国際的な賞レビュー集一覧　　国際エスパス ・アンファン賞　国際アンデルセン賞

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国際エスパス・アンファン賞（世界）　レビュー集
Prix International du Livre Espace Enfants
　

国際エスパス・アンファン賞公式サイト

★国際エスパス・アンファン賞の概要
　　主 催：Fondation Espace Enfants（スイス、ジュネーブにある財団）
　　概 要：４歳から10歳までの児童が読む本を対象として、1987年よりほぼ２年ごとに発表する国際賞。
　　日本人では1988年にフランス在住の谷内こうたさんの『にちようび』(Dimanche matin、至光社、1997年)の受賞歴がある。
　　賞金は10,000スイスフラン。
　

　朝早く市場に出かけた母親を恋しがりだだをこねる妹のスニを連れて、おにいちゃんのトンイは近くの河原にやってきました。河原には、おおきなとりや、こぐまに見える岩があります。トンイは、「おおききなとりやこぐまさんもお昼寝するからスニもお昼寝にしよう」と言い聞かせますが、スニはママを迎えにいくといってききません。河辺を散歩しながら、トンイはなんとか妹をなだめようと一生懸命です。

　ゆったりと流れる碧の川、圧倒的な存在感でそそり立つ大きな岩々。雄大な東江（トンガン）の河辺の景色の中では幼い兄妹がなんと小さく頼りなげに見えることか。しかしその色彩はあくまでも優しく、二人の幼い兄妹を包み込むような暖かさにあふれています。
　河辺には鳥やこぐまのほかにも「絵のなかにかくされた絵」があります。山や崖などの風景が何かの顔や形に見えたことはありませんか？　作家は岩や川面に映る景色など、実際の自然の風景をちょっと視点を変えて見て、見えてきたものを隠し絵として描いています。といっても、絵本のために描かれた隠し絵ではありませんので、一見しただけでは分からないものもありました。親切に最後に隠し絵の解説がありますので、読み終わってからいくつ分かったか確認するのも楽しいでしょう。この隠し絵がまたスケールの大きな優しい絵なのです。慈愛に満ちた微笑みを浮かべたお母さんの姿などは、見ているこちらまで穏やかな気持ちにさせてくれます。そういえば幼い頃、岩や山陰が色々なものに見えたな、と懐かしく思い出しながら、改めてページをめくり、絵を見返していました。

（吉崎泰世）　2008年10月公開