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やまねこ翻訳クラブ レビュー集

今月のおすすめ(99年4月)


『あそぼうよったらおやゆびさん』表紙

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 『あそぼうよったらおやゆびさん』

   Fun With Mrs. Thumb

  ジャン・マーク/作 ニコラ・ベイリー/絵 
  今江祥智・遠藤育枝/訳 BL出版 1999.2 

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*表紙の画像は、出版社の許可を得て使用しています。

 

 

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 ぼくたちねこがすきなもの、知ってる? そうそう、小さくてかわいいもの。お人形とかネズミとかね。でも、見ているだけじゃあ満足できない。やっぱり、いっしょに遊びたくなっちゃう(ネズミは、遊ぶだけじゃなくて食べたくなるけど)。これは、そんなぼくたちの気持ちが、とってもよくわかる絵本なんだにゃー。

 ぼくはね、「おやゆびさん」っていう小さな木のお人形がだいすき。おやゆびさんは、お人形用のきれいなおうちに住んでいて、いつもおすまししているけど、本当はぼくと遊べてうれしいはず。だってこのぼくときたら、するどいつめといい、すてきな歯ならびといい、それはみごとな「ねこっぷり」だもんにゃ(どれだけみごとかは、絵を見てもらえれば一目瞭然)。ほうりなげたりたたいたり、こんなに楽しいのに、ご主人たら、ぼくとおやゆびさんが遊んでいるといつもおこるんだ。でも、おやゆびさんのおうちの中、小さくてきれいな食器や家具が、ぜんぶひっくりかえってちらかってるし、おやゆびさんのやさしい顔が、ちょっぴりおびえているみたい。ねえおやゆびさん、ぼくと遊ぶの、うれしいよね? 明日もいっしょに、遊ぼうにゃ。(森久里子)

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【作者】

ジャン・マーク Jan Mark: イギリスのハーフォードシア生まれ。カンタベリー美術大学卒業。イギリスでは最も有名な児童文学作家のひとりである。1976年、"Thunder and Lightnings"でデビュー、翌年のカーネギー賞に輝く。1984年には『夏・みじかくて長い旅』(百々佑利子訳/金の星社)で2度目のカーネギー賞受賞。この4月に出版された"The Eclipse of the Century"で、99年度のブッカー賞候補に応募、児童書から初の受賞なるかと話題になっている。『こわいものなんて何もない』、『バスにのらないひとたち』(いずれも三辺律子訳/パロル舎)など、少々ひねりをきかせたホラーチックな作品も人気。「ジャン」という名前ゆえ誤解している方もいらっしゃるかもしれないが、女性である。

 

【画家】

ニコラ・ベイリー Nicola Bayley:1949年生まれ。聖マーチン美術学校、王立美術大学卒業後、クェンティン・ブレイクに師事してイラストレーションを学んだ。1975年"Nursery Rhymes"(『マザーグースのうたがきこえる』ゆらきみよし訳/ほるぷ出版)でデビューし、高い評価を受ける。写実的で細密なタッチながら、どこか軽やかさのある美しい絵が特徴。ネコの絵には特に定評があり、日本でも『パッチワークだいすきねこ』(ウィリアム・メイン文)『ネズミあなのネコの物語』(アントーニャ・バーバ文)(いずれも今江祥智・遠藤育枝訳/BL出版)などが人気となっている。

 

【訳者】

今江祥智 いまえよしとも:日本を代表する児童文学作家のひとり。『ぼんぼん』で日本児童文学者協会賞、『兄貴』で野間児童文芸賞を受賞。海外の児童書の翻訳も数多く手がけている。『ぼちぼちいこか』(マイク・セイラー作/ロバート・グロスマン絵/偕成社)は大阪弁を活かした翻訳で話題となった。他の翻訳作品にガブリエル・バンサン作『パプーリとフェデリコ』シリーズ(中井珠子共訳/BL出版)、ブラッドベリの絵本『夜をつけよう』(ディロン絵/BL出版)など。軽妙な語り口のエッセイ集、評論集は、幅広い年齢層に人気がある。

遠藤育枝 えんどういくえ:京都精華大学教員・翻訳家。米国シモンズ大学児童文学研究センターで児童文学の研究をする。今江祥智とのコンビで『ヘビのヴェルディくん』(ジャネル・キャノン作/BL出版)、『カウンセリング熊』(アラン・アーキン作/出版工房原生林)など数多くの児童書を翻訳。単独での翻訳に『不思議な黒い石』(ジル・ペイトン・ウォルシュ作/出版工房原生林)『きこりとあひる』(K.トゥルスカ作/佑学社)などがある。

 

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