晶文社 新刊情報(2003-2006)年-2006年の新刊情報

晶文社ワンダーランドHP

2005.10 『どうしてかわかる?』『あたまをひねろう!』
2003.12 『チャスとリサ、台所でパンダに会う』 2004.02 『人類再考のアルファベット』 2004.09 『ディナモ

2006年4月刊行

第9回やまねこ賞絵本部門大賞受賞!

バスラの図書館員:表紙  バスラの図書館員
―イラクで本当にあった話―


絵と文 ジャネット・ウィンター
訳 長田弘

ISBN 4-7949-2042-3
定価 1680円(税込)


イラクの大きな港町バスラ、そこの中央図書館の司書責任者アリアさんがこの絵本の表紙にいる女性です。
本の山に囲まれ毅然とした表情をしている彼女は、イラク侵攻がバスラに達した時、ある決意をしました。
 ――図書館の本を守ろう――

これらの出来事をニューヨーク・タイムズの記事で読んだ、絵本作家ジャネット・ウィンターさんが一冊の本をつくりました。

本を愛する人たちがとった行動、アリアさんの本への思い、それらがたくさんこもった絵本です。


この絵本の収益の一部は、全米図書館協会の基金を通じて
バスラの中央図書館の再建を助けるために使われます。
出版ダイジェスト記事 出版ダイジェスト(専門図書出版社112社で組織する社団法人〈出版梓会〉の発行する出版情報紙/2007年1月1日 第2068号)に、やまねこ賞絵本大賞部門大賞受賞記事が掲載されました。

ジャネット・ウィンター Jeanette Winter
絵本作家。ニューヨーク在住。画家ジョージア・オキーフの生き方を絵本にした『私、ジョージア』(みすず書房)、9・11直後のニューヨークの公園を埋めた2400本のバラの秘密を絵本にした『9月のバラ』(日本図書センター)など、新しい伝記絵本の道を拓く。『ビアトリクス・ポターのおはなし』(晶文社)続刊。

長田弘 おさだ・ひろし
詩人。代表作に、詩集『深呼吸の必要』『食卓一期一会』『世界は一冊の本』(以上晶文社)、『一日の終わりの詩集』『死者の贈り物』(以上みすず書房)、エッセー『詩は友人を数える方法』(講談社文芸文庫)、『読書からはじまる』(NHK出版)など。訳書に『ことば』(ほるぷ出版)、シリーズ《詩人が贈る絵本》(全14冊、みすず書房)など。


2005年10月刊行

どうしてかわかる?:表紙 あたまをひねろう:表紙
世界のなぞかけ昔話1
 どうしてかわかる?
 
世界のなぞかけ昔話2
 あたまをひねろう!
 
ジョージ・シャノン 文
 ピーター・シス 絵
 福本友美子 訳

 1 ISBN 4-7949-2655-3
 2 ISBN 4-7949-2656-1
 定価 各1575円(税込)
昔話は長い間、語りつがれてきた。そのなかにはなぞかけもある。
この中では、ジョージ・シャノンがたくさんのなぞかけを読者に問いかける。
さて、あなたはどのくらい答えることができるかな?
シスの絵がなぞかけにぴったりなじんでいる、おもしろい絵本。子どもだけでなく、大人どうしてもなぞかけしあうのも愉しい。

ある夏の日、2人のおとうさんと2人のむすこが魚つりに出かけました。
1人1ぴきずつ魚がつれたので上きげんで家に帰りました。
ところが、つれた魚の数は、ぜんぶで3びきしかありません。

さあ、どうして?

ジョンは、ブレイク大佐の家で次のようなかけをしました。
「居間のすみから、暖炉に向かって生たまごを投げて、われなかったら50ドル」
ジョンは、たまごを12回投げて、すべてわってしまいました。
かけに勝った大佐は、大よろこびです。
しかしその夜、ジョンは50ドルをしっかりと手にしていました。

さあ、どうして?

