2005年2月刊行
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バスの女運転手
ヴァンサン・キュヴェリエ 作
キャンディス・アヤット 画
伏見操 訳
ISBN 4-7743-0864-1
定価 1050円(税込) |
この本が発売された日本の2月は、風邪が流行する季節。
風邪をひくと、だるくて、ぼうっとして、眠気が体にいつもはりついている……。
さて、この物語にでてくるベンジャマンも、その日は風邪をひいていた。
だから、眠くてつい通学のバスの中でぐっすり眠りこけてしまった。
「なんだ、このガキ!?」
バスの女運転手のこの声でめざめたベンジャマンは、まだ夢の続きかと思ったったのだが、そうではない。
「あたしのバスで、終点までねてたやつは、はじめてだよ」
ということで、ベンジャマンと女運転手のちょっとした1日がはじまった。
あいつはくさい。おまけにブスだ。なんたって鼻がでかすぎる。
こんな風に言われているおばちゃんは鼻の下にはヒゲが生えているので、おばちゃんじゃなくておじちゃんじゃないかとも噂されている。この通学バスの名物運転手と、1日一緒に過ごすことになろうとは――。きっと、ベンジャマンは青天の霹靂ってこういう事じゃないかと考えたと思う。でも、イヴェット(女運転手の名前)とすごした1日は、鼻にツンとくるような不思議な時間だった。
全ページにイラストが入っていて、物語と絶妙な雰囲気をつくっている。すっごく笑えて、ちょっぴり胸にくる。
すばらしく口の悪いイヴェットなのだが、読み進めるうちに、微妙に変化するベンジャマンとの会話の妙がすごくいい。そして本筋とは関係ない、細部の描写に笑いのツボがいっぱい。海のシーンは特にいい。からっとした人情物語とでも言おうか、読み終わると子どもはおもしろかったとサバサバしているのだが、大人の私はジーンと余韻を楽しんだ。
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【作者】ヴァンサン・キュヴェリエ(Vincent Cuvellier) 1969年、フランスのブレスト生まれ。少年の頃から作家を志し、16歳で書いた「La Troisième Vie」で、1987年に若手作家賞を受賞。その後グルノーブル国立演劇学院に在籍、自身も舞台に立つ。さまざまな職を経て、現在ナントで創作活動を続けている。本書で2004年にベルギーのヴェルセル賞、フランスのリーヴルブランシュ賞を受賞。オーストリアでは少年少女文学最優秀賞のノミネートされた。また、「Tu parles, Charles」で、2004年モントルゥイユ児童書フェア最優秀賞タムタムを受賞。主な作品に、「La Troisième Vie」(Milan 刊)、「Marre des cauchemars」(Éditions Batsberg 刊)、「Kilomètre Zéro」(以下すべてÉditions du Rouergue刊)、「Mon Père Noël」、「Tu parles, Charles」、キャディス・アヤットとのコンビでつくった絵本「Ma vie de Cheien」などがある。
【画家】キャンディス・アヤット(Candice Hayat) 1976年、フランスのパリ生まれ。パリのエスチエンヌ美術大学で、イラストレーションを学ぶ。同校卒。いろいろな色やテクニックを、イラストで試してみるのがすき。そうやって発見したことや喜びを、学校に行って、子どもたちと分かちあっている。現在は、本や新聞、雑誌、広告などの分野で活躍中。主な作品に、「Schprout」、「Ma
vie de Chien」(ともにÉditons du Rouergue 刊)などがある。
【訳者】伏見操(ふしみ・みさを) 1970年、埼玉県生まれ。洋書絵本卸会社、ラジオ番組制作会社勤務を経て、海外の子どもの本の翻訳や紹介につとめている。主な訳書に『モモ、しゃしんをとる』(文化出版局)、『はなくそ』『マルラゲットとおおかみ』(パロル舎)、『なつのゆきだるま』『びゅんびゅん、きしゃをぬく』(岩波書店)など。
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