やまねこ翻訳クラブ　レビュー集

やまねこのおすすめ（９８年８月）

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　　『ヘイスタック』

　　Bonnie & Arthur Giesert, Haystack

　　ボニー・ガイサート／文　アーサー・ガイサート／絵
　　久美沙織／訳　ＢＬ出版　1998.6.　1500円
　　ボストン・グローブ＝ホーン・ブック　
　　ノンフィクション部門オナー・ブック

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　ランダムハウス英和大辞典で‘haystack’をひくと「（大きな）干し草の山、積みわら」とあります。この絵本は、その干し草の山をどのようにして作り、冬の間中家畜たちがどのようにしてそれを利用するかを描いた、一種の知識絵本です。

　小さな絵本の画面いっぱいに広大なアメリカの農場が広がります。すがすがしい気持ちになると同時に、「（大きな）干し草の山」がどれほど大きなものなのかを、疑似体験することができます。そして、そのヘイスタックがあるときは家畜たちのえさに、あるときは風よけになり、どんどん取り崩されていってやがて春になると……。

子供向けの知識絵本は、辞書だけではわからない「言葉のイメージ」を豊かにふくらませてくれます。

　絵はエッチングで、一見古風ですが、人物や家畜たちの表情にそこはかとないユーモアがにじんでいます。色使いは力強く、背景も細かく書き込まれていて、いくら見ていても飽きません。

　それにしても昔の生活って、手間はかかったけれど、何でもとことん使い尽くして、季節のめぐりと共に次のいのちにつなげていくようにできていたのですね。そういう意味でも感心させられました。　（BUN）

　ガイサート新作情報　

　これまでにも「ブー」「プキー」（1993、ジー・シー・プレス）や、「ふわふわブイブイ気球旅行」（1995、セーラー出版）など、数多くの作品が日本に紹介されているガイサート。今も精力的な創作活動を行っています。

　1997年に出版されたのがThe Etcher's Studio (0-395-79754-3)。
これは、少年の語り手が、エッチングの制作過程を紹介したもので、自伝的な要素が強い作品。エッチングへの熱い思いが込められた一冊。

　また今年刊行されたのがPrairie Town (0-395-85907-7)。
こちらは、得意のパノラマ的構図を駆使して、中西部の小さな町の様々なドラマを、とことん描き込んだ絵本。穀物エレベーターから貨物列車に直接荷積みするダイナミックな場面もあれば、食糧品店の店内をじっくり描いた場面もある、ガイサートらしい作品です。

*表紙の写真は出版社の許可を得て使用しています。

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