メニュー読書室レビュー集千葉茂樹レビュー集


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北海道新聞 2006年10月    掲載紙から   トップ

★幼児

あかりをけして
アーサー・ガイサート 作
久美沙織 訳 
BL出版 1365円


 翻訳者の名前はありますが、実質的には文字なし絵本といってよいでしょう。ていねいに書きこまれた絵をじっくり「読みこむ」と、絵が生き生きと動き出し、さまざまな音もきこえてくるはず。
 パパとママに、八時になったらあかりを消して寝なさいといわれたコブタくん、ねむるまえにあかりを消すなんて、暗くてこわいよ、がまんできない。
 そこで、工夫をこらしたしかけを作ることにしたコブタくん。ベッドの上のひもを引くと、あれがこうなって、これがああなって、つぎからつぎへと動く動く、そして最後には……。なんとほほえましいハッピーエンドなのでしょう。さあ、コブタくんのすごい工夫をとくとご覧あれ!


おんちゃんは車イス司書
河原正実 原案
梅田俊作 作・絵
岩崎書店 1365円


 ふりかえると、小さいころから本との縁が切れることのなかったわたしにとって、図書館ということばには、たくさんの思い出がつまっています。それなのに、いつもそこにいたはずの司書さんの思い出は、なぜかほとんどないんですよね。なんだか残念。
 もし、身近に本書のカワハラさんのような司書さんがいたならば、図書館の思い出はさらにあざやかに、わすれがたいものになっていたことでしょうに。
 全国初の「車いす司書」になった河原さんの実体験にもとずく楽しい絵本です。本はもちろん、図書館という空間そのものを心から愛するカワハラさんと子どもたちとの交流に、心がほっかりあたたかくなります。


★低・中学年

のんきなりゅう
ケネス・グレアム 作
インガ・ムーア 絵
中川千尋 訳
徳間書店 1890円


 のどかな村のはずれにある丘の洞窟に、ある日竜がすみつきました。近くにすむひつじかいの男の子は、本が大好きで物知り。その竜が、わるさなどしない気立てのいい竜だということもお見通し。さっそくでかけていって、すぐに友だちになりました。
 ところが、竜のうわさをききつけた村人たちは、おびえたせいか、はたまたたいくつしのぎにか、名高い騎士、聖ジョージに竜退治をおねがいすることに。竜も男の子もたまったものではありません。そこで、男の子は竜や聖ジョージとも相談して一計を案じます。はたしてうまくいくのでしょうか……。
 いってみれば、入札前の談合のような話なんですが、こんな談合なら大歓迎!


幻のカエル
大木淳一 写真・文
新日本出版社 1470円


 日本には崖に卵を生みつけるカエルがいるんだそうです。自然にできた崖の穴の奥で生活しているため、声はすれども姿は見えず。それで「幻のカエル」とよばれることに。豊富な写真や図解で、聞いたこともなかったカエルのことを詳しく知ることができて、とても得した気分です。
 なによりおもしろいのが、著者の専門が両生類どころか、生物学でもない地質学だということ。確かに崖に関しては専門家なわけですから、これはもってこいのテーマといえるのかもしれませんね。
 最近、いくつかの学問を横断的に行き来する「学際」なることばがもてはやされていますが、これぞ学際的学問の見本といっていいでしょう。 知的興奮に満ちています。


高学年以上

海の島
アニカ・トール 著
菱木晃子 訳
新宿書房 2100円


 スウェーデンでは第二次世界大戦のさなか、迫り来るナチスの脅威からユダヤ人の子どもたちを救うために、里親となって家庭を提供する救援活動があったそうです。
 ステフィとネッリの姉妹は、この活動を頼りにウィーンの親元を離れ、小さな島に渡ってきました。ことばも文化も暮らしぶりも、なにもかもがちがう場所での新生活に立ち向かうふたりの姿が、生き生きと描かれています。
 ときに、将来への不安、いわれない差別やいじめなどに胸がふさがれる思いもさせられますが、悪意ある人間によってもたらされた窮地で、救いの手をさしのべてくれるのも、また人間なのだということを力強く訴える感動の書。


