られた。養父母の目的は周囲に慈善をひけらかすことだけ。兄弟は愛情を注 がれることもなく、最低限の世話しか受けられないまま大きくなった。弟のジュール は言葉を話さず、兄のウィリアムには葉に文字を書いて思いを伝えている。兄は弟を かばい、守りながら暮らしていた。  ウィリアムはある日、ダルシマーという楽器に触れた。兄弟がこの家に届けられた 時、一緒に柳行李に入っていたものだった。夢中で弾き方を練習するウィリアム。旋 律は不思議なほどわき出てくる。どことなく懐かしい音色を聞くと、元気のないジュ ールも目を輝かせる。しかし、株で損をしたカーバンクル氏は、ダルシマーに価値が あると知ると、兄弟の願いを無視して売ろうとする。ダルシマーと引き離されること に耐えられないウィリアムは、ダルシマーを手に屋敷から逃げ出した。やっとのこと でたどりついた酒場では、客寄せのために軟禁状態で演奏を強いられ、ジュールのも とに戻ることもできない。しかし、ウィリアムの演奏する悲しくも甘い旋律は、彼を さまざまな出会いへと導いていく。  ウィリアムは運命に流されて生きてきたように見えるが、決してそうではない。ダ ルシマーを持って逃げ出したのも、カーバンクル家へ戻るのも、自分の意志で決めた こと。初めは階段の上で小さくなってダルシマーを弾いていた少年が、ラストシーン では力強く光の中を歩いていく。その後ろ姿には、さまざまな経験で得た自信が感じ られる。きっとこのあとも、ダルシマーとともに、自分の生きる道を切り開きながら、 強く逞しく生きていくのだろう。  ダルシマーの語源は、ラテン語で「甘美な旋律」を意味するのだそうだ。耳にした ことはないが、きっと美しいだろうその音色に浸ってみたい気分になった。                                 (井原美穂) ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 【作】トア・セイドラー:米国ニューハンプシャー州生まれ。スタンフォード大学で 英文学を学ぶ。27歳で本書を発表後、現在まで20年以上にわたってアメリカを代表す る児童文学作家となっている。邦訳作品に『10万ドルの大作戦 ニューヨークのネズ ミ』(作家名表記T・シードラー/フレッド・マルチェリーノ絵/きったかゆみえ訳 /金の星社)などがある。代表作のひとつ "Mean Margaret" は、1997年全米図書賞 児童書部門最終候補作となった。ニューヨーク在住。 【訳】大島英美(おおしま えみ):NJFK(Not Just For Kid's Books)コミッ ティを通して、英語の本を翻訳や書評など様々な形で紹介。東京広尾でキッズブック スという店舗の経営にも携わる。他の翻訳作品に『おじいさんの旅』(アレン・セイ 文・絵/ほるぷ出版)がある。 【参考】 ◇トア・セイドラー作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室) http://www.yamaneko.org/bookdb/author/s/tseid.htm ◇ブライアン・セルズニック作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室) http://www.yamaneko.org/bookdb/author/s/bslznck.htm ◆キッズブックス http://www.kidsbks.co.jp/top.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●注目の本(未訳絵本)●闇の盗人が抱いた淡い恋心 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 『盗み屋ボブと 踊るジェーン』(仮題) アンドリュー・マシューズ文/ビー・ウィリー絵 "Bob Robber and Dancing Jane" text by Andrew Matthews, illustrations by Bee Willey Red Fox 2004, ISBN 0099433974 (PB) 30pp. ★2003年度ケイト・グリーナウェイ賞ショートリスト作品  この絵本を初めて手にしたとき、表紙の幻想的な絵に、これからどんな世界が待っ ているのだろうと心を躍らせた。ところが最初のページをめくると、そこにはあまり にも深い闇の世界が広がっていた。その闇の中に、ひっそりとボブ・ロバーが描かれ る。大切なものを何でも奪うという盗み屋ボブ――。そして次のページでは一転、そ の姿がクローズアップされる。わずかに緑味を帯びた灰白色の肌が、黒を背景に独特 の白さで浮かび上がり、首筋や肩には蜘蛛の巣がからみついている。暗い描写に半ば ショックを受けながら、さらにページを繰った。そのときの気持ちは忘れない。ああ、 なんとほっとしたことだろう……。  月の美しい夜、ボブはひとりの少女に恋をした。雪のように白いドレスを身にまと い、月の光を浴びて踊るジェーンは、ボブの心にほのかな灯りをともした――あの娘 (こ)と踊りたい。けれども生きる世界のちがうボブにとって、それは叶わぬ願いだ った。ボブの頬を涙が伝う。その涙の粒をガラス細工のようにハートの形に削り、道 に置き、藪の中で待つ……。そしてジェーンがハートを拾おうと立ち止まったそのと き、ボブは背後から忍び寄り、ジェーンの影を奪い去ったのだ! 静かな明るさは消 え、再び闇の世界へ……。でももうそこに、それまでのような暗さはない。ボブの顔 には、いつしか赤みが差していた。  この絵本は、ボブの心の変化、そしてこれから起きようとするできごとの予兆を、 色の持つイメージをふんだんに利用して丹念に表現している。