2014年9月刊行
もうすぐ11歳になる少女メロディは、生まれてから一度も自分で食べることも歩くことも話すこともできません。 けれど話すことができなくても、成長したメロディの頭のなかはたくさんの言葉でいっぱいでした。 メロディの声を物語からすこし引用してみます。聞いてください。 すごく小さかったころから――たぶん、生まれてほんの数か月くらいから――言葉をかけてもらうと、あまい飲みものをもらったみたいで、わたしはレモネードを飲むように言葉を飲んできた。ほんとうに言葉の味を感じてる気がした。言葉は、わたしのもやもやした考えや感情をはっきりさせてくれる。パパとママは、わたしをおしゃべりで包み、小鳥のさえずりのように、小川のせせらぎのように、なんでも声に出してくれた。パパは歌をうたってくれた。ママは耳にささやきかけて、力をそそぎこんでくれた。 シャープな文体が、よりくっきりとメロディの心の声をうかびあがらせています。 できないことが多いストレスを抱えつつも、両親の深い愛情がメロディをすくすく成長させています。 メロディが5年生に進級した時、会話を支援するコンピュータを手に入れることができました。 エルヴァイラ――その機械にメロディは名前をつけました。 エルヴァイラの助けにより、メロディは会話のみならず授業の反応も飛躍的に周りから認められていきます。 そして、クイズの地区大会に向けての練習にも参加するようになり……。 クラスメート達は、 障害をもっているメロディをまっすぐ受け止めていたり、 偏見をもっていたりと、様々ですが、 みな率直にメロディと向き合っています。 また、 通常学級も支援学級もメロディと共に描かれ、 それぞれが一緒にひとつの授業を受ける様子もあり、 他の個性豊かな生徒たちの様子もみえてきます。 そんな生徒たちを指導していく先生たちも様々で、 読んでいくと、学校における先生の仕事についても考えさせられます。 詩的な文章で描かれる物語そのものも楽しめ、 リアリティあるメロディの学校生活では、思春期の子どもに思いを馳せ、 家族との関わりには、うんうんと共感すること多々あり、 障害のもった子どもの物語と共に語られる多面性が本作の魅力。 ぜひ手にとってみてください。 シャロン・M・ドレイパー Sharon M.Draper
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Last Modified: 2014/09/24
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