15歳の夏
ローレン・ブルック 作
勝浦寿美 訳
あすなろ書房 998円


「ハートランド物語」の第一巻。虐待や事故などで心や体に傷を負った馬を独自の療法で癒すケアセンター、それがハートランドです。十五歳の少女エイミーにとって、所長で、馬の治療に関しては天才的な腕をもつ母はあこがれの人。いつか自分もあんなふうになりたいと思いながら、仕事を手伝っています。
 ところが、突然の悲劇が。母が不慮の死を遂げ、その責任が自分にあると思いこんだエイミーも深く傷ついてしまうのです。エイミーは立ち直れるのか? 試される家族の絆の行方は? 傷ついた馬の運命は? もう、最初っから最後まで心をゆすぶられっぱなし。シリーズはまだまだつづくようです。同時発売の第二巻をさっそく読もうっと!


[NEW!]

北海道新聞 2006年7月    掲載紙から   トップ

★幼児

おんちのイゴール
きたむらさとし 作
小峰書店 1575円


 鳥のイゴールはうたうのが大好き。ところがイゴールがうたうとあちこちから非難の声が。そう、イゴールは音痴だったのです。上手になりたくて、猛特訓。音楽の先生にも習ってみましたが効果はあがりません。おちこんだイゴールは二度とうたわないと決意して、音楽のない世界目指して旅に出ます。
 ひとりぼっちになったイゴールですが、ある日夕焼けのあまりの美しさにいてもたってもいられなくなってうたったそのうたは……。
 それにしても、この絵本に登場する音楽家たちの楽しそうな表情といったら! 猫のジャズ、犬のロック、羊のオーケストラに、ペンギンのコーラス……。ぜひ、実際に聴いてみたい!


なつのかいじゅう
いしいつとむ 作・絵
ポプラ社 1260円


 北海道では真夏でも夜になれば涼しくて、暑いのが苦手なわたしとしてはありがたいかぎり。ところが、この絵本を読んでいて、眠れないほどの、むせかえる熱帯夜の暑さをなつかしく思い出しました。
 おにいちゃんに虫とりにいく約束をすっぽかされて、「ぼく」はへそをまげています。夜になっても口をきこうとしないぼくをなだめようと、おにいちゃんはとびきりのものを見せてくれました。
 窓の外にライトをむけるとそこに続々と集まってきたのは……。「夏のかいじゅう」たちの迫力たっぷりの攻防にぼくたちはもう夢中です。暑さばかりではなく、草いきれや虫の羽音まで迫ってくるようなこの絵本で、夏を感じてください。


★低・中学年

よいしょ
工藤直子 詩
小学館 1260円


 一流のネイチャーフォトグラファーたちの写真と、生き物たちの心情を代弁した詩が融合したこの本を、電車のなかで読まなくてよかった。きっとアブナイ人だと思われたでしょうから。なにせ、読んでいる間じゅう口元がゆるみっぱなしでへらへら、時々は吹き出してしまったり、変な合いの手を入れたり。
 全編、動物や昆虫、植物などの「よいしょ」の瞬間を切り取っているのですが、詩と写真の取り合わせは絶妙! どうしてアリの気持ちがわかるんだろうと不思議に思ったり、このアライグマには脚本をわたして演技してもらってるんだよね、と思ったり。しばらくは動物の写真を見るたびに即興でなにかつぶやかせてしまいそう。


ブナの森は宝の山
平野伸明 文 野沢耕治 写真
福音館書店 2520円


 秋田の山深いブナの森の四季をつぶさに見せてくれるこの本のページをゆっくりくっていると、日ごろの生活の中ではなかなか得ることのできない、豊かな、ぜいたくな気分を味わうことができます。
 さまざまな動物や植物、それを支える環境が密接にかかわりあいながら作り上げた密度の濃い生態系が、日本にはまだあるんだと強く実感しました。ひとつひとつの生命は、著者と写真家のいとおしむような「目」で切り取られており、彼らの目を通して森を見ることができるからこその豊かな気分であり、ぜいたくな気分だともいえるでしょう。
 一冊の本を作るためにかけられた時間や苦労、多くの人の助力が重みを与えていることもまちがいないでしょう。


