※こちらは「書評編」です。「情報編」もお見逃しなく!! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● 2000年11月号(情報編) =====☆ ☆===== =====★ 月 刊 児 童 文 学 翻 訳 ★===== =====☆  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ☆===== No.25 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●児童文学翻訳学習者による、児童文学翻訳学習者のための、電子メール版情報誌● ●http://www.nifty.ne.jp/forum/flitrans/yamaneko/mgzn/      ● ●編集部:yamaneko-mgzn@office-ono.com 2000年11月15日発行 配信数 1950 無料● ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●2000年11月号(書評編)もくじ● ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◎訃報:ロバート・コーミア ◎速報:2000年 カナダ総督文学賞発表 ◎注目の本(邦訳絵本):ぺトラ・マザーズ文/絵『ローザからキスをいっぱい』 ◎注目の本(邦訳読み物):パトリシア・マクラクラン作『海の魔法使い』 ◎注目の本(未訳読み物):フィリパ・ピアス作 "The Rope and Other Stories" ◎Chicoco の親ばか絵本日誌:第5回「親子2代で読みつぐ本」(よしいちよこ) ◎本誌バックナンバー補遺――邦訳情報―― ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●訃報●ロバート・コーミア ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  11月2日、アメリカのヤングアダルト(YA)文学の代表的作家であるロバート・ コーミアが、血栓による合併症のため亡くなった。「身近な題材にこそドラマがある」 と、生まれ故郷であるマサチューセッツ州レミンスタから居を移すことなく、75年の 生涯を終えた。  コーミアがYA作家としての地位を確立した作品は、1974年発表の "Chocolate War" (『チョコレート戦争』/坂崎麻子訳/集英社、『チョコレート・ウォー』/ 北澤和彦訳/扶桑社)。徹底したリアリズムに基づいた苦い結末が賛否両論を呼んだ が、若い読者から圧倒的な支持を得て読み継がれ、現在ではYA文学の古典的作品と もいわれている。以後寡作ながら、 "Fade" (『フェイド』/北澤和彦訳/扶桑 社)、 "In the Middle of the Night" (『真夜中の電話』/金原瑞人訳/扶桑社) など、ホラー、ミステリーの手法も用いて、困難な現実に立ち向かい、自己を模索す る若者の姿を描いた作品を世に送り出していた。  年齢を重ねてなお、10代の視点と心を持ち続け、厳しいストーリーであっても瑞々 しさをたたえた物語を発表し続けたコーミア。75歳という年齢は決して若くはないが、 7月にはイギリスを訪問し、次作についても語っていただけに、その突然の死が惜し まれてならない。  なお、コーミアの詳しい経歴については、本誌9月号書評編「作家紹介シリーズ: ロバート・コーミア」を参照のこと。                                 (森久里子) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●速報●2000年 カナダ総督文学賞発表 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  11月10日、カナダの歴史ある文学賞、カナダ総督文学賞が発表された。授賞式は14 日。児童書部門(Children's Literature)の受賞者は以下の通り。 Governor-General's Awards for Children's Literature Text and Illustration ★物語(Text) 英語 Deborah Ellis for "Looking for X" (Groundwood Books) 仏語 Charlotte Gingras for "Un e(´)te(´) de Jade" (Les e(´)ditions de la courte e(´)chelle) ★絵(Illustration) 英語 Marie-Louise Gay for "Yuck, a Love Story" text by Don Gillmor (Stoddart Kids) 仏語 Anne Villeneuve for "L'E(´)charpe rouge" text by Anne Villeneuve (Les e(´)ditions Les 400 coups)    ※アクサン・テギュ(´)は、直前の文字の上につく。 ◇参考:この賞を主催するカナダ・カウンシルの発表記事  http://www.canadacouncil.ca/news/pressreleases/co0043-e.asp ◆カナダ総督文学賞の詳細については、本誌1999年12月号「世界の児童文学賞」の記 事をご参照ください。ホームページでもごらんいただけます。 http://www.nifty.ne.jp/forum/flitrans/yamaneko/mgzn/dtp/1999/12a.htm ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●注目の本(邦訳絵本)●温かい思いやりが心に染みる絵本 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━              ぺトラ・マザーズ文/絵『ローザからキスをいっぱい』     遠藤育枝訳 2000.9.20 BL出版 本体1,400円 Petra Mathers "Kisses from Rosa" 1995    ローザは、おかあさんが結核で入院中、都会の家を離れて遠い農場のおばさんの家 にあずけられることになった。農場では、ムーキーおばさんといとこのビルギットが、 ローザを温かく迎えいれ、農場主のシュミット夫妻をはじめ、まわりのだれもがロー ザをかわいがってくれる。ベリーつみをしてジャムをつくったり、りんごを地下室に しまったりと、農場生活は珍しいことや楽しいことでいっぱいだ。でも、いつもロー ザはおかあさんからの手紙を一生懸命待っていて、手紙が届かないと悲しい気持ちに なる。ローザも日曜日ごとに、おばさんに手伝ってもらって手紙を書き、茶目っ気た っぷりにイメージしたキスをいれて送った。おかあさんの鼻をくすぐるエスキモーの キス、さえずりながらする鳥のキス、ちょっぴり痛いライオンのキス……。  これは、作者の小さいころの経験をもとにつくられた絵本である。ローザが農場で 過ごした夏、秋、冬が、落ちつきのある豊かな色彩で描かれている。母子が別れる場 面で、ローザに優しくまわしたおかあさんの柔らかそうな手。緑に囲まれた夏と雪に 埋もれた冬の、ため息が出そうに美しい農場風景。かわいらしいローザの手紙の絵、 こまごまと描かれた部屋の内部など、魅力的なページばかりだ。  小さな子が親と離れて知らない土地で暮らすとなれば、心細くて胸がつぶれそうだ ろう。ローザも初めは涙をこぼしがちだった。けれど、しだいに農場の暮らしにとけ こんでゆく。ローザが辛い気持ちを忘れて元気に過ごせたのは、まわりの人たちの思 いやりに包まれていたから。この絵本に出てくる人たちはみな、ユーモアがあって、 ほんわかと温かい。特に、おかあさんから手紙のこないとき明るく慰めてくれる郵便 配達のオットーさんの優しさは心に染みいり、目頭を熱くさせる。おばさんの家で、 ローザはおかあさんがいなくて寂しかったけれど、それ以上に人から温かい思いやり をたくさんもらった。農場で暮らした日々は、大切な思い出としてローザの心にしっ かりと刻まれたにちがいない。  見返しには、幼いころのマザーズ本人と、家族や農場の人たちの写真が載っている。 絵本にいっそうの親しみを持つとともに、当時を偲ぶ作者の深い思いを強く感じた。     (三緒由紀) ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 【作者】Petra Mathers(ぺトラ・マザーズ):ドイツのシュヴァルツヴァルト(黒 い森)生まれ。1986年、"Maria Theresa" でエズラ・ジャック・キーツ賞を受賞する。 また "Molly's New Washing Machine"、『ぼくのお気にいり〜バルビーニさんちのセ オドアくんの話』(BL出版)、"I'm Flying" の3冊は、ニューヨークタイムズ選 定・年間最優秀絵本絵画賞を受賞している。米国、オレゴン州在住。 【訳者】遠藤育枝(えんどう いくえ):1948年、京都市に生まれる。アメリカ・シ モンズ大学児童文学研究センター修士課程修了。現在、京都精華大学教員。主な訳書 に『地下鉄少年スレイク』(原生林)、『本に願いを――アメリカ児童図書週間ポス ターに見る75年史』(BL出版/産経児童出版文化賞特別推薦)、『おばあちゃんが いったのよ』(BL出版)があるほか、今江祥智と共に多数の絵本を訳している。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●注目の本(邦訳読み物)●私だけのたったひとつ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━                  パトリシア・マクラクラン作『海の魔法使い』          金原瑞人訳 中村悦子絵 2000.9.20 あかね書房 本体1,000円             Patricia MacLachlan "All the Names of Baby Hag" 1986  静かな凪のときに、その赤ちゃん魔女は生まれました。まんまるで、はだはあわい 緑。そして、きれいな、すきとおったひれに、水かきのついたちっちゃな足。