2008年1月刊行★2008年度 コールデコット賞受賞作★
読み物のハードカバー版を思わせる重厚さ! 本の厚みは4センチちょっと。つまり、とても分厚い本で、読み物本ようにみえるのだが、これは絵本のカテゴリーに入る。そして、今年、絵本に贈られるコールデコット賞を見事射止めた。原書が刊行された昨年来より、かなり評判になっており、アメリカの図書館員、書店員の審査と読者投票で選ばれるクィル賞も2007年度に受賞。Best Illustrated Children's Books 2007、2007年全米図書賞ファイナリストにも選ばれている。そんな話題作を邦訳でもいちはやく読めるのはとてもうれしい。 作者、ブライアン・セルズニックは、一見素朴にみえるかのような鉛筆画で丹念に精緻なアクのある絵を重ねていく。物語の舞台はパリ、1931年。時代をさかのぼって映画館に入ったと想像してほしい。太く黒い縁取りに小さな鉛筆画が目にはいる。はじまり、はじまり。見えてくるのは、しろくてまるいもの。これは何だろう。月――? 500頁ほどの大著、半分以上が見開きの絵。セルズニックは小説を絵本で描いてみたかったとインタビューでこたえている。見開きの絵がずっと続いたあとに、ひゅっと字幕のように物語が挿入される。そこは文字だけだ。白い紙の上にシンプルな黒い文字。読んでいくと、物語の輪郭がよりみえてくる。そしてすぐにまた絵が続く。ズームアップされたり、ぐっと後ろにひいた り、ページによって、絵の距離感はダイナミックに動いている。 ジョルジュ・メリエスという、「月世界旅行(1902)」をとった実在する映画人を、セルズニックは事実を織り交ぜながら、風変わりなファンタジー作品に仕上げた。 ユゴーという少年はどうしておもちゃを盗んでいるのか。壊れたからくり人形にはどんな謎がかくされているのか。おもちゃ屋の少女はユゴーの味方なのか。登場する人がそれぞれに秘密を抱え、緊迫した空気でラストへ向かう。 おもしろくて不思議、古い時代なのにあたらしい。 刺激的な一冊だ。 ▼ The Invention of HUGO CABRET作品公式サイト 【作】ブライアン・セルズニック Brian Selznick
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Last Modified: 2008/01/17
担当:さかな
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