高学年以上

異界から落ち来る者あり(上・下)
香月日輪 著
理論社 各1050円


 大江戸八百八町を舞台にかわら版屋として活躍する少年、雀の物語。おもしろい記事を書いて喝采を浴びるばかりではなく、人助けもすれば、事件の謎もとく。人情篤い親方や兄貴分の桜丸に見守られて、江戸の町を駆け抜ける痛快な時代小説……なのですが、なんかおかしいぞ? 実はここ大江戸は妖怪たちの町なのです。そして雀は、人間界から「落ちてきた」ただひとりの人間。桜丸は空を飛べるし、親方は大きな首だけの妖怪。どこもかしこも奇々怪々、異形の化け物ばかり。でもね、まっすぐでどこか間が抜けた妖怪たちの方がよっぽど人間的なんですよね。
 上下巻で完結していますが、きっと続刊があると見た。期待してますよ!


犬に本を読んであげたことある?
今西乃子 作
講談社 1365円


 読書の苦手な子どもに、犬を相手に絵本の読み聞かせをさせて本を好きになってもらい、さらには学力まで伸ばしてしまうというアメリカでの活動を紹介した本です。
 ちょっとマユツバ? 本を取り巻く話題には関心があるし、犬も大好きなわたしですが、最初はヒヤカシ気分で読みはじめました。ところが、ノンフィクションとして抜群におもしろい! 紹介されている事例には、子どもと犬との結びつきの強さに目頭が熱くなることもたびたび。
 専門的な知識のあるカウンセラーと訓練を受けた犬がいて成り立つもので、誰にでもあてはまるものではないでしょうが、可能性は大いに感じました。日本でもやってみようという人、いませんか?


北海道新聞 2006年4月    掲載紙から   トップ

★幼児

ハンダのびっくりプレゼント
アイリーン・ブラウン 作
福本友美子 訳
光村教育図書 1470円


 アフリカの草原を舞台にした楽しい絵本。ともだちにプレゼントしようと、いろいろな種類のおいしそうなくだものをいれたかごを頭にのせて歩きはじめたハンダですが、ぶじに届けることができるでしょうか。
 ページをめくるたびに子どもが大好きな動物が次々あらわれるだけでも十分うれしいのですが、おなじパターンのくりかえしの末にどんでん返しが待っているという絵本の王道にも則っています。さらに重要なのは、主人公が気づいていないことを読者が知っているっていうこと! これがたまらないんですね。この絵本を読んでもらっている子どもたちの笑顔が目に浮かぶようで、わたしまでうれしくなっちゃいました。


モーツァルトへようこそ
イエジ・ボトルバ 絵
小学館 1470円


 いまの子どもたちがクラシック音楽に触れる機会ってどれぐらいあるのでしょうか。ピアノを習っていても、ふだんはクラシックなんてぜんぜん聴かないという子も多いらしいとききます。なんかちょっともったいない。
 生誕二五〇年ということもあって、今年はモーツァルトにまつわるCDや書籍がたくさん出ているんですが、本書はほぼ一時間分収録のCDがおまけについた絵本です。この本をきっかけに親子でクラシックに親しむというのはどうでしょう。
 モーツァルトの音楽に「わくわく」「どきどき」「るんるん」「めらめら」といった感情を聴き取ろうというコンセプトがおもしろい。あなたはどう聴く?


★低・中学年

シャガール――わたしが画家になったわけ
ビンバ・ランドマン 文・絵
白崎容子 訳
西村書店 1890円


 分類すれば伝記絵本ということになるのでしょうが、そんなことばではくくれないロマンティックな詩情にあふれた絵本です。
 ロシアのかたすみ、小さな町のユダヤ人街に生まれたシャガールが、周囲の無理解や貧しさにも負けず、ひたすら画家になる夢を追い求める姿は、胸を打ちます。
 本書の冒頭に小さな文字で「著作権上の理由からマルク・シャガールのオリジナル作品は掲載していません」というお断りがあるのですが、まったくハンディキャップにはなっていません。それどころか、ジオラマ風の立体的な画像は、シャガールの絵の世界をより大きくふくらませ、より深く掘り下げていて、心に焼きつくことでしょう。