【文】ジョージ・シャノン
 児童図書館員を経て、現在はプロのストーリーテラー、作家として活躍する。
 読書好きで、家族でお話を読みあう家庭に育ち、自然に物語を書き始めたという。
 はじめての絵本はLizard Song(ホセ・アルエゴ絵)。創作物語にDance Awayや、April Showersなどがある。
 作品には、長年子どもたちにお話を語り聞かせた経験がよく生かされている。
 現在はアメリカ合衆国ワシントン州のピュージェット湾に浮かぶベインブリッジ島に住む。

【絵】ピーター・シス
 旧チェコスロバキアのブルノに生まれる。
 プラハとロンドンで美術を学んだ後、短編アニメ映画作家として国際的評価を得たが、現在はニューヨークでイラストレーター、絵本作家として活躍。
 アメリカで最初に出した絵本が、ジョージ・シャノンの作品に絵を描いたBean Boyだった。
 自作の絵本には『コモドっ!』(ブックローン出版)、『星の使者』『生命の樹』(徳間書店)、『マドレンカ』(BL出版)などがある。

【訳】福本友美子
 慶応義塾大学文学部卒業後、公共図書館勤務を経て、現在は児童書の研究、評論、翻訳、書誌作成などをする。
 訳書に『子どもの本の歴史』(共訳、柏書房)、『ヌードル』(岩波書店)、『絵かきさんになりたいな』(光村教育図書)、『9月のバラ』(日本図書センター)など多数。
 立教大学講師。


2004年9月刊行

ディナモ:表紙

ディナモ
ナチスに消されたフットボーラー

アンディ・ドゥーガン
千葉茂樹 訳

ISBN 4-7949-6636-9
定価 2205円
 
ソ連のプロパガンダによって、全員が射殺されたと長らく信じられていた伝説の試合の真実を、丹念に検証していた、歴史スポーツ・ノンフィクション(表紙見返しより)

 プロローグは1941年6月21日、熱々のカップルが結婚式をあげている様子からはじまる。
 コンスタンチン・シュチェゴツキーは結婚パーティへに招待され出席予定だった。
 しかし、翌日に行われるビッグ・ゲームのことを考えているうちに、試合の準備をしようと思い、パーティには結局出向かない。
 試合当日の朝、シュチェゴツキーは電話のベルで起きた。
 「コースチャ、戦争が始まった」
 「冗談はやめろよ」シュチェゴツキーが答えた。「結婚式でしこたま飲んだな」
 「ちがうんだ、コースチャ」グレヴィッチはつづけた。「冗談なんかじゃない。いいか、よく聞け。本当に戦争がはじまったんだ。ファシストどもが攻撃をしかけてきた」
著者は、次に「ウクライナの歴史」「ウクライナ・サッカー」と当時の背景を丁寧に示していく。そしてまた、時を戦争が始まった時に戻す。キエフ侵攻の攻撃は容赦なく、ついに陥落する。キエフのムードは「はじめはゆるやかに、そして、やがて劇的に」変わっていく。ここからのドイツ軍の作戦、その残忍さにはどのように形容していいのかわからない。シュチェゴツキーも捕まり、スパイ容疑を認めさせるべく拷問にかけられる。心理的拷問のあとは、物理的な拷問――
感覚がなくなるまでいすの足でたたかれ、尋問室の入り口の頑丈なオーク材のドアで、指を一本一本折られていった。
1942年春、ドイツがキエフを占領して半年がすぎ、サッカーの名門ディナモ・キエフの選手たちは、パン工場で強制労働をさせられていた。工場経営者がサッカーの熱狂的ファンだったこともあり、彼らは中庭でサッカーの練習が許される。のちにチームを結成する彼らは、ソ連全体で最も優れた選手達だった。ヒトラー政権下の生活の質の向上として、ドイツ軍はスポーツに注目し、サッカーの再開を宣言した。パン工場のサッカー・チーム名は「FCスタート」。FCスタートは強いチームだった、ドイツ軍が思っている以上に。だからこそ、FCスタートがやっかいな存在になってきてしまう。スタートはチャンピオンシップにおいて軍のチームに圧倒的に勝利する。ドイツ軍はただちにリベンジ・マッチを設定……。