日ごとに変わるジェー ンのドレスの色(これにはあるテーマが隠されている)、ボブのTシャツに徐々に浮 かび上がる模様の変化など、細部にいたるまで心配りがなされているのだ。そしてな んといってもこの絵本の醍醐味は、前半の闇が、後半に展開される光の世界を、劇的 なまでに引き立てているところにあるといえるだろう。画家ビー・ウィリーの繊細か つ大胆な感性が生みだす、そのコントラストと色彩の美しさを、ぜひ心ゆくまで堪能 してほしい。                                 (清水陽子) ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 【文】Andrew Matthews(アンドリュー・マシューズ):1948年、英国ウェールズ生 まれ。1970年にレディング大学を卒業後、ハンプシャーの中等学校で英語教師を務め る。在職中から執筆活動を行い、1994年に児童文学作家に転身。創作をはじめ、アン デルセン童話の再話などにも力を注いでいる。"Cat Song"(illustrations by Allan Curless)が1994年スマーティーズ賞の候補作に選ばれた。レディング在住。 【絵】Bee Willey(ビー・ウィリー):英国バース・アカデミー・オブ・アート(現 バース・スクール・オブ・アート・アンド・デザイン)を1985年に卒業後、有名雑誌 や新聞への寄稿をはじめ、イラスト関連のさまざまな活動を精力的にこなしながら、 20冊以上の絵本を出版。最新作は、コンビを組んだジェーン・エイキンの遺作でもあ る "The Wooden Dragon" だ。サフォーク在住。 【参考】 ◆ビー・ウィリーの公式サイト(Illustration 社サイト内) http://www.illustrationweb.com/BeeWilley/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●注目の本(未訳読み物)●愛と憎しみは時代を越えて ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 『シスターランド――断ち切れない絆――』(仮題) リンダ・ニューベリー作 "Sisterland" by Linda Newbery David Fickling Books 2003, ISBN 038560470X 370pp. ★2003年度カーネギー賞ショートリスト作品  現代のイギリス人少女ヒリーをめぐる物語の間に、第2次世界大戦直前にドイツか らイギリスへ疎開した、ユダヤ人少女サラの物語が挿入されている。2つの物語はや がてひとつに結びついていく。  ヒリーの祖母、ハイジおばあちゃんはドイツ出身。第2次大戦中に孤児になり、戦 後イギリスへ来たらしい。アルツハイマー病を発症して一人暮らしができなくなった ため、ヒリーの家族に引き取られた。おばあちゃんは最近のことはすぐに忘れるのに、 昔のことはよく覚えていて、ユダヤ人は悪者だからつきあうなと言い、ドアに鍵をか けないと怖い人たちが入ってくると慌てる。そしてヒリーのことを、ときおり、レイ チェルと呼ぶ。レイチェルとは誰なのか? ある日、ヒリーは、祖母の持ち物の中に、 自分に似た少女の写真を見つける。写真の裏にはレイチェルと書いてあった。  おばあちゃんに部屋を譲ったため、ヒリーは妹のゾーイと同じ部屋で暮らすことに なった。2人は年齢は近いが、外見も性格も正反対で、よく衝突する。ゾーイのバン ド仲間の、民族差別的な言動をする青年たちをヒリーは嫌い、ゾーイがその中の1人 と親密な交際をしているのを心配するが、ゾーイに堅物だとばかにされる。そんな中、 ヒリーはパレスチナ人の青年と知り合い、お互いに強く惹かれる。  舞台は一転して1939年5月。ユダヤ人の少女サラは家族と別れ、ドイツからイギリ スに疎開してきた。ドイツではユダヤ人というだけで迫害されたが、イギリスの学校 でもいじめの対象となり、サラはユダヤ的なものを嫌い始める。けんかしたまま別れ た姉、レイチェルが恋しくなり、イギリスに呼び寄せようと計画するが……。  現代と第2次大戦前の2つの時間軸に、アルツハイマー、ホロコースト、民族紛争、 思春期の恋愛、同性愛、姉妹の愛憎、家族の秘密……と、盛りだくさんの要素が織り 込まれている。ヒリーの恋の行方も気になって、特に後半は一気に読んだ。近いから かえって憎しみが生まれ、憎みながらも心の底では相手を想っている――そんな複雑 な姉妹の関係が、民族や国同士の関係にもなぞらえてある。物語終盤でのヒリーの決 断が、そんな関係に変化を与えてくれることを願ってやまない。                               (赤塚きょう子) ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 【作】Linda Newbery(リンダ・ニューベリー):1952年、英国エセックス州生まれ。 子ども向けやYA向けの作品を20冊以上発表しており、邦訳に『口笛ジャックをおい かけて』(長滝谷富貴子訳/矢島眞澄絵/文研出版)がある。前作 "The Shell House" は2002年度カーネギー賞、ガーディアン賞の両方でショートリストに入った。 ノーサンプトン在住。 【参考】 ◆リンダ・ニューベリーの公式サイト http://www.lindanewbery.co.uk/ ◇リンダ・ニューベリー作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室) http://www.yamaneko.org/bookdb/author/n/lnewbery.htm ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●Chicoco の親ばか絵本日誌●第28回「こんな子になりました」   よしいちよこ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  近ごろのしゅんは悪ぶっています。