実物大恐竜図鑑
デヴィッド・ベルゲン 著 真鍋真 監修
藤田千枝 訳
小峰書店 1890円


 鳥の羽や動物の足跡、木の葉や木の実の実物大図鑑なら見たことありますが、恐竜図鑑を作ろうなんて、とんでもないことを考える人がいたもんです。でも、その試みは大成功! これまでに見たどんな恐竜図鑑にもなかった興奮があるんです。なにせものすごい迫力で、どのページを開いても心が躍るような驚きでいっぱい。
 鋭利で巨大なかぎ爪にぞっとしたり、こんな小さな恐竜もいたんだと意外に思ったり、ティラノサウルスの糞の立派さに見とれたり……。こうやって実物大で見るからこそ、空想の動物ではなく、本当に生きて動き回っていたんだと強く実感できるんですね。書店で見かけたらまずは表紙の裏をのぞいてみて。


高学年以上

冒険家になるには
九里徳泰 著
ぺりかん社 1299円


 中学校や高校の図書館には欠かせないといわれる「なるにはBOOKS」の一冊です。パイロット、国家公務員、花屋さん、政治家などなどさまざまな職業に就くための指南書のシリーズの。ところが本書は読み物としてもすごくおもしろい。なにしろ、第一線で活躍する何人もの冒険家の生きざまが紹介され、インタビューが載っている上に、収入のことや適性や心構えまで教えてくれるんですから。
 冒険家たちの壮絶といっていいような情熱や、日常とはあまりにかけ離れた厳しさを垣間見て、冒険家になるのだけはやめようと思う人がほとんどかもしれませんが、だからこそ挑戦してみたいと思う「冒険家」魂を持った子どもには宝物になるでしょう。


怪盗グリフィン、絶体絶命

法月綸太郎 作
講談社 2100円


 子ども時代に夢中になって読んでいたルパン・シリーズのわくわく感を久しぶりに思い出しました。ニューヨークのメトロポリタン美術館のゴッホを盗み出してほしいという依頼を受ける第一部のクールな怪盗ぶり。一転二部以降になると、美人のやり手エージェントとチームを組み、謎の土偶を追って南の島を舞台に大活劇。
 全編のすみずみまで作者が楽しんで書いているのが伝わってきて、読んでいるほうもうれしくなります。新しい人名が出てくるたびに笑っちゃいましたよ。
 たっぷりのルビや細かい章立てなど、本造りもていねいで、読書が苦手な子にも読んでほしいという造り手の思いがびんびん感じられます。


北海道新聞 2006年1月    掲載紙から   トップ

★幼児

ながいよるのおつきさま
シンシア・ライラント 作 マーク・シーゲル絵
渡辺葉 訳
講談社 1680円


 夜に雪かきをする必要があって、晴れ間をねらってはじめたところ、一面の雪が無数のダイヤモンドをちりばめたようにキラキラ輝いていてうっとりしました(本物のダイヤモンドをちりばめた経験はないけど)。ふと見上げると雲の切れ目に大きな満月が冴え冴えと。元天文少年だった私にとって月はいつも気になる存在です。
 ネイティブ・アメリカンには毎月の満月にそれぞれ名前をつける伝統があるんだそうで、その名前に触発されて一編の詩が生まれ、さらにその詩に刺激された絵描きさんが絵をつけて出来上がったのがこの絵本です。
 できれば月の光を浴びながら、ゆったりした気分で読みたいものです。自分なりに月に名前をつけてみるのも楽しいかもしれません。