 すさまじい、拷問、虐待、殺戮。横たわってる文字から、その生々しさに息をつめて読んだ。すごい1冊。


【作者】アンディ・ドゥーガン Andy Dougan イギリスのジャーナリスト・マーティン・スコセッシやロバート・デ・ニーロの伝記など、映画に関する著作もある。

【訳者】千葉茂樹 ちば・しげき 1959年、北海道生まれ。国際基督教大学卒業。児童書編集者を経て翻訳者として活躍。訳書に、アイズリー『星投げ人』(工作舎)、ヒメネス『この道のむこうに』(小峰書店)、スピネッリ『ミルクウィード』、ハイアセン『ホー』(ともに理論社)、リチャードスン『クローン羊のつくりかた』、ラニア『大統領ジェファソンの子どもたち』(ともに晶文社)ほか多数ある。


2004年2月刊行

人類最高のアルファベット:表紙

人類最高の発明
アルファベット

ALPHA BETA
――How our alphabet shaped the western world

ジョン・マン John Man
金原瑞人 訳
杉原七重 訳

ISBN 4-7949-6605-9
定価2520円(税込み)

アルファベットの発想とその伝播に焦点を置いた1冊。
著者、ジョン・マンはエジプト、ローマ、現代とテーマを絞り、アルファベットがたどった道を探る。
「はじめに」で著者はアルファベットの強みは「不完全だからこそ実用的だという点にある」という。
完璧でないからこそ、逆にちょっと手を加えてやれば、どんな言語にも適応できる。生物分類ふうにいえば、アルファベットはわれわれと同じ、頭で勝負する種に分類され、走ることや、跳ぶことや、泳ぐことで他の種に追い抜かれることはあっても、頭のよさでは何にも負けない。いってみれば万能選手なのだ。
ジョン・マンは、豊富なエピソードでアルファベットの豊かさを披露する。
〈利己的なアルファベット〉という章では、「まるでアルファベットは伝染病のようではないか。ただし有益な伝染病だ(そんなものがあればの話だが)」と、アルファベットの見地からアルファベットを検証する。ダーウィンが生物学の頂点に「進化」を踏まえたように、ジョン・マンはアルファベットが知的な遺伝子ではないかという。ミーム(meme/偽装(mimic)」を表すギリシア語の語根に遺伝子(gene)と似通った響きを持たせた造語)的性格をもつと考えられるからだ。
ある一つの発想が生まれた場所から逸脱し、新しい環境に流入する。そこで自己をかなり正確に複写し、より力が発揮できるように変異を行ってさまざまな派生形を生み出す。
情報を渡す際に、わかりやすい形で渡そうとする。そのわかりやすさのひとつに「ミーム」があるのではないかと言っているのだ。そしてそれにとても近しいのがアルファベットではないか、と。

歴史家、旅行作家という肩書きをもつ著者ならではの視点がいかされた、アルファベット論。
言語に興味をもつ方にはたまらない魅力がたっぷりだ。

訳者の金原さんもあとがきでこう言っている。

言語、文字、文化に興味のある人にとって、文句なく面白い本であることは間違いない。

【作者】ジョン・マン John Man イギリスの歴史家・旅行作家。世界各地を歩き、それぞれの文化と歴史を鋭い視点で紹介。モンゴルのゴビ砂漠紀行、エクアドルのジャングル紀行などの著書がある。BBCラジオの「サバイバー」シリーズを企画、自らも出演している。

