福音館書店 新刊情報

2004年9月刊行

スピリット島の少女:表紙

スピリット島の少女
 ――オジブウェー族の一家の物語

The Birchbark House

ルイーズ・アードリック
宮木陽子 訳

ISBN 4-8340-0637-9
定価 1785円(税込)

プロローグはシンプルにはじまる。
スピリット島で生きのこっていたのは、たったひとり、女の赤ちゃんだけでした。
島の住民は、みな天然痘でなくなり、生き残っていたのは赤ちゃんひとり。「まちがいない。あの赤ん坊も病気だ」と見つけた男たちは思い、救おうとはしなかった。しかし、ひとりの男は戻って妻にそのことを話した。そして赤ん坊は、別の部族のもとで暮らすことになった。はじめて歩いた時に、ぴょんととびはねたので、オマーカヤズ(小さなカエル)と名付られて……。

物語はこのオマーカヤズの視点で、日々の生活が語られる。時代は1847年、場所は北アメリカ五大湖のひとつ、スペリオル湖にあるモーニングワネーカニングという島。現代の暮らしとはまった違うその生活ぶりも読んでいておもしろいが、時を越えても少女が楽しいこと、つらいことに一喜一憂する様は、いまの少女と変わらなく親しみを感じる。オマーカヤズの子どもらしい、気持ちの大きなゆれや、小さな発見に喜ぶ姿はとても愛らしい。「あぁ、わかる、わかるその気持ち」とうなずきながらページを繰る。

赤ん坊のニーウォのおもりを自らかってでたオマーカヤズは、2人ですごすひとときは大好きな場面だ。まだ名前が決まらないニーウォに手をふれた時に、オマーカヤズは「チカディー」という名前が浮かんだ。
「そうだわ、きょうはニーウォのことを、チカディーって呼ぶわ」
ニーウォは姉のいったことがわかったのか、目をあけると、とても明るくていたずらっぽい表情をして、じっとオマーカヤズを見ました。それからしばらく、ふたりはそのままみつめあっていました。ただそうしているだけなのに、なんてすてきなひとときでしょう。これが愛というものだ、とオマーカヤズは思いました。
この時代の生活は、ただ静かに流れるものではなく、白人との戦いや、きびしい冬の対処、そして天然痘のような恐ろしい病気など、苦しいことも多々ある。しかし、楽しいことも同じくらい描かれ、読後は豊かな世界の余韻にひたれるだろう。


【作者】ルイーズ・アードリック Louise Erdrich 小説家、詩人、人文学者。ミネソタ州のリトル・フォールズ生まれ。ダートマス・カレッジで学士号、ジョン・ホプキンズ大学で修士号を取得。現在は娘とミネアポリスに住み、小説や詩を書くかたわら、「バーチバーク(樺の樹皮)」という書店を経営。本書は家族の歴史をたどるうちに書きたくなった作品だという。全米批評家賞、オー・ヘンリー賞をはじめ、多数の文学賞を受賞。邦訳書に『ラブ・メディシン』(筑摩書房)、『五人の妻を愛した男』(角川書店)、『コロンブス・マジック』(角川書店)、『ビートクィーン』(文藝春秋)、『八十年代アメリカ女性作家短編集』(新潮社)がある。児童向けの小説は『スピリット島の少女』が初めて。

【訳者】宮木陽子 愛媛県生まれ。お茶の水女子大学大学院英文科修士課程修了。英字新聞、雑誌等の翻訳を経て、現在は書籍の翻訳。訳書に『ココ、ゴリラと子ネコの物語』(あかね書房)、『リンカンがひげをはやしたわけ』(偕成社)、『メイフラワー号の少女』(岩崎書店)、『子どもの心のチキンスープ』シリーズ(岩崎書店)などがある。

2003年11月刊行

森と湖の民の荒々しくも純朴な昔話

ノルウェーの昔話:表紙

ノルウェーの昔話

アスビョルンセンとモー 編から
エーリク・ヴェーレンシオル 絵
テオドル・ヒッテルセン 絵
大塚勇三 訳

ISBN 4-8340-0828-2
本体1600円+税


目次(全34話)
パンケーキ
ドブレ山地の小ネコ
ちびフリックとバイオリン
草むらのお人形
北風のところに行った男の子
体に心臓がない大男
地主の花嫁
森でトロルに出あった男の子たち
海の底の臼
クマとキツネ A
お屋敷の七人目の父さん
ペール殿下
牧師と寺男
世の中のお返しなんて似たようなもの
お姫さまを笑わせた松の木ハンス
ジブンのせいで
旅の仲間
家の事をすることにしたごていしゅ
自分たちだけで暮らそうと森に行った羊とブタ
隅の母さんの娘に結婚を申しこみたかった若者
男の子と悪魔
お姫さまに「うそつき!」と言わせた灰つつき
まともで正しい四シリング銀貨
白クマ王ヴァレモン
オンドリとキツネ
灰つつきとすてきな仲間たち
山のグドブラン
クマとキツネ B
ライオンとタカとアリになった男の子
ふたりの娘
羊飼いになったキツネ
ビール樽をもっている若者
青い山の三人のお姫さま
ふとろうと山に行く三匹のヤギのドンガラン