アカメアマガエル
ジョイ・カウリー 文 ニック・ビショップ 写真
大澤晶 訳
ほるぷ出版 1260円


 実はこの絵本、原書を見たときからとても気に入っていた作品でした。
 カエルの本なのでもちろんカエルは何度も登場するうえに、ヘビや毛虫まで画面いっぱいにドアップで。しかも、あんなに「リアル」なお食事シーンまで! 嫌いな人って多いもんなあ、これは日本での出版は無理なのかなあと思っていたところだったので、出してくれてとてもうれしいんです。
 苦手な方も一度手にとってみてください。つぶらな瞳といい、絶妙な配色といい、むだのない造形といい、カエルの魅力にはまるかも。
 陸と水のどちらか片方でも環境が悪くなると生きていくことができなくなる繊細な生き物のため、カエルの多くの種が続々と絶滅しているのは残念でなりません。


★低・中学年

ハブの棲む島
西野嘉憲 写真・文
ポプラ社 1365円


 奄美大島のハブ捕り名人を追いかけた写真絵本です。見返しの部分にいきなり「奄美の森からハブがいなくなったら、島の値打ちは半分じゃヤ」という文章があってちょっと意外な気がします。死をもたらす猛毒で知られるヘビですし、失敗に終わったものの、わざわざマングースまでつれてきて全滅させようとしてたんじゃなかったっけ?
 しかし、読み進むうちにこのハブ捕り名人の言葉の意味がわかってきます。写真からでも伝わってくるむせ返るような生命の気配に満ち満ちた奄美の森を守ってきたのは、ハブだったのです。
 それにしても、近所の銭湯にでも行くようなサンダル履きの身軽なかっこうで夜の森に分け入り、何匹ものハブを捕るという名人技にはただただびっくり。


走れ! やすほ にっぽん縦断地雷教室
上泰歩 著 ピースボート編
国土社 1365円


 小学校のときにテレビで「難民」をあつかった番組を見たことがきっかけで、困った人のために働きたいと思い定めた女の子、やすほの手記です。高校を卒業後すぐに、国際交流を目的としたNGO「ピースボート」でボランティアをはじめた彼女ですが、そこで出会ったのが地雷問題。さまざまな種類の、非人間的な悪意に満ちた発想で作られた兵器の存在と、被害の実態にショックを受け、いてもたってもいられなくなります。
 そして、思いついたのが、日本各地をめぐって、地雷の実態を知ってもらう教室を開くことでした。しかも、たったひとりで、自転車を移動手段に、ときには野宿をしながら! 無鉄砲とも思える行動ですが、彼女の熱い気持ちには心を動かされる人も多いでしょう。これからも、がんばれ!


高学年以上

山のくらしと動物たち
鈴木まもる 作
小峰書店 1680円


 ベテランの絵本作家にして、自らの足で集めた鳥の巣を研究し、たくさんの絵本や子ども向けの研究書も書いて、鳥の巣博士としても知られる鈴木さんの原点ともいえる山の暮らしを、生き物たちとのふれあいを中心につづった「スケッチ通信」です。
 畑はもちろん、橋や石垣、池まで自分で作るばかりか、死にかけた森を手入れして生き返らせたりという、アウトドアライフにあこがれる人ならよだれが出るような生活を、多数のスケッチとともに生き生きと、描いています。
 どれも半端ではないたいへんな作業だと思うのですが、鈴木さんの手にかかるととても楽しそう。旺盛な好奇心とチャレンジ精神で次々と新しいことに取り組む姿勢には、おまえもがんばれと励まされたような気持ちになります。続編も楽しみ!



自分の謎

赤瀬川原平 作
毎日新聞社 1260円


 以前、家に遊びにきていた娘の友だちが、棚にある哲学辞典に目を留めて、「哲学って、なんですか?」と聞いてきたことがあります。とてもむずかしい質問だと思いませんか? そのときは、むにゃむにゃと煮え切らない返事をしてごまかしてしまったのですが、いまなら、まずこの本を読んでみて、と勧めることができます。
 鏡を見るのは人に見られているようで嫌いだ、という思いからはじまって、見る見られるということをつきつめて考えたり、切った爪や髪を見て、体の部分をどんどん切り落としていったらいったいどこまでが自分として残るんだろうと考えたり……。
 あたりまえのように思っていたことや、一見突拍子もないこと、なんの役にも立たないようなことをとことん考えぬく。これぞ哲学ですよね。


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