姿はお ねえさんやおにいさんにそっくりですが、きまじめな海の魔法使いにはめずらしく、 生まれたときからにこにこしていました。そして、何よりみんなと違うのは、なかな か名まえがきまらないこと。  赤ちゃん魔女は、自分の名まえを自分で見つけなければなりません。魔法使いの世 界では、みんなそうするのです。おねえさんの「白雪姫」は、浜べできいた人間たち の話から、心に残った言葉を名まえにしました。おにいさんの「レックス」は、いっ しょにあそんだ大きな黒いラブラドール犬の名まえをもらいました。でも赤ちゃん魔 女は、あんな名まえも、こんな名まえも、みんな好きなのです。ひとつになんてきめ たくありません。そんな彼女にぴったりの名まえはあるのでしょうか。  いつまでも名なしの娘を心配して、ちょっとイライラしている母親。陸にあがって 名まえをさがしてきてくれる兄姉たち。赤ちゃん魔女はそんな家族の心配をよそに、 どんな名まえで呼ばれても、いつもにこにこ返事をしてしまう。似たような光景は、 どこの家庭でも見られそうだ。たとえば、もし家族の誰かがいつまでも進路をきめず にぶらぶらしていたら、きっとあれこれ口を出してしまいたくなるだろう。しかし、 彼女の父親はそうではなかった。心配している様子は見せず、穏やかにふるまいなが ら一生懸命考えていた。娘が心から望んでいる名まえ、ほかの誰ともちがう、彼女に ぴったりの名まえを。悩んでいるとき、迷っているとき、こんな父親がいてくれたら、 あせることなく自分自身と向き合うことができるかもしれない。  赤ちゃん魔女が見つけたのは「すべてのなかで、これしかない、たったひとつの名 まえ」。私たちには自分で名まえをつける必要はないけれど、《私だけのたったひと つ》に思いをめぐらせてみてはどうだろう。名まえや、肩書きや、立場だけでは表わ すことのできない、まさに自分そのものといえる何かが、きっとあるはずだから。                                (赤間美和子) ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 【作者】Patricia MacLachlan(パトリシア・マクラクラン):1938年、アメリカ、 ワイオミング州生まれ。『のっぽのサラ』(金原瑞人訳/ベネッセ)でニューベリー 賞を受賞。ほかに『草原のサラ』(こだまともこ訳/徳間書店)、『潮風のおくりも の』(掛川恭子訳/偕成社)などがある。 【訳者】金原瑞人(かねはら みずひと):1954年、岡山県生まれ。法政大学教授、 英米文学翻訳家。主な訳書に『かかし』(ロバート・ウェストール作/ベネッセ)、 『“少女神”第9号』(F・L・ブロック作/理論社)、『スウィート・メモリーズ』 (ナタリー・キンシー=ワーノック作/金の星社)などがある。 【画家】中村悦子(なかむら えつこ):1959年、群馬県生まれ。児童書の挿し絵や 絵本の分野で活躍中。主な児童書の挿し絵に、『あらし』(ケビン・クロスレー=ホ ーランド作/ほるぷ出版)、『アリスの見習い物語』(カレン・クシュマン作/あす なろ書房)、『草原のサラ』(上記)などがある。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●注目の本(未訳読み物)●緻密な作品構成と確かな描写力が冴える、珠玉の短編集 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━                フィリパ・ピアス作『ロープ』(仮題)             Philippa Pearce "The Rope and Other Stories" 117pp.   Puffin Books 2000, ISBN 0-14-130914-8 『トムは真夜中の庭で』でイギリス児童文学に大きな足跡を残したフィリパ・ピアス。 彼女の最新の短編集 "The Rope and Other stories" には、1976年以後雑誌などで発 表された作品を含む、8つの話が収められている。  デビュー作『ハヤ号セイ川をいく』で高い評価を得た後、続く『トム〜』でカーネ ギー賞作家となったピアスは、そこから先短編を書くことに心を傾けていく。BBC 放送で学校教育用の脚本を担当していた彼女は、児童用の短い話を数多く手掛けてき た。読者の心を素早く捕らえる魅力あるキャラクター作りのうまさや、短い話の中で の緻密な作品構成の妙は、まさに放送作家として磨きあげてきたもの。さらに、定評 のある卓越した描写力で情景や心理を鮮やかに描き出し、優れた短編を生みだした。  ピアスの短編集は大きく3つに分けられる。子供の日常に起こる事件を面白おかし く描いた話、幽霊などのでてくるスーパーナチュラルな話、そして彼女の長編物語を 濃縮したようなテーマ性のあるリアリズム的作品である。"The Rope and Other Stories" は、ひとつのテーマに絞って編集してあるわけではないが、全体としては 3番目のリアリズム的作品群に入る。今年岩波少年文庫に加えられた『まよなかのパ ーティー』(猪熊葉子訳)も同類の短編集だが、"The Rope 〜" の方がテーマ性がは っきりと打ち出されている。