◆ 角川書店 新刊情報 ◆


2004年12月刊行

ルーカス:表紙

ルーカス


ケヴィン・ブルックス
林香織 訳

ISBN 4-04-897044-5
本体1000円(税別)

ケイトリン・マキャンはこの夏に起こったことをすべて吐き出すことにした。
父さんが言った。
「物語というのは事実じゃないんだよ、ケイト、細かいあれこれじゃない。感情なんだ。おまえはいろいろなことを感じただろう?」

そしてケイトはルーカスについての物語を語り始めた。
それは去年の夏の出来事すべてであり、ケイトが大きなものを得て、それから失った物語を――。

ケイトたちが暮らしてる島はとても小さい。島の人間は誰が誰だか皆よく知っている。その小さな島にルーカスがふらりとやってきた。ケイトは一目で何か惹かれるものを感じた。しかし、他の島の人たちはよそ者をいやがる。誰だかわからないのに、その知らない人間が自分たちの島で自然に過ごしているのを見るのが耐えられなく思う者もいる。ケイトは孤独を感じていた。反抗期の兄に、友だちも不良にそまっていき、それらから目をそむけたいと、体を硬くして過ごしていた。そんな中で、ルーカスと出会いは、ケイトの気持ちをやわらげてくれた。しかし、よそ者ルーカスを好まない人々がひたひたと近づいてきて……。


作家である父さんがケイトにかける言葉は、愛情とそして人生を少し長く生きている先輩としての示唆がある。父さんは悲しみは永遠に続くと言い、もしそうでないのならそれは本当の悲しみではないとケイトに話した。
戦うのをやめて自分の一部として受け入れると、悲しみはそれほど悪いものじゃない。悲しみによる苦痛は永遠には続かない、と。
ヤング・アダルト世代のちょっと痛いようなひりひりする日常を、ケヴィン・ブルックスはそのままを物語に織り込んでいる。いわゆる悪いことに手を染め、堕ちていくケイトの友人も過剰すぎることなく描き出し、ケイトの孤独も浮かび上げながら。彼や彼女らの無意識の欲求――なかなか言ってもらえない、でも誰かに言ってもらいたい――が静かに満たされている物語だ。


【作者】ケヴィン・ブルックス Kevin Brooks イギリス・エクセター生まれ。火葬場の雑用係や動物園の露天商、タイピストなど数々の職歴の末、執筆を開始。新人短篇作家に贈られるキャノンゲイト賞を受賞した後、初の小説『マーティン・ピッグ』(角川書店BOOLPLUS刊)を執筆。「ハリー・ポッター」を生み出した名編集者の目に留まり、刊行されるや「ライ麦畑」以来の青春小説の傑作と絶賛された。第2作の本作でカーネギー賞の候補となり、イギリスでは大注目を浴びている新進作家の1人。3作目の"Kissing the Rain"ではこれまで以上のダークで悲しい物語に挑戦している。

【訳者】林 香織 名古屋大学文学部英文学科卒。高校講師をしながら翻訳を学ぶ。現在も高校、専門学校で教えながら翻訳業に携わる。訳書にK・ブルックス『マーティン・ピッグ』、T・I・ルービン『物語に閉じこもる少年たち』(共訳ポプラ社)がある。


2003年10月刊行

マーティン・ピッグ:表紙 マーティン・ピッグ

ケヴィン・ブルックス
林 香織訳

ISBN 4-04-897040-2
本体1000円(税別)

イギリスで話題のYA小説が日本上陸!

これは、ぼくのクリスマス前1週間の記録。
楽しみに満ちあふれたものじゃない。
まぁ、読んでほしい。
ぼくの名前は「マーティン・ピッグ」
 わかると思うけど、「ピッグ」っていうのは「ブタ」のこと。
こんな苗字をもっていることを想像してほしい。
つまり最悪の名前をもっていることを。
ついでに、この1週間も最悪、泥沼、なにせ、ぼくは父親を殺したから……。

父親を殺したのは、偶然か、必然か?
1週間の経緯はミステリアス。
あなたは最後をどう思う?


「月刊児童文学翻訳」2003年7月号書評編に本書のレビュー掲載!

【作者】ケヴィン・ブルックス Kevin Brooks イギリス・エクセター生まれ。ガソリンスタンドの従業員、火葬場の雑用係、市民サービスの管理職員、ロンドン動物園の飲食物補充係、タイピスト、郵便局の受付、地下鉄のチケット売り、個人のカスタマー・サービスなど数々の職歴の末、執筆に専念することを決意。新人短篇作家に贈られるキャノンゲイト賞を受賞した後、初の長編小説となる本作を執筆。「ハリー・ポッター」を生み出したエージェントにその才能を見出され、刊行されるや「ライ麦畑」以来の青春小説の傑作と絶賛された。児童文学の最高峰であるカーネギー賞の候補にもなり、次作の"Lucas"(これも角川書店ブックプラスより来年刊行予定)もアマゾンで早々に五つ星を獲得。いま、もっとも注目を浴びている若手作家の一人である。

【訳者】林 香織 名古屋大学文学部英文学科卒。高校講師をしながら翻訳を学ぶ。現在も高校、専門学校で教えながら翻訳業に携わる。訳書に『物語に閉じこもる少年たち』(共訳ポプラ社)がある。


しずかな しずかな ささやくようなファンタジー

コララインとボタンの魔女:表紙
コラライン
とボタンの魔女

ニール・ゲイマン
金原瑞人・中村浩美 訳

ISBN 4-04-791445-2
本体1700円+(税別)

コララインと家族は古い大きな家に引っ越した。
とても大きな家なので、家族だけではなく、ほかにも住人がいる。
年老いたミス・スピンクとミス・フォーシブル。ふたりは年老いたスコッティシュテリアを飼っている。
三階に住んでいるのは、大きな口ひげを生やしたおじいさん、ミスター・ボボ。
彼はハツカネズミにサーカスの芸をしこんでいる、でも誰にもみせない。
コララインは引越してからすぐ探検をはじめた。
庭、動物、そしてどこにも通じていないはずのドア。
もちろん、コララインはドアを開ける。そこにいたのは?


数々の文学賞を受賞したイギリスの作家、ニール・ゲイマンが書いたファンタジー。
魔女もでてくるのだけど、物語は華やかというより、たんたんと静かに静かにすすんでいく。
登場人物たちの声はでているので、沈黙はないのだが、
無声映画のような雰囲気が物語をおおっている。
コララインが魔女と対峙する方法もおもしろい。それは探検ゲーム。
買ったら――、負けたら――。
淡々とでもハラハラしながら、物語は結末にたどりつく。
コラライン、あなたの探検をみせてくれてありがとう。


【作者】ニール・ゲイマン Neil Gaiman イギリス生まれ。人気コミック『サンドマン』の原作者。ダーク・ファンタジー作家。世界幻想文学大賞、ヒューゴー賞、ブラム・ストーカー賞など数々の文学賞を総なめにする。今、もっとも注目される作家である。

【訳者】金原瑞人 かねはら・みずひと 岡山県生まれ。法政大学教授。翻訳家。主な訳書にペック『豚の死なない日』(白水社)、ポトク『ゼブラ』(青山出版社)、シアラー『青空のむこう』(求龍堂)など多数。

【訳者】中村浩美 なかむら・ひろみ 愛知県生まれ。名古屋大学文学部卒業。共訳書にR・レーガン、N・レーガン『世界でいちばん愛しい人へ』(PHP研究所)。

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Last Modified: 2005/02/02
担当:さかな
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