【訳者】金原瑞人 岡山県生まれ。法政大学教授。翻訳家。訳書にジョンソン『世界を変えた野菜読本』(晶文社)、ペック『豚の死なない日』(白水社)、アレクシー『インディアン・キラー』(東京創元社)、アーモンド『ヘヴンアイズ』(河出書房新社)ほか。

【訳者】杉田七重 東京生まれ。東京学芸大学教育学部国語科卒業。訳書にウィートリー『もしも、あなたの言葉が世界を動かすとしたら』(PHP)、メイスン『サハラに舞う羽根』(角川書店・共訳)、ベア『愛と成功の確率』(集英社・共訳)ほか。


2003年12月刊行

チャスとリサ、パンダに会う:表紙
チャスとリサ、
台所でパンダに会う

フラン・レボウィッツ
マイケル・グレーブス 絵
宮家あゆみ 訳

ISBN 4-7949-6597-4
本体1200円+税

7歳のチャスとリサは、ニューヨークシティにあるの古くて大きいアパートに暮らしている。
2人は仲のいい友だちで、しょっちゅうお互いの家を行き来していた。
ある日、チャスはリサの家で午後をすごしていると、いつだってものすごく興奮しているリサが何か発見したようで、さらに大興奮して、チャスを呼んだ。その発見というのは、キッチンの物置にある秘密の扉。
もちろん、2人は扉を開けた、すると中にいたのはなんだと思う?
2頭のジャイアント・パンダ!
どうして、ここにパンダがいるのかはさておき、パンダたちは、パリでシティ・ライフをおくりたいと願っていた。
パンダの名前は“パンダでわいわい”と”パンダの通俗化反対”。
とりあえず、その名前のおもしろさもさておき、チャスもリサもパンダを発見して興奮した。(当然だろう。)
そして、ぜひとも、彼らの望み(パリでシティ・ライフをおくること)をかなえてあげたくなった。
さて、チャスとリサの考えとは??

これもひとつのファンタジー。
なんといっても、家の中(物置だけれど)に、パンダが2頭いたのだから。
“パンダでわいわい”も“パンダの通俗化反対”も、話をすることができ、チョコレート・エクレアが大好物。パリでピザを食べたいらしい。
読んでいると、くすりと笑うより、あまりにもユニークな物語に、時にふきだしてしまう。
最後の最後まで、ユーモアたっぷり。
甘いものを食べながら、ぜひぜひご一読を。

【作者】フラン・レボウィッツ Fran Lebowitz 作家。「Interview」誌をはじめとしたさまざまな雑誌にコラムを寄稿し、ニューヨークを拠点に活動する文化評論家として名高い。辛口の批評には定評があり、彼女の言葉は数多くの媒体で引用されている。著書に『嫌いなものは嫌い――メトロポリタンライフ入門』『どうでも良くないどうでもいいこと』(ともに晶文社)。2004年春、待望の新刊となるエッセイ"Progress"が発刊予定。

【絵】マイケル・グレーブス Michael Graves 建築家、インテリア・デザイナー、商業デザイナー。シンシナティ大学およびハーバード大学で建築を学び、プリンストン大学の講師も務める。マイケル・グレーブス&アソシエイツ(MGA)代表。アメリカだけでなく世界中の建築物の設計に携わるかたわら、商業デザインの分野でも数多くの製品を手がける。建築・デザイン・教育の分野での受賞多数。

【訳者】宮家あゆみ ニューヨーク大学大学院卒。洋書の紹介雑誌「アメリカン・ブックジャム」(http://www.bookmall.co.jp/abj/)副編集長。ライターおよび翻訳者。訳書に『ブックストア――ニューヨークで最も愛された書店』(晶文社)、『ガール・クック』(ランダム・ハウス講談社)、『マイ・ハートビート』(河出書房新社)などがある。ニューヨーク在住。



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Last Modified: 20076/1/12
担当:さかな

HTML編集: 出版翻訳ネットワークやまねこ翻訳クラブ