19世紀中頃から後半にかけて、アスビョルンセンとその友だちのモーが
ノルウェーの各地から、語り継がれてきたお話を集めた昔話。
この本はその中から34の話を選んで、原語から直接訳したものです。
アスビョルセンとモーは、文学を専門に研究したのではなく、
ドイツのグリム兄弟にすすめられ、民話集を編纂したといわれています。
農民をたずねて昔話を集め、その話にあう、さし絵画家を苦心して探したそうです。
それらの魅力的な絵は、自然や風俗をよく伝えてくれます。
そして総ルビ(!)なので、子どもみずから自由に楽しめるでしょう!

福音館書店HPでは本文挿し絵をご覧になれます。

【編者】アスビョルンセンとモー 本書の第一巻が世に出たのは、1845年。すでにグリム兄弟の収集した『子どもと家庭のメルヘン集』(グリム昔話集)第一巻は30年ほど前に出版されており、多くの読者を獲得していた。本書を編纂した、ペーテル・クリステン・アスビョルンセン(1812−1885)とヨルゲン・モー(1813−1882)は、グリム兄弟の昔話集を読んでノルウェーに伝わる昔話を自分たちの手でまとめようと決意したといわれている。二人は学生時代からの友人で、その後も協力しあって各地から昔話を収集してまとめあげた。

【訳者】大塚勇三 1921年、中国東北地方に生まれた。東京大学法学部卒業。主に外国児童文学の翻訳紹介や民話の再話を手がける。絵本に『スーホの白い馬』『プンクマインチャ』など、訳書に『グリムの昔話(全3巻)』『アンデルセンの童話(全4巻)』(以上福音館書店)『長くつ下のピッピ』『やかまし村の子どもたち』(以上岩波書店)など、多数がある。


2003年11月刊行

グースにあった日:表紙 グースに
あった日


キャリ・ベスト 文
ホリー・ミード 絵
まえざわ あきえ 訳

ISBN 4-8340-1902-0
本体1300円+税

このお話は、本当にあったことです。

少女はいつも犬のヘンリーと公園に出かけます。
ヘンリーは、グースのなき声をまっさきに聞きつけるのです。
ある日、少女とヘンリーは公園で一本足のグースにであいました。
「わたし」は心臓がどっくん、どっくんします。
どうしたの、どうして一本足なの?
それから、少女の過ごした春と夏はグースとともに過ぎました。
とはいえ、世話をしたわけではありません。
言葉をかけ、見守るのです。
9月、グースは一本足で仲間とともに飛び立つのでしょうか……。


文を書いたキャリ・ベストの作品は、日本初紹介。
息子さんが実際に体験したことをもとに描かれた物語は、ホリー・ミードのコラージュを駆使したあたたかい色あいのすてきな絵本なりました。
何度もじっくり読み返したくなる作品です。

福音館書店の本書紹介ページ

【作者】キャリ・ベスト  Cari Best 絵本作品に、エズラ・ジャック・キーツ賞を受賞した "Taxi ! Taxi !"、ジゼル・ポターが絵を描いた"Three Cheers for Catherine the Great !" や "Shrinking Violet" などがある。米国コネチカット州ウェストン在住。

【画家】ホリー・ミード Holly Meade 『しーっ!ぼうやがおひるねしているの』(ミンフォン・ホ文 偕成社)でコールデコット賞次席受賞。ジュディス・H・ギリランド文 "Steamboat !" は、ロサンゼルス・タイムズ紙の「2000年度もっとも優れた子どもの本」の1冊に選ばれている。米国マサチューセッツ州ニューベリポート在住。

【訳者】まえざわあきえ(前沢明枝) 青葉学園短期大学助教授。言語学専攻。米国留学中に英米児童文学に親しむ。絵本の訳書に『シンプキン』(朔北社)『ビバリーとしょかんへいく』(文化出版局)など、児童書の訳書に『バドの扉がひらくとき』(徳間書店)などがある。東京都在住。