これは作家が年齢を重ねた結果だろうか。  作品をいくつか紹介してみよう。表題作 "The Rope" は少年が休暇で訪れた田舎の 祖母の家で、ある遊びに対する恐怖心に「折り合い」をつけていく話。がむしゃらに 恐怖心を「乗り越える」のではないところが現代的だ。子どもたちの遊ぶ様子の描写 が見事で、同じような体験をしたことのある人なら特別な臨場感を味わえるだろう。 "Early Transparent" では老人問題と難民問題を目の当たりにした少年の心のゆれが 描かれ、"The Fir Cone" では両親が離婚した少年が、親子3人で公園に行った甘い 思い出の謎を解く。どちらも、現代社会の問題にぶつかった子どもが自分で解決策を 見つけ出していくという内容だ。そして "Inside Her Head" は『それいけちびっこ 作戦』(百々佑利子訳/ポプラ社)の続編。病気のシムをクラッケンソープおばあさ んが見舞って、子ども時代の話を聞かせるというだけの設定だが、話の信憑性につい てのふたりの掛合いとそれに伴う心理の変化が絶妙で、思わずクスリとしてしまう。  どの作品も丹念に練られ、その描写は、例えばロープの感触が手によみがえるよう なリアリティをもつ。今年80歳を迎えたピアス、90年代は寡作な時期だったが、まだ まだその才能を発揮して、私たちをうならせる作品を書きつづけて欲しい。                                 (大塚典子) ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 【作者】 Philippa Pearce (フィリパ・ピアス):1920年、イギリス・ケンブリッ ジ州に生まれる。ガートン・カレッジ卒業。BBC放送の学校放送部で、脚本・演出 を担当。1955年、『ハヤ号セイ川をいく』(足沢良子訳/講談社)で作家としてデビ ュー。『トムは真夜中の庭で』(高杉一郎訳/岩波書店)でカーネギー賞、『ペット ねずみ大さわぎ』(高杉一郎訳/岩波書店)でホイットブレッド児童文学賞を受賞。 戦後のイギリス児童文学を代表する作家である。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●Chicoco の親ばか絵本日誌●第5回「親子2代で読みつぐ本」  よしいちよこ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  今回は昔から読みつがれている絵本を2冊紹介します。この2冊は、わたしも子ど ものころに読んだ覚えがあります。なつかしい気持ちで手にとりました。  まずは、『おおきなかぶ』(ロシア民話/A・トルストイ再話/内田莉莎子訳/佐 藤忠良絵/福音館書店)。おじいさんが植えた種が巨大なかぶになります。おじいさ んひとりではぬくことができず、つぎつぎに助っ人をよんできて、いっしょに引っぱ ります。国語の教科書にも出てくる有名な話です。しゅんが8か月ごろに読みはじめ ました。最初はとちゅうで本を閉じてばかりいましたが、だんだんなれて、1歳すぎ に最後まで聞けるようになりました。「うんとこしょ、どっこいしょ」と、わたしが 引っぱる手ぶりをつけると、しゅんもいっしょに引っぱります。1歳8か月になった 今、絵を指さしながら「じーしゃん(おじいさん)」「わんわん」「えこ(ネコ)」 などと教えてくれます。子どもむけの雑誌やテレビで同じストーリーをよく見かけま すが、不思議なことにあまりのってきません。この話ではなく、この絵本が好きなの です。地味だけど素朴で、愛敬のある絵と、のんびりしているようで、リズムの良い いいまわしに、かぶを引っぱる手ぶりが加わって、特別な楽しさが生まれるのでしょ う。  さて、もう1冊は『三びきのやぎのがらがらどん』(マーシャ・ブラウン作/せた ていじ訳/福音館書店)。小さいやぎ、中ぐらいのやぎ、大きいやぎの3匹が、山へ 草を食べに行きます。とちゅう、おそろしいトロルがすむ橋をわたらなければなりま せん。しゅんが1歳1か月ごろ、はじめていっしょに読みました。『おおきなかぶ』 と同じく、最後までじっと聞けず、何度も本を閉じて中断しました。それが、いまで はお気にいりの1冊です。わたしが「本を読もうか」というと、「どんどん(“がら がらどん”のつもりらしい)」といって、いそいそと本棚から持ってきます。わたし がトロルのせりふをおそろしげに読むと、しゅんはきゅっと肩をすくめます。近ごろ は、「トロロ(トロル)、こわい」といえるようになりました。でも、大きいやぎを 指さして「こわい」ということのほうが多いようです。そういわれて気づきましたが、 このお話、トロルもこわいけれど、やぎもこわいんですよね。子どもと本を読んでい ておもしろいのは、こういう発見ができることでしょう。次回は、発見がいっぱいの 絵本をご紹介します。お楽しみに。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●本誌バックナンバー補遺――邦訳情報――● ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  本誌バックナンバーで「未訳」としてご案内した本のうち、以下のものが現在邦訳 出版されています。 ◎"Whirligig"(1998年8月号レビュー掲載)  『風をつむぐ少年』    ポール・フライシュマン作/片岡しのぶ訳/あすなろ書房/1999.9 ◎"Harry Potter and the Philosopher's Stone"(1998年9月号レビュー掲載)  『ハリー・ポッターと賢者の石』    J・K・ローリング作/松岡佑子訳/静山社/1999.12 ◎"Junk"(1998年11月号レビュー掲載)  『ダンデライオン』    メルヴィン・バージェス作/池田真紀子訳/東京創元社/2000.2 ◎"Northern Lights"(1998年12月号やまねこ賞未訳部門大賞)  『黄金の羅針盤』    フィリップ・プルマン作/大久保寛訳/新潮社/1999.11 ◎"The Gardener"(1998年12月号やまねこ賞未訳部門第2位)  『リディアのガーデニング』    サラ・スチュワート文/デイビッド・スモール絵/福本友美子訳/    アスラン書房/1999.10 ◎"Wringer"(1998年12月号やまねこ賞未訳部門第3位)  『ひねり屋』    ジェリー・スピネッリ作/千葉茂樹訳/理論社/1999.9 ◎"The View from Saturday"(1998年12月号やまねこ賞未訳部門第5位)  『ティーパーティーの謎』    E・L・カニグズバーグ作/小島希里訳/岩波書店/2000.6 ◎"Holes"(1999年2月号レビュー掲載)  『穴』    ルイス・サッカー作/幸田敦子訳/講談社/1999.10 ◎"Snowflake Bentley"(1999年2月号コールデコット賞記事)  『雪の写真家ベントレー』    ジャクリーン・ブリッグズ・マーティン文/メアリー・アゼアリン絵    千葉茂樹訳/BL出版/1999.12 ◎"Skellig" (1999年6月号カーネギー賞候補作記事、7月号レビュー掲載、         1999年号外 ☆1999年カーネギー賞受賞作)  『肩胛骨は翼のなごり』    デイヴィッド・アーモンド作/山田順子訳/東京創元社/2000.9 ◎"The Lion,the Witch and the Wardrobe" (1999年6月号グリーナウェイ賞候補作記事)  『ライオンと魔女と衣装だんす』    C・S・ルイス作/C・バーミンガム絵/田中明子訳/評論社/2000.9 ◎"Come on, Daisy!" (1999年6月号グリーナウェイ賞候補作記事            1999年号外 ☆1999年グリーナウェイ賞次点作)  『こっちにおいで デイジー!』    ジェーン・シモンズ文・絵/小川仁央訳/評論社/2000.7 ◎"I Love You, Blue Kangaroo" (1999年6月号グリーナウェイ賞候補作記事)  『だいすきよ、ブルーカンガルー!』    エマ・チチェスター・クラーク作/まつかわまゆみ訳/評論社/1999.11 ◎"Harry Potter and the Chamber of Secrets"(1999年9月号レビュー掲載)  『ハリー・ポッターと秘密の部屋』    J・K・ローリング作/松岡佑子訳/静山社/2000.9 ◎"Subtle Knife"(1999年12月号やまねこ賞未訳部門第9位)  『神秘の短剣』    フィリップ・プルマン作/大久保寛訳/新潮社/2000.4 (生方頼子/菊池由美) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●編集後記●『月刊児童文学翻訳』98年・99年バックナンバー合冊版、ごらんいただ けたでしょうか。ささやかですがご参考までに、今号で追補を載せてみました。(き) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 発 行 やまねこ翻訳クラブ        発行人 赤間美和子(やまねこ翻訳クラブ 会長) 編集人 菊池由美 (やまねこ翻訳クラブ スタッフ)   企 画 河まこ キャトル きら くるり こべに さかな 小湖 SUGO Chicoco     つー どんぐり NON BUN ベス みーこ みるか MOMO YUU りり     Rinko ワラビ わんちゅく 協 力 @nifty 文芸翻訳フォーラム     小野仙内 ながさわくにお 麦わら Gelsomina Mkwaju 月彦 ちゃぴ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ・このメールマガジンは、「まぐまぐ」( http://www.mag2.com/ )を利用して配信 しています。購読のお申し込み、解除もこちらからどうぞ。 ・バックナンバーは、http://www.nifty.ne.jp/forum/flitrans/yamaneko/mgzn/でご 覧いただけます。 ・ご意見・ご感想はyamaneko-mgzn@office-ono.comまでお気軽にお寄せください。 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●無断転載を禁じます。