「おれがやったる。かせ」などと命令口調でい ばります。『いたずら王子バートラム』(アーノルド・ローベル作/ゆもとかずみ訳 /偕成社)を読みました。昔ある国に王子が生まれました。王子はあまりいい子では なく、まわりの人や動物を困らせてばかりいました。ある日、飛んでいる鳥をぱちん こでねらい、みごとに命中! しかし、それは鳥ではなく魔女でした。怒った魔女は 王子をりゅうに変えてしまいました。りゅうになった王子は話そうとしても口から火 が出るばかり。ほかの子どもたちに笑われ、悲しくなってひとり森に旅だちます……。 なんともにくたらしい王子の絵を見て、わたしが「わー、しゅんみたいに悪そうだな あ」というと、しゅんは「おれのほうがかわいい顔や」と一言(いつもは「かわいい っていうな。かっこいいっていえ」というのに)。しゅんは「おれもりゅうになりた い。おかあさん、りゅうにして」といいました。「魔女じゃないからできないよ」と いうと、「この本に呪文がのってたやん。それでやってみてよ」。わたしに無理だと わかると、自分で「アラガビン」と呪文を連発し、変化を待ちます。わたしの鼻を指 さし、「アラガビン」といい、じっと見てから、「ほら、へんな鼻になった」。……。 『はじめてのたまご売り』(ラスカル文/イザベル・シャトゥラール絵/中井珠子訳 /BL出版)を読みました。姉さんどりたちが産んだ卵をかごに入れて、妹どりのオ リビアが売りに行きます。TGVで野を越え山を越え、花の都パリに着きました。と ころが、オリビアが買い物や観光を楽しんでいるうちに、たまご市は終わってしまい ました。次のたまご市まで1か月、オリビアはホテルにとまって、パリを堪能。さて、 たまご市の日、かごのなかがなんだか騒がしい……。この本をしゅんは父親と先に読 んだことがありました。そのため、わたしと読んでいると、結末がいいたくてしかた がありません。何度も「この本な、最後にな――」と口をはさみます。わたしは「最 後を先にいったらおもしろくないよ」としゅんの口をおさえました。しゅんは「うひ ひ」と笑って、手のすきまから「最後にたまごがな――むっちゃいっぱいな――かわ いいのがな――」と大声でいってしまいました。やれやれ……。  さて「親ばか絵本日誌」は今月号で最終回とさせていただきます。2000年6月号か ら始まり、はや4年。あらためて読みかえすと、息子の成長に感動します(最後まで 親ばかですみません)。このような機会を与え、支えてくださった、歴代編集長をは じめ、現編集長、スタッフのみなさんには言葉にできないほど感謝しています。また 長期にわたり私的なばかばかしい連載を読んでくださった読者のみなさまに心から感 謝申し上げます。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●お詫び●  6月号、注目の本(邦訳読み物)『ロラおばちゃんがやってきた』の作者紹介文で、 「全米児童協会」とあるのは、「全米児童図書協会」の誤りでした。お詫びして訂正 いたします。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●お知らせ●  本誌でご紹介した本を、各種のインターネット書店で簡単に参照していただけます。 こちらの「やまねこ翻訳クラブ オンライン書店」よりお入りください。 http://www.yamaneko.org/info/order.htm  本号の html 版を7月18日に公開予定です。以下の URL よりお入りください。 http://www.yamaneko.org/mgzn/bncorner.htm#html PR━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ☆☆ FOSSIL 〜 Made in USA のカジュアルウオッチ ☆☆ 「FOSSILは化石って意味でしょ?レトロ調の時計なの?」。いえいえ、これは創業者 の父親がFOSSIL(石頭、がんこ者)というあだ名だったことから誕生したブランド名。 オーソドックスからユニークまで様々なテイストの時計がいずれもお手頃価格で揃い ます。レトロといえば、時計のパッケージにブリキの缶をお付けすることでしょうか。 数十種類の絵柄からお好きなものをその場で選んでいただけます。選ぶ楽しさも2倍 のフォッシルです。 TEL 03-5428-3701 http://www.fossil.com       (株)フォッシルジャパン:やまねこ賞協賛会社 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▽▲▽▲▽  海外児童書のシノプシス作成・書評執筆を承ります  ▽▲▽▲▽ やまねこ翻訳クラブ( info@yamaneko.org )までお気軽にご相談ください。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ =- PR -=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=      ★☆メールマガジン『海外ミステリ通信』 毎月15日発行☆★                http://www.litrans.net/whodunit/mag/           未訳書から邦訳新刊まで、あらゆる海外ミステリの情報を厳選して紹介。翻訳家や 編集者の方々へのインタビューもあります! 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