2003年6月刊行

ちびねこグルのぼうけん:表紙 ちびねこグルの
ぼうけん


アン・ピートリ 作
古川博巳・黒沢優子 訳
大社玲子 絵

ISBN 4-8340-0625-5
定価 1575円

グルは赤い大きな納屋の中で生まれました。
この納屋で、グルは、母さん、三匹の兄さん、それに二匹の姉さんと一緒に暮らしていました。
グルはグルルル、グルルと大きくのどをならすのでついた名前です。
ある朝、母さんはグルにいいました。
「おまえは、ドラッグストアにもらわれていくのよ」
ドラッグストアって?
仲良しできるかなあ。
いいねこでいて、納屋にもどされないようにしなくちゃ。
ジェームスおじさん、ジェームスおばさん(おじさんの妹)、どうぞよろしく。


グルはとても短いしっぽをしています。
そして、そのしっぽのように短気でした。
すぐ頭にきてしまうので、いろいろ失敗をしてしまいます。
でも、ドラッグストアでの生活に慣れていくさま、ねこの言葉をわかってくれる人間の友だち、
グルの世界が広がり、気持ちをおさえる方法もなるほどと思わせます。
このお話は1949年にアメリカで出版されたものですが、大社玲子さんの絵も、物語にぴったりで読者はどんどんグルの世界に惹きつけられるでしょう。

作者ピートリがこの童話を書いた動機は、物語が何よりも好きな姪に読ませるためだった、と言われています。わたしが近年になってこの童話を訳したいと思い立った一番の理由は、孫に読ませたいという衝動に駆られたからでした。 訳者・古川博巳 「あのね」7月号より

【作者】アン・ピートリ Ann Petry 1908年、アメリカのコネティカット州、オールド・セイブルックに生まれる。生家は、アフリカ系アメリカ人家庭で、三代にわたりドラッグストアを開業。コネティカット大学で薬学の博士号を取得後、家業に従事するも、1938年に結婚、ニューヨークに移って黒人新聞の記者となる。それを機に、長・短編小説や歴史物語を書くようになる。1997年没。

【画家】大社玲子 おおこそ・れいこ 1946年、山口県に生まれる。青山学院大学英米文学科卒業。在学中から子どもの本のさし絵を描きはじめる。1988年-1989年、フランスに滞在。絵本に『プレゼント』(日本基督教団出版局)『ねこ』(童心社)、さし絵に『なぞなぞのすきな女の子』(学習研究社)など多数ある。神奈川県在住。

【訳者】古川博巳 ふるかわ・ひろみ 1927年、奈良市に生まれる。神戸市外国語大学・英米学科中退。京都女子大学、天理大学などで英米文学・黒人文学などの教鞭をとる。1954年、〈黒人研究の会〉創設に参画し、前代表、現在は顧問。著書に『黒人文学入門』(創元社)『ブラックへの旅路』(せせらぎ出版)、訳書に『黒人はなぜ待てないか』(共訳・みすず書房)など多数。兵庫県在住。

【訳者】黒沢優子 くろさわ・ゆうこ
 1957年新潟県生まれ。1980年お茶の水女子大学卒業。1995年、1996年山形県遊学館外国絵本コンクールで2年連続優秀賞受賞。受賞作『おじいさんのえんぴつ』は、1996年秋、金の星社より出版。その他の訳書としては『子どもの瞬間(とき)』『建物スタンプであそぼう』『箱船にのった鳥たち』(以上福音館書店)、獣医師の夫との共訳書『水鳥のための油汚染救護マニュアル』(北海道大学図書刊行会)がある。鶴(タンチョウ)の飛来で有名な北海道鶴居村在住。


2001年5月刊行

コールデコットの絵本

ランドルフ・コールデコット作
監修/解説 ブライアン・オルダーソン、吉田新一
本体価格38,000円(豪華化粧ケース入り、分売不可)

「ピーターラビット」の作者B・ポターも絶賛したコールデコットの絵本が、21世紀に蘇ります。19世紀イギリス絵本の巨匠、ランドルフ・コールデコット。その代表作である16冊の木版色刷り絵本を、最新のオフセット印刷技術を用いて、原書そのままの美しさで完全複刻いたします。物語るイラストレーションの魅力は、120年余を経た今も読む人の心をとらえてはなしません。児童文学研究の第一人者が監修する解説書がつきます。

【ランドルフ・コールデコット(Randolph Caldecott)】 ランドルフ・コールデコットは1846年、イギリス中部・チェスターに生まれました。彼は幼いころから絵を描くのが好きでした。15歳で銀行に就職しますが、勤めのかたわら、絵を描きつづけていました。やがて雑誌にスケッチを投稿するようになり、26歳のとき、ついに銀行を退職。ロンドンに出てフリーの画家として活動を開始し、やがて絵入り雑誌に挿絵を寄せたり、W・アーヴィングの「オールド・クリスマス」の挿絵を描くなど活躍するようになりました。そのイラストレーションが、当時「トイブック」と呼ばれる木版色刷り絵本の企画制作を手がけていた木版工房のオーナー、エドマンド・エヴァンズの目にとまったのをきっかけに、コールデコットは絵本をてがけるようになりました。1878年のクリスマスにジョージ・ラウトリッジ&サンズ社から出版された2冊を皮切りに、彼の絵本は年2冊のペースで刊行され、大変な人気を博しました。
 しかし1886年、生来身体の弱かったコールデコットは病に倒れ、転地療養先のアメリカ・フロリダ州で生涯を閉じました。享年39歳でした。コールデコットの絵本もまた、85年の2冊を最後に、16冊で幕を閉じることとなりました。
 1937年、アメリカ図書館協会が創設したアメリカ初の絵本賞の名は「コールデコット賞」。彼の作品の輝きは、今もなお絵本に携わる人々の灯となっています。

【監修/解説 ブライアン・オルダーソン(Brian Alderson)】 1930年生まれ。英米児童文学の研究者として、著作、講演、批評、翻訳、編纂など幅広い範囲で活躍している。多くの評論集を上梓する一方、絵本作家アーディゾーニやセンダックの書誌編纂、わらべ唄集の編纂などを手がける。著書に"Ezra Jack Keats, Artist and Picture-Book Maker"(1994年)、『6ペンスの唄をうたおう――イギリス絵本の伝統とコールデコット』(邦訳・吉田新一/日本エディタースクール出版部刊)ほか多数。"The Times"紙で児童書評を担当。

【監修/邦訳および解説 吉田新一】  1931年東京生まれ。立教大学院文学研究科修了。立教大学教授、日本女子大学教授を経て、現在は立教大学名誉教授。日本イギリス児童文学会会長、絵本学会会長などを歴任。著書に『イギリス児童文学論』(中教出版刊)『ピーターラビットの世界』『絵本・物語るイラストレーション』(日本エディタースクール出版部刊)など、訳書にネズビット『宝さがしの子どもたち』J・テイラー『ビアトリクス・ポター――描き、語り、田園をいつくしんだ人』(小社刊)ほか多数。

2001年4月刊行

箱船にのった鳥たち 表紙

箱船にのった鳥たち――ある野鳥病院の物語――
 

キット・チャブ文・絵
黒沢優子訳
定価1,680円(本体価格1,600円)

原題: "The Avian Ark"

  野鳥保護に一生を捧げるキット夫妻の経験の集大成。感動的な物語と美しいイラストは、すべてキット夫妻の手によるものです。飾り気のない物語は、読者に喜びをもたらします。  

【キット・チャブ(Kit Chubb)】  1936年生まれ。看護婦として12年間勤務したのち、1978年にカナダのオンタリオ州ベローナという町に、鳥類保護研究財団、通称「鳥の箱船」病院を開設する。以来23年間、野鳥の救護、研究活動ならびに自然保護に関する教育、広報活動を続けている。1993年、「オンタリオ州の自然保護活動に多大な貢献をした」ことによりオンタリオナチュラリスト協会からW.Eサンダース賞を受賞。1996年にはオタワ・フィールドナチュラリスト協会から非会員保護貢献賞を受賞。1998年〜99年にかけて、絶滅の危機に瀕するアメリカオオモズの保護増殖プログラムに参加。

【黒沢優子(くろさわ ゆうこ)】  1957年新潟県生まれ。1980年お茶の水女子大学卒業。1995年、1996年山形県遊学館外国絵本コンクールで2年連続優秀賞受賞。受賞作『おじいさんのえんぴつ』は、1996年秋、金の星社より出版。その他の訳書としては『子どもの瞬間(とき)』『建物スタンプであそぼう』(以上福音館書店)、獣医師の夫との共訳書『水鳥のための油汚染救護マニュアル』(北海道大学図書刊行会)がある。鶴(タンチョウ)の飛来で有名な北海道鶴居村在住。

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Last Modified: 2020/09/06
担当:さかな
HTML編集: 出版翻訳ネットワークやまねこ